年末年始であわただしくなり、小売業にとっては最量販期を迎えている。会社をやっている時は、元旦の売上が年間売上の1%と読んでいた時代もあった。近年は労働環境の変化もあり、元旦営業しない商業施設も増えている。スーパー大手のヤオコーは正月3が日が定休日になる。労働環境の改善もあるが、この流れに中小小売業はついていけるのだろうか?
ファッション関連の中小小売業は、厳しい流れが続いている。おそらくこの流れは変わらない。ここ数年、上場している大企業でも売上の低迷により、M&Aが増えてきている。さらにファンド系企業の支援を受けて再生を図っている企業も多い。ただ、「ANAP」や「メソッド(シーズメン)」など従来の継続事業であるべき小売業の数字が低迷を続けているケースが多い。友人の経営している会社も、譲渡や廃業となった例が増えてきた。特に多店舗展開している企業が苦しくなってきている。
まず、価格志向が強まる中、柔軟な価格対応ができる品揃えを簡単にはできない。30店舗くらいの規模の会社でも、会社主導で売れる商品を継続して作っていけない。企業商品を作るのに中途半端な店舗数かもしれない。その商品も取引先と「相乗り」的な商品が多く、売上利益ともに貢献度は低い。逆に売れないとリスク要因になってくる。さらに「買い」の商品だけでは差別化も図れず、利益率も上げていけない。
規模拡大は成長するための第一条件になるが、どんどん出店コストも増大していく。内装コストも素材高騰で大きく上昇しており、デベロッパーへの出店経費も上がっている。SCのテナントリーシングも変化がなく、大手テナント中心の同じようなラインアップになっており、それ以外のスペースは賃料優先になっている。そのため、前向きなテナント出店には大きなリスクが伴うようになってきている。その環境下で出店に対して消極的になり、多店舗化のスピードが上がってこない。多店舗化が遅れると、当然チェーンメリットはなくなり収益の改善も進まない。
そして、スタッフが集まらない。給与面はもとより、正月定休の事例のように大企業との労働環境の違いはどんどん大きくなる。これだけ「待遇」のことがマスコミで流れれば、「やりがい」や「仕事の面白さ」よりもそちらが優先される。もとより「土日勤務で立ち仕事」という小売業には、労働力は集まってこない。
先日、西松屋が業績予測を修正していた。売り上げダウンとともに営業利益の大幅ダウンを発表した。IRでは「販売費、一般管理費は計画内で推移の見込みも、衣料品の滞留在庫を前倒しで処分したことで値下げロスが増加する見込み」となっている。これにより売上総利益率は2%以上のダウンになる。この発表は会社経営のミスではあるが、企業の正常な体質を感じるし、企業の度量の大きさも感じる。在庫評価のミスは隠そうと思えば隠せる。特に小売業は隠しているだろう企業は多い。さらに業績が悪化している企業は、在庫評価で調整している決算を多く見る。中小小売業であればなおさらだ。
いよいよ、中小小売業は首が回らなくなってきている。来年は、倒産、廃業、M&Aがどんどん増えていく。今後、中小小売業は、地域に数店舗あるセレクトショップのような固定客をターゲットにする店以外は残らない。
■今日のBGM(大晦日に)

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