月: 2024年2月

日経平均株価最高値と小売業

株価最高値ということだが、どうも好景気という雰囲気は感じない。国民の約3割位しか株取引をしてない中で、その恩恵はどれくらいあるのだろうか?当然円安で輸出企業は高収益予測となっている。トヨタは今年の見通し営業利益は4.9兆円と発表されている。熊本の半導体工場の大卒初任給は28万ということで好景気のニュースが流れている。

就業者の70%は中小企業で働いている。中小企業がどれくらい恩恵を受けているのだろうか?給与は物価高騰率よりアップするのだろうか?現人口の3割位いる年金受給者に恩恵はあるのか?さらには2010年くらいから国としては輸入超過が続いている。現状は値上げに収入が追い付いてない状況で厳しい生活感しか感じていないのではないか?今後の金利上昇にどれだけ収入が追い付いていけるのか。

景気は小売業に大きな影響を及ぼす。バブル期はボディコンやブランドファッションが好調で幅広い層にも好景気が伝わった。さて今回はどういう流れになるのだろうか?

現状の小売業の流れは、衣食住とも低価格路線になっている。ファションでは「ユニクロ」「しまむら」「西松屋」など、食では「ロピア」や「OK」など、住では「ニトリ」など比較的価格志向の強い企業が強い。モデレートなポジションだったイトーヨーカドーに代表されるGMSはほぼ終焉を迎えたし、そのゾーンで堅実なのは「アダストリア」くらいしか思いつかない。その「アダストリア」もIYやイズミと低価格帯を模索している。

ブランド人気は当然あり、インバウンド中心と言われているが、当然日本の金持ちはさらに含み益が増えているので、そのゾーンは絶好調と聞く。百貨店の外商は比率を上げているし、高級車も売れ続けている。大都市の百貨店はインバウンドもあり大きく数字を伸ばしている。

ファッションに関しては昔ほどこだわりを感じず、ブランド意識も下がっているように感じる。高給与と言われている会社の会社員も、とりあえずセレクトショップのオリジナル商品を買っているという流れで固執している感じはない。上場している「ユナイテッドアローズ」や「TSI」も伸びてはいない。気に入ったものがあれば買うという自然な買い方のようだ。

この2極化はここ数年続くと思う。低価格志向は同質化に向かう。そこからの差別化する方法を模索しなければいけない。商品なのかシステムなのか、売場などのハードなのか、売り方なのか、ここから差別化の糸口を見つけなければならない。

■今日のBGM

マルイとパルコ

実家に用事があって、そのまま大阪で少しぶらぶらした。(今回も飲んだだけのような気がする・・・)

旧正月も終わったのだが、インバウンド景気はすさまじい。特にミナミには人があふれていて、観光客が全体の7割くらいいそうな気がした。

そんな中で印象に残ったのが、マルイとパルコの存在感の違いだ。マルイもパルコも俗にいうファッションビルを代表する企業だった。私自身もビブレに在籍していたのでよく見させてもらった。DCブランドブームはマルイが引っ張ったし、もともと文化的要素が強くセレクトショップや専門店をうまく育てたのはパルコだった。

難波マルイは高島屋前が整備されて一等地になっている。ただ売場は雑居ビル化していて、空床も目立つ。フロアコンセプトもなく、催事出店が目立つ。立地や客数を考えればもっと成功すると思うし、何よりも昔の得意ゾーンで戦えば収益店舗になりうる可能性は大きい。「もうちょっと頑張れよ!」と思ってしまった。

マルイはもう小売業を完全に捨てている。収益基盤はカード事業が築いた金融業や、物流などその他の事業で賄っているのではないか?従来のファッションビルのマルイも不動産賃貸業としてのビルで、もうすでに小売業ではなくなっている。商業施設としてのコンセプトはどんどん薄れていて、場所貸しに徹している。以前グループのビルに出店していたことがあるが、店のショップMDという概念がどんどんなくなってきて、退店した経緯がある。

パルコは成功しているのではないか。オープン時はこのMDがいつまでもつかと思ったが、インバウンドもあり、さらに大丸との相乗効果がうまく作用している。「sacai」や「マルジェラ」「kolor」など難しそうなブランドも商売できてそうだし、入口の「ヒューマンメイド」は入場待ちの列もあった。飲食ゾーンや高層階の無印やハンズもうまく回っていそうだ。

都心百貨店は2館連動でうまく分けられているところが成功している。伊勢丹や梅田阪急のメンズ館。心斎橋パルコも大丸とうまくすみわけができている。でもやはり都心のみしか成功しそうにない。都心の一等地でも2館連動しないと厳しいのではないか?「ギンザシックス」も空床が多いし三越から少し離れるだけで厳しそうに見える。そういう意味では難波駅前で高島屋に近いマルイは戦えると思うのだが・・・

もうすでにファッションビルは都心でも成り立ちにくいようになっている。乗降客が多いターミナル型しか成功していない。やはり隣接して百貨店やデイリーニーズの店が必要になってくる。

ファッションビルと言われていた業態はもうなくなっているのかもしれない。

※友人の店が阿倍野キューズモールでリニュアルしたので行って来た。中に入っているイトーヨーカドーは全く元気がなかった。火曜の午前中という時間帯のせいかもしれないが食品に欠品が目立った。衣料品は売り尽くし中で売る気は見えない。アダストリアとの「ファウンドグッド」も入荷していて、売場に出てはいたが、什器や内装や人が変わらなければやはり魅力は感じない。雑貨系は売れそうだった。とりあえず売場に元気が出ないと厳しい。

■今日の逸品(アレンパの芋焼酎)

イトーヨーカドーとアダストリア

イトーヨーカドー(以下IY)の撤退についての感想を書いたばかりでいたら、「IYが撤退した衣料品平場をアダストリアが改革。6月までに64店舗に導入。」との記事が報道された。

IY専用のアパレルブランド「ファウンドグッド」(100坪~300坪)をアダストリアが商品提供し売場演出、販促、販売員教育もサポートするという。イズミとは「シュカ」というブランドをプロデュースしているが規模は今回のほうがかなり大きい。

こうなったいきさつを想定してみる。(あくまでも想定。)IYが衣料からの撤退を決め、テナント導入を進めるという政策は去年の春くらいからは動いていたと思う。そして、おそらくテナント導入はうまくいかなかったのではないか。ここでも何度か書いたが今のGMSのIYにRSCモールになれたテナントは興味を示さないし、デベロッパーが収益を優先する条件ではなかなかリーシングできない。そんな中で友好関係にあるイズミと協業を始めたアダストリアとの話し合いでのスタートの気がする。「スタディオクリップ」のFCもスタートさせ、話し合いを続けた結果、今回の協業に至ったのではないか。

果たしてうまくいくか?

マイカル在籍時、同じようなことをした記憶がある。取引先とブランドを立ち上げビブレ(ファッションビル)だけでなくサティ(GMS)までの導入を図り、GMSの売場の活性化を図ろうとした。取引先は「サンエーインターナショナル(現TSI)」、「ピンクハウス」「ワールド」「イトキン」だったと思う。「ZARA」とも取り組んだと記憶する。結果は失敗だった。お互いの会社の取り組み方にずれが出てきて整合が難しかったと思う。お互いの社風も違う。育ってきた風土も違う。組織体系をきちんとしなければうまくできない。さらにお互いのリスクの大きさも違ってくる。

今回の詳しい取り組み内容はわからないが、内装などハード投資や商品リスク、運営問題などの整理がきちんとできるかがポイントになる。成功させるには別会社を作るくらいの労力はいる。今回はファッション小売業で最も優れている「アダストリア」と流通業での優等生のIYとの協業なので、昔私たちが経験した失敗は少ないとは思う。IYで「スタディオクリップ」のFCが成功したことも要因の一つとあるが、そのブランドは認知度が高く、関係は「取引先対小売業」で一般的なものだ。今回の取り組みはIYの活性化がメインなのだろうが、事業としては西友がスタートさせた「無印良品」のようにIYだけでなく、どこにでも出店するブランドを作る意気込みでないと失敗する気がする。当然アダストリアとしても現状の低価格帯の専門店の好調さは織り込み済みで、販路拡大を探っていたはずだ。

将来的にはチェーン展開できるショップを目指すべく、資本を持ち合い、人の交流もし、同じ目標に向かっていくことが成功のポイントになると思う。いち早く運営会社を立ち上げるべきだと思う。

今後の動向に注目したい。

■今日のBGM

イトーヨーカドーのエンディング

イトーヨーカドー(以下IYと記述)の退店ラッシュとの記事がTV、新聞やネット上に多く出てきている。セブンアイの政策通りの動きではあるが、少し寂しい。数字を見てもGMSとしてのIYがどうだったのかが比較するものがなくできないので、今までの私自身の経験や感想のみで書かせてもらう。あくまでも感想ということを前もって書いておく。

IYのGMS事業の収益は低くなっているが、イオンのGMSと比較すると間違いなく利益率は高いと思う。少し数字を調べたがイオンは㈱イオンリテールの総利益率は発表していない。IYは2021年25.1%で、イオンリテールとして2018年は26.4%と公表はしている。ただしイオンはモール事業を㈱イオンモール以外でもやっており、SC名はイオンモールではあるが運営母体が㈱イオンリテールという物件も多い。越谷レイクタウンのmoriはイオンリテール物件だし、もともとイオン物件をモール化した物件はイオンリテール物件が多い。そういう意味でモールとしての賃借料収入で利益率は変化するので、IYとは比較できない。ただ間違いなく過去の経験上IYの利益率が高いと思う。食品の利益率は2%以上の差があるのではないかと思う。

IYは関東の企業で、小売業というより「企業」「組織」というイメージが強い。従業員も関西系GMSの社員とは違う「きちんとした」イメージがある。アリオのコンサルで四谷の本社を何度も訪れたが、スタッフの机は全員入口に向いており、企業体質も「ちゃんとした企業」というイメージを受けた。「やったらええがな!」的なマイカルにいたので余計に痛感した

ただ、きちんとした企業だから数字で理論づけされて思い切ったことができなかったのではないかと思う。陳台を決めて効率を追求するコンビニ「セブンイレブン」はIYの風土から育っていった。余談だがイオンの「ミニストップ」はもっと個性を出せばいいのにと思う。さらにIYの効率経営を考えれば、イオンのように「たぬきの出る」場所に出店はしない。エリアマーケティングを徹底し、数字上効率が合わない郊外の大きな面積でのSCは開発しない。郊外RSC事業では開発型の思い切った戦略のイオンに完敗だった。イズミとの紳士協定(商社がらみ)で西日本への出店ができず、関西系GMSのお膝元には出店ができなかったことでナショナルチェーンになれなかったことも大きい。

GMSの精度ははるかにイオンより上だと思う。ただRSC主流の現在、買い物以外のエニシングエルスがない。従来通り効率追求のGMSに見える。さらにそもそもGMS自体がもうオワコンのような気がする。イオンも当然わかっている。IYの売り上げ構成比で衣料雑貨、住関連の商材は20%程度まで落ち込んでいる。イオンも食品以外は完全に縮小傾向だ。

IYも「食品+テナント」の構造へ変化していくと発表しているが、テナントリーシングに苦しむと思う。どこまでテナントに賃料を譲歩できるかが課題にはなる。企業体質として赤字になる事は、許されないので固定賃料か「固定+歩合」でのリーシングになる。出店する人気大型カテゴリーの賃料にはなかなか譲歩できないのではないか。

SM事業も今後は利益を出しにくくなっていくのではないだろうか?「ロピア」や「OK」など価格戦略に対抗するのは、企業風土、戦略を大幅に変更するしかない。

大学時代、有名なマーケティングの先生が流通業ではIYを一押しだった。まさかこんな時代が来るとは思わなかった。理詰めでの経営だったはずだが世の中の流れに乗れなかった。IYの歴史が「セブンイレブン」を作り上げたことは事実だ。小売業の流れも大幅に変わった。百貨店もほぼなくなっていくだろうし、今後RSCも淘汰が始まる。客層の2極化が進んでいく中、中流のGMSはいらなくなった。

IYの解体でGMSの歴史は終わる。つくづく実感する。

■今日のBGM

流れが悪い上場小売業

日経新聞には信用残高が発表される銘柄の売残と買残が公表されている。株をやらないので詳細は説明できないが、株価の変動が激しくなりそうな、リスク管理が必要な銘柄のようだ。小売業では、パレモ、シーズメン、ジーフット、アナップ、ライトオン、タカキュー、マックハウス、バロックなどが記載されている。株価が大幅にダウンしたワークマンも公表されている。タカキューとともにイオン系で債務超過のジーフットや厳しい決算が続くマックハウス、ライトオンなどが含まれており、厳しそうな会社が多い。

前回年末年始の数字を記したが、厳しそうな小売業の売上状況を見てみたい。

1月の数字はライトオン前年比97.6%、パレモ93,8%、タカキュー93.6%、マックハウス92.3%、シーズメン89.8%と前年割れの流れが続いている。全体的には好調な流れに見えた中で12月同様の前年割れの流れは続いている。

これをコロナ前2019年実績と比較する。(例によって既存前年比を毎年掛け合わせてみる。)数字をまとめた小売業で1月2019年比80%以下の会社は4社。ライトオン69.0%、シーズメン69.5%、タカキュー73.2%、パレモ78.3%。ライトオンの悪い流れは止められてない。ジーンズカジュアル系の悪化についてはよく書いているが、シーズメンも今はブランドが増えているが、もともとは店名「メソッド」でジーンズカジュアル系のショップだった。

ビレッジバンガードの流れも回復してこない。2019年比で12月は77.6%、1月が81.0%と一番ターゲット客層が動きそうな時期に上がってきていない。

数字の流れはなかなか止められない。企業のビジネスモデルを再度検証する必要がある。検証を重ねてビジネスモデルが間違ってないなら、現状の在庫を整理して、一度思い切った損失を計上し、再出発する決意が必要だと思う。

■今日のBGM

上場小売業の年末年始の数字

12月の数字については先月書いたので、1月の数字とあわせて最大量販期である年末年始の数字を見てみる。

1月の売上状況は、アダストリアが前年比114.7%、ABCマートが110.3%、ニトリ110%と2桁伸長しており、さらに主だった企業はほぼ前年はクリアしており堅調な流れだったようだ。12月84.6%と落としたユニクロも100.4%まで戻してきた。少し気になるのは12月91.0%、1月92.7%と2カ月大きく落とした無印良品。要因は冬物在庫の在庫不足とのコメントだった。

1月もコロナ前の数字と比較するために、2019年1月から既存店前年比を毎年掛け合わせてみた。(これが正しい数字ではないが、流れはつかめる。)その数字(コロナ前比)での伸長はABCマート113.7%、西松屋112.2%、ハニーズ111.2%が2桁増。しまむら109.6%、ニトリ108.2%アダストリア101.3%と続く。他はおおよそ90%台。まだまだコロナ前までの数字に戻っていない。ユニクロで97.2%。12月の動向とほぼ変わらないラインナップとなっている。

ABCマート、西松屋、ハニーズ、しまむら、ニトリと価格志向の強い会社が好調に推移しており、2極化を物語っているように感じる。まだまだ物価の上昇に所得が追い付いていないように感じる。

ちなみに価格志向と対極にいるだろうユナイテッドアローズは既存前年比が12月97.8%、1月102.8%と変化なく、コロナ前2019年比はそれぞれ86.9%、85.1%と全くコロナ前に追い付いていない。余談だがユナイテッドアローズのコメントに「マザーニーズが活性化した」というコメントがあり、時代の流れを感じた。

また別途取り上げたいが、厳しい企業の数字は改善していない。ライトオンはコロナ前比では69.0%、イオングループでなくなったタカキューは73.2%と大きく落ち込んでいる。

最後に出退店情報を見ていて、季節的に入れ替わりの時期ではあるが、退店の多さに驚いた。退店数はアダストリア14店、ユニクロ8店、ライトオン、チヨダ9店など。その分2.3月の出店は多いのだろうが少し気になった。

■今日のBGM

厳しい会社ほど在庫回転率は低い

タカキューが債務超過に陥り、イオングループが手を引きファンドの下で再建することになったことで少し思うことがある。債務超過とは会社の負債が資産総額を上回っている状態のことをいう。そうすると商品は資産になるので減らすことはできにくくなる。

タカキューの2023年決算の売上総利益率は59.9%であり、2024年度第3四半期まで売上総利益率は62.0%となっている。商品内容によって利益率は変わってくるが、ファッション事業として比べてみると、2023年度でアダストリア54.7%、ユニクロ51.9%であり、高い水準のように見える。

値段を下げて売上を上げたいが、値段を下げると利益も下がる。利益率も落としたくない。

さらに値段を下げて売ると当然のように在庫も減る。流動資産が減少する。その流れで回転率が下がっていくのではないか?タカキューの2023年の在庫回転率は年間2.46回転(月度0.21回転)となる。ちなみにアダストリアは年間5.00回転(月度0.42回転)となる。

(※棚卸資産の年度期首と年度期末を2で割って在庫を算出した。)

債務超過になっている上場アパレルにアナップがある。アナップの売上総利益率は53.2%で在庫回転率は3.39回転となる。トレンド性の強いヤングレディスターゲットしては低い。

厳しい流れが続く、共にジーンズ系上場企業のライトオンは利益率48.1%、回転率年間2.22回転(月度0.18回転)、マックハウスは利益率48.0%、回転率年間2.34回転(月度0.20回転)となっている。

商品の値段を下げると貸借対照表での資産が減少し、損益計算書上では利益が減少する。利益の減少が表面上は一番チェックされうる項目にはなる。タカキューもライトオンもマックハウスも月度回転率は0.2回転前後となっている。つまり約半年後に現金化できるということになる。商品支払いが手形ならいいが、現金支払いが主流になりつつある中で考えるとキャッシュインより支払いのほうが先になってしまう。つまりキャッシュがうまく回らない状況になる。

売れる商品は回転率も高いので、原価率の低い商品であれば利益率を上げることにつながる。逆に動きの悪い商品は値段を据え置けば利益率は変わらないがその分在庫負担になる。値段を下げれば当然利益率は下がる。

タカキューの60%近い利益は、原価率の低いスーツ業界にしても、売上げ低下を考えると高すぎる。さらに回転率も悪い。ジーンズ系2社も原価率は高い業種だが、あまりにも回転率が悪すぎる。

適正な在庫評価がどういう基準なのかそれぞれの会社が決めることなのだが、回転率を見れば市場評価との間に乖離があると思われる。市場評価での在庫額にすれば、大きな利益のマイナスが出てくるのではないかと疑ってしまうのだが・・・

■今日のBGM

もうナショナルチェーンはできないのではないか?

小売業界、ファッション業界に新しい風は今後吹くのだろうか?ローカルチェーンはナショナルチェーンになれるのだろうか。ユニクロは山口県宇部市、アダストリアは茨城県水戸市、ハニーズは福島県いわき市からスタートしている。

地方で成功している店はある。その店が全国にはなかなか波及できない。ブランドを販売してそれを軸にMDを組んでいる店が多く、エリア間のバッティングがあり、エリアを超えると思ったようなMDができないことが要因になる。ジーンズ老舗専門店発祥のセレクト店にこの傾向は強い。DCブランドブームの時も、大都市以外はFC店が主流でエリアごとにFCのオーナーがいた。アダストリアはジーンズ専門店がスタートだったし、ユニクロはVANショップをやっていたと聞く。

ナショナルチェーンへの転換の最大の要因はブランドMDから自主MDに方向転換することだと言える。

次のステップはナショナルチェーンとしてのビジネスモデルを確立できるかだと思う。ローカルチェーンはブランドMDが多いため接客重視で、プロパー販売をすることが基本になる。必然的に顧客管理をして、顧客の顔を見据えた仕入れが必要になる。ナショナルチェーンは当然客層の幅を広げ、組織を作り、管理面、商品面とも本部機能を充実する必要がある。商品は当然自主MDでセントラルバイングのウエイトが上がるし、それに伴い管理機能も万全を期す必要が出てくる。そして何よりもそれを推進する資金調達が必要になってくる。

商品原価を下げるためには、商品を作りこむ必要があり、利益率を上げるにはそのMD商品を売り込むことが必須になってくる。原価を下げるためには取引先との別注が必要で、その最低ロットは最低1型200~300は必要になってくる。さらに自社で作りこむにはそれ以上の数量で作りこまねばならない。ということはそれを売るべき場所、さらにはきちんと消化できる店が最低30店ちかくは必要になる。円安の影響で海外生産でも商品原価を下げにくい状況にもある。

さらに、SCも成熟期から衰退期の過渡期で、コロナ以降は特に賃料収入は維持していきたい方向にあり、将来を見越しての賃料優遇も考えにくい。スタッフの人件費も高騰が続いている。

株式上場を目指した岡山から出たストライプインターナショナルも赤字決算が続いているし、タカキューやライトオンなど上場企業でさえ厳しい数字になっている。ナショナルチェーンを目指すより、安定したローカルチェーンのほうが居心地いいかもしれない。

■今日のBGM