月: 2024年9月

数字を読む

実家に用事があり、また例によって大阪、福岡で飲んできた。新幹線は報道にある通り、外国人観光客が7割くらいで、日本の観光立国政策は順調に進んでいる。

8月の百貨店売上が4034億で、既存前年比103.9%と発表されている。インバウンド(免税売上)は463億で前年比145.7%とのことである。逆算すると前年の百貨店売上は3883億でインバウンド売上は317億となる。インバウンドを除く売上で計算すると前年比100.2%になる。これをどう読むか?インバウンドは新宿伊勢丹、日本橋、銀座三越、梅田阪急、高島屋大阪店などの人気の百貨店に集中している。逆に数字を読めばインバウンド抜きでは、楽観できる内容ではないようにも見える。さらにインバウンド売上前年比の推移を見ると今年度は5月が前年比331.2%でピークとなっており、今年8月の前年比145.7%は過去2年で最低の数字になる。さらに過去2年で200%を割ったのも初めてのことだ。インバウンドの流れも落ち着いてきたと読める。これで百貨店は順調と言っていいのか?さらに地方百貨店はおそらく今後も厳しい流れが続いていく。

続いてチェーンストアの売上も確認してみる。8月の売上は10869億、前年比103.8%、客数100.4%、客単価103.0%で、点数は前年割れとなっている。併せて物価上昇率も発表されており、総合では前年比103.0%と客単価と同じ数字になっている。ちなみに食品の物価上昇率は前年比103.6%、そのうち生鮮食品が107.8%と報告がある。総務省の発行した数字なので少し実感からは離れている。単純に数字を見ると値上げ分の売上増とみることができる。点数が前年割れしているところに節約志向が見える。まだ給料アップのプラス要素は見いだせない。

百貨店もチェーンストアも同じくらいの伸長であるが、数字に隠れた厳しい要素が山積している。

インバウンドの数字とは離れるが、イオンモールの数字について触れる。イオンモール(国内)はおそらく今後厳しくなると、このブログで書いている。先日イオンモールが好調という記事を見て、想定と違うのでイオンモールが発表した第一四半期決算を確認した。営業収益1094億(前年比111.4%) 営業利益155億(前年比107.8)と伸びている。内容を見ると、国内収益847億(100.7%) 営業利益118億(114.2%)、海外収益248億(116.0%)営業利益38億(103.5%)となっていた。国内好調要因はレイクタウンとイオンモール太田の増床効果とある。イオンモールの営業収益の大部分はテナント賃料であり、テナント売上ではない。国内専門店の売上前年比は103.1%と発表している。(賃料収入が100.7%ということになる。)増床効果で何とか賃料は前年確保という数字になっている。必ずしも営業収益に関しては、国内事業は好調とは言えない数字だと思う。

当然、団体発表やIRはマイナス志向のことは多くは発表しない。数字をさかのぼって分析したり、見えない要素を探してみたりすると、浮かび上がってくるものもある。

■今日のBGM

小売目線と政治

自民党総裁選とやらで、報道は大谷選手の話題以外は、ほぼそれ一色になっている。いろいろ見るけどどうもぴんと来ない。結果的には国のトップになる人間を選ぶのに、それでいいのかどうか。自民党の党首を選ぶ選挙に一般国民は口をはさむ余地はない。でもあまりにも国民の生活レベルの話とはかけ離れている。国益を守る事、外交政策など大きな視点は大事なことだとは思う。

人気の小泉ジュニアが「解雇規制緩和」の話題が出した。もともとは非正規雇用者を解雇する事に対する考え方で、非正規雇用者を解雇するときは正規雇用者も解雇が必要などの法整備の問題だった。それが正規雇用者の解雇要件を緩和するという方向に流れていて、おかしくなっているが、もともとそれが労働の活性化につながるのだろうかとも思う。おそらく大企業を想定しての発言のようだが、大企業を解雇された雇用者が果たして中小企業に流れるのだろうか?さらに流通業、小売業に流れてくるのだろうか?今、人的課題が大きいのは、建設業、運送業、飲食、小売業などと言われているがうまく循環できるのだろうか?結果は明白だと思う。比較的世間に近い話題だったからこそ盛り上がったのかもしれない。でもそんな話題のほうが考えやすい。

今、買い物に行くとほとんどの食品が値上げしている。そんな状況への経済政策の話もほとんど聞こえてこない。実質賃金をどう上げていくかも聞こえてこない。麻生副総裁がカップラーメンは400円くらいと答えて笑えなかったが、今はもうその値段に近づいてきている。現実として小売業界でも数多くの課題が出てきている。前述した賃上げの問題で、優位性の低い小売業には人が集まらなくなっているし、賃上げによって生じる利益圧迫がある。最低賃金を上げるだけでは賃上げは解決しない。当然既存スタッフの賃上げも必要になる。利益を上げるためにロットを増やして原価を下げたいが、それをするにはある程度の規模(資金力)が必要になる。中小企業は対抗できない。コストも資材高騰や人手不足や人件費高騰でどんどん上がっていく。さらに大手企業の寡占化が進み、新規参入へのハードルも上がっている。新しい風が吹かなければ、業界は硬直化する。

経済の最前線が小売流通業で、その流れで世の中の景気がわかると言われているが、経済政策は見えない。身近な政策が出てこない。今後も海外頼りは続き、現場を知らない役人や大会社の経営者で経済政策は決まっていくのだろう。何も変わらないのではないかと思う。

「木を見て森を見ず」かもしれないが、「森を見て木を見ず」も政治の本道なのだろうか?

■今日のBGM

ジーンズカジュアル業界

小売業の数字を毎月見ていて、気になるのは「ライトオン」や「マックハウス」というようなジーンズを核としたカジュアルショップの数字の低迷だ。もともとはジーンズカジュアルを中心に販売してきたが、近年はレディスやキッズに幅を広げており、呼称としてジーンズカジュアル業界が正しいのかどうかわからない。

上記上場2社の数字だが、ライトオンは8月決算期で売上は389億前後、前年比82.8%、既存前年比87.0%、マックハウスは8月上期で売上前年比80.6%、既存前年比91.8%、第一四半期の予測では通期売上135億、前年比は87.6%と発表している。ちなみに公表売上のピークがライトオンは2007年度1067億、マックハウス2009年567億となっている。ともにピーク期の40%に届いていない。当期の営業利益予測もライトオン-24億(第3四半期時点の会社予測)、マックハウス-8.9億(第一四半期での会社予測)となっており、現状の数字状況から見ると、さらに赤字幅は広がっていくと思われる。ライトオンは2019年から、マックハウスは2018年から、コロナの影響もあり営業赤字は続いている。

数字を見て気になっているので、SCに行くときは必ず売場は見ている。ライトオンはあまり動きがなく、積極的な商売をしてないような気がする。先週見た時も、売場は、ほぼ秋の体制になっていて、残暑厳しい中、なかなかお客様を呼び込めないような状況だった。前回ライトオンについてのブログコメントで、利益のダウンが大きかったので、大幅な在庫処理をしたと書いたのだが、その商品はどこで売っているのだろうか?8月、9月と完全に「売り」の体制は見えない。会社として何かあるのかもしれない。マックハウスはしばらく見てないが以前見た時は、メンズ、ジーンズの見え方を弱めて、提携したワールドのハッシュアッシュの打ち出しを強めていた。カジュアルショップへの移行を早めたいように感じた。

もうジーンズカジュアルは1つのカテゴリーではなく、カジュアルウェアに飲み込まれている。ユニクロやGUで、機能的で買いやすい値段のジーンズが、カジュアルアイテムの1つとして完全に浸透している。アメカジブームやインポートデニムブームなどを経て従来のコア客層は、よりマスから離れていっている。少しこだわりを持つ客層が「Bshop」系のセレクト店に流れているような状況だと思う。

ライトオンやマックハウスの失敗は何か?同一業態を拡大し続けたことにあるかもしれない。パルもアダストリアも、もとはジーンズカジュアルの店でスタートしている。その将来性をどう読むかだが、スタート段階で客層の幅を広げていくべきだった。客層の幅に応じてジーンズ以外の提案もすべきだった。さらにライトオンはイオンモールとともに拡大し、売場も大きくなり、売場の焦点がぼやけてきた。ジーンズの特性だけでは競争が激しいカジュアル路線では戦えなかった。今はその売り場の大きさが一番のネックになっている。マックハウスは、逆にイオンモールに乗らなかったことが拡大できなかった大きな要因だと思う。

今の流れを引き戻すのは非常に厳しい。マックハウスは親会社がチヨダであり、まだ延命方法は十分考えられる。(チヨダもイオンモールに乗らなかったのでABCマートと大きく差がついたが・・・)ライトオンの今期の10月の決算発表には注目したいが、自力以外での再生する方法も模索する必要がありそうな気がする。もうしているか・・・

■今日のBGM

セルフレジの功罪

近隣のSMはどんどんセルフレジに変わっている。よく使っているヤオコーとイオンに限定して推測でのレジ台数だが、曜日によって変化はあるが、平日だとヤオコーは有人レジ5台前後、セルフレジ20台前後の体制、イオンモール内のイオンは有人レジが10台前後、セルフレジ、レジゴー各20台前後の体制のようだ。近隣その他のSMもセルフレジへの移行を進めている。SMはレジ対応にかかる人件費は非常に大きく、セルフレジへの移行は急ピッチになっている。個人的にはイオンではレジゴーで対応しており、スムーズにレジ対応が終わるのと、買い物金額がわかるので便利に使っている。ネットでレジゴーの記事を読んだが、ある程度万引き防止のシステムはあり、さらに子供たちが楽しんでやっているらしく客単価も下がっていないらしい。ちなみにその他の業種でもユニクロ、GU、ダイソーなどがセルフレジをスタートさせている。

ここからはあくまでも私感で書く。SMでは短時間労働者への待遇改善(時給、社保など)による負担が大きくなり、人件費問題は非常に大きいと思う。気になるのは、セルフレジ化により人員を削減しただけでなく、その人員分をどう売場に反映させているのかということだ。SMへの買い物は午前中行くことが多いが、店によって品揃えの充実度が全く違う。特に生鮮品やデイリー食品などの必要な商品の品揃えに差が大きい。つまり、人を減らして経費調整がわかる店と、レジ要員を減らして売場対応を強化している店の差が非常に大きいように感じられる。当然後者のほうが好感度は高いが・・・

結局、経費削減だけでは、効果は短期間になってしまい、逆に従来の営業面にはあまり効果がでてこない。結果として、次年度はさらに何だかの経費削減していかねばならない状況が続く。その経費削減効果を次のステップのプラスに持っていけるかどうかが課題になるのではないかと思う。上記した午前中の品揃えができていないSMが、そのプラス要因で、生鮮売場やデイリー食品が充実したらお客様の信頼感は増す。次につながる。個店でいうと、厳しい店が賃料を下げてもらっても、その削減分は改善するが、削減分をプラスに転じさせなければ、結局は続かないのと同様のことになる。そのプラス要因で他のマイナスポイントを改善していくこと、さらにプラスになる何かを見つけることが大事だと思う。

本当によく言われることだけど、経費を削減して利益が出るのは一過性のことで、そのメリットを生かしながら、営業面でプラスになる戦略を考えていくことが重要なことだ。経費はマイナスすれば0以下にはならない。営業のプラスはずっと青天井かもしれない。

余談だが、先日食品を買いに行く途中にホームセンターに立ち寄った。欲しい商品の形状がわからず困っていて、担当の従業員を呼んでもらった。サイズが明確でなかったので買えなかったが、その女性従業員の素晴らしい笑顔と対応で、あまり利用していないホームセンターだったが「また行こう。」という気になった。

無人化もいいけど「人の力」もまだまだ大きい。

■今日のBGM

店長は、まず売上予算を達成させる

巷で話題の兵庫県知事のニュースを見るたびに、公務員の仕事は結果が見えにくいのだなと感じる。小売業に限らず、民間の企業は「数字」が結果になる。公務員の仕事はなかなか数字化できない。やはり、「えらそう」「贈賄強要」「各種叱責」にはわかりやすい数字評価ではなく、ほとんどが「気持ち」でのやり取りになっている。

ここで「パワハラ」論争をするつもりではないが、小売業を考えると会社が求める「数値」への取り組み次第で上下関係の軋轢は変化するのではないかと思う。

小売業で店長に求められる数値責任は、まず「売上」。仕入れ権限があれば、次に「在庫」。あとは「売上」と「在庫」に関係するが、「利益」。それぞれ与えられた予算に対しての「予算比」、前年数字に対しての「前年比」。つまりすべて相関関係にはある「売上」「在庫」「利益」が数値責任になる。この与えられた予算数値と実績で評価は決まる。ただすべて数値は「売上」が起因となる。利益率は高くても売上総利益高は「売上×利益率」だ。「売上」が伸びれば、必然的に「在庫」は減る。つまり「売上」「在庫」「利益」は相関関係にある。それを考えれば、間違いなく店長の一番の職務は「売上」予算を達成させることだ。

「いい売場」とはどんな売場なのだろうか?答えはたくさんありそうだが、やはり「売れている売場」だと思う。お客様が買ってくれる売場だから、売れている。数ある店で立ち寄って買い物するということは引き付ける「何か」がなくてはならない。

売れていない店をどう立て直すか?私自身は常に値段に訴えた。売れない商品は値段を下げてなくす。いろんな見方はあるが、不稼働商品のセール(値段を下げる)をやることで、お客様の目は売場に向けられる。興味を持たれると、次のステップにつながる事が多い。再来店があったり、他の商品も手に取ってもらえるようになる。ただその時必要なことは、必ず内容を吟味して数値計画を立案し、売上予算は絶対クリアさせることだ。同時に気にすることは、セールで売上を取りながら、在庫はできるだけ減らしていく。さらにセール以外の売場を徹底的に整理する。売れてくるとスタッフも動きが軽くなる。セール以外でも売れ筋が見えてくる。

数値計画で利益率を考えてみる。平月売上3000千、利益率45%、在庫10000千の店で、不稼働商品1000千を半額で販売したとする。完売して売上は3500千と想定する。その月度末在庫を10000千で設定すれば、仕入れ額は4000千、原価50%で仕入すれば利益率は44.4%と-0.6%しかダウンしない。つまり、内容を吟味して数値計画を整合できれば大きな傷は負わない。

在庫を減らしてさえいれば、売上数値が安定してくれば仕入れが活性化するので利益は戻ってくる。売上が改善してくれば、売場スタッフとの交流も円滑になる。売場に笑顔が出てくる。実際、売り上げが好調な店は、売場の雰囲気は明るい。さらに上司からも、性格的に合わなくても、強く言われなくなる。

小売業では、売上数値さえ安定させれば、パワハラも軽減される。

・・・何度も経験してきた。

■今日のBGM

ティーンズヤングショップの寿命は短いが・・・

キャラクターを打ち出したティーンズヤングのブランドを多数見てきた。時代の流れに合わせて、大きく伸びて光輝いた時期があったブランドも数多くあったが、今も続いているブランドは本当に少ない。顧客が年を重ねて、離れていくか、その客層と同じようにターゲット年齢を上げていくかしかない。実際残っているブランドは百貨店に出店場所を変えており、客層も当然上がっている。品揃えショップもインパクトが強かったショップは特に続きにくい。ボリュームプライスで値頃を打ち出したショップでも、往年の流れはない。堅調なショップは思いつく中ではハニーズくらいかもしれない。ショップにインパクトを持たせず、売れ筋を細かくチェックし海外の工場でコストを落として作り量販するスタイルを続けている。ティーンズヤングのトレンドは短サイクルで、一挙に盛り上がる反面冷え込むのも早い。

ANAPの社長交代の記事が新聞にあった。20代の女性のようだ。ANAPとはある商業施設のリーシングで、地元FCを介して出店してもらったことがある。何度か創業社長と話した程度で、その社長独自の個性ある商品戦略だったと記憶する。「109」ブームの後半ぐらいだった。その後販売代行をしていた時、イオンモール泉南のオープンでANAPも出店しており、すごい人気で大きな売上と聞いて驚いた。このゾーンがイオンモールに出店するのかと驚いた記憶がある。その後上場したのは数年前に知った。数字を見てみると業績のピークは売上が2010年91億で営業利益は2012年5.7億となっている。コロナ以降赤字に転落し、前年決算は債務超過となっている。出店店舗を見るとイオンモールが多く、アンテナショップはあるが、郊外モールを主戦場にしている。近年は少し気にしてみていたが、営業面ではタイムサービスが多く、それでも販売員が一生懸命売っていたので、ある意味すごさを感じていた。

少し詳しくデータを見ると2016年くらいから、インターネットでの売上が店舗売上よりも大きい。その流れが今回のネット会社のファイナンス契約と社長交代につながっているようだ。しかし「109」ブームからここまで残っていることがすごいし、上場したのもすごい。個性的な社長だったし、そのあとをよく上場し経営してきたと思う。モールに出店した戦略がすごかったのか、仕入れ政策を含むMD能力が高かったのか、スタッフへのマネジメントが優れていたのか。さらには、上場にはどういうビジョンがあったのか。債務超過になった経営よりも、若い社長に変わったことよりも、続いてきた理由のほうに興味がある。ネットの影響の大きさにはびっくりしたが、ネットでもこの客層にこれだけ売れた根拠は何だろうか?

今後は新体制になって、戦略を変えていくのだろう。決してターゲットゾーンのトップブランドでもなく、ブームが下火になっても生き残り、上場までした会社の大きな強みは何だったのかを十分検討してほしい。短命と言われるティーンズヤングショップの次のステップは何かを示してほしい気がする。

■今日のBGM

GMSの終焉 ➁

前回イトーヨーカドーのことを書いたが、ここでは以前も記したが、イオンのGMSについても触れたい。企業の動き方や方向性の違いがあるが、イオンもGMSはもう終わりに近いと感じる。

イオングループの決算説明会の資料を見ると、2024年度はGMS事業で3.4兆円(関連会社込み)の売上で企業での構成比35.4%、で営業利益は283億円で構成比は11.2%となっている。グループの営業利益は金融、デベロッパー、ヘルスウェルスの順で、その3事業でグループの56.3%を占めている。近年は合併を重ねてSM(スーパーマーケット)事業が大きく伸長しており、営業利益ではGMS事業を大きく上回っている。尚、GMS事業のうちSM(食品)の構成比は2023年で63%であり、物販は食品に負うところが大きい。多少の計算方法の違いはあるかとは思うが、ヨーカドーの2021年度の食品構成比は67.1%となっている。以下に述べるテナント賃料の計上次第だがヨーカドーの状況とほぼ変わらない。

決算数値の詳細は、各社違ってくるので一概にジャッジはできない。イオンの大型モール(RSC)にはイオンモールが運営している物件と、GMSであるイオンリテールが運営している物件がある。この営業利益はどう分けているのかわからないが、おそらくそれぞれに計上されていると思われる。この営業収益は大きい。2013年にイオンリテール物件の管理運営をイオンモールが受託しているが、あくまでもイオンモールの収益はPMフィーということと発表されている。この時点でイオンリテールのモール型物件は54モールと記述されており、モール物件自体はイオンモールに移管されていない。とすればイオンリテールのテナント収益は大きく、衣料品売上構成比はヨーカドーより低いかもしれない。

おそらくGMS事業の非食品の構成比はどんどん下がっているだろうし、赤字状況だと思う。イオンリテールの衣料月坪売上は100千以下だと聞く。普通に考えれば商売になっていない。もともとGMSの衣料の儲けの大半は、インナーウェアだった。肌着からスタートしたGMS企業も多かった。利益も取れるし、商品の回転も早い。呉服からのスタートが多い百貨店との違いが現代の商売の違いにつながる。得意なインナーを「ヒートテック」や「エアリズム」のユニクロや他の専門店に奪われ、中心客層の高年齢層までが専門店に目を向け始めたことが、GMSの衣料品からの客離れの要因の1つだと思う。

衣料品は、もともとEDLP(エブリデイロープライス)と言い続けていたのが、どう間違ったのか「イオンスタイル」で付加価値を求め始め、失敗した。ヨーカドーが伊勢丹からカリスマバイヤー?を招聘して失敗したのと同じ道をたどった。

GMSはもう完全に終わっている。イオンはデベロッパー業態のイオンモールも安易なショップMDで頭打ちになってきている。イオンモールの成功のポイントは当初三菱商事と合同で開発運営しており(ダイヤモンドシティ)、流通業以外からのポジションで開発したSC(営利よりあるべき姿を求めた)でスタートしたことが非常に大きかった。近年はその魅力が薄れてきておりテナントMDはららぽーとに後れを取っている。小売業としてのイオングループの課題は、GMSを解体して思い切った収益の構造変革をすることが必要になっている。逆にそれがデベロッパー業であるイオンモール自体の活性化にもつながるかもしれない。さらにSM事業やヘルスウェルス事業の活性化にもつながる。

鈴木敏文氏がいなくなったヨーカドーは、株主である外資が決断を迫った。イオンは誰が創業者一族の首に鈴をつけに行くのだろう?

■今日のBGM

GMS(総合スーパー)の終焉 ①

このところイトーヨーカドーの閉店のニュースが頻繁に流れる。それを見て、妻が「何故、優等生だったヨーカドーがなくなっていくの?」と聞いてきた。去年の4月にも同じような内容で簡単に書いた記憶があるが、現状のGMSについても併せて少し書いてみる。

GMS全盛期はダイエー、ヨーカドー、ジャスコ、マイカル、ユニーが大手5社だったが、ダイエー、マイカルはイオン(ジャスコ)傘下になり、ユニーもパンパシフィック(ドン・キホーテ)傘下になっている。売上は年々減少しており、手元のデータでも2022年のGMS合計売上は2年前の-1.7兆円と凋落の一途の状況となっている。

ヨーカドーのイメージは「優等生」であり、他の「やんちゃ」な関西系GMSとは一線を画していた。本当にお客様第一だった。以前も書いたが本社スタッフのデスクも役職者に向かず、入口(お客様)に向いている。組織図も一番上はお客様、取引先それから店で一番下が社長、取締役会、株主総会だった。接待や贈り物は受け取らず、流通業の優等生のイメージが強い。徹底したデータ管理で利益率も他のGMSの+3%以上だったと記憶する。大学時代の有名なマーケティングの先生が「流通行くなら絶対ヨーカドー」と言っていた記憶もある。

ではなぜ現状があるのか?GMS全盛期は、「集中と分散」でいうと「集中」期だったと思う。「1億総中流」と言われたように、目指すライフスタイルも大きな変動はなかった時代だった。ところが近年は生活スタイルも多様化され、ニーズも「分散」化している。ヨーカドーは「集中」するマネジメントにはたけている。現状のセブンイレブンもそうだ。逆にイオンGはGMS事業以外にも多様化した企業をマネジメントしている。

転機の1つは、「SCの大型化」だと思う。効率重視のヨーカドーはその流れに乗らなかった。その前にダイエーは「自前主義」で出店に投資をかけすぎ(出店場所を借りるのではなく所有する)有利子負債が大きくなっていった。マイカルがマイカルタウン構想で今のモールに近いことをやっていったが、「力不足」と「出店エリアのミス(なぜか海沿いが多く、商圏の半分は海)」で負債が積みあがっていった。その後イオンが「狸が出るような土地」に大型SC(RSC)を開発し、街づくりにつながり成功していく。車社会になって駅前立地よりも郊外の駐車能力が大きく、テナントのバラエティ感があるSCにお客様が流れていった。都市近郊に多かったヨーカドーはその流れには乗らなかった。後に大型SCのアリオを開発するが、やはり「規模」より「効率(利益)」を求め成功には至らなかった。

次に、大型専門店の出現と、新鮮な専門店が増えたことがあげられる。手元数字では2006年ヨーカドーの売上は1.49兆、ユニクロは0.45兆に対して2023年ヨーカドーは1.23兆、ユニクロは2.77兆と売上規模は完全に逆転されている。ちなみにテナントとしてユニクロを積極的に導入したイオンに比べて、ヨーカドー内への出店は非常に少ない。生活雑貨でもニトリや家電などの専門店も大きく伸長した。専門店各社は拡大していくRSCに出店を加速させていった。さらに堅調だった食品(SM)の数字も近年は地元密着型SMや値段志向のSMに流出しつつある。その多様化された専門店の波をヨーカドーは取り込めなかったし、立ち向かえなかった。

もう1点あげるとすれば、グループの位置づけ上位がヨーカドーからセブンイレブンに変わったことが大きい。集中型体質企業では当然好調業態に投資は向けられるし、人材にも比重をかける。ここでダウントレンドだったGMSへのテコ入れは完全に遅れていった。

今回の「衣料品からの撤退」でGMSとしてのヨーカドーはもうなくなった。もう一度今のGMSをリニュアルできるのなら、NSC(ネイバーフッドSC)として新しくスタートはできるとは思う。今後は多すぎるRSCよりNSCが注目されると思う。そのためにリニュアル投資やテナントリーシング力は必要だが、現状の立地や食品のMD力を生かせば「イオンタウン」には勝てそうな気もするのだが・・・

■今日のBGM