今の流れを見ていると、間違いなく、体力のない専門店は淘汰される。路面店の飲食店がどんどんなくなっていくように、資金力がなくなってきた小型店は厳しい流れになる。最低賃金の上昇と社会保険「壁」の撤廃など逆風が強すぎる。金利も上昇しそうな流れだし、当然銀行の融資の壁も高くなる。商品の原価も円安の流れが続けば当然上昇するし、売価を抑えれば利益率は確保できない。逆に売価を上げれば、価格志向が強い現状では売れない。要員不足も待遇改善される大手へ流れるので、マイナス要素しかない。大手企業のアダストリアの年末に発表された第3四半期決算でも売上前年比は108.3%にもかかわらず、営業利益前年比は90.6%となっている。その要因として、円安による原価上昇や待遇改善による人件費増をあげている。つまり「人」「物」「金」すべてがアゲインストになってくる。
その流れで、間違いなくM&Aの活性化が起こる。去年の「タカキュー」、「ライトオン」や「マックハウス」を見るまでもなく、厳しい業態は3年先くらいを想定しても成り立っていかない。上場企業でもスーツ業態専業の会社や、ティーンズ系中心のアパレルは厳しい流れは続くと思う。非上場企業でも50~100店舗を運営する厳しいファッション店舗は数多くある。そういう店は近年出店数より退店数が増える傾向にあり、さらに不振店舗を減らして体制を整えていかねばならない状況にある。M&Aについては、当然負債の問題も大きいが、償却済みの店舗や、人員を引き継げれば、承継会社にはプラスの要素もある。最悪の事態をリスクヘッジする意味でもM&Aは間違いなく増えていく。
厳しい流れが予測される環境下だからこそ、「各小売専門店がすべきことは何か?」を冷静に分析する必要がある。その結果を持って、早急に修正をしていかねばならない。いろんな分析手法は、本やコンサル会社を通じて教示してもらえる。悪化傾向の会社はどうしても過去の成功例のインパクトに引っ張られて、現状を見失っていることが多い。自社の立ち位置を理解し、すべきことをジャッジする必要がある。
そして、今後の方向性の中で、専業を続けるか、複数の切り口を持つかを考えていくことが、今後企業継続での大きなポイントになるような気がする。専業とは、広義にはなるが「ユニクロ」や「ニトリ」などほぼ単一業態で経営していることを指す。逆に「アダストリア」や「パル」は複数の切り口をもちグループを形成している企業ととらえてもらいたい。
専業ならば市場の大きさとトレンドを理解し、現状のポジショニングを明確にする必要がある。現状のターゲット客層の動向や、その市場の大きさ、その中のシェアを考えれば、拡大するか縮小するかなど、企業としての方向性は明確になる。
市場規模や企業規模を考えれば、現状の市場で拡大するだけでなく、他の切り口を考えることも必要になる。現状の市場が頭打ちなら、当然企業を維持成長させる方法として、他業種への取り組みも必要になる。中小企業では難しいかもしれないが、中小企業でなければ気が付かない市場もある。大手が手を付けにくい市場もきっとある。以前立ち上げた会社はそういう市場に向けて立ち上げた。どうしても厳しくなると、現状の事業をマイナス志向で分析してしまう。今のターゲットを細分化すればプラスに転じる市場はたくさんありそうな気がする。
こういう時期だからこそ、企業としての立ち位置を冷静に分析し、向かうべき方向を明確にすることが必要だと思う。そしてそれを社内で徹底させるべきだ。
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