小売各社が発表する、月次売上のデータがある。各社2月の数字を見ていて、ふと思い立って、以前コロナ前からの数字を毎年拾っていた月があり、そこに今年の数字を記入してみた。その対象月は12月と1月だった。既存店前年比のみを記入していたのだが、その数字を掛け合わせてみた。これで既存店の動向が明確にわかるわけではない。期中にできた店もあるだろうし、なくなった店もある。ずっとその期間、店がある割合はわからないが、指標にはなると思う。
12月はコロナ前2019年の数字から順に2024年12月の前年比までを掛け合わせてみる。2019年比ベスト5はABCマート145.4%、しまむら125.8、西松屋119.4、アオキ116.3、ハニーズ110.4となる。 ワースト5はライトオン49.0%、マックハウス73.5、ジーフット75.8、パレモ75.2、ビレバン77.0の順となる。 ちなみにユニクロは101.9、アダアストリアは98.7、ユナイテッドアローズ(UA)87.9となっている。尚、無印良品はコロナ期間の数字は発表されておらず、数字はつかめない。
1月はコロナ前2020年の数字から順に2025年1月までの数字までを掛け合わせる。ベスト5はABCマート120.6%、西松屋115.6、しまむら114.6、ハニーズ110.9、ユニクロ105.6 。 ワースト5はライトオン62.8%、ジーフット75.6、タカキュー76.3、TSI78.7、UA80.8の順となる。 ちなみにアダストリアは98.2、ニトリは101.4となっている。
繰り返しになるが、これが正確な流れではない、あくまでも個人的な指標ではある。
この数字を眺めると、必需商品、さらに値頃感がある企業はコロナ以降も安定的な数字になっており、あまり大きな影響はなかったように見える。逆にファッション感が高い会社はコロナ時の落ち込みが大きく(12.1月はバーゲン期にも重なる)、回復も遅い。さらにコロナで大きく数字を落とした企業は、この数年で会社組織も大きく変わっている。つくづくコロナ5年間の空白期間の影響は大きく、数字は最近やっと回復してきた感が強い。
それに加えて、以前このブログでも数字を出したが、購買客層の変化も大きい。日本の総人口は2000年と比べると約98%と微減となっている。一番大きな変化は65才以上の比率で2000年は総人口比17.4%だったのが、2023年は29.1%まで上昇している。65才以上人口は実に164.4%まで増えている。50才以上にすると人口構成比は38.6%から49.5%と広がっている。そして最も購買力がある15~49才は人口が81.7%まで減っている。つまり、小売りの販売環境も世間の流れと同様、高齢化に対応せざるを得なくなっている。その流れが数字の流れになっていて、「値頃感」、「必需品」という言葉がキーワードになっている。
商売を始める動機として、当然「儲けること」を念頭に置く。その上で「何を」「誰に」売るかを明確にする。スタートアップするのに「高い年代層」に「値頃品」を売るという発想は、あまり念頭に置かない。たとえ、それを念頭に置いたとしても、販売経路が限られてくる。郊外モールや、駅ビルからは誘致されにくい。「トレンド品」を「高感度な客層」に売ることはかっこいいし立ち上げてみたいが、現状の流れでは成功の確率は当然低い。
小売業への新規参入は、ますます難しくなってきている。
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