歳を重ねると、主だったことの比重が小さくなり、なぜか社会のことに目が向き始める。政治に対しても独り言が増える。今回は、「小売り」「ファッション」とは少し離れる内容で書くことをご容赦願いたい。
選挙が近づき、各党が政策を述べている。石破首相は「企業の賃上げが最重点課題」と言い続けている。賃上げへのコメントは多いが、政治が企業の賃上げをバックアップできるのか、具体的には全くわからない。組合組織の連合も全労連も高水準での「賃上げ」を要求している。
国税庁発表の赤字法人率は、2022年が最新で64.8%だったようだ。ちなみに小売業は31.6万社の企業のうち22.6万の企業が赤字で赤字法人率は71.4%となっている。赤字企業はほとんどが中小企業で、その中小企業は国内企業数で99.7%を占めており、国内従業員の70%が働いている。そして、国内企業数の1%に満たない大企業の利益剰余金は2021年末で484.3兆円という数字もある。
こういう数字を見ていると、大企業の内部留保分を人件費に振り替えて賃上げをさせることが、首相の言う「賃上げ」ということだと見て取れる。そして政治家は「経団連」や「経済同友会」の大企業のみが「企業」という認識しかない。国民の70%が働く中小企業は眼中にないとしか思えない。
3年前まで従業員100名くらいの小売業を経営していた。頑張って定期昇給もしてきたし、 増益が続いたときは、年3回賞与も出していた。そして、会社立ち上げからコロナ期までは規模の拡大を考えながら、毎年黒字決算を続けてきた。それでもコロナ期の3年は重い時期だった。築いてきたものが崩れ落ちた。小売業で、店を開けないのでは何もできない。その時の国からの補助金は、雇用調整助成金があった。ただ、集客できないので営業成績は上がらず、マイナス利益の歩留まり的な要素しかなかった。その助成金もマニュアルが複雑で書類も多く、作成するのが1日仕事だったように思う。
雇用調整助成金もハローワークへの提出だったが、コロナ期以前もハローワークには最低月1回は行っていた。従業員の入退社手続きで、雇用保険加入手続き、退社手続き、離職票の提出など、さらにアルバイトの募集掲示手続きにも行っていた。ただそんなに行っていたにもかかわらず、「キャリアアップ助成金」は全く知らなかった。有期社員から無期社員にすれば当時は1名57万円の助成金があったようだ。少なくても15名以上はそうしてきたように思う。当然調べなかったミスだが、あれだけハローワークに通っていたので、もう少しアプローチがもらえてもよかったのではないだろうか?やはり助成金を拡充しても、従業員が多く、情報量も多い大企業が一番活用するのかもしれない。
政治は計算ではないと思う。3割が働く大企業も7割が働く中小企業によって支えられている。3割の労働者の賃上げだけが国の景気を変えるわけではない。中小企業で働く7割の労働者とその家族のためにどう動くかが本質ではないかと思う。そして情報取集能力の弱い中小企業にもっと歩みより、改善していくことが、一番大事なポイントのような気がする。
ただ、現実は国内企業数1%の大企業とのきずなが深く、政治家として接触もしやすい。1%と話をして調整すれば、表面上は賃上げに努力している絵も描ける。こんな感じで解決していくのだろうが、社会格差はどんどん広がっていく。
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