セブンアイホールディングスの関連会社になり、ベインキャピタル傘下で完全子会社化されたヨークホールディングスの社長が9月3日戦略説明会を実施し、「GMS(イトーヨーカドー)をCSC(コミュニティショッピングセンター)に変革する」と発表した。

これは常々このブログで主張していたことで、崩壊状況にあるGMSを解体して、GMSの物件を「SM(食品)+必要とされるテナント」化していくことを意味している。この考えには、大きく賛同する。現状は狭商圏下でもRSC(大型モール)が出店を加速しており、40年~50年前のGMS(総合スーパー)の過密期とよく似ている。

すでにGMSは崩壊状態にある。現状でも、GMSでは食品以外の業種は生き残っていない。GMSの衣料品は「ユニクロ」に勝てない。住居品は「ニトリ」に勝てない。雑貨は「ダイソー」「3コインズ」で間に合う。食品以外トータルとしても「無印良品」には勝てない。GMSが優っているなら、なぜ、「ユニクロ」や「無印」に負けないMDや売場ができなかったのか?二番煎じの取り組みへのプライドの高さや、大きい組織でのジョブローテーションが弊害となった。

「GMSのCSCへの変革」でイトーヨーカドーはSM(食品スーパー)として再構築し、その他の業種はほぼなくし、立地に合わせたテナントミックスをしていく方針になる。GMSとしてエリア分析は細かくやってきたと思う。その分析を素直に使えばいい。おそらく、今までは少し目線を上げてチャレンジ要素のある顧客戦略を実施し、それに合わせての商品戦略や販売戦略をしてきたと思う。再度一番多いエリアや客層を分析し、素直にCSCとしての戦略を考えることが最も重要だ。つまり、過去の成功体験は捨て、GMSとしてのプライドも捨てる。もう収益率がトップだったイトーヨーカドーではない。そのプライドを捨てられるかも大きなポイントになる。

CSCに変革するうえで、個店に合わせたテナントリーシングをすることも重要だが、基幹事業のSMとしてどれだけ効率を上げていくかも大きな課題だ。CSCとしてテナント誘致しての賃料収入にはSMの賃料も当然入ってくる。CSCの収益の大部分を占めるSMの賃料次第では理想的なテナントリーシングもできない。SMの賃料の設定がテナントのレベルを変える。SMの賃料を上げれば、リーシングの幅が広がるが、SMの収益が下がる。逆だとリーシングの幅が狭まる。SMの賃料が商業施設を維持するための最低賃料の攻防になる。そのためにはSMの業績を上げることが大前提ではある。

テナント側はいろんな出店事例を持っている。その事例に沿っての条件を見極めることが必要だ。決してSMの賃料ありきで条件を決めない。譲歩できる最低のラインで必要なテナントを導入することを優先すべきだ。例えば「ユニクロ」や「無印良品」の出店条件が低くても、集客力はSMより大きいかもしれない。いろんな販促を実施するより、テナントとして出店するだけで大きな販促効果が出ると思う。さらに個店で販促もしてくれる。その経費を考えれば賃料に加えて大きなプラス効果がある。

今後は、デベロッパーとしての会社が鍵となる。テナント管理する会社は発表されているが、その会社が賃料の決定権を持つのか、食品SMとしての賃料をどう算定するのかなどクリアするべき事が多くある。SM中心のCSCを運営する会社になれば、おそらく社内要員を大幅に減らす必要もある。人事管理面でも大きな問題を抱える。つまり、今までのイトーヨーカドーとは完全に決別しなければならない。

この戦略については、ずっとこのブログでも言っていたことだし、100%賛同する。しかし本当に大きな覚悟が必要になってくる。いつまでも「RSC+GMS」を続けるイオンより早くCSCへの変革、開発を急ぎ、成功させてほしい。

■今日のBGM