「この店は、売れているし、これからも売れるよ。」1990年前後だと思うが、いつも鋭い指摘をしてくれた商品部の先輩が、マーケットリサーチをしている時に教えてくれた。そして「ちなみに店名はイタリア語で一方通行の意味だ」。そういうことがあり「センソユニコ」は非常に印象に残っている。当時は、レディスシニア層(ミセス)の専門店も仕事の範疇であったが、「センソユニコ」とは仕事では絡んだことはない。
「センソユニコ」を展開していたマツオインターナショナル㈱が会社更生法の適用の申請をし、㈱バルコスの支援を受けるべく基本合意書を締結している。
ミセス市場は大きく変化している。そのターゲットが大きい売上を占める企業の売上数値は大きくダウンしている。「ルイシャンタン」「コルディア」などを展開していた(株)ワールドは2012年3299億の売上が2025年には2257億と68.1%になり、「ルイジョネ」などを展開していたイトキン(株)は2015年952億の売上が2025年には318億になっている。さらに「ピノーレ」などを展開していた㈱キングも2012年137億の売上が2025年は82億まで減少している。専門店でも2009年伊藤忠の傘下に入った㈱レリアンも564億の売上が2025年には251億まで落ちてきている。一世代を築いたミセスマーケットは、この20年で半分くらいまで小さくなっている。
ミセスマーケットの落ち込みは、顧客管理手法の変化も大きな要因だと思っている。従来は、細かな固定客管理で安定した売上を確保していた。やり手の店長がいなくなると売上は大きく落ち込むと言われていた。それが2003年の個人情報保護法以来、顧客管理が厳しくなり、従来のミセスブランドやミセスショップのマネジメント手法が崩れていった。
高齢化が進んでいる中、その市場は過去と大きく変化している。いろんなファッションの流れを経験した世代がミセス層に突入し、多様化が顕著になっている。そして、その層はまだまだトレンドを意識したエイジレスなファッションへのニーズも強い。さらにカジュアル化の流れも大きい。百貨店のゾーニングも昔のようなミセスブランドのゾーニングはなくなってきている。「センソユニコ」が出店している日本橋三越別館4階の競合ブランドも「45RPM」「ワイズ」「シビラ」「プランテーション」「タオ(ギャルソン)「ケイハヤマ(ハッカデザイナー)」など昔のゾーニングの面影はない。つまり「ニーズの多様化」が進んでいる。そんな中、地方百貨店は消えていき、地方での従来のミセス層もどんどん減ってきている。
最近のデータで、60歳以上の女性の約38%、70歳以上は約20%が月1度はネットで衣料品を買っていると発表されている。今回の㈱バルコスのマツオインターナショナル㈱の支援もネット客へのアプローチを強化する狙いが大きい。さらに、変わったデータでは、2022年の日経クロストレンド調査で、可処分所得の高い「リッチシニア層」の好むブランドの1位はユニクロとなっている。つまり値頃感、カジュアル化がミセス市場に浸透し、ファッションのボーダーレス化も進んでいる。
「年金」と「金融資産」のみで生活するシニア層が増加し、人口比率も高まるが、そのファッションのマーケット規模は縮小し複雑になっていく。ただ、この層を拾わないと企業の存続もなくなる。
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