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売場環境の維持…売場開発

売場環境を整える第一の問題は、出店場所を間違わないことになる。どこに、いくらの賃料で、どういう売場にするかを適正にジャッジする必要がある。

まず、自店をよく知っていること。自店の成功例、失敗例を列挙していると自ずとどこに出店すればいいか、やめたほうがいい区画かが、わかってくる。さらにその店舗環境(近隣テナントとの相性、フロアやエリア、区画の形状、大きさなど)でおおよその売上は読めてくる。

以前の会社ではモールの3階はほぼ失敗したし、小型店での失敗例も多く、小型店で開発した新ショップの既存店はほぼすべて退店し、新ショップでの出店は取りやめた。

さらに自店を知る上では、現状の既存店毎の数値状況も当然理解していかねばならない。自店の売上、収益予測は状況を理解した上作成し、それは当然賃料交渉時に必要になる。つまり提示賃料が収益上どう影響するのか計算する必要がある。売上と利益は当然ながら人件費や家賃、その他経費を考えればどれくらいの営業利益が出るかを計算する。過去そのエリアの責任者には契約内容を加味した損益計算書を契約年数分時系列で作成させた。さらにそこに当然投資が入ってくる。簡易的に予測損益を計算していたが、投資に対しての経費率は10~20%で初年度経費計上し、資産計上分は概略で残投資額の35%を減価償却費として毎年の収益予測に計上した。その計算で契約期間の収益を計算していた。SCからの条件で当然収益基準に満たなければ条件交渉するし、合わなければいい物件でも出店はしない。おそらくこの数字が一番の出店根拠になる。

もう1点必要なことは、開発担当者はいろんなSCをどれくらい見ているか、そこに出店しているテナントのMDや状況をどれだけ知っているかは絶対必要だと思う。SCを多く見れば見るほどそのSCの状況がわかってくる。リーシングに対しての優位性はSCにあるかテナントにあるかもわかってくる。出店要請された場所の隣接するテナントやゾーニングされたエリアは、どういうメンバーなのかで当然売り上げは変わってくる。SCを多く見てくると相性のいいテナントや相性のいい場所がわかってくる。さらにはデベロッパーも知る必要がある。デベロッパーとの相性もある。以前書いたが、同じイオンのモールでもイオンモールとイオンリテールでは窓口の対応が全く違う。さらに近年多い証券化されたSCとの交渉は、商売の話ではなく完全に不動産契約の話になり、土俵が違うため会話が全くかみ合わないことが多い。私自身SC側にいてリーシングもした経験もあるので、SCとの相性の違いも理解できる。

出店はきちんとした数字を見たうえで検討すべきであり、独断的にやるものではない。当然結果的にそうなっても、反省としてきちんと履歴を残すべきだと思う。

・・・実家に寄ったついでに大阪と福岡に行った。非常に楽しかったが、結局飲みに行っただけだった。

■今日のBGM

本当に景気は上向くのだろうか?

GW期間中に近くのモールに買い物に行ったが、例年通りか、少し少ない集客だったように思う。行楽もあるし普通の土日よりも客数は少ない。

賃金を上げれば消費につながり、景況感は上がっていくと報じられている。経団連や同友会が給料を上げて引っ張っていくと言っているが、国民の労働者の大企業に占める割合は30%弱であり、大企業の下請的企業は中小企業の50%弱を占めるという。当然コストを下げると中小企業に跳ね返ってくる。円安の流れで輸出企業のメリットは大きいが国内向け企業は厳しくなる。「国外向きに会社の方向性を変えるとチャンスだ。」と経済評論家はいうが、そうするには相当の労力が必要になる。つまり労働者の70%の中小企業労働者の景気の恩恵にはしばらく時間はかかる。さらに年金受給者数は平成23年度で3600万人超となっており、総人口の約30%が賃金アップの対象ではない。

前向きな意見は多いが、後ろ向きに考えればいくらでも不安要素は出てくる。事実小売業の売上の上昇機運は低く、インバウンド需要や高所得者層以外に好調要素はなかなか見当たらない。特に中小企業はコロナのゼロゼロ融資の返済が始まり、友人の会社もM&Aをしたり、廃業したりしている。

4月の月次売上速報を確認すると、日祭日1日減でも前年越えの企業は多い。特にファッション系は気温が上がり初夏物の流れが良かったようだ。確認できた中では既存店売上で、ユニクロ前年比118.9%、ユナイテッドアローズ112.3%と2桁増の好調な数字となっている。ただユニクロは今期期首からの累計では99.3%とまだ前年未達となっている。ユナイテッドアローズも年度で見ると先月までの1年間で小売既存店は100.3%と大きくは伸長できてない。数字の流れが悪いジーニングカジュアルのマックハウスはレディス強化で95.5%と少し上向き、ライトオンは状況変わらず82.7%となっている。

大きなヒット商品もない現状、「総中流」の流れは完全に終わっている。大部分がユニクロで商品を納得して買っている現実の中、価格対応ができてない店はせめて付加価値のある環境(売場内装、演出など)を作って付加価値を感じさせる商品を売っていくしかないのではないだろうか?

また、当たり前のことを書いてしまった・・・ 毎日、新聞を読んでいるとずいぶん景気が良くなったように書いているけど、やはり読み物であって、暗い気持ちになる記事は避けているように感じる。新聞社も企業だし、悪いことはほとんど記事にしない。毎朝明るい気持ちになるほうがいい一日になるからかな?

■今日のBGM

従業員教育

以前立ち上げた会社での従業員教育のファイルがある。「仕事の基本とは」「販売について」、「基本的数値の教材」、「受講した社員からのフィードバック」の書類などが入っている。

「仕事の基本とは」は①仕事の姿勢、➁仕事の進め方、③前もって備える、④仕事の質を上げる、の4項目で仕事の基本的な心構えについて整理されている。

「販売について」は、①店に立つ前のちょっとしたアクション、➁お客様にアプローチするときのちょっとしたアクション、③ニーズをつかむには、④商品説明のコツ、⑤クロージングテクニック、⑥店内にお客様がいない時、⑦店のおすすめは何?⑧さらに生かすには?の項目で、販売に必要なことをまとめてある。

「基本的数値の教材」は、①売価・原価と値入率、②粗利益高と粗利益率、③値入額と粗利益高、④仕入・売価と在庫、⑤仕入、売上、在庫と値入、荒利、⑥仕入、売上、在庫と売価変更、ロス、⑦回転日数と回転率の7項目で基本的数字をわかりやすく説明している。尚、コメントとして「①~③までで1時間かかる。2.3回は必要。」と付箋が貼ってあった。

その他、受講者の事前アンケートや事後の感想などがファイルされていた。2日間の研修プログラムで、特に数値については、もう何度か研修の場が必要のようだった。

こういうことが必要だなとは改めて思う。賃金が上がり、従業員確保が大命題になっている小売業で、現状スタッフ教育には手が回ってない状況ではないだろうか?そんな中で、各店舗で差がつくのはちょっとした販売の仕方だったり、スタッフの力量に左右されていると思う。スタッフ教育は組織力のある大手企業が先んじているのかもしれないが、個店でもやるべきことは多い。店長がスタッフとのコミュニケーションをとって、売場の販売体制ができているだけで売上は大きく上がってくる。

「基本的数値」についての教材は、マイカル時代の教育教材だった。新入社員には少し難しく、売場に慣れてきた段階で随時行っていくほうがいいかもしれない。ただこれが商売の基本でもある。昔売場の部門責任者は、この数値は完全に頭に入っていたと思う。その上で、仕入れ活動もしてきた。今の小売業でどれくらいの店長が理解しているのだろうか?セントラルバイイングになったり、店長の職務ではなくなったりしているかもしれないが、この「基本的数値」を理解して商売をしているようには思えない企業は多い。これが理解できて、売上と結びついてくれば小売業が楽しくなってくる。

「仕入」「販売」「営業」「管理」と分業になっていても、販売現場からいろんなことは発信される。従業員全員が同じ方向を向いて、同じ言葉で話せなければ数値は上がってこない。

■今日のBGM

値段の影響

服を選ぶとき、「好きであこがれているブランド」「何とかこのラインまでは頑張って着たい」「普段着ならいい(このゾーンは年々広くなっている)」「買わない」のランクが個人的にはある。当然そこには価格の壁があり、価格のランクもある。

店を立ち上げた時、洋服屋ではなかったが「普段着ならいい」グループの商品をきちんと売れるように環境も考え、品揃えしたつもりだ。自分なりにビジネスモデルも検証してスタートさせた。

商売の理屈を単純に考えてみる。5000円で商品を販売する。利益は50%必要だとすれば仕入原価は2500円になる。取引先も50%の利益を得るには1250円で調達する必要がある。3年前の為替レートは1ドル105円だったのが155円近くまで円安になっている。企業努力を考えず単純に価格を置き換えると、取引先原価が1850円まで上がり、やはり取引先が50%乗せると仕入原価は3700円になる。単純に計算すれば7400円で販売しなければどこかにひずみが出る。為替の変動で当たり前だが、値段を据え置けば小売店か取引先にひずみが出てくることを再確認してほしい。例えば小売店が上場企業なら、無言の圧力はあり取引先の利益減になるし、取引先が強ければ必然的に小売店の利益減になる。

当然、商品はコストを考えて、素材を変化させたり、工場を変えたりするし、店も経費削減をやっていく。その前提で、商品がどの値段まで通用するか?例えばワイシャツで考える。ブランド品や10000円以上の商品ならその購買客層から大きな抵抗感はなさそうだが、5000円から10000円までの商品なら2000円上がると間違いなく売上は鈍る。一般的には値上げが大きく影響するのは30%アップくらいからだと言われている。個人的にも5000円で買っていた商品が7000円になれば買わない。5000円以下の購買層になると完全に値段志向になる。つまりモデレート層が価格志向層に引っ張られる。

先日ネットで年収2000万以上のラグジュアリーカード会員の調査が掲載されており、よく身に着ける「ハイ」ブランドはヴィトン24%、エルメス18.1%に対して、よく身に着けるブランドはユニクロが42.1%となっていたそうだ。普段着やインナーはユニクロという流れかもしれない。ファッションにおいては、高所得層はモデレート層ターゲットにはあまり流れてなさそうだ。

モデレート層が減ってきて、さらにその層が両極に引っ張られている。モデレート層を取り組むべき専門店が厳しくなってきている。

常々、「感性」「値段」「環境」を念頭に店づくりをしていくべきだと思っている。「値段」が厳しい状況下で、ちょっとしたこだわりを見せる商品の開発力が必要になってくる。さらに商品以外の売場内装や販売環境を再度見直し、強化する必要性も高まってきていると思う。

言うのは簡単だけれど・・・

■今日のBGM

ファウンドグッド

“「場所によって客層が違う。」とアダストリア関係者は語った。”と新聞にあった。「ファウンドグッド」をイトーヨーカドーに展開しているアダストリアの感想のようだ。

まず店を始めるには、ビジネスモデルを作る必要がある。誰に売るのか?そのターゲットは商売をするには潤沢か?何を売るのか?など・・・

誰に売るのか?で悩んでしまった。というのが冒頭の言葉のように思う。

「ファウンドグッド」の立ち上げの状況を見てこようと思って近隣のイトーヨーカドー浦和店に行った。昔はドル箱店舗と言われていた浦和店もオープンから50年以上も経過し、完全に古い足元客のための店になっている。天井も低く1フロア400坪くらいの昔の駅前型GMSになる。1階の共用部以外をほぼすべてをつかって「ファウンドグッド」はある。浦和駅徒歩4分という立地で、伊勢丹No2の売上の浦和伊勢丹の北側にある。浦和駅にはアトレ浦和があり、開発された東口にはパルコ(食品はヤオコー)がある。イトーヨーカドー浦和店のメイン客層は昔からの顧客の足元の中高年になる。言い換えるとシニア層が多い。ここだけ見ていたら偏った見解になると思って、アリオ川口のイトーヨーカドーに向かった。アリオ川口のイトーヨーカドーはモールに来るお客様になっている。

冒頭のコメントと同じ感想になる。GMSがダメになった理由でもある。イオンやイズミの衣料品平場が悪いながら持ちこたえているのは、モール戦略で客層を若返らせ標準化させているからだ。アダストリアの社員はおそらくGMS、特にモールにあるキーテナントとしてではないGMSを見たことがなかったのではないかと思う。裏を読めば、アダストリア側には大きなリスクがない契約になっているのだろう。

感想は、まだ真剣に取り組めていないに尽きる。「とりあえず、商品を埋めた」感が強い。単品量販ではあるが、あくまでもグローバルワークやローリーズファームのベーシック商品を値頃にした感が強い。内装や演出もお互いどこまでやっていくのかが見えてない。

やはり、お互いの方向性が固まっていないように思う。特に本部での意思は現場まで届くのには時間がかかる。以前、お互いが資本を出し合って「別会社を立ち上げるべき」と指摘したが、その必要がありそうだ。ちなみに広い売場に浦和店にはスタッフは見えず、川口店には1名しかいなかった。

思いつくまま書く。商品では衣料品以外でお客様を呼び込む必要を感じる。なぜ、インナー商品をやってないのだろうか?必需品で回転率が高い商品を取り組むことによって、来店頻度が増す。ユニクロも素材感を打ち出した「ヒートテック」で完全にフルライン客層になったように思う。無印のように生活雑貨を増やしてもいいようにも感じる。さらに店のカテゴリーが浦和店と川口店のように違っているので、店を分類して基本品揃え以外での対策が必要になる。例えばプライス志向の強い店に不稼働商材の処分コーナーを常時設けるとか、イトーヨーカドー得意のデータ分析で店の特性を活かしたレイアウトを作ったりするべきだ。

アダストリアは、こちらが指摘するまでもなく、感性だけで生き残らず、優秀な企業体質なので、今後はどんどん変革していくだろう。ただ、大多数が大型モールや駅ビル、ファッションビル育ちでもあるので、「しまむら」や「西松屋」の商売をどうとらえるかが成功の鍵のような気がする。「ファウンドグッド」の取り組みによってこのゾーンを開拓することが、企業として大きな成長につながると思う。

定期的に見てみたい。

■今日のBGM

3月の数字から

経験上3月の売上はセール期の7月、1月を除いては、12月と並んで売り上げが高かった月だと思う。季節の変わり目でもあり、さらにフレッシャーもあり、モチベーション需要も高い月でもある。今年の各社の数字を速報値で確認したが、土日各1日増の中でも厳しい数字になっている。気温が低かったこともありファッション系が厳しいようだ。

無印が既存前年比116.1%、ニトリ114.6%と生活雑貨系は好調、さらにABCマート110.7%、チヨダ107.2%とシューズ関連も順調だったようだ。逆にユニクロ98.5%、アダストリア99.2%、ユナイテッドアローズ105.8%とファッションは前年の攻防で土日プラスの要因を考えると厳しい月だったようだ。堅調だったしまむらも101,1%、西松屋100.7%と少し流れが悪い。好調な流れだったハニーズも89.0%と大きく落ち込み、マックハウス81.3%、ライトオン78.9%と引き続き厳しい流れは続いている。

特に気になるのはやはりライトオン。今期決算(2024年8月期)の下方修正が出ていたが、今期予測が売上前年比87.4%、経常利益は赤字24億で25.5億のマイナス修正となっている。第一四半期決算の数字も公表されているが売上前年比85.7%、売上総利益率前年差-3.5%、営業利益は-517(百万)(前年差-548百万)、在庫回転率(月度)0.16回転(前年差-0.03)とすべて悪化している。さらに前期に複数の金融機関と規定している財務制限条項の「前期決算期の末日または2019年8月決算期の末日の純資産のうちの大きいほうの60%以上の純資産を維持する。」と「2半期連続して経常損失をしないこと。」に抵触することになった。この条項は金融機関と話し合いシンジケートローンの契約は継続される旨記載されているが、今後対金融機関との障害になる事は間違いない。

営業面で見るとやはり「在庫適正化への取り組みとして大幅な在庫圧縮を実施」とあるが、回転率は悪化しており在庫圧縮はできていない。気候のせいもあり売れ筋商品が見えなかったようだ。マイナストレンドの中、利益率を維持しながら在庫を減らしていくのは非常に難しいと思う。特に年間2回転しない状況ならば在庫は減らせない。在庫を減らすと利益率は大きく落ち込むし、利益率を意識すると在庫は減らない。在庫を減らして売れ筋をわかりやすくするには、売場を思い切って小さくしていくことしかないと思う。

ワールドと協業を発表したマックハウスも含めてジーンズカジュアル専門店の流れは浮上してこない。

4月にこの反動があればいいのだが。

■今日のBGM

2件の取引先との協業について

前回のブログを書いているときに思うことがあった。イトーヨーカドーとマックハウスは売場の改善を目的にしているのに対して、アダストリアとワールドは新客層への取り組みを大きな狙いにしているのではないかということだ。

現状のアダストリアの主戦場はRSC(大型モール)であり、ワールドは百貨店、ターミナルビルのように見える。所謂、モデレート層をうまく取り組んでいる。特にアダストリアはそのターゲットでは一番のシェアを取っていると思う。

このブログでも再三書いているが、現状の客層はインバウンドを含む高級ブランド、百貨店志向と、ボリュームプライスを打ち出している専門店の客層に2極化されているように見える。中間層ターゲットの専門店の流れは悪い。ボリュームプライスの専門店はユニクロ、しまむら、ニトリ、西松屋などがあげられ、好調な数字が続いている。

アダストリア、ワールドは2極化されたボリュームプライスニーズには、現状取り組めていない。今後の戦略としてどうしてもそのゾーンにも参入が必要になってくる。つまりボリュームプライスの商売を模索しようとしているのではないか?主戦場のRSCや駅ビルでは確実につかめない客層を把握していきたいのではないだろうか?

そういう意味では100店舗以上あるイトーヨーカドーの衣料服飾売場はチャレンジするのにベストの状況になる。ワールドは少し読みにくいが、マックハウスも、従来ダイエー中心に出店していてイオンモールなどRSCに乗り遅れた経緯がある売場が多い。

さらには今回の取り組みは、いずれも厳しくなった売場を開発する目的でスタートさせるので、どちらかというとイニシアチブをとれる。優位性を持てれば商品MDだけでなく売場の内装、レイアウト、演出までリーダーシップをとれる。

アダストリアにとってイトーヨーカドーは非常にいい相手だと思う。大型の売場をコントロールできるし、安定したSMを持っているSCで取り組める。さらに、おそらくシステムやデータ分析はイトーヨーカドーに1日の長がある。その部分も取り込める。いろいろ試行錯誤ができそうだ。阿倍野キューズモールのイトーヨーカドーで商品を少し見たが、「袋入りの商品はどういう目的があるのか」など気になる事はあるが、修正を重ねていくと思われる。フルラインの衣料と雑貨までの展開で、優等生企業同士の取り組みには期待できる。唯一問題があるとすれば、元気がなくなったように見えたイトーヨーカドー側のスタッフのモチベーションが上がるかだと思う。

ワールドの取り組みは、前回のブログで書いた通りで、ワールド側が「うまくいったら儲けもの」くらいの取り組みのような気がする。思い切って両社で金をかけてどこかで成功事例を作る必要がある。お互いの出方を見ながらのスタートなら、うまくいかないし、マックハウス側に傷が残るだけになる。

専門店各社のボリュームプライスへの取り組みが、過熱しそうな気がする。

■今日のBGM

マックハウスとワールド

前回、南浦和の丸広百貨店について書いたのだが、どう見てもやる気のない売場がマックハウスだった。200坪近くある売場に商品は埋まっているだけの感じで、定番のデニムと持ち越しのキャリー品のみで退店するのかなと思っていた。あまりにもひどいのでマックハウスを検索していたらワールドの「ハッシュアッシュ」とのコラボの件が出ていて、商品投入する店の1つが南浦和丸広店になっていた。

イトーヨカドーとアダストリアのコラボについては以前書いたが、今回の協業は非常に厳しいと言わざるを得ない。

まず店のイメージをどうするのか?どういう店にしていくのか?MDをどうしていくのか?今までの「ハッシュアッシュ」ならファミリーニーズの商品だし(もしイメージが変わるならブランド名も変える)、ジーニングカジュアルの店と整合できるのか?売り場を見るまで分からないが全く想像できない。今のMDの中にコーナー化していくのか?テーマ、イメージを整合するにはそのテイストにすべき売場に改装が必要になる。大きな内装変更が必要になるが、そこまで投資していくのだろうか。

取引先と小売業にはいろんな力関係があり、ベストな関係は対等な関係だが、今回はどういう力関係なのだろうか。2社の規模やマックハウスの経営状況を考えると、ワールド主導になっていきそうに感じる。従来のワールドの取引先は、専門店販路と百貨店販路が多く、どちらかというとメンズイメージが強い小売店主導のマックハウスとの対応は難しくなると予想する。さらにメンズのイメージが小さいワールドと、レディスのMDがうまくなさそうなジーニングカジュアル店(ライトオンも同様に感じる)とのハレーションは大きいのではないか。どちらが持ち掛けたか知らないが「ハッシュアッシュ」も失敗したブランドとも思えるので、この力関係は大きなポイントとなる。以前「イトーヨカドーとアダストリア」で記したが、経験上、協業するには別会社をたちあげてまでやる覚悟が必要だ。

さらに気になるのが、既存のマックハウスの経営状況、特に商品在庫をどうしていくのかということだ。去年9月のブログで触れたが、前期のマックハウスの回転率は年間2.2回転、月度回転率0.18回転で、決算数字を店舗数で割ると1店舗平均で月度売上4800千、在庫26100千となっている。今期どれだけ改善されているかだが、今期も売上は既存前年比92.3%、今期純利益予測も赤字1145(百万)に悪化修正されている。2018年2月期から6年連続赤字という状況になっている。利益を確保するために在庫を減らせないでいる状況になっているので、今のデッドストックの改善が進んでいないような気がする。その状況下に新ブランドの世界観が表現されるだけのフェイスの商品を入れていけるのだろうか?(消化仕入かもしれないがまず考えられない。)

マックハウスの赤字決算が続いている中で、売場への大きな投資も想定できない。現状の在庫の課題も解決できていない。この協業が成功するとしたら現場を離れたトップ同士の話し合いでなく、現場同士の話し合いをどれだけ重視できるかにかかっている。そういう意味では、なんだか現場感がない協業のような気がする。

近年いろんな会社を傘下に収めているワールドがその目的をもって協業していこうとも考えられる。今回の協業はワールド側のメリットのほうが大きいと予測されるし、ワールド主導で進むと思う。

■今日のBGM

トップバリュコレクション(TVC)

「イオンは衣料品ブランドを刷新した。」というニュースが流れた。記事を読んでみるとイオンのカジュアル衣料を子会社の「トップバリューコレクション」に移管し、PB名を変え、新商品を開発していくということのようだ。

イオンはGMSをあきらめないそうだが、すでに結果が出ている。商品やシステムでは完全にイトーヨーカドーには勝てなかったと思う。何とか、イオンモールの成功で、2核1モールの1核として比較的恵まれた場所と賃料でイオンのGMSは成り立ってきたと思う。イオンを利用する者として見ても、衣料品で購入するのは下着ぐらいで、フロアにいる客層もシニア層が多いと感じる。

昨年、衣料品売場を「トップバリューコレクション」と題して改装し、「これがイオンの衣料品の売場」と方向を示したという記事があったと記憶する。その売り場を浦和美園イオンで見たことがあるが、企業人が机上で計画して、やって見せた売場に過ぎず、今までとやっていることは何も変わってない。販売区分ごとにきれいに見せただけにしか見えない。見せ方を変えた分わずかに効率は上がったかもしれないが、損益を大きく改善できるものではないと感じた。岡田会長が「GMSはやめない」と言っているためにやっている感しかない。誰も言えないのだろうな。

衣料品で戦うなら、ユニクロのように1つの大型ショップとして戦っていく気概が絶対に必要だと思う。イオンの友人と話しをすると「その計画は何度も出ては消えている。」らしい。守られ、恵まれた環境で、商売をしていても成長はしていけない。イオン直営ゾーンの外に出てアウェイでどれだけ戦っていけるかを知ったほうがいい。西友から無印良品ができ、西武からロフト、東急からハンズができたように1人歩きできる大型店をイオンも作るべきだと思う。住居関連の直営売り場もニトリのような専門店を開発したらいい。比較的恵まれた環境で仕事を続けているから、中途半端なことしかできないのではないだろうか。私自身も、GMS出身で、会社を立ち上げ大きなSCに店舗を持って、商売環境について感じることはたくさんあった。何度も書いているが、イオンのGMSは、成功したイオンモールの中にいるから何とか成り立っている。今後郊外モール(RSC)が厳しくなれば、当然もっと厳しい数字になるのは目に見えている。

近年イオンモールからユニクロなどの大型店が、別のSC、路面店に移設するケースもみられる。売場の大型化や賃料の問題などが要因だとは思うが、その対策としても大型ショップの開発は重要な要素だと思う。さらに家電など大型カテゴリーの欠落しているRSCもあり、その対策としてもGMSの売場の整理は大きなプラスになるのではないだろうか。

「井の中の蛙」でずっといると、間違いなく取り残される。イオングループから大型専門店が開発されて、「ユニクロ」や「ニトリ」「無印良品」と戦える業態が出てくることが、小手先の改装や社内の組織変更より大きな意義を持つと思う。

■今日のBGM ・・・映画「パーフェクトデイズ」は良かった。ルーリードは持ってないので。

イトーヨーカドーのエンディング

イトーヨーカドー(以下IYと記述)の退店ラッシュとの記事がTV、新聞やネット上に多く出てきている。セブンアイの政策通りの動きではあるが、少し寂しい。数字を見てもGMSとしてのIYがどうだったのかが比較するものがなくできないので、今までの私自身の経験や感想のみで書かせてもらう。あくまでも感想ということを前もって書いておく。

IYのGMS事業の収益は低くなっているが、イオンのGMSと比較すると間違いなく利益率は高いと思う。少し数字を調べたがイオンは㈱イオンリテールの総利益率は発表していない。IYは2021年25.1%で、イオンリテールとして2018年は26.4%と公表はしている。ただしイオンはモール事業を㈱イオンモール以外でもやっており、SC名はイオンモールではあるが運営母体が㈱イオンリテールという物件も多い。越谷レイクタウンのmoriはイオンリテール物件だし、もともとイオン物件をモール化した物件はイオンリテール物件が多い。そういう意味でモールとしての賃借料収入で利益率は変化するので、IYとは比較できない。ただ間違いなく過去の経験上IYの利益率が高いと思う。食品の利益率は2%以上の差があるのではないかと思う。

IYは関東の企業で、小売業というより「企業」「組織」というイメージが強い。従業員も関西系GMSの社員とは違う「きちんとした」イメージがある。アリオのコンサルで四谷の本社を何度も訪れたが、スタッフの机は全員入口に向いており、企業体質も「ちゃんとした企業」というイメージを受けた。「やったらええがな!」的なマイカルにいたので余計に痛感した

ただ、きちんとした企業だから数字で理論づけされて思い切ったことができなかったのではないかと思う。陳台を決めて効率を追求するコンビニ「セブンイレブン」はIYの風土から育っていった。余談だがイオンの「ミニストップ」はもっと個性を出せばいいのにと思う。さらにIYの効率経営を考えれば、イオンのように「たぬきの出る」場所に出店はしない。エリアマーケティングを徹底し、数字上効率が合わない郊外の大きな面積でのSCは開発しない。郊外RSC事業では開発型の思い切った戦略のイオンに完敗だった。イズミとの紳士協定(商社がらみ)で西日本への出店ができず、関西系GMSのお膝元には出店ができなかったことでナショナルチェーンになれなかったことも大きい。

GMSの精度ははるかにイオンより上だと思う。ただRSC主流の現在、買い物以外のエニシングエルスがない。従来通り効率追求のGMSに見える。さらにそもそもGMS自体がもうオワコンのような気がする。イオンも当然わかっている。IYの売り上げ構成比で衣料雑貨、住関連の商材は20%程度まで落ち込んでいる。イオンも食品以外は完全に縮小傾向だ。

IYも「食品+テナント」の構造へ変化していくと発表しているが、テナントリーシングに苦しむと思う。どこまでテナントに賃料を譲歩できるかが課題にはなる。企業体質として赤字になる事は、許されないので固定賃料か「固定+歩合」でのリーシングになる。出店する人気大型カテゴリーの賃料にはなかなか譲歩できないのではないか。

SM事業も今後は利益を出しにくくなっていくのではないだろうか?「ロピア」や「OK」など価格戦略に対抗するのは、企業風土、戦略を大幅に変更するしかない。

大学時代、有名なマーケティングの先生が流通業ではIYを一押しだった。まさかこんな時代が来るとは思わなかった。理詰めでの経営だったはずだが世の中の流れに乗れなかった。IYの歴史が「セブンイレブン」を作り上げたことは事実だ。小売業の流れも大幅に変わった。百貨店もほぼなくなっていくだろうし、今後RSCも淘汰が始まる。客層の2極化が進んでいく中、中流のGMSはいらなくなった。

IYの解体でGMSの歴史は終わる。つくづく実感する。

■今日のBGM

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