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マルイとパルコ

実家に用事があって、そのまま大阪で少しぶらぶらした。(今回も飲んだだけのような気がする・・・)

旧正月も終わったのだが、インバウンド景気はすさまじい。特にミナミには人があふれていて、観光客が全体の7割くらいいそうな気がした。

そんな中で印象に残ったのが、マルイとパルコの存在感の違いだ。マルイもパルコも俗にいうファッションビルを代表する企業だった。私自身もビブレに在籍していたのでよく見させてもらった。DCブランドブームはマルイが引っ張ったし、もともと文化的要素が強くセレクトショップや専門店をうまく育てたのはパルコだった。

難波マルイは高島屋前が整備されて一等地になっている。ただ売場は雑居ビル化していて、空床も目立つ。フロアコンセプトもなく、催事出店が目立つ。立地や客数を考えればもっと成功すると思うし、何よりも昔の得意ゾーンで戦えば収益店舗になりうる可能性は大きい。「もうちょっと頑張れよ!」と思ってしまった。

マルイはもう小売業を完全に捨てている。収益基盤はカード事業が築いた金融業や、物流などその他の事業で賄っているのではないか?従来のファッションビルのマルイも不動産賃貸業としてのビルで、もうすでに小売業ではなくなっている。商業施設としてのコンセプトはどんどん薄れていて、場所貸しに徹している。以前グループのビルに出店していたことがあるが、店のショップMDという概念がどんどんなくなってきて、退店した経緯がある。

パルコは成功しているのではないか。オープン時はこのMDがいつまでもつかと思ったが、インバウンドもあり、さらに大丸との相乗効果がうまく作用している。「sacai」や「マルジェラ」「kolor」など難しそうなブランドも商売できてそうだし、入口の「ヒューマンメイド」は入場待ちの列もあった。飲食ゾーンや高層階の無印やハンズもうまく回っていそうだ。

都心百貨店は2館連動でうまく分けられているところが成功している。伊勢丹や梅田阪急のメンズ館。心斎橋パルコも大丸とうまくすみわけができている。でもやはり都心のみしか成功しそうにない。都心の一等地でも2館連動しないと厳しいのではないか?「ギンザシックス」も空床が多いし三越から少し離れるだけで厳しそうに見える。そういう意味では難波駅前で高島屋に近いマルイは戦えると思うのだが・・・

もうすでにファッションビルは都心でも成り立ちにくいようになっている。乗降客が多いターミナル型しか成功していない。やはり隣接して百貨店やデイリーニーズの店が必要になってくる。

ファッションビルと言われていた業態はもうなくなっているのかもしれない。

※友人の店が阿倍野キューズモールでリニュアルしたので行って来た。中に入っているイトーヨーカドーは全く元気がなかった。火曜の午前中という時間帯のせいかもしれないが食品に欠品が目立った。衣料品は売り尽くし中で売る気は見えない。アダストリアとの「ファウンドグッド」も入荷していて、売場に出てはいたが、什器や内装や人が変わらなければやはり魅力は感じない。雑貨系は売れそうだった。とりあえず売場に元気が出ないと厳しい。

■今日の逸品(アレンパの芋焼酎)

イトーヨーカドーとアダストリア

イトーヨーカドー(以下IY)の撤退についての感想を書いたばかりでいたら、「IYが撤退した衣料品平場をアダストリアが改革。6月までに64店舗に導入。」との記事が報道された。

IY専用のアパレルブランド「ファウンドグッド」(100坪~300坪)をアダストリアが商品提供し売場演出、販促、販売員教育もサポートするという。イズミとは「シュカ」というブランドをプロデュースしているが規模は今回のほうがかなり大きい。

こうなったいきさつを想定してみる。(あくまでも想定。)IYが衣料からの撤退を決め、テナント導入を進めるという政策は去年の春くらいからは動いていたと思う。そして、おそらくテナント導入はうまくいかなかったのではないか。ここでも何度か書いたが今のGMSのIYにRSCモールになれたテナントは興味を示さないし、デベロッパーが収益を優先する条件ではなかなかリーシングできない。そんな中で友好関係にあるイズミと協業を始めたアダストリアとの話し合いでのスタートの気がする。「スタディオクリップ」のFCもスタートさせ、話し合いを続けた結果、今回の協業に至ったのではないか。

果たしてうまくいくか?

マイカル在籍時、同じようなことをした記憶がある。取引先とブランドを立ち上げビブレ(ファッションビル)だけでなくサティ(GMS)までの導入を図り、GMSの売場の活性化を図ろうとした。取引先は「サンエーインターナショナル(現TSI)」、「ピンクハウス」「ワールド」「イトキン」だったと思う。「ZARA」とも取り組んだと記憶する。結果は失敗だった。お互いの会社の取り組み方にずれが出てきて整合が難しかったと思う。お互いの社風も違う。育ってきた風土も違う。組織体系をきちんとしなければうまくできない。さらにお互いのリスクの大きさも違ってくる。

今回の詳しい取り組み内容はわからないが、内装などハード投資や商品リスク、運営問題などの整理がきちんとできるかがポイントになる。成功させるには別会社を作るくらいの労力はいる。今回はファッション小売業で最も優れている「アダストリア」と流通業での優等生のIYとの協業なので、昔私たちが経験した失敗は少ないとは思う。IYで「スタディオクリップ」のFCが成功したことも要因の一つとあるが、そのブランドは認知度が高く、関係は「取引先対小売業」で一般的なものだ。今回の取り組みはIYの活性化がメインなのだろうが、事業としては西友がスタートさせた「無印良品」のようにIYだけでなく、どこにでも出店するブランドを作る意気込みでないと失敗する気がする。当然アダストリアとしても現状の低価格帯の専門店の好調さは織り込み済みで、販路拡大を探っていたはずだ。

将来的にはチェーン展開できるショップを目指すべく、資本を持ち合い、人の交流もし、同じ目標に向かっていくことが成功のポイントになると思う。いち早く運営会社を立ち上げるべきだと思う。

今後の動向に注目したい。

■今日のBGM

上場小売業の年末年始の数字

12月の数字については先月書いたので、1月の数字とあわせて最大量販期である年末年始の数字を見てみる。

1月の売上状況は、アダストリアが前年比114.7%、ABCマートが110.3%、ニトリ110%と2桁伸長しており、さらに主だった企業はほぼ前年はクリアしており堅調な流れだったようだ。12月84.6%と落としたユニクロも100.4%まで戻してきた。少し気になるのは12月91.0%、1月92.7%と2カ月大きく落とした無印良品。要因は冬物在庫の在庫不足とのコメントだった。

1月もコロナ前の数字と比較するために、2019年1月から既存店前年比を毎年掛け合わせてみた。(これが正しい数字ではないが、流れはつかめる。)その数字(コロナ前比)での伸長はABCマート113.7%、西松屋112.2%、ハニーズ111.2%が2桁増。しまむら109.6%、ニトリ108.2%アダストリア101.3%と続く。他はおおよそ90%台。まだまだコロナ前までの数字に戻っていない。ユニクロで97.2%。12月の動向とほぼ変わらないラインナップとなっている。

ABCマート、西松屋、ハニーズ、しまむら、ニトリと価格志向の強い会社が好調に推移しており、2極化を物語っているように感じる。まだまだ物価の上昇に所得が追い付いていないように感じる。

ちなみに価格志向と対極にいるだろうユナイテッドアローズは既存前年比が12月97.8%、1月102.8%と変化なく、コロナ前2019年比はそれぞれ86.9%、85.1%と全くコロナ前に追い付いていない。余談だがユナイテッドアローズのコメントに「マザーニーズが活性化した」というコメントがあり、時代の流れを感じた。

また別途取り上げたいが、厳しい企業の数字は改善していない。ライトオンはコロナ前比では69.0%、イオングループでなくなったタカキューは73.2%と大きく落ち込んでいる。

最後に出退店情報を見ていて、季節的に入れ替わりの時期ではあるが、退店の多さに驚いた。退店数はアダストリア14店、ユニクロ8店、ライトオン、チヨダ9店など。その分2.3月の出店は多いのだろうが少し気になった。

■今日のBGM

厳しい会社ほど在庫回転率は低い

タカキューが債務超過に陥り、イオングループが手を引きファンドの下で再建することになったことで少し思うことがある。債務超過とは会社の負債が資産総額を上回っている状態のことをいう。そうすると商品は資産になるので減らすことはできにくくなる。

タカキューの2023年決算の売上総利益率は59.9%であり、2024年度第3四半期まで売上総利益率は62.0%となっている。商品内容によって利益率は変わってくるが、ファッション事業として比べてみると、2023年度でアダストリア54.7%、ユニクロ51.9%であり、高い水準のように見える。

値段を下げて売上を上げたいが、値段を下げると利益も下がる。利益率も落としたくない。

さらに値段を下げて売ると当然のように在庫も減る。流動資産が減少する。その流れで回転率が下がっていくのではないか?タカキューの2023年の在庫回転率は年間2.46回転(月度0.21回転)となる。ちなみにアダストリアは年間5.00回転(月度0.42回転)となる。

(※棚卸資産の年度期首と年度期末を2で割って在庫を算出した。)

債務超過になっている上場アパレルにアナップがある。アナップの売上総利益率は53.2%で在庫回転率は3.39回転となる。トレンド性の強いヤングレディスターゲットしては低い。

厳しい流れが続く、共にジーンズ系上場企業のライトオンは利益率48.1%、回転率年間2.22回転(月度0.18回転)、マックハウスは利益率48.0%、回転率年間2.34回転(月度0.20回転)となっている。

商品の値段を下げると貸借対照表での資産が減少し、損益計算書上では利益が減少する。利益の減少が表面上は一番チェックされうる項目にはなる。タカキューもライトオンもマックハウスも月度回転率は0.2回転前後となっている。つまり約半年後に現金化できるということになる。商品支払いが手形ならいいが、現金支払いが主流になりつつある中で考えるとキャッシュインより支払いのほうが先になってしまう。つまりキャッシュがうまく回らない状況になる。

売れる商品は回転率も高いので、原価率の低い商品であれば利益率を上げることにつながる。逆に動きの悪い商品は値段を据え置けば利益率は変わらないがその分在庫負担になる。値段を下げれば当然利益率は下がる。

タカキューの60%近い利益は、原価率の低いスーツ業界にしても、売上げ低下を考えると高すぎる。さらに回転率も悪い。ジーンズ系2社も原価率は高い業種だが、あまりにも回転率が悪すぎる。

適正な在庫評価がどういう基準なのかそれぞれの会社が決めることなのだが、回転率を見れば市場評価との間に乖離があると思われる。市場評価での在庫額にすれば、大きな利益のマイナスが出てくるのではないかと疑ってしまうのだが・・・

■今日のBGM

もうナショナルチェーンはできないのではないか?

小売業界、ファッション業界に新しい風は今後吹くのだろうか?ローカルチェーンはナショナルチェーンになれるのだろうか。ユニクロは山口県宇部市、アダストリアは茨城県水戸市、ハニーズは福島県いわき市からスタートしている。

地方で成功している店はある。その店が全国にはなかなか波及できない。ブランドを販売してそれを軸にMDを組んでいる店が多く、エリア間のバッティングがあり、エリアを超えると思ったようなMDができないことが要因になる。ジーンズ老舗専門店発祥のセレクト店にこの傾向は強い。DCブランドブームの時も、大都市以外はFC店が主流でエリアごとにFCのオーナーがいた。アダストリアはジーンズ専門店がスタートだったし、ユニクロはVANショップをやっていたと聞く。

ナショナルチェーンへの転換の最大の要因はブランドMDから自主MDに方向転換することだと言える。

次のステップはナショナルチェーンとしてのビジネスモデルを確立できるかだと思う。ローカルチェーンはブランドMDが多いため接客重視で、プロパー販売をすることが基本になる。必然的に顧客管理をして、顧客の顔を見据えた仕入れが必要になる。ナショナルチェーンは当然客層の幅を広げ、組織を作り、管理面、商品面とも本部機能を充実する必要がある。商品は当然自主MDでセントラルバイングのウエイトが上がるし、それに伴い管理機能も万全を期す必要が出てくる。そして何よりもそれを推進する資金調達が必要になってくる。

商品原価を下げるためには、商品を作りこむ必要があり、利益率を上げるにはそのMD商品を売り込むことが必須になってくる。原価を下げるためには取引先との別注が必要で、その最低ロットは最低1型200~300は必要になってくる。さらに自社で作りこむにはそれ以上の数量で作りこまねばならない。ということはそれを売るべき場所、さらにはきちんと消化できる店が最低30店ちかくは必要になる。円安の影響で海外生産でも商品原価を下げにくい状況にもある。

さらに、SCも成熟期から衰退期の過渡期で、コロナ以降は特に賃料収入は維持していきたい方向にあり、将来を見越しての賃料優遇も考えにくい。スタッフの人件費も高騰が続いている。

株式上場を目指した岡山から出たストライプインターナショナルも赤字決算が続いているし、タカキューやライトオンなど上場企業でさえ厳しい数字になっている。ナショナルチェーンを目指すより、安定したローカルチェーンのほうが居心地いいかもしれない。

■今日のBGM

ティーンズの市場は難しいが・・・

ハニーズが最高益と日経記事にあった。ハニーズの売場にはあまり興味がなかったが、2~3年前、店を巡回しているとき、少し驚いたことがある。季節の変わり目(2/末か8/末?)だったと思うが、各ショップが商品残の処理に苦しんで売り場が乱れていたのだが、ハニーズだけがきちんと商品が入れ替わっていて新しい季節の売場になっていた。ティーンズのボリュームゾーンの店は売場内通路が明確でなく、売場に手が入りにくいのだが整然としていたので印象に残った。社内会議でも言った記憶がある。

ティーンズヤングのボリュームゾーンの品揃えは大変難しい。そのターゲットの専門店は、鈴屋、三愛、鈴丹(現パレモ)、リオチェーンなどが大手でティーンズ系は名古屋の鈴丹、リオチェーンが引っ張っていたと思う。ナショナルチェーンティーンズ系大手は、その他にハニーズやエルメなどがあった。一時は一番元気な市場だったと思う。鈴丹は一時年商1000億を超えたこともあった。

店で婦人衣料を管轄していた時、ティーンズ平場は非常に難しかった。流れがすぐ変化し、売れ筋の見極めと確保が難しい。なお、ブランド志向やテイスト志向、値段志向と求めるターゲットもばらばらで、当たれば大きいが、切り上げるタイミングが難しかった。

ハニーズの記事によるとミャンマーの自社工場がうまく稼働して、オリジナル商品がうまく回っているようだ。利益率も61,4%と非常に高い。在庫回転率も第2四半期末で計算すると月度0.47回転とまずまずの数字だ。(ただし前年より-0.06回転)

市場環境も後押ししているように感じる。一時のティーンズ専門店は規模を縮小してきており競合が減ってきている。新しい競合になりうるのはユニクロやGUだが、両ブランドともノンエイジでベーシックの流れで個性は強くない。

ただ一番感じるのは価格戦略だと思う。好調な流れの「しまむら」や「西松屋」の好調さと同様の動きとも感じる。「しまむら」や「西松屋」とも客層はかぶるところもあり、お客様の買い分けもあるのではないか。値段志向のお客様をつかんでいるように感じる。出店しているのはフル感性のお客様が多いSCだと思うし、必ずしもティーンズヤングだけの買い上げ客ではないと思う。

高い利益率を続けるか、客層の幅を広げてフル感性ターゲットの店に変えるかが今後の企業戦略になっていく。現状の売場ではイオンモールやららぽーとではいい場所での出店の機会は厳しいと思う。新業態を考えて大型化していくか、RSCよりNSCへの出店を加速させるかが出店戦略の課題にもなる。さらに商品量と価格戦略も大きな成功のポイントだと思うが、今後この利益率が継続できるかどうか、MDのかじ取り(価格と利益のバランス)も非常に重要になってくる。

今後の動き方に注目したい。

■今日のBGM

アウトレットは完全に飽和状態

千歳アウトレットモール「レラ」が終了する方針とのニュースがあった。昨年末には福岡の「マリノアシティ」も建て替えの検討に入ったとのニュースがあり、昨年6月には「八ヶ岳リゾートアウトレット」が閉鎖された。三菱地所の「プレミアムアウトレット」、三井不動産の「アウトレットパーク」に続いて大手イオンが「ジアウトレット」として参入した北広島、北九州も空床が目立ち、厳しい状況が伝えられている。

以前も書いたと思うが、PM会社にいた時、当時のチェルシージャパン(現三菱地所・サイモン株式会社)に開発の話をしたとき(千歳レラだったような気もする)「日本にはアウトレットが成功する場所はそれほど多くない。」と言われた。現在アウトレットは「プレミアムアウトレット」が10か所、「アウトレットパーク」が13か所「ジアウトレット」3か所と大手だけでも26か所もある。

そもそもアウトレットは各小売業、各ブランドの在庫過多商品を売り切る場所で、掘り出し物的商品や売り切ってしまいたい商品の値段を下げてなくしていく場所だった。

小売業は当然利益を追求する。商品をだぶつかせて、その商品の値段を下げれば利益率が下がっていく。利益を追求するには、売れる商品を売れる量作るのが基本になってくる。つまりアウトレットに回す売れない商品が多ければ、会社の利益は下がっていくし、当然プロパー店(一般店?)の売上も下がっているということになる。だが、売れ残り商品が多くないとアウトレットの商売は成り立たない。売り上げが悪いと言われている会社もある。ただアウトレットに商品を移して売ることによって、利益率が下がるリスクも出てくる。近年は利益率を優先する会社が増えてきている。

一般的には好調企業は、アウトレットに流れる商品は少なく、不振企業はアウトレットに移して値段を大きく下げるには、利益が下がるリスクを伴う。

その一方でアウトレットモールは増えてくる。そうなれば当然商品の魅力度が下がってくる。大手セレクトではアウトレット用のブランドを作って売り上げを上げ、さらに利益率の低下も防いでいる。ただ、もうすでにそれをお客様は見抜いている。さらにプレミアムブランドは出店しないか立地を選ぶ。つまり魅力的なショップが減ってきている。アウトレットモールの乱立は魅力をどんどん下げている。

今後は、間違いなく淘汰が始まる。もしくは門真のららぽーとで応急的に始めたRSCへのフロア単位での出店が出てくるのではないか。(門真は鶴見アウトレットの受け皿としてのリーシングがもたらした。)さらに最低限SMは併設しなければSCとして成り立たなくなるかもしれない。

ますますアウトレットモールのショップMDやアウトレット商品に魅力はなくなっていくと思う。

■今日のBGM

「これでいい」より「これがいい」

「潮目が変わった。」とパルグループ井上会長の第3四半期について語ったようだ。その中で標記の言葉を述べている。この言葉は無印良品の概念である「これがいいよりこれでいい」を念頭にした言葉のようでもある。

このブログではあまりパルグループのことは書いてこなかったが、多種にわたったファッションを個性を尊重しつつまとめている企業で、非常に好感を持っている。もともとはジーンズショップからのスタートで、アダストリアと生い立ちは似ているようだが、個性的な店が多い。残念ながら接点はなかったが、よく店は見ていた。セレクトショップブームの時も、それ以前から「ギャラルダギャランテ」や「ルイス」をしっかりやっていたし、「チャオパニック」も大きく成長した。「アレグロビバーチェ」もパルだったと思う。現状では「スリーコインズ」がただの均一ショップでない商品構成で引っ張ってきている。おそらく「チャオパニック」と「スリーコインズ」で会社を引っ張っていると思うが個々のブランドの状況は見えてこないのが実情だ。去年の決算数字を見ても「スリーコインズ」中心の雑貨事業が大きく伸びていて、商品回転率も前期末数字では年5.9回転と雑貨事業に引っ張られて高回転になっている。

無印良品を指していったと思われる標記の言葉は「スリーコインズ」についての言葉ではないかと思う。均一ショップの中では、ただ安いだけでなく個性が際立っているように思える。多発する均一ショップの中では「これがいい」店だとは思う。

ネットでパルグループのショップブランドを見ると中心になっているのは「スリーコインズ」とSC向けの「チャオパニックTYPY」「ナイスクラップ」くらいのような気がする。

ファッション分野ではまだ流れはつかめてそうにない。ショップブランド別の数字がないので詳しく把握はできないが・・・あまりとんがっていないアダストリアと比べると角がある感じのラインナップだ。この会社の個性だとは思うが・・・

そこがいいところでもあり、ウィークポイントにもなる。

「スリーコインズ」に関して言えば競合と比べると「これでいい」より「ここがいい」だが大きな意味で現状の客層はまだまだ「ここがいい」より「これでいい」だと思う。

次の日の新聞に「無印良品も過去最高収益」の記事があった・・・

■今日のBGM(名曲が多い)

セレクトショップはどうなるのか?

ヤフーでセレクトショップの意味を調べると、「独自のコンセプトに沿って複数のブランドの商品を仕入れ、販売する業種。」とある。ここに「個性ある複数のブランド」と入れるのが正しいのかもしれない。ここについて話すといろんな意見があり、特に癖のある意見が多いのであくまでも私見で書く。

セレクトショップと大手アパレルの大きな違いは、仕入れて直接お客様に売るか卸業を中心にするかの違いにある。昔から付き合いがあるところはビームスやユナイテッドアローズも地方ではFCをしている会社もあるが、非常に少ない。ほぼ直営店の展開である。名の知れたセレクトショップもあれば、地方で独自にブランドを仕入れているセレクトショップもある。

個人的なことでは、大学生のころ上野アメ横の店「ミウラアンドサン」でスタジャンを買った思い出がある。その後もインポート商品のバイヤーをしていたころはシード館、インターナショナルギャラリー、伊勢丹スライスオブライフは定点観測していた。トゥモローランドに「ボルジー、マカフィー」の出店交渉もしたし、完全にあしらわれたが「ビームス」の出店交渉もした。まだ千駄ヶ谷の小さい事務所だった今のベイクルーズと布帛(シャツ)の商談をしたこともあった。

その当時とは規模もMDも大きく変わっている。トレンドを追いかけてセレクト中心から完全に自主MD商品中心の店に変わっている。上場しているユナイテッドアローズの前期の売上は130135(百万)売上総利益率51.6%と完全に大手小売業としての位置づけだ。買取仕入れだけではここまで利益は出ない。「ソブリン」や「ディストリクト」などで出店していた高感度の店はほぼなくなっている。

大手セレクト店舗はアウトレットのウエイトが上がってきたのではないかと思う。アウトレットも完全に作りこんで利益を稼ぐMD商品が中心になっている。ここ数年はこのアウトレット業態で売上と利益を稼いできたように見える。このターゲット客層は少しずつアウトレット用の商品とわかってきたようで、ここからはそこまで伸ばせないように感じる。できるだけ早くフェイドアウトするべきだと思う。

先日何人かの40代前後の知り合いと話したが、あまりファッションには興味はないが「洋服はアローズやビームスで買う」と言っていた。その人たちは比較的高収入の部類だとは思う。ユナイテッドアローズの上期の前年比は107.5%で11月は118.2%まで伸びている。インポートは高い、ユニクロは皆着ている、選択肢の中では安心感があるので選んでいるようだ。そういわれると昔よりこのゾーンの敵は増えていない。ノンポリでそこそこ収入がある客層はまだ購買客のようだ。アウトレットで安易にショップ名のバリューで引き寄せて売ることは減らしていき、給与労働者30%が属する大企業社員をターゲットに品質や接客を最重点で取り組めば大きくマイナスはしないかもしれない。競合は限られてきており、きちんと囲い込めば今後も安定的なマーケットとも感じる。

関係ないが、昔出店の話も真剣に考えてもらい(断られたが・・・)、誠実なアウトレットを運営し、伊勢丹にもインポートブランドに併設してコーナーをもって、着実に商売しているように見える「トゥモローランド」をメジャーでは一番応援する。

■今日のBGM

ブランドの持続力

ヤフーニュースで「サマンサタバサ」の記事が出ていた。状況は非常に悪いといろんなところで書かれているが、そもそもティーンズヤング対応のブランドは長持ちしない。何度も書いてきたが、お客様は年をとり、ファッションの流れも変わるからだ。

ファッション業界でブランドはどれくらい持続するのか?30~40年前のDCブランドで残っているブランドはほんとに少ない。ビギもニコルももう会社自体が別のものになっているし、あれだけ売れたコムサも今は見かけない。残っているのはクリエイター系でノンエイジ志向が強かったブランドくらいだと思う。ギャルソンやそこから続くデザイナーブランドや一度は倒産したがヨウジヤマモトやケンゾーなど。あとは年代層を広げたブランドが百貨店中心にシフトして続いている。

ティーンズ寄りのブランドの賞味期間はさらに短い。あっという間に落ち込んだストライプインターナショナルの各ブランドもそうだし(もうティーンズ系ではない?)サマンサタバサもその部類に入る。多感な時期で流れがすぐ変わる。それを前提に会社はどう動いていくことが必要だと思う。

もう一つ記事で指摘していた「中流層中心のMDの失敗」はまさにその通りだと思う。完全に2極化が進んでいると思うし、中流層ターゲットにすれば逆に2極化の流れでは「どの層も支持しない。」が正論だ。

ブランドビジネスは難しい。生き残っているブランドには何か「成功の鍵」(KFS)がある。クリエイター系だけでなく百貨店客層をターゲットにシフトしたブランドは続いている。さらに量販店でも販売員付きコーナーブランドは、周りのスタッフの少なさの中、接客面で優位に立ち数字を維持しているとも聞く。企業としては客層の幅を広げるべくブランド数やショップ名を増やして維持していっていくか、深く掘り下げていってコアの客層に向けていくしかない。

サマンサタバサはある意味予測されていた事態で、前オーナーはうまく手放したし、コナカのM&Aの失敗ということになる。なぜ買収したのだろう?最近ではマッシュグループもM&Aされたが、複数のブランドがあり、持っている他のブランドの客層の幅も広いが牽引してきた「ジェラードピケ」はおそらく失速すると思う。今後の動向は要チェックかもしれない。

ティーンズはすぐにヤングに、ヤングはすぐにヤングミセスに、ヤングミセスはすぐにミセスになる。ターゲットを固定していれば当然新しい客を取り組まなければならない。ティーンズヤングは感性が時代ごとに変化しさらに細分化していく。当たれば大きいが、その分消えるのも早い。

ブランドは「誰に売るのか?」「その顧客の特性は?」「ブランドにとってメリットのある市場の定義は?(例えば機能性なのか、ファッション性なのか?デイリーなのかビジネスなのかなど)」「その市場規模は?」を十分に吟味することが必要で、さらに途中での顧客動向の変化を素早く見極めることが必要だ。

■今日のBGM

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