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大型モール(RSC)の評価基準

近隣に大型モールがたくさんあり、買物のついでに店を見て回る。厳しい状況だと感じるモールも少なくない。

大型モール(RSC)の創成期からいろんなモールを見てきた。売場企画に加わったこともあるし、最後は出店者側として、出店交渉もしてきた。つまりモール側で企画や、運営もしたし、出店側で開発業務やテナントとして商売もしてきた。現状でも、モールを見るとそのモールの状況はわかる。資産流動化されていたり、資本関係が複雑で最終の損益までは見通せないが、おかれている現状は見える。今のモールでチェックすべきショップMDとしてのポイントを何点か上げてみたい。

まず当たり前のことだけれど、テナントがきちんと埋まっていること。空床区画はすぐわかる。催事区画で埋めている場合もある。催事区画も空床区画と同じ扱いに過ぎない。什器や商品ですぐわかるし、きれいな催事も内装の作り方や店名の電飾の有無で判断できる。(定借物件の内装規定で店サインに電飾を加えるように指定されることが多い。)近年は3層のモールで3階のテナントや、食品側と離れている場所に空床(催事)は多い。

さらに、空床を埋めるためのサービス業種をリーシングするケースが多い。顕著な例は「携帯電話ショップ」であり、「ガチャガチャ」や駄菓子屋、古着屋、各種教室などのサービス系のショップが増えてきていないかもポイントになる。

3番目としてきちんと集客できるテナントは揃っているかをチェックする。「ユニクロ」、「GU」、「無印良品」、「ABCマート」など。そういう大型集客ショップは、できればメインフロアではなく高層階にあるほうが望ましいと感じる。個人的にはアダストリアであれば最低2店舗(3店舗?)はあるべきだし、近頃モールから退店しているがユニクロの「プラステ」があるモールは個人的には信頼できた。

さらに、メインフロアは店の顔になるフロアなのでテナントのラインナップは当然チェックすべきポイントになる。感性やトレンドを意識できるテナントがあるのがベストだと思う。値段を打ち出すショップがメインフロアに見えるのはそのモールがあまりいい流れではないように感じる。ファッションだけでなく「旬」を感じるテナントや「わざわざ買いに行きたい」テナントがメインフロアには欲しい。

その他、ショップMD以外では「SM(スーパーマーケット)の集客力」や「集客カテゴリー(シネコンなど)があるか」「交通アクセス面」などの環境的なポイントはある。

上記の観点で近隣のモールで見ると「コクーン」が最もポイントが高いが、規模が大きいだけに今後のメンテナンスが課題になる。逆に「アリオ川口」は現状大変厳しい状況で、イトーヨーカドーの動き次第ではオーナー変更も考えられ、大きな変革がありそうに思う。

今後は、理想的なテナントリーシングが厳しい状況が間違いなく続く。

■今日のBGM

ファウンドグッド

“「場所によって客層が違う。」とアダストリア関係者は語った。”と新聞にあった。「ファウンドグッド」をイトーヨーカドーに展開しているアダストリアの感想のようだ。

まず店を始めるには、ビジネスモデルを作る必要がある。誰に売るのか?そのターゲットは商売をするには潤沢か?何を売るのか?など・・・

誰に売るのか?で悩んでしまった。というのが冒頭の言葉のように思う。

「ファウンドグッド」の立ち上げの状況を見てこようと思って近隣のイトーヨーカドー浦和店に行った。昔はドル箱店舗と言われていた浦和店もオープンから50年以上も経過し、完全に古い足元客のための店になっている。天井も低く1フロア400坪くらいの昔の駅前型GMSになる。1階の共用部以外をほぼすべてをつかって「ファウンドグッド」はある。浦和駅徒歩4分という立地で、伊勢丹No2の売上の浦和伊勢丹の北側にある。浦和駅にはアトレ浦和があり、開発された東口にはパルコ(食品はヤオコー)がある。イトーヨーカドー浦和店のメイン客層は昔からの顧客の足元の中高年になる。言い換えるとシニア層が多い。ここだけ見ていたら偏った見解になると思って、アリオ川口のイトーヨーカドーに向かった。アリオ川口のイトーヨーカドーはモールに来るお客様になっている。

冒頭のコメントと同じ感想になる。GMSがダメになった理由でもある。イオンやイズミの衣料品平場が悪いながら持ちこたえているのは、モール戦略で客層を若返らせ標準化させているからだ。アダストリアの社員はおそらくGMS、特にモールにあるキーテナントとしてではないGMSを見たことがなかったのではないかと思う。裏を読めば、アダストリア側には大きなリスクがない契約になっているのだろう。

感想は、まだ真剣に取り組めていないに尽きる。「とりあえず、商品を埋めた」感が強い。単品量販ではあるが、あくまでもグローバルワークやローリーズファームのベーシック商品を値頃にした感が強い。内装や演出もお互いどこまでやっていくのかが見えてない。

やはり、お互いの方向性が固まっていないように思う。特に本部での意思は現場まで届くのには時間がかかる。以前、お互いが資本を出し合って「別会社を立ち上げるべき」と指摘したが、その必要がありそうだ。ちなみに広い売場に浦和店にはスタッフは見えず、川口店には1名しかいなかった。

思いつくまま書く。商品では衣料品以外でお客様を呼び込む必要を感じる。なぜ、インナー商品をやってないのだろうか?必需品で回転率が高い商品を取り組むことによって、来店頻度が増す。ユニクロも素材感を打ち出した「ヒートテック」で完全にフルライン客層になったように思う。無印のように生活雑貨を増やしてもいいようにも感じる。さらに店のカテゴリーが浦和店と川口店のように違っているので、店を分類して基本品揃え以外での対策が必要になる。例えばプライス志向の強い店に不稼働商材の処分コーナーを常時設けるとか、イトーヨーカドー得意のデータ分析で店の特性を活かしたレイアウトを作ったりするべきだ。

アダストリアは、こちらが指摘するまでもなく、感性だけで生き残らず、優秀な企業体質なので、今後はどんどん変革していくだろう。ただ、大多数が大型モールや駅ビル、ファッションビル育ちでもあるので、「しまむら」や「西松屋」の商売をどうとらえるかが成功の鍵のような気がする。「ファウンドグッド」の取り組みによってこのゾーンを開拓することが、企業として大きな成長につながると思う。

定期的に見てみたい。

■今日のBGM

3月の数字から

経験上3月の売上はセール期の7月、1月を除いては、12月と並んで売り上げが高かった月だと思う。季節の変わり目でもあり、さらにフレッシャーもあり、モチベーション需要も高い月でもある。今年の各社の数字を速報値で確認したが、土日各1日増の中でも厳しい数字になっている。気温が低かったこともありファッション系が厳しいようだ。

無印が既存前年比116.1%、ニトリ114.6%と生活雑貨系は好調、さらにABCマート110.7%、チヨダ107.2%とシューズ関連も順調だったようだ。逆にユニクロ98.5%、アダストリア99.2%、ユナイテッドアローズ105.8%とファッションは前年の攻防で土日プラスの要因を考えると厳しい月だったようだ。堅調だったしまむらも101,1%、西松屋100.7%と少し流れが悪い。好調な流れだったハニーズも89.0%と大きく落ち込み、マックハウス81.3%、ライトオン78.9%と引き続き厳しい流れは続いている。

特に気になるのはやはりライトオン。今期決算(2024年8月期)の下方修正が出ていたが、今期予測が売上前年比87.4%、経常利益は赤字24億で25.5億のマイナス修正となっている。第一四半期決算の数字も公表されているが売上前年比85.7%、売上総利益率前年差-3.5%、営業利益は-517(百万)(前年差-548百万)、在庫回転率(月度)0.16回転(前年差-0.03)とすべて悪化している。さらに前期に複数の金融機関と規定している財務制限条項の「前期決算期の末日または2019年8月決算期の末日の純資産のうちの大きいほうの60%以上の純資産を維持する。」と「2半期連続して経常損失をしないこと。」に抵触することになった。この条項は金融機関と話し合いシンジケートローンの契約は継続される旨記載されているが、今後対金融機関との障害になる事は間違いない。

営業面で見るとやはり「在庫適正化への取り組みとして大幅な在庫圧縮を実施」とあるが、回転率は悪化しており在庫圧縮はできていない。気候のせいもあり売れ筋商品が見えなかったようだ。マイナストレンドの中、利益率を維持しながら在庫を減らしていくのは非常に難しいと思う。特に年間2回転しない状況ならば在庫は減らせない。在庫を減らすと利益率は大きく落ち込むし、利益率を意識すると在庫は減らない。在庫を減らして売れ筋をわかりやすくするには、売場を思い切って小さくしていくことしかないと思う。

ワールドと協業を発表したマックハウスも含めてジーンズカジュアル専門店の流れは浮上してこない。

4月にこの反動があればいいのだが。

■今日のBGM

3月の「全品オフ」

いつも行く近くのSCの1階メインフロアのレディスファッションの店が大々的にセールをしている。ある店は「全品10%、20%オフ」で、ある店は「全品1000円引き」になっていた。春休みは、入園入学のシーズンでもあり春休みの需要は大きい。売り上げ確保策としては強い販促ではある。近頃よく見る「全品オフ」だが、間違いなくマイナス効果のほうが大きいと思う。

「全品オフ」はストライプインターナショナルが、タイムサービスを連呼し始めてからいつの間にか増えてきた。当然の結果としてストライプインターナショナルは去年まで3期連続赤字に追い込まれ、息巻いていた上場の夢は消えてしまった。

全員周知のことだと思うが、「全品オフ」は売場商品の売れ筋からなくなる。売れ筋商品がなくなると売上は止まる。さらに利益が落ちることは当然わかっているので、商品担当者は取引先に仕入原価のダウンを要求し、さらには導入商品の原価値引きを要望するようになる。対ストライプインターナショナルでは取引先からそういう情報は出回っていた。

ここからどうなっていくか?売れている取引先は、他社では売れているし値引きも要求されないので、大きな取引額でなければ、取引をしないようになるし、たとえ大きな取引額があってもフェイドアウトしていく。ついていかざるを得ない取引先のみ残っていく。つまり取引先に利益補填を強要することで、対取引先との商品MDが崩れていく。築いてきた信頼関係がなくなっていく。原価値引きは小売企業が大きくなればなるほど取引先は断れない。余談だが、不当な要求を公取(公正取引委員会)に訴えればいいと思うだろうが、そうすれば狭い業界では生き残っていけないのが現状でもある。中小企業の利益が上がらない構造は小売業にもある。

そんな理屈はわかっていても、「全品オフ」は続く。一度やってしまうと、売上実績が計上され、その実績をもとに売上予算や利益予算は作成される。業界の流れが良くなっていれば、何もしないで前年数字をクリアできるが、なかなかそういう状況にならず前年と同じことをやってしまう。負の連鎖に陥る。

本来3月は多少の不稼働商品をプライスダウンすることがあっても、量販期であり、小売業としては利益を稼ぐ月である。RSC(大型モール)の1階にあるテナントということはそれなりの規模感があり、売上額の大きなテナントだと思う。現実としてはなかなか1階では商売はさせてもらえない。「全品オフ」をするテナントを1階に配置せざるを得ない、さらにテナントをマネジメントしているSC側もそのプライス政策を容認している。何度も書いているが、RSC自体も末期状態になっているのかもしれない。

※食品売り場はどんどん値段が上がっていく。お客様はエブリデーロープライスのSMにどんどん流れていっている。

■今日のBGM

イトーヨーカドーとアダストリア 2

GMSの衣料服飾品売場の課題が浮き彫りになっている。イトーヨーカドーは廃止の方向だし、イオンは別会社化している。イトーヨーカドーの売場をアダストリアが商品を供給し、売場作りや演出方法についても提案していくとのことである。

何故、イトーヨーカドーの衣料服飾品売場は売れなかったのだろうか?MDや演出方法が間違っていたのだろうか?おそらくイオンのトップバリュがイトーヨーカドーの衣料服飾品をやっていても同じ結果だっただろうと思う。さらに悪い数字だったかもしれない。完全にSCの集客力の違いで、GMSという業態がもう終わったということに尽きる。

今回のアダストリアとの取り組みについて考える。専門店と百貨店、量販店(GMS)は売り方が全然違う。過去に伊勢丹のカリスマバイヤーがイトーヨーカドーの役員になり衣料服飾売場や商品の変更を企画実施したが成功しなかった。土俵が違うし仕事のやり方が全く違っていたからだ。あの事例は簡単に予測できた。ファッションを売ることと商品を売ることは違う。そこに買い物に来るお客様も違う。そこに大きな差があった。

ここからはあくまでも個人的な意見になるが、アダストリアには、イトーヨーカドーのスタッフの小売としての業務レベルが相当に高いと思って臨んでほしい。私事で書くが、あまり業態の差はないと思われそうだが、GMS(サティ)と専門店(ビブレ)を両方経験した。「ビブレ」はファッションビルに見えるが、自主MDの店を30近く運営していた。当時の流れの差もあるが「ビブレ」は「サティ」を認めてなかったように感じた。私自身は「サティ」のほうがファッション業界の流れやトレンドはつかみきれてないが、数値意識や商品知識や販売スキルは高いと感じていた。つまり「感覚」や「トレンド」はあまり意識してないが「売れる商品」や「売れる素材」は理解していたように感じた。実際業務のマニュアルやデータ分析は「サティ」のほうが先行していた。そのGMSを引っ張っていたのがイトーヨーカドーだったのだから、実務レベルは、相当高いだろうし、取引先からもそういう情報を聞いていた。さらにディストリビューターの権限が強くデータ分析力も高いと言われていた。

間違いなくトレンドのつかみ方や、時流に合った売るための内装、演出の仕方、さらに一番差が出るお客さまへの接し方はアダストリアのほうが確実に上回っている。さらにこのブログでも書いてきたが、アダストリアは素晴らしい経営者がいて素晴らしい会社だ。

このターゲットのお客様をつかむ事業を開発し、ユニクロに負けない事業を構築する目的で両社が新しい会社を作っていくことが望ましいことだと思う。現状の報道を見る限り、イトーヨーカドーをアダストリアが助けるイメージが強い。まだ完成形を見てないが、導入された店を見る限りだと、イトーヨーカドーの声が聞こえてないなとも感じた。新しい売り場を作っていこうとする気概を是非見せてほしい。今回はイトーヨーカドーの底力に期待したい。

今回、この内容を書くかどうか迷った。GMSの衣料服飾品の収益が悪い記事を見るたびに、GMS衣料品出身としては悔しい思いがあった。商品よりも環境が大きな問題で、そのMDや売り方はそんなに大きな問題はないように感じていた。百貨店の取引先主導のMDよりも専門店の感性型MDよりもGMSのほうが理詰めだった気がする。GMSから離れて、百貨店や専門店の人たちと交流したが、商品素材や縫製についての知識や、数値面、システム面で劣っているとは感じなかった。逆に商売の理論は上回っていると感じていた。決して卑下することはないと思う。

今後どうなっていくか、一番注目している。

■3月23日の日経朝刊 ※掲載料は?

2件の取引先との協業について

前回のブログを書いているときに思うことがあった。イトーヨーカドーとマックハウスは売場の改善を目的にしているのに対して、アダストリアとワールドは新客層への取り組みを大きな狙いにしているのではないかということだ。

現状のアダストリアの主戦場はRSC(大型モール)であり、ワールドは百貨店、ターミナルビルのように見える。所謂、モデレート層をうまく取り組んでいる。特にアダストリアはそのターゲットでは一番のシェアを取っていると思う。

このブログでも再三書いているが、現状の客層はインバウンドを含む高級ブランド、百貨店志向と、ボリュームプライスを打ち出している専門店の客層に2極化されているように見える。中間層ターゲットの専門店の流れは悪い。ボリュームプライスの専門店はユニクロ、しまむら、ニトリ、西松屋などがあげられ、好調な数字が続いている。

アダストリア、ワールドは2極化されたボリュームプライスニーズには、現状取り組めていない。今後の戦略としてどうしてもそのゾーンにも参入が必要になってくる。つまりボリュームプライスの商売を模索しようとしているのではないか?主戦場のRSCや駅ビルでは確実につかめない客層を把握していきたいのではないだろうか?

そういう意味では100店舗以上あるイトーヨーカドーの衣料服飾売場はチャレンジするのにベストの状況になる。ワールドは少し読みにくいが、マックハウスも、従来ダイエー中心に出店していてイオンモールなどRSCに乗り遅れた経緯がある売場が多い。

さらには今回の取り組みは、いずれも厳しくなった売場を開発する目的でスタートさせるので、どちらかというとイニシアチブをとれる。優位性を持てれば商品MDだけでなく売場の内装、レイアウト、演出までリーダーシップをとれる。

アダストリアにとってイトーヨーカドーは非常にいい相手だと思う。大型の売場をコントロールできるし、安定したSMを持っているSCで取り組める。さらに、おそらくシステムやデータ分析はイトーヨーカドーに1日の長がある。その部分も取り込める。いろいろ試行錯誤ができそうだ。阿倍野キューズモールのイトーヨーカドーで商品を少し見たが、「袋入りの商品はどういう目的があるのか」など気になる事はあるが、修正を重ねていくと思われる。フルラインの衣料と雑貨までの展開で、優等生企業同士の取り組みには期待できる。唯一問題があるとすれば、元気がなくなったように見えたイトーヨーカドー側のスタッフのモチベーションが上がるかだと思う。

ワールドの取り組みは、前回のブログで書いた通りで、ワールド側が「うまくいったら儲けもの」くらいの取り組みのような気がする。思い切って両社で金をかけてどこかで成功事例を作る必要がある。お互いの出方を見ながらのスタートなら、うまくいかないし、マックハウス側に傷が残るだけになる。

専門店各社のボリュームプライスへの取り組みが、過熱しそうな気がする。

■今日のBGM

マックハウスとワールド

前回、南浦和の丸広百貨店について書いたのだが、どう見てもやる気のない売場がマックハウスだった。200坪近くある売場に商品は埋まっているだけの感じで、定番のデニムと持ち越しのキャリー品のみで退店するのかなと思っていた。あまりにもひどいのでマックハウスを検索していたらワールドの「ハッシュアッシュ」とのコラボの件が出ていて、商品投入する店の1つが南浦和丸広店になっていた。

イトーヨカドーとアダストリアのコラボについては以前書いたが、今回の協業は非常に厳しいと言わざるを得ない。

まず店のイメージをどうするのか?どういう店にしていくのか?MDをどうしていくのか?今までの「ハッシュアッシュ」ならファミリーニーズの商品だし(もしイメージが変わるならブランド名も変える)、ジーニングカジュアルの店と整合できるのか?売り場を見るまで分からないが全く想像できない。今のMDの中にコーナー化していくのか?テーマ、イメージを整合するにはそのテイストにすべき売場に改装が必要になる。大きな内装変更が必要になるが、そこまで投資していくのだろうか。

取引先と小売業にはいろんな力関係があり、ベストな関係は対等な関係だが、今回はどういう力関係なのだろうか。2社の規模やマックハウスの経営状況を考えると、ワールド主導になっていきそうに感じる。従来のワールドの取引先は、専門店販路と百貨店販路が多く、どちらかというとメンズイメージが強い小売店主導のマックハウスとの対応は難しくなると予想する。さらにメンズのイメージが小さいワールドと、レディスのMDがうまくなさそうなジーニングカジュアル店(ライトオンも同様に感じる)とのハレーションは大きいのではないか。どちらが持ち掛けたか知らないが「ハッシュアッシュ」も失敗したブランドとも思えるので、この力関係は大きなポイントとなる。以前「イトーヨカドーとアダストリア」で記したが、経験上、協業するには別会社をたちあげてまでやる覚悟が必要だ。

さらに気になるのが、既存のマックハウスの経営状況、特に商品在庫をどうしていくのかということだ。去年9月のブログで触れたが、前期のマックハウスの回転率は年間2.2回転、月度回転率0.18回転で、決算数字を店舗数で割ると1店舗平均で月度売上4800千、在庫26100千となっている。今期どれだけ改善されているかだが、今期も売上は既存前年比92.3%、今期純利益予測も赤字1145(百万)に悪化修正されている。2018年2月期から6年連続赤字という状況になっている。利益を確保するために在庫を減らせないでいる状況になっているので、今のデッドストックの改善が進んでいないような気がする。その状況下に新ブランドの世界観が表現されるだけのフェイスの商品を入れていけるのだろうか?(消化仕入かもしれないがまず考えられない。)

マックハウスの赤字決算が続いている中で、売場への大きな投資も想定できない。現状の在庫の課題も解決できていない。この協業が成功するとしたら現場を離れたトップ同士の話し合いでなく、現場同士の話し合いをどれだけ重視できるかにかかっている。そういう意味では、なんだか現場感がない協業のような気がする。

近年いろんな会社を傘下に収めているワールドがその目的をもって協業していこうとも考えられる。今回の協業はワールド側のメリットのほうが大きいと予測されるし、ワールド主導で進むと思う。

■今日のBGM

ネイバーフットショッピングセンター(NSC)

日本リテイリングセンターによると、NSCの定義は売場面積1500坪~3000坪、敷地5千坪~1.5万坪、商圏人口は3.5万人、テナント数は10~30とある。他の分類はGMS(イトーヨーカドーなどの総合スーパー)中心の中型ショッピングセンターという位置づけのCSC(コミュニティショッピングセンター)、このブログで多く登場するRSC(リージョナルショッピングセンター:郊外大型モール)などがある。

おそらく、今最も売れそうなSCはNSCだと思う。以前から指摘しているように郊外大型モール(RSC)は厳しい状況になってきている。RSCはその規模を利用して住宅(マンション)やメディカルモールなどを併設していくなど、方向性を買い物以外に向ける必要があると思う。駅前も駅直結以外の百貨店やファッションビルは厳しくなってきており、さらにGMSはイトーヨーカドーの解体でほぼなくなってきている。

南浦和駅前に丸広百貨店が運営している商業施設がある。もともと丸広百貨店だった施設を自主の百貨店をやめテナント運営に切り替えた施設になる。商業面積は12680㎡となっているので約3800坪、6層で1フロア600坪強の建物になる。主なテナントとフロア構成は1階「ヤオコー」、2階「ニトリデコホーム」「マックハウス」「ココカラファイン」と美容室など、3階「しまむら」「ハニーズ」「シュープラザ」など、4階は「ダイソー」書籍など、5階6階はクリニック、薬局、フィットネスなどとなっている。

SMのヤオコーはいつもにぎわっている。さすが34期連続増収増益の埼玉の優良企業で安いし欠品が少ない。売上は25億前後のようだ。多いだろう足元商圏(1km圏5万人)を完全にカバーしている。2階以上のテナントもうまく集めている。建物自体の条件(所有形態など)はわからないのでリーシングの条件も分からないが、NSCとしてのオープンモールなら及第点のテナント揃えにはなっている。さらに今のテナントをうまく整理し、「GU」(※ユニクロではない)と「西松屋」が入店すればほぼ完ぺきになりそうだ。

建物の古さと所有形態でリーシングの難度は変わるが、南浦和駅前で今よりプラスの変化があればビル型のNSCとして成功しそうな気がする。周辺にはイオンモールが川口に2つと北戸田にあり沿線に大宮、浦和はあるが南浦和駅前には商業施設は他にはない。2路線乗り入れで京浜東北線始発もあり1日乗降客が10万人超の大きな駅前のメリットを生かすことができるような気がする。

ここ数年大型SC(RSC)ばかりに目が向いていたが、今後は間違いなくNSCの開発が増えていくと思う。実際イオンGはイオンタウンを強化して、開発に力を入れているように見える。さらに駅前は空洞化しているケースが多く、退店するイトーヨーカドー跡地も含めて、NSCとして旧駅前商業施設を活性化させる戦略が必要になるのではないかと思う。

■今日のBGM

トップバリュコレクション(TVC)

「イオンは衣料品ブランドを刷新した。」というニュースが流れた。記事を読んでみるとイオンのカジュアル衣料を子会社の「トップバリューコレクション」に移管し、PB名を変え、新商品を開発していくということのようだ。

イオンはGMSをあきらめないそうだが、すでに結果が出ている。商品やシステムでは完全にイトーヨーカドーには勝てなかったと思う。何とか、イオンモールの成功で、2核1モールの1核として比較的恵まれた場所と賃料でイオンのGMSは成り立ってきたと思う。イオンを利用する者として見ても、衣料品で購入するのは下着ぐらいで、フロアにいる客層もシニア層が多いと感じる。

昨年、衣料品売場を「トップバリューコレクション」と題して改装し、「これがイオンの衣料品の売場」と方向を示したという記事があったと記憶する。その売り場を浦和美園イオンで見たことがあるが、企業人が机上で計画して、やって見せた売場に過ぎず、今までとやっていることは何も変わってない。販売区分ごとにきれいに見せただけにしか見えない。見せ方を変えた分わずかに効率は上がったかもしれないが、損益を大きく改善できるものではないと感じた。岡田会長が「GMSはやめない」と言っているためにやっている感しかない。誰も言えないのだろうな。

衣料品で戦うなら、ユニクロのように1つの大型ショップとして戦っていく気概が絶対に必要だと思う。イオンの友人と話しをすると「その計画は何度も出ては消えている。」らしい。守られ、恵まれた環境で、商売をしていても成長はしていけない。イオン直営ゾーンの外に出てアウェイでどれだけ戦っていけるかを知ったほうがいい。西友から無印良品ができ、西武からロフト、東急からハンズができたように1人歩きできる大型店をイオンも作るべきだと思う。住居関連の直営売り場もニトリのような専門店を開発したらいい。比較的恵まれた環境で仕事を続けているから、中途半端なことしかできないのではないだろうか。私自身も、GMS出身で、会社を立ち上げ大きなSCに店舗を持って、商売環境について感じることはたくさんあった。何度も書いているが、イオンのGMSは、成功したイオンモールの中にいるから何とか成り立っている。今後郊外モール(RSC)が厳しくなれば、当然もっと厳しい数字になるのは目に見えている。

近年イオンモールからユニクロなどの大型店が、別のSC、路面店に移設するケースもみられる。売場の大型化や賃料の問題などが要因だとは思うが、その対策としても大型ショップの開発は重要な要素だと思う。さらに家電など大型カテゴリーの欠落しているRSCもあり、その対策としてもGMSの売場の整理は大きなプラスになるのではないだろうか。

「井の中の蛙」でずっといると、間違いなく取り残される。イオングループから大型専門店が開発されて、「ユニクロ」や「ニトリ」「無印良品」と戦える業態が出てくることが、小手先の改装や社内の組織変更より大きな意義を持つと思う。

■今日のBGM ・・・映画「パーフェクトデイズ」は良かった。ルーリードは持ってないので。

大型モール(RSC)の収益悪化

何故、モール(RSC)から小型店舗が減ると収益基盤が弱くなるのか?

SCの賃貸条件は固定賃料、歩合賃料、共益費、販促費、駐車場負担金が主な条件でその他ポイント負担金などが加わる。さらにオープン時に共通部分の内装負担金、内装監理費、現場協力金、オープン販促費などが必要になる。

衣料品店舗で想定してどれくらいの支払いになるか推測する。30坪を定期建物賃貸借契約で借りる。売上は月4500千とする。以下想定で計算する。賃料は月坪売上150千10%超10%=450千、共益費月坪50千=150千、販促費1.5%=67千、駐車場負担金坪2千=60千。支払額は最低月727千となる。(条件はSCの売上状況によって当然上下する。)

1000坪に店舗を張り付けると、共用部を想定して20店舗(30坪)導入したとする。SCの月度受取金額は727×20=14540千となる。年間賃料は174(百万)くらいになる。例えば大手家電に1000坪(小さい?)貸したとする。ケーズデンキの去年の決算から計算すると1店舗あたり売上は年間13.4億、賃料は57百万となり、家賃比率は4.2%となる。※ケーズデンキは売り場面積3700㎡(1100坪強)が基準のようだ。

衣料品店舗の賃料を月600千に変えても年間賃料は140(百万)、家電導入時賃料5%にしても年間賃料は67(百万)となる。さらに入店時の負担金も非常に大きい金額になるが、大型区画では入店時の負担金も大幅に減る可能性が大きい。入店時の負担金に関して言えば共通部分の内装負担金の内容が明確でないうえに、その共通内装の全体の金額も分からない。その負担割合が店舗によって違うのも気になるところだが・・・

衣料品でも100坪近くなれば固定賃料ではなくなり歩率契約が多くなっている。売上が大きければ賃料収入に貢献するが、近年の大型店の坪売上はどんどん下がってきている。さらに、売れている大型店舗は歩率ではなく坪賃料固定での契約も多くなっていると聞く。つまり大型区画が増えれば増えるほど、その大型区画が想定売上より落ち込むと、賃料収入は減っていくことになる。

大型区画が増えるとRSCの強みである「店舗数の多さ」「バラエティ感」「わざわざ行くべき店がある」などの要素がどんどんなくなってくる。大きなNSC(ネイバーフッド型SC)になっていきつつある。つまり小さくて成り立つSCが大きい規模で運営されているということで、それは絶対に儲かる図式ではないということだ。

現状のRSCは「売上が上がらない」=「収益が上がらない」の負のスパイラルに向かっている。

■今日のBGM

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