カテゴリー: スーパーマーケット

高齢者こそ極端な2極化が進んでいる

日経新聞をずっと宅配してもらっている。チラシがほとんどなかったのが購読の1つの要因だった。近年、今まで折り込まれてなかったチラシが少しずつ増えてきて、近隣のSM(スーパーマーケット)のチラシは毎日のように折り込まれるようになった。ユニクロやドラッグストアのチラシも多い。近隣にはSMが4~5店舗あり週末には大量に折り込まれる。

SMのチラシの内容は、従来の特売的なものに加えて、ポイント戦略が増えてきている。イオンのポイント戦略と同様の5%オフ日やポイント〇倍が並ぶ。プリペイド機能に対象日に入金すればポイント分金額が加算される日もある。当然銀行の利子よりも大きいので、変な魅力がある。チラシの内容は、昔の商売していた時の卵や上白糖などの特売商品は少なくなっている。均一セールの打ち出しや、仕入れ時期によって値段が変わる生鮮商品の割引、アイテムごとの「値段から%オフ」の企画が多い。

以前、このブログでも何回か日経新聞の全紙(1面分)2連(2面分)の掲載広告を紹介した。数日前にブログ掲載時に添付したが、全紙広告は「アルパチーノ+デ・ニーロ=モンクレール」で2連は「本=ブルネロクチネリ」の広告だった。11月に入り1日に日経新聞本紙を包む形で2連の表裏(4面分)の新聞広告があった。「カルティエ」が1面と最終面とその裏面、計4面を占めており、それに包まれて日経新聞の記事がある。日経新聞は「日経マガジン」や「Ai」等のグレード感の高い商品を掲載する折込小冊子 もあり、その掲載ブランドの購買客層は非常に限られる。

新聞発行部数は、2000年に1世帯部数1.13と全世帯で購読していたが、2024年には1世帯当り0.45と半分以下になっている。さらに新聞購読者は40代までが20%前後で60代以上が50%以上になっている。特に日経新聞では2020年の60代以上比率が48.2%から2023年には63.4%と高齢化が急速に進んでいる。デジタル化が進む中、宅配新聞購読者の半数以上は高齢者ということになる。

つまり、日経新聞の高級ブランドの広告もSMのチラシも高齢者に向けたものになる。そして、この年代が一番2極化されている。日銀は、家計が保有する金融資産は60才以上が6割前後を保有していると9月に発表している。そして、70才以上で金融資産が3000万以上世帯は約20%で、逆に100万未満は25%にも上る。

話は変わるが、車が好きなので、ここ数カ月車の買い替えをずっと考えている。高齢者として、これが最後の乗り換えになるかもしれないし、今の車も次の車検で満9年になる。数台候補はあり、そのうちの1つを販売する所謂国産高級車の販売店に行った。以前行ったときは受付の女性との話(買わないと思ったらしい)で終わったのだが、今回は、担当者と興味を持っているモデルチェンジする車種について話すことができた。おそらく不人気車種(若い層にはうけない)にもかかわらず、今月末納車される試乗車の予約もいっぱいで、「乗り換え時期に納車は絶対無理です」という回答だった。あっさりした商談だったが、販売予定台数以上の購入希望者がいるということのようだ。客層は高齢者中心ということだった。

日本の人口は30年前と比べると98.1%と微減だが、60才以上は181.5%と大幅に増加している。人口構成比は19.3%から35.4%となっており、その人口は男性19457千人、女性24346千人、合計43803千人になっている。高齢者の比率がどんどん高くなっている中、その層の2極化も顕著になっている。

間違いなく高齢者層の今後の消費行動が、商売の在り方を大きく左右する。

■11月1日 日経4面分の新聞広告

イオンのポイント戦略を考える

またまたイオンの話になるのを容赦願いたい。

食品の買物は、売場を見るのも好きなので、完全にルーティンになっている。10月に入ってから、おそらく10%前後の値上げを感じている。買った内容と数量感でだいだいの値段はわかる。事実、値上げ発表している商品も多いし、便乗値上げのように感じる商品もある。総務省の物価指数では「食料工業製品」は8月に前年同月比6.5%高と11か月連続で上昇している。そして賃上げはその指数まで追い付いていない。2024年家計調査では、食料品購入額は平均月額89936円でエンゲル係数は28.3%と43年ぶりの最高値のようである。さらに高齢化は進んでおり、間違いなく今後もさらにエンゲル係数は上昇していく。

スーパーマーケット(SM)の利益率は、ファッション系アパレルの売上総利益率50%以上と比べると非常に低い。SM業界の売上総利益率は平均26%くらいのようだ。イオンの食品SM会社グループのUSMHは28.3%でマックスバリュー西日本は24.6%となっている。ロープライス型SMのオーケーが21.7%、ロピアは20%前後と言われている。営業利益率は2%前後が多く、物価の上下が経営数字にも響いてくる。物価上昇で値段を据え置けば、利益率悪化で経営不振に向かう現実もある。つまり価格を上げれば利益は安定するが、売上は鈍化する。価格を据え置けば売上は維持できるが、利益率は下がる。

売上対策としてのSMの販促は、現状チラシとポイント戦略が多い。品揃えで大きな差が出なければ、当然価格戦略が多くなる。その中で、前回も書いたが、イオンの繰り出すポイント戦略の圧倒的なパワーには驚かされる。一般的なSMではポイント3倍(1.5%還元)が主流だが、イオンではポイント10倍日が非常に多い。以前コメントしたのが6月で5%オフとポイント10%で10日とある。ちなみに今月は5%オフの日が4日(GG感謝デー含む)イオンカード、イオンペイでポイント10倍の日が7日ある。9月にはイオンペイでポイント20倍の日もあった。つまり食品も5%引き相当の日が11日あるということになる。これは定期的な買い物パターンを考えるとすべて5%オフ相当で買い物ができるということになる。その売上構成比次第だが、前述した各社の利益率を考えれば普通ならここまで取り組めない。食品全品5%オフということ自体、過去経験した店長時代には考えられない販促になる。

このポイント戦略は、イオンカードの拡大戦略と「イオンペイ」の普及を考えての販促であり、その経費負担はどうなっているのかはわからない。おそらくポイント戦略に関しては、イオンカード側の負担になっているのではないかと思う。すでに小売業ではなくなった感のある丸井の例を見るだけでも、カード戦略における収益は間違いなく大きい。前期のイオン金融事業の売上はイオングループ比率で5.2%に過ぎないが、営業利益の比率は25.7%であり、営業利益は616.6億に上る。ちなみにGMS事業はイオングループの売上比率は約39%と大きいが営業利益は6.9%しかない。

ポイント10倍の戦略は他のSMとの大きな差別化になる。利益率が示す通り、衣料品や服飾品には大きな購買目的要素にはならないが、デイリーニーズの食料品には効果的な販促にはなる。過去、月2回の「20、30日」だけ買い物に行っていたのだが、完全にポイント10倍が増えたことで、イオンカレンダーを見てイオンの買物が主になった。さらに近隣のSMのマルエツ(イオングループ)も毎週日曜はイオンカード、イオンペイで5%オフとなっている。

カード販促の軽費負担がどう変動していくかわからないが、現状イオングループはカード戦略で食品中心のデイリー顧客の囲い込みを図っている。インフレが続き価格競争が激化していく中、このカード戦略は有効な差別化策になる。ただ、どれくらいの原資が必要なのか想像もつかないが、いつまでもこのポイント戦略は続くのだろうか。

高年齢化が進む中、ポイント戦略が周知され継続されていけば、コンビニ事業の脅威になってきた「まいばすけっと」も含め、イオングループのSM業態(GMSの食品含む)はさらにシェアを高めていきそうな気がする。

■10月19日の日経 二連版広告 「ブルネロ クチネリ」