カテゴリー: 専門店 (4ページ目 (12ページ中))

今年は、冷静に立ち位置を分析する

今の流れを見ていると、間違いなく、体力のない専門店は淘汰される。路面店の飲食店がどんどんなくなっていくように、資金力がなくなってきた小型店は厳しい流れになる。最低賃金の上昇と社会保険「壁」の撤廃など逆風が強すぎる。金利も上昇しそうな流れだし、当然銀行の融資の壁も高くなる。商品の原価も円安の流れが続けば当然上昇するし、売価を抑えれば利益率は確保できない。逆に売価を上げれば、価格志向が強い現状では売れない。要員不足も待遇改善される大手へ流れるので、マイナス要素しかない。大手企業のアダストリアの年末に発表された第3四半期決算でも売上前年比は108.3%にもかかわらず、営業利益前年比は90.6%となっている。その要因として、円安による原価上昇や待遇改善による人件費増をあげている。つまり「人」「物」「金」すべてがアゲインストになってくる。

その流れで、間違いなくM&Aの活性化が起こる。去年の「タカキュー」、「ライトオン」や「マックハウス」を見るまでもなく、厳しい業態は3年先くらいを想定しても成り立っていかない。上場企業でもスーツ業態専業の会社や、ティーンズ系中心のアパレルは厳しい流れは続くと思う。非上場企業でも50~100店舗を運営する厳しいファッション店舗は数多くある。そういう店は近年出店数より退店数が増える傾向にあり、さらに不振店舗を減らして体制を整えていかねばならない状況にある。M&Aについては、当然負債の問題も大きいが、償却済みの店舗や、人員を引き継げれば、承継会社にはプラスの要素もある。最悪の事態をリスクヘッジする意味でもM&Aは間違いなく増えていく。

厳しい流れが予測される環境下だからこそ、「各小売専門店がすべきことは何か?」を冷静に分析する必要がある。その結果を持って、早急に修正をしていかねばならない。いろんな分析手法は、本やコンサル会社を通じて教示してもらえる。悪化傾向の会社はどうしても過去の成功例のインパクトに引っ張られて、現状を見失っていることが多い。自社の立ち位置を理解し、すべきことをジャッジする必要がある。

そして、今後の方向性の中で、専業を続けるか、複数の切り口を持つかを考えていくことが、今後企業継続での大きなポイントになるような気がする。専業とは、広義にはなるが「ユニクロ」や「ニトリ」などほぼ単一業態で経営していることを指す。逆に「アダストリア」や「パル」は複数の切り口をもちグループを形成している企業ととらえてもらいたい。

専業ならば市場の大きさとトレンドを理解し、現状のポジショニングを明確にする必要がある。現状のターゲット客層の動向や、その市場の大きさ、その中のシェアを考えれば、拡大するか縮小するかなど、企業としての方向性は明確になる。

市場規模や企業規模を考えれば、現状の市場で拡大するだけでなく、他の切り口を考えることも必要になる。現状の市場が頭打ちなら、当然企業を維持成長させる方法として、他業種への取り組みも必要になる。中小企業では難しいかもしれないが、中小企業でなければ気が付かない市場もある。大手が手を付けにくい市場もきっとある。以前立ち上げた会社はそういう市場に向けて立ち上げた。どうしても厳しくなると、現状の事業をマイナス志向で分析してしまう。今のターゲットを細分化すればプラスに転じる市場はたくさんありそうな気がする。

こういう時期だからこそ、企業としての立ち位置を冷静に分析し、向かうべき方向を明確にすることが必要だと思う。そしてそれを社内で徹底させるべきだ。

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小売業にスタートアップ企業は生まれるのか?

近年、特にコロナ以降、SCの改装でニューフェイス的な店舗が出てこなくなっている。大手小売業が開発する店舗はいくつか見られ、いい場所で出店しているが、それ以外で興味を持てる店はほとんどない。コロナ禍で傷ついた企業は多く、退店も多い。退店区画には空床も出てきており、催事出店も多く、さらには携帯ショップや「ガチャガチャ」などの比較的出店が容易なテナントをリーシングしているSCが多い。

現状の小売業で新しく店を立ち上げ、成長していこうとするスタートアップ企業はあるのだろうか?

日本では中小企業が企業数では99.7%を占め、労働者数は69%を占めている。小売業での中小企業の定義は資本金が5000万以下、従業員数では50人以下を指している。ちなみに小売業では企業数の99.7%、従業員数は61.6%、付加価値額(企業が生産活動によって生み出した価値)54.1%を中小企業が占めている。

他業種ではあるが、飲食業では業績不振や人手不足もあり廃業率が上昇しており、開業後3年以内の廃業率が70%、5年で80%、10年で90%以上と言われている。

国が推し進めている「最低賃金の引上げ」、「103万の壁」「106万の壁」の撤廃は素晴らしい事ではある。ただ、その財源を考える時に、会社の負担が増大していくことに対しての話は出てこない。経団連や経済同友会などに所属する大企業にとって、この問題は大きくないだろうが、総労働者数の70%を抱える中小企業の体力への話が全く出てこない。社会保険の企業負担や時給のアップは労働集約型の小売業には大きな問題になる。マスコミも同様で国の財源論争のみになっている。以前このブログでも書いたが、中小企業の体力についてはお構いなしだ。極論だが、その政策についてくることができない企業は、なくなってもいいようにもとれる。

国は新しく立ち上げた企業にどうやって手を差し伸べてくれるのだろうか?事業のビジネスモデルを検討して作り上げスタートするにも一番大きい課題は資金面になる。30坪で路面に出店しても、敷金、内装費、初回仕入れ商品分、オープンまでの人件費を考えても少なく見積もっても1000万以上は必要になる。商売がスタートすれば自己資金でなければ返済も始まるし、ルーチンの出費がある。金を借りるのも金融公庫の基準は甘くない。経験上、銀行取引は1年以上たたないとスタートできないと思うし、周りに資金繰りに関する諸問題を相談できる人間はいないと思ったほうがいい。そして、設立後発生する資金面以外の問題(商品面、出店面、要員面等)もほぼ自ら解決するしかない。私自身も、会社立ち上げに関してはビジネスモデルも十分に検討したし、さらに小売業の経験は積んでいた。そして当面の問題はシュミレーションしていた。それでも実務としての問題は山ほど出てきた。税理士の先生はじめいろんな人の助言もあり何とか軌道に乗せられた。

公的機関に事業の立ち上げの助言をできるとは思えないし、小売りに関しては金融機関も助言は難しいと思う。現実的には、新規店舗を出店させ活性化を図りたいデベロッパーがいろんな支援をしてはどうかと思う。ただデベロッパーにそういうノウハウがある人間がいるとは思えないし、立ち上げてから企業の色がつく。結局、多少の失敗には許容力のある大手企業の新しい業態開発からしか、新しい物は生まれないのが現実になる。

企業の負担がどんどん大きくなっていく中、小売業を活性化すべく、負担を強いている公的機関がバックアップできる組織を作るべきだ。そして、小売業のスタートアップ企業の育成に前向きに取り組んでいくべきだと思う。

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セールが多くなり、セール期間が長くなった

いつの間にか冬のバーゲンは12月からになってしまった。まだ百貨店や駅ビルは1月スタートが多いが、郊外モールは12月スタートが普通になってきた。ただ昔のように一斉バーゲンのイメージはなく、「並んでまで行く」イメージはない。特にモールなどは日ごろからセールのオンパレードで「売場全品いつでもセール」の店もある。

数年前までバーゲンは7月、1月だった。それがいつの間にか前倒しされている。近年は11月に「ブラックフライデー」と称する大きなセールが現れ、ほとんど11月からセール状態になっている。

そもそも値段を下げる理由は何だろうか?季節感に基づく商品の入れ替えが大きな理由ではある。大きくは夏物と冬物の処理で、その処理によりキャッシュを貯めて、その金で、次のサイクルの商材を仕入れる。そのキャッシュを大きくするために大きな販促(バーゲン)を使う。

従来の商売は、夏であれば5月中旬から、冬であれば11月中旬くらいから季節商材や、動きの悪い商品の原価を下げてメーカーが出荷するようになる。その商品を買って7月、1月のバーゲン期まできちんと販売して、そこで利益を貯める。その後バーゲンで利益を考えながら値段を下げる商売に入る。特に12月はボーナスとクリスマスのギフト期が重なり、売上と利益を稼げる月だった。春夏商材は7月、8月に、秋冬商材は1月、2月になくして、その金で次節の秋冬物、春夏物を仕入れて利益を回復させていく。そんな商売サイクルだった。その商売サイクルも変わってしまったと言えるかもしれない。春夏秋冬の4シーズンではなくなり、春と秋が極端に短くなってきている。当然それにより、季節商材の売れ方も変わるし、社会催事にも変化が出る。

そして、その図式はテナントにも変化が出てきている。先述した「売場全品いつでもセール」の店は、単品メーカーの直営店が多く、それによって当然小売店に卸すより安く販売できる。それを直接売るときに割引訴求している。公取が定めた2重価格表示をうまく抜ける方法はいくらでもある。ユニクロなど大手もメーカーなどを通さず、自社で商品を作っている。そういう企業は、あくまでも小売店であり、メーカーではない。細かなMDのもと短サイクルで商品を作り、きちんとした値段を打ち出し、その演出計画もあり、陳列台帳もある。しかし短サイクルで商品を作っており、商品計画との差異が出た時は自社セールをして、バーゲン期に関係なく値段を下げてなくしていく。

デベロッパーは売上を上げたい。当然それにより賃料収入を増やしたい。さらに近年の郊外モールのテナントは、前述したように商品サイクルが早くなり、従来の四季による切り口だけではなくなっている。そうなるとどうしてもセール期が長くなる。そしてその流れに対応できる店が増えてきている現実がある。流れに対応できない商品のサイクルが長そうな業態(スーツ、ジーンズなど)は姿を消していっている。デベロッパーもその流れには逆らえず、個別セールを黙認している。モール型のSCの多くはそういう現状にある。逆に百貨店やファッション系のSCではまだセールを野放しにはしていない。ここに客層の差別化が出て2極化がさらに進んでいる。

昔よく言っていた「中間層」は、いなくなったのだろうか?

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大型モール(RSC)にGMSは必要ない

昔は「洋服好き」だったけど、現役を離れると、おじさんが着てはいけない「無印」で買ったパーカーに、昔の「Lee」や「リーバイス」のデニム、寒いときは何年も前の「バブアー」のキルティングや、いつの時代かわからない「モンクレール」のダウンを着て買い物に行っている。毎週のように出張していた時に着ていた服はタンスの中に眠っている。そうなってくるとSCに行っても立ち寄る店は決まってくる。あるデータ会社によればSCの客層は50代以上がほぼ半数を占め、30代以上がほぼメインの客層になっている。仕事真っ盛り世代から外れてくると同じようなワードローブになるし、見に行く店も決まってくる。ましてやGMSの洋服は全く見ない。

イトーヨーカドーの売却の話題もあり、このブログでもGMS不要と言ってきている。ただSCがなくなればよいとは言っていない。RSC(大型モールイオンモール、ららぽーとなど)、CSC(旧GMS型SC)、NSC(SMを中心とした小型版)は形を変えながら残っていくとは思う。

昨年からイトーヨーカドーの衣料服飾の売場とコラボしているアダストリアの「ファウンドグッド」をたまに見ている。おそらく各店舗の立地と客層の差が大きくて戸惑っているのではないかと思う。立地を選んで出店してきた企業(アダストリア)だけに、アリオ型店舗とGMS型店舗のギャップに対応できていないようだ。アダストリアのブランドなら出店しない立地にも展開せざるを得ない。ユニクロのニーズが強そうな客層の店と、しまむらに近い客層の店のギャップに苦しんでいそうだ。どちらかというとミセスシフトになってきているように見える。GMSが苦労している衣料品の難しさに直面しているようだ。現状の取引条件がわからないが、商品リスクが今後の課題になりそうな気がする。

近隣のイオンの2階衣料の改装は、モールの弱いところをイオン直営で補おうという改装に見えた。本来はGMSの売場は確立されていて、GMSで満足できないところをテナントで補い、客層の幅を広げ、広域からの集客を図るのがモールの考え方だと思う。おそらくそのイオンの売場が本来狙うべきターゲットは「ユニクロ」や「無印」に奪われてしまっており、テナントで補えていない「子供」や「高年齢層」に売場をシフトしてしまっている。GMSの標準的な売場でなく、イレギュラーな売場に変化している。雑貨関連も同様でGMSの売場は「ニトリ」や「無印」、「ABCマート」「100均,300均」で代替えできそうな気がする。

食品は、売場の大きさから品ぞろえの幅が広く、定期的な「全品%オフ」の販促で一定の評価はあるが、近年のSMのパワーは強く、逆に大きすぎることが買いにくさにつながっているようにも見える。

イオンのGMSは、過去のGMSの出店計画とモール(RSC)の出店計画にギャップが出てきており、標準化されたつもりのGMSが標準化されていない現実がある。つまり従来ならGMSで出店しなかった場所に出店していくのでMDにずれが生まれている。さらに得意とするボリュームゾーンも大型化されたテナントに顧客を取られてしまっているのが現実だ。一方、成功したGMSの定義を踏襲していたヨーカドーは、モールの出現でコアターゲットのお客様を奪われ、モールに行きにくい客層(高齢者など)が多くなり、今までのGMS成功の定義が通用しなくなりGMS業態から退いていった。

ららぽーとのようにGMSをキーテナントにせず、個性あるテナントミックスをしたRSCのほうが買いやすいのかもしれない。ただ、イオンモール先行の中、現状では成功する場所は限られているとも思う。

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中小小売業の106万の壁

先日のモーニングショーで「106万の壁」のことが話題に上がっていた。このブログでも以前に書いているが、この問題の有識者の考え方は、現場感がないのではないかと痛感した。特に会社側から見たとらえ方については全く触れてなかった。

簡単に「106万の壁」を説明する。現状は従業員51人以上の会社では週20時間以上月額賃金8.8万以上年106万以上の従業員には社会保険に加入義務がある。その規模案件を撤廃するというもので、全企業、年収106万を超えると会社の規模に関係なく社会保険に加入義務が生じるということになるということだ。社会保険の負担割合は労使折半となっている。

ちなみに東京都で月額8.8万円の収入の35歳の人なら個人負担、会社負担が折半なのでそれぞれ月額12452円の負担になるという。中小企業にとってもその労働者にとっても大きな金額で、労働者は当然のように労働時間を増やす方向に考えると思う。さらに最低賃金も上昇させていくことも当然のようになっており、双方社会保険料の負担はどんどん大きくなっていく。現状次の壁の130万までは、個人負担をできるだけ少なくして(ゼロにはしないと言っている)会社の負担を大きくする方向のようである。つまり会社が個人分の肩代わりをするということになる。国は金銭負担をする気がなさそうなので話は進んでいきそうだが、本来の折半以上に従業員の分まで負担を強いられる中小企業の話はほとんど出てこない。

さて、現実の話なのだが、「社会保険料は会社と個人が折半していること」をどれくらいの人が理解しているのだろうか。データでは現れてないようだが、肌感覚でいうと上場企業にいても半分くらい、規模が小さくなると30%以下の理解度のような気がする。金融関係の友人と話をしていても同意見で、入社教育に給料明細の説明が必要だと言っていた。そういう意味でそのモーニングショーのパネリストの1人が、「給料明細の社会保険料のところに会社負担分を明記するべき」という意見には納得できた。中小企業の負担は本当に厳しいラインに来ていると思う。当然企業を救済する制度もある。だが、以前も書いたが経営者として毎月1度はハローワークに行っていたが、「キャリアアップ助成金」のことは全く知らなかったように、企業への応援制度をもっとわかりやすくするべきだとは思う。

次に、もう1人のパネリストが、「払えない企業で働くなら、もっと待遇がいい企業で働ける環境ができる」旨の発言をしていた。いろんな会社を見てきたが、当然向き不向きも出てくる。個人としてやりたい仕事も違う。そしてまだまだいろんな意味で企業レベルが違う。そのレベル感を労働者がすぐには埋められないことをわかっていない。学校に偏差値があるように会社にもレベル差はある。ここでもまた2極化する。

最後に、決定的に厳しくなることは中小企業の体力だと思う。日本の会社で従業員50人以下の会社は97.3%でそこで働いている労働者数は61.8%を占めるそうだ。社会保険料の負担増で本当に厳しい会社が増えることは間違いない。国はそれでいいのかもしれないが、間違いなく社会構造が崩れていく。

この話題でのブログは3回目だけど、つくづく国は中小企業を切り捨てようと思っているのだろうなと感じる。そして何より、さらに今回でさらに厳しくなるだろう総企業数の60%を超える従業員50人以下の中小企業への救済対策もわかりやすく説明する必要がある。

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ちょっと気になること

11月の小売上場各社の数字が発表されている。11月は気温が低下してやっと冬物が動き出し、各社とも前年を大きく上回る数字だったようだ。ユニクロは既存昨対112.2%、アダストリア108.9、無印119.2、UA116.2とほぼ全社大きく前年をクリアしてきている。

ここでちょっと気になったのはワールド傘下になったライトオンが既存昨対83.7%と大きく前年を割っていることだ。チェックした上場各社の中では当然ワーストの数字だ。同様にファンドにTOBされた同業態のマックハウスは100.9%となんとかクリアしている。ずっとライトオンについてはこのブログでも触れてきたし、ワールド傘下になったのだからもういいとは思っていたが、どうも解せないことがある。

このブログの6月25日に上期決算数字を概算して34億円分の商品価格を下げているのではないかと書いている。10月に発表した今期決算書で再度確認してみる。くれぐれも勝手に推測しての計算ということは最初に再度断りを入れておく。

若干狂いは出るが、売価還元法で計算する。前年の利益率は48.1%なので原価率を51.9%とすると、期首原価在庫が10479(百万)であれば売価在庫は20190となる。今期末の利益率は39.9%なので期末の原価在庫5111から逆算すると期末売価在庫は8504となる。今期の商品仕入高は17693でありこれを原価50%(甘い!)で仕入れたとすれば仕入売価は35386となる。単純に期首売価在庫+仕入売価-今期売上=期末売価在庫になり、ここに今期売上(売価)38808を挿入すると20190+35386―38808=16768となる。値段を動かさなければこの売価在庫になる。期末原価在庫から計算した売価在庫は8504なので、16768-8504=8286(百万)の金額分商品が減っている。商品を破棄してないなら、単純に考えると80億以上の在庫評価を下げていることになる。つまり売価を下げているということだ。決算期に商品評価損として特別損失1564(百万)の計上を発表しているが、それでは数字が合わないような気がする。

計算が違っていれば指摘していただきたいが、これだけの商品の価値を下げて、商品をどうしたのだろうか?160億円分の商品を半額処分にするのと同じことで、それでも売れないだろうか?その半額にした商品が半分売れたとして、売上40億くらいは底上げできる。前期の売上が380億だがその数字が入っての売上だろうか?ちなみに今年は2月に既存店売上前年比をクリアしているのみで、トータルの前年比は82.7%となっている。その在庫評価を落とした商品は売れていないのか?売れてこの数字なのか?それとも破棄したのか?経験上不良品以外の商品を破棄することはないのだが、80億円超の商品はどこに消えたのだろうか?それを現金にしていたなら資金繰りも変わってくる。一般的にはセールをしてキャッシュに変えて商品をなくしていくのだが、売場にその気配は全然なかった。

ワールドに譲渡されたのでどこかで大きなセールをするのかわからないが、これだけの金額を処理しても売上数字に変化がでてこないのを不思議に思う。年末年始でなくしていくのだろうか?

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メーカー機能はどうなっていくのか

ネットで上場アパレル12社の上期決算がまとめられていた。(ユニクロと無印は決算期の兼ね合いで本決算だった。)ユニクロ、しまむら、無印、アダストリア、ワールド、オンワード、TSI、UA、ワークマン、三陽商会、バロック、Tベースの12社だ。数字についてはいろいろあるが、それよりこのくくりで一緒にできるんだというのが感想だった。感覚的にはワールド、オンワード、三陽商会、TSIはメーカーのイメージが強い。ただ直営展開も増えていて、小売りのイメージも大きくなってきてはいる。

40年以上前小売業に入社した時は、オンワード、三陽商会はメーカーで主な販路は百貨店だった。ワールドは専門店卸のイメージが強くそこから大きくなっていった。それがDCブームから自主の店を持つようになって、小売業の規模が増えていき、SCの拡大に併せてさらに形を変えてきている。ワールドの決算説明書を見ると、卸事業はプラットホーム事業に含まれているように見える。その事業の売上構成比は25%で、おそらく直営事業を指すブランド事業の構成比65%を大きく下回る。

小売業が利益率を上げていくには、当然仕入原価を下げる必要がある。その流れで当然上場企業は、商品を自らの手で作り始める。海外工場を作ったり、提携したりしてコスト(商品原価)を削減していく。そこまでいかなくても、ある一定の規模になればメーカーと組んでロットを大きくして原価を下げていく。所謂OEMと呼ばれる手法で商品を作り始める。メーカーの展示会で商品を発注するのは、多く発注できない個店や小規模企業になる。発注が小ロットになれば当然仕入原価は高い。世間の流れと同様に、小売業の購買客の流れは2極化しており、一般的には値頃感を求める客層が増えてきている。そのゾーンの競合は厳しくお客様の値段に対する要求もどんどん厳しくなっている。仕入原価が高いと当然売価も下げにくい。

中小規模小売店の商品の調達は、問屋やメーカーになる。小ロットでの発注では、メーカーリスクになるケースが多くなる。ある程度の量を作ることで当然コストは下がるが、発注量が少ない状況で商品を作ると、リスクはメーカーが持つことになる。もし受注が付かなければ、商品を作っても原価をさらにダウンさせて販売することにもなる。そしてある程度の売上の読みを持って、受注なしで先行して作成していく商品も多い。

小売業の現状を考えると、メーカーの商品リスクはどんどん上がっているように感じる。さらに中小小売業の経営状況も悪化している。大企業は自前で商品を作る。この状況でメーカーは商品を作り続けていけるのだろうか?この記事にあった上場アパレル12社のメーカーからの仕入は減っているだろうし、メーカーだった企業も直営事業に重きを置いているように見える。卸中心の大手名古屋のクロスプラスの決算説明書を見ても直営小売分野の売上が全体の20%まで上がってきている。

社会環境を見ると、どんどん値段合戦になっているように見える。そうなると、商品調達先のメーカーへの要求がどんどん厳しくなってくる。中小小売店が厳しくなっていく環境下で、メーカーの今後の商品戦略が難しくなってくるのは間違いない。

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小売業を冷静に分析できなくなっている

私用で大阪に行って来た。毎回行くたびに思うのだが、どんどん観光客の数が増えているように感じる。東京近郊にも観光客は多いのだが、大阪は京都が近く、観光スポットが限られているせいか、なぜか多く感じる。特に東南アジア系が多い気がする。通天閣近辺は日本人のほうが間違いなく少ない。どぎつく、はでなサインが喜ばれているのだろうか?

インバウンドの数字を調べると、平成23年度は売上が5.3兆円で1人当たり21.3万円の消費となっている。そのうち買い物は1.4兆となっており、消費の比率は34.7%から26.4%に落ちてきている。さらに24年は1~9月ですでに5.8兆円超ですでに前年を上回っている。ただここでも買物ウエイトは下がってきているようだ。観光客の「モノ消費」から「コト消費」へ移行が顕著になってきている。

「モノ消費」の中心の百貨店の売上はコロナ前くらいまで盛り返してきているようだ。明確な数字は未発表だが、新宿伊勢丹の免税売上は1000億超とのことだ。西の雄、梅田阪急は今年1~7月で559億と発表されている。大阪ミナミに集まる外国客のニーズをうまく引き受けているのが心斎橋大丸で、今期の全館売上予測を1000億超としており、インバウンド売上は45%にも達するようだ。(本当に心斎橋筋は日本人のほうが少ないのでは?)

景気のいい話を書いたが、百貨店の売上のうち国内需要のシェアは87.4%まで落ち込んでいるとも発表している。そしてインバウンド需要は大都市に限られている。百貨店以外の大手小売業ではセブンアイホールディングスが上期中間決算で純利益34.9%減と発表されているし、イオンも中間決算で純利益76.5%減でGMSは82億の赤字と発表している。堅調なイズミも上期は経常損益21.9%減となっている。

他の小売業の状況を見るとユニクロは2024年8月期決算で国内売上前年比104.7%営業利益132.2%、アダストリアは2025年上期既存売上前年比103.4%、営業利益前年比100.9%、無印も2024年8月期決算で既存店売上前年比112,8%、営業利益前年比169.4%と伸長している。ニトリ、しまむら、西松屋も2025年上期は既存店で売上、経常利益とも前年をクリアしており比較的好調な数字を発表している。

数字を見ていると、都市部の百貨店を除く大型商業施設の流れはあまり良くなく、比較的値段志向の専門店の流れは悪くない。インバウンドで潤っているのは大都市の百貨店で、国内での需要は値段志向になっているように見える。インバウンドの需要が「モノ」から「コト」へ変わってくると、小売業界は大変な時期になっていくようにも見える。円安の追い風でインバウンド客が増えているのであれば、また円が強くなったらそのプラス分が消えてしまうが、逆に日本自体の景気が上向いていくのだろうか?その要素はないようにも思えるが・・・外国人のための街のような大阪ミナミを見て、今後どうなっていくのかますます読めなくなってきた。

しかし、契約残年数が少ないからだとは思うが、一等地になった「なんばマルイ」はやる気は見えず、もったいない。

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中小小売業の人件費 ➁

前回のブログをアップしようと思ったら、16日の日経新聞土曜版で「勤務先企業がパート年金保険料肩代わり」と1面のトップ記事として掲載された。まとめてアップしようかと思ったが、パート2として書くことにした。

どういうことかというと、社会保険料が「年収の壁」によって手取りが減る対策として、その個人の負担分を企業が肩代わりする仕組みのようである。具体的には現状の労働者の社会保険の負担割合(折半なので会社5:労働者5)を収入に合わせて9:1~5:5までの仕組みを作るというものだそうだ。つまり企業負担が大きくなり、折半までは肩代わりするということだ。前回書いた中小企業の負担がさらに増えるということになる。これによって労働者側は手取りの急減を避けられる。さらに企業規模要件の撤廃や、5人以上の個人事業所も適用対象とする方針も示したようだ。

もしこうなれば、社会保険料の負担増分の多くを企業が負担することになる。これが本当に進んでいけば、中小企業のダメージは相当大きい。新聞にもあったが、企業間格差が拡大する。おそらく中小企業の淘汰が始まるだろう。特に経費に人件費の占める割合の大きい小売業は大変な時期に入る。前回書いたブログの前提がさらに重くなっている。

ちょっと話は逸れるかもしれないが、サントリーの新浪社長の「時給1500円にできない会社は退出」の言葉通り、厳しい会社はなくなり、労働者も高い給与を払える会社に移ればよいという発想になる。だが果たして、働くことは「給料」が基準なのだろうか?全員が高い給料を払えるサントリーに就職したいわけでもないし、得意でない分野の仕事をしたいわけでもない。さらに入社できるかもわからない。小売業でも全員がユニクロで働きたいわけでもない。やりたい仕事と給料のギャップはいつの時代もある。

新しく企業を立ち上げても継続が難しくならないか?スタートアップ企業が減ってしまうのではないか?などの疑問も残る。小売業では、現状以上に新しいショップが出現せず、同じラインナップのテナントリーシングばかりになりそうな気がする。もうすでにそういう状態ではあるが・・・

おそらく、金銭的に余裕のある企業が、厳しい企業を吸収していく流れが加速するだろう。そして、その流れに乗れなかった会社はどんどん「退出」していく。

厳しい中小企業の淘汰によって、ますます、小売業でいう客層の2極化が進んでいくようにも感じる。

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中小小売業の人件費

連日報道される「103万の壁」のニュースで、中小小売業は耐えられるのかと感じてしまう。その少し前には「時給1500円」のニュースも多く報道されていた。

中小小売業で収益を改善することはまず絶対条件として「売上を上げること」になる。自店でヒット商品が生まれたり、取扱ブランドが脚光を浴びたりして売上が上がる。ただその売上を維持するのは非常に難しい。特にファッションは長くは続かない。「利益を上げる」にはある程度の商品量が必要で規模が拡大しないと、なかなか仕入原価が下がらない。さらに規模を拡大するには当然店舗数も必要になり、投資を続けていかねばならない。そして最終的には「販売スタッフ」の質と人数のアップが不可欠になる。

立ち上げた会社でのラフな損益計算書を見ると、最も黒字が出た年度には人件費率が18%だったのが、コロナ期には34%になり大きく赤字を計上している。黒字期においても地代(家賃、駐車場費、共益費)の負担率よりも人件費が高くなっている。当然小売業は労働集約型で人件費の占める割合が非常に高い。

今回の「103万の壁」だが会社に損益上ダメージが大きいのは「106万の壁」がなくなる事だと思う。2024年10月から従業員50名以上の会社が対象になっている。以前の会社は約100名の従業員数だったので該当する。例えば時給1000円で月18日、日6時間働くとそのボーダーラインになる。今までは「130万の壁」が大きかったのだが今後は「106万の壁」になる。国は2020年代に時給1500円にすると言っている。と、するとボーダーラインだった人はどう働くか?時間を短くするか、壁を超えるか?今後配偶者特別控除の「150万の壁」をどうするかも考えなければならない。

それと同時に大きな負担が増えるのは企業にも当てはまってくる。個人の負担額を折半して会社が支払う義務が生じてくる。106万の人がそのまま働いたとして、健康保険+厚生年金+(介護保険)で折半分年間160千弱の会社負担が生じる。当然国の政策により時給は上がる。さらに年間130万働くと200千の負担額になる。以前の会社でも10名くらいはこのラインのアルバイトがいたので年間2000千以上の経費負担増になる。当然他のスタッフの月給や時給も上がるので人件費負担額はどんどん膨れる。時給アップと社会保険負担増で以前の会社だと、単純に2店舗分以上の人件費増になる。

中小小売業が、この人件費増とどう戦っていくのか?円安は続き海外生産のコストは上がり、出店条件も厳しくなる。小売業で販売力を落とすことはできない。力のある企業に飲まれるしかないのだろうか?

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