カテゴリー: 経営環境 (4ページ目 (7ページ中))

イオンモールとららぽーと

近隣のSCで将来的にRSCとして残っていくのは、「ららぽーと富士見」「コクーン」と「イオンモール浦和美園」ではないかと思う。(レイクタウンは30km圏なので除外。)

映画ついでに買い物に行くのだが、やはりららぽーとが一番魅力はある。商業面積はららぽーと8万㎡、コクーン7.8万㎡、浦和美園6.2万㎡、売上は、ららぽーとが490億、コクーンが390億、浦和美園が300億くらいではないかと思う。おそらく「ららぽーと」と「コクーン」の一騎打ちかもしれないが、今後の成長余力は浦和美園が大きいような気がしている。

浦和美園は近年開発が進んでおり、レイクタウンのあおりを受けてはいるが、今後のプラス要素は大きい。浦和美園が起点の埼玉高速鉄道は地下鉄南北線とつながっており、都内の四谷まで乗り換えなしで45分であり、埼玉スタジアムの恩恵も大きい。大学病院の計画もある。 現状は浦和市街地方面からは新見沼大橋1.4kmで150円の有料道路が便利だが(ほとんど迂回している)、あと数年で無料になる。無料になれば浦和市街地方面からも集客は増える。

しかしながら、イオンモールとららぽーとにはテナントMDで大きな差が出ている。もともとイオンモール物件でなくイオンリテール物件であったことも大きな原因だが、近年そのリーシング力の差は大きい。特にファッションテナントに大きな差が出ている。ららぽーとはベイクルーズやユナイテッドアローズを積極的に取り入れ、アウトドア系も充実させ、大型カテゴリーも抜け目なく導入している。注目ショップも続々と導入しており、大谷選手で話題の「ヒューゴボス」も出店する。イオンモールは春に改装を実施したが、大きな注目テナントはなく、好調テナント、生活雑貨系の大型化による改装のイメージが強い。ブランドへの流れと生活感のあるテナントへの流れはどちらが正解かわからない。トレンドを取り組むか、生活感を強めるかだが、そこでSCの位置づけは大きく変わる。

そもそも商圏的にどう見るかだが、富士見は車20分圏65万人、30分圏160万人と公表されており、浦和美園は商圏人口82万人と記されている。富士見はファミリー層が40%強でシニア層も27%と多いようだ。両SCとも浦和市街地からの集客がポイントになりそうで、富士見は荒川で分断されており、浦和美園は上述した新見沼大橋がネックになっている。どちらにしても比較的若いファミリー層が多い商圏と言える。

両SCで大きな差があるのは、GMSの有無だが、浦和美園イオンを見る限り、GMSの「イオン」は食品以外のニーズは非常に弱いと言わざるを得ない。もともとファミリー層の衣料品、生活雑貨はGMSが担うところであって、そのゾーンのテナントを拡大させているのは食品以外のイオン(GMS)のニーズが弱いということになる。レイアウト的に難しいがGMSの2、3階をファミリー衣料、生活雑貨系テナントにして、既存テナントを移設させ、その空いたところに少しトレンド志向のあるテナントを配置したほうが、SCとしては充実するのではないかと思う。やはりもう少し興味を持つようなテナントの導入が必要だと考える。イオンとして効率が低いGMSをそろそろ決断すべきだと思う。

ららぽーとも必ずしも買いやすいとは言えず、「サーキットモール」独特のサブ導線化(どちらか一方しか通らない。)したエリアはやはり魅力がない。さらにイオンモールに比べて都市型のモールであり、出店場所が限られてくるのではないかと思う。実際、比較的郊外のららぽーと(柏の葉や磐田など)は厳しい数字のようだ。近年はSMに「ロピア」などを出店させており、今後はデイリーの客層の変化もでてくるのではないかと思う。

「都市型」のららぽーとと、「地方郊外型」のイオンモールとして今後もすみわけしていくのだろうか?そうなればららぽーとの出店は限られ、大都市近郊のイオンモールの改廃が進みそうだ。

■今日のBGM

GMSは再生できない

「イトーヨーカドーが総菜で経営再建」というテーマで先日「ワールドビジネスサテライト」に数分間流れた。概要の一部だろうが、コメの質を変えるなどして総菜を強化していくとのことだ。食品売り場は変化してきており、所謂「ダブルコンコース」が広がり「生鮮+総菜」で差別化を図る戦略はどこの会社でも推進している。それでGMSの経営が再建できるのだろうか?

まず食品強化ということだろうが、SMの競合各社のレベルは相当上がっている。近隣に「ヤオコー」や「マルエツ」があるが大型モールのGMS(イオン)と比較すると商品力は格段の差がある。生鮮3品や総菜は完璧にSMの勝ちで、午前中に行くとイオンの生鮮の品揃えの遅さが際立つ。グロサリーやデイリー商材は売り場面積が広い分品揃えの幅は広いが、そこまで嗜好品を求めなければSMのほうがはるかにいい。なぜ大型モールに行くかといえば、まず駐車場が広くまとめ買いがしやすい事。さらに食品以外に定期的に見るテナントがある事だと思う。

前回書いたが、一定規模の駐車場があり、定期的に見ることができるテナントがあれば、NSC(ネイバーフッドSC)でもGMS(コミュニティSC)でも構わないと思う。つまりGMSに必要なのは当然SMに勝つべく食品と、定期的に見たい日常的なテナントが網羅されているかにかかっている。

イトーヨーカドーは「衣料品をやめテナントに変える」と当初発表していたが、現状はアダストリアと協業で「ファウンドグッド」を積極的に導入している。まずテナント導入についてはこのブログでも「できない理由」を上げた。おそらく賃料が合わなかったことと、売場の形状がテナントに向いてなかったことが原因だと思う。イトーヨーカドーという高収益体質の会社が賃料をどこまで譲歩できるかが課題で、賃料を下げなければテナントは積極的には出店しないと思った。賃料が譲歩できれば入るテナントはあったはずだ。さらにGMSはオープン年度によって、区画や仕様が変化してくる。古いGMSは天井高や導線が今のSCとは全く違う。天井の低い古いイトーヨーカドーに今のテナントはまずリーシングできない。アダストリアも自社ブランドなら出店しない店にも出店せざるを得ず、「ファウンドグッド」も売上にばらつきが出ると思う。その他のGMSの衣料品に関しても、イオンも坪売上10万もいかない衣料品を続けている。売場を新しくしても完全にお客様目線からずれている。

投資対効果で可能性は低いのかもしれないが、一度ユニクロや無印良品、ABCマートなど来店モチベーションが高いテナントと話し合って、建物の構造をどう変化すれば出店が可能かヒアリングすればよい。アリオに出店しているテナントと話し合えばいい。天井高や区画の形状を変えるのにいくら投資が必要か算出して、再度テナント誘致をするべきだと思う。

最後の手段は今のGMSの顧客をミドルレンジから、値段を意識する顧客に変更することだ。そのターゲットのテナントなら誘致できるはずだ。いつまでも減りつつある「中流」を中心顧客に据え続けているから再浮上はしない。なぜGMSが終わりそうなのかを冷静に考えればいい。

イトーヨーカドーの「食」の改善、イオンの「衣料」の改善、ともにお客様が見えていない。

■今日のBGM

ヤオコー マルエツ ダブルコンコース NSC GMS イトーヨーカドー イオン ファインドグッド

ファイブフォックス

ファイブフォックスの会長だった上田稔夫氏が亡くなられた。ファッション業界に一時代を築き上げた人物だ。ファイブフォックスはDCブランド全盛期の「コムサデモード」「ペイトンプレイス」などを展開していたファッション業界の大企業で、2000億超の売上で経常利益率もピークは13%あったとのことだ。

ファイブフォックスは黒を基調にしたモードファッション「コムサデモード」がメインブランドで、少し宗教染みた会社というイメージが強い。開店前に大きな声でスタッフ全員声を合わせて挨拶をしていたのを何度も見た記憶がある。商品の中に台紙を入れて同じ大きさに合わせて商品整理を徹底し、VP(演出)はモノトーン基調で固めており、さらに店内音楽はビートルズで統一していた。上田氏はファッションビジネスで大事なのは「商品」「店舗」「在庫コントロール」だと言っていたそうだ。全くその通りだと思う。

DCブームの後、 「野菜売り場の近くに大きな店を出せ。」との大号令で、「コムサイズム」を立ち上げ、脱ファッションビルで大型モール(GMS)に参入したのもファイブフォックスだった。「野菜売り場」はお客様が必ず通る。つまりデイリーのお客様の目につく一番の場所にファミリー市場の店を出した。この業態はファッション業界の常識を覆した。これが今のモールのファッション大型区画のスタートだったと思う。

昔の仕事柄、各ブランドの開発担当者と打ち合わせをしていたが、ファイブフォックスは冷たいイメージが強く、特に弱いデベロッパーには強気だったような気がする。売れているブランドはえてしてその傾向が強いが、大手だった「ビギ」や「ニコル」よりその印象は強い。それだけブランドの位置づけを大事にしていたのかもしれない。

コムサブランドはモードテイストの黒を基調としたMDブランドで、他の黒基調だった「ギャルソン」や「ワイズ」などデザイナーブランドよりクリエイティブさはなく、店舗イメージや演出、売り方を差別化させて、そこを武器にお客様を引き付けていたと思う。ただ、やはりモノトーンのMDブランドとして感じられてしまうと、ブームが去ると厳しい状態になっていった。現在年商が200億くらいということだが、それでもすごいと思ってしまう。売り上げの中心は「コムサフィユ」(子供服)ではないかなと思う。

商売哲学の「商品」「店舗」「在庫コントロール」については記事を読んで初めて知ったが、「商品」は小売業では共通だが、「店舗」「在庫」を意識していたことには共感する。あのレベルまで売場のイメージを固めてしまうと逆にマイナス要素になるかもしれないが、「おたたみ」のマニュアルや演出は驚かせた。コムサ憲法と言われるマニュアルがあると聞いたこともある。環境面を含めた店舗マニュアルは必要だと思う。「在庫」に関しては常々私自身も商売の基本だと思っているので、このブログでも一番ページを割いている。ファッションビジネスで大事なことと言っていたことには強く共感する。

改めて、デザイナーブランドでなくMDブランドで年商2000億まで育て上げた力量には時代背景もあったが、「すごみ」を感じる。

ただ、私はファイブフォックスの服を自分用には買ったことはない。

■今日のBGM

ファッション店舗は激減している

先月、知り合いの会社が株式譲渡された。ファッション小売店舗だが、一時は大型モール(RSC)中心に50店舗以上展開していた。譲渡時は10店舗を割っていたそうだ。大型モールは増えたがファッション関連の店舗は激減しているのではないか。個別にはMDや販売体制の問題もあるが、それ以前に店舗数が減っている。大型モールにファッションのニーズが少なくなっているのかもしれない。

大型モールの国内最初はどこか難しいが、現状のモール型は2000年のダイヤモンドシティキャラ(川口)がスタートのような気がする。その後、従来のGMSには入店しなかった「ワールド」「イトキン」「オンワード」など百貨店系メーカーや「サンエーインターナショナル」などヤングファッション系ブランドがディフュージョンブランドを大型区画で展開し、新しいモールのイメージを強めた。そこから20年経過しGMSを消滅させ、今は全国どこにでも点在している。つまり大型モールを引っ張ったのは都心から郊外へ広がったファッション店舗の力が大きい。

その当時立ち上げた「ワールド」のブランド「ショップTK」や「オペーク.クリップ」などは激減し「ハッシュアッシュ」はなくなった。イトキンの「avv」もほとんど見ないし、オンワードも「エニーファム(エニシィス)」もあまり見ない。サンエーインターナショナル(現TSIホールディングス)の「ナチュラルビューティベーシック」も大型モールへの出店スピードはダウンし、「&バイPD」はなくなった。いずれもメインフロアの大型区画にあり、大型モールの顔だった。

カジュアル系ではユニクロの国内店舗数は2019年817店が2023年に820店、同じくGUが421店から463店と大きな変動はない。アダストリアは国内2017年1220店から2023年1509店と増えている。大型ショップはほぼ横ばいだが、一世を風靡したストライプインターナショナルが2017年1400店から2023年には700店舗と半減している。ライトオンも2017年513店が2023年には373店に減少している。多くのカジュアル系の店舗は激減しており、それに代わって古着や値段志向の強いショップがやや増えてきている感はある。

逆に、1階のSMの近くには食物販のテナント、上層階には「100均、300均」や「携帯ショップ」など所謂「その他」業種の出店が増えている。さらに店舗の大型化が進んでおり、ユニクロや無印良品、ABCマートは増床出店が多い。どちらかというと必需品を大型化させているイメージは大きい。

ファッションが商業施設のイメージになる事は間違いない。新しいブランドを探し提案できなかった百貨店は、顧客年令が上がり衰退した。GMSも同様にお客様の年齢が上がって、デイリーウェアの品揃えの年齢も上がり、30代から50代の顧客を大型モールにとられた。中心客層が上がっていけば大型モールも同じ流れになる。すでにお客様は商業施設の使い分けはできている。新しいファッションの流れや新しいショップを探して導入していかねば間違いなく衰退する。常に新鮮であり続けなければ商業施設は淘汰されていく。

■今日のBGM

NSC(ネイバーフットショッピングセンター) 2

平成3年度統計で年金受給者数は4023万人いるとのことである。人口の30%を占め、その1家庭当たりの年金額は22万496円となっている。さらに「老後2000万問題」もあり貯金の取り崩しで生活している。ただ「食」に関しては最低限必要品でニーズは落ちることはない。

近隣にヤオコーが出店した。駅前の高級マンション「プラウド」の1~5階の1画に入店し、専門店は16店で、延床面積は2200坪(ヤオコー950坪、5層)となっておりヤオコーの初年度売り上げ目標は26億と公表している。商圏は1km圏5.4万人、2Km圏17.7万人、3km圏33.3万人という恵まれたエリアではある。ただ近隣(100メートル圏)にマルエツが2店もあり、駅ビルに食の専門店が多数入店している。

消費支出は伸びているが物価高騰に食われ、消費数量が減っている。2023年消費支出は1.1%の増加だが物価変動が3.8%あり実質は2.6%の減少と家計調査報告にある。おそらく状況は変わらない。給与が大企業中心にアップはしたが、物価に釣り合っているのだろうか?特に「食」に関しては毎日需要するもので支出を減らすべく、「オーケー」や「ロピア」などの格安スーパーに人気が集まっている。季節や輸入コストで値動きが大きく値段志向が強まっている。高年齢化もあり買い物は1部の富裕層を除くと「食品」中心の流れになってきている。

ヤオコーは35期連続増収増益で、SMの超優等生だ。私も食品売り場を持つビブレの店長時代、南古谷のウニクスを見に行って勉強させてもらった。提案型のSMの印象が強かった。おそらくSMとしてはどこにも負けないのではないかと思う。ただ食品以外をどうとらえていくか。NSCとしてのテナントのラインアップは何を優先しているのかと思う。今回の高級マンションと言われる「プラウド」への出店のテナント揃えはこれでいいのかとも思う。

ヤオコーが狙うべき客層の「衣料」、「服飾」、「雑貨」のニーズは何なのかを考えると、値段志向一点ではない。ある程度の感性を持ち合わせている。今回のテナント揃えは何を優先したのかと感じる。「賃料」で選んだようにも見える。飲食やクリニックモールを除くと「セリア(100均)」ドラッグ、買取大吉、パリミキ、ダンススタジオ、コンタクトアイシティなどで高層マンションに囲まれた駅前物件としてはコンセプトがない。3階1フロアを「無印良品」にするだけでSCが締まってくるように思う。ほかにもそういうショップは探せばある。「3コインズ(メガ版)」やダイソーの大型ショップもある。もう少し規模が必要だが「ユニクロ」もありだ。さらにアダストリアは絶対NSC、CSC向けのブランドを模索している。テナントが固定賃料の高さを嫌がるなら、「低い固定賃料+売上歩率」にしても売上額で賃料はカバーできると思う。

優等生の食品SMだけで戦うより、SC全体で戦えばさらに相乗効果が出ると思う。過剰な数の大型モール(RSC)がもう厳しい状況にあるので、NSCの成功タイプを早急に確立すべきのような気がする。

■今日のBGM

売場環境の維持…レイアウト・演出他

出店が決まると、売場図面の作成になる。店がオープンしてからもレイアウトや演出は売場の鮮度を見せる意味でも、大きなポイントになる。

レイアウトや演出も開発部中心に本部主導になっていることが多いが、間違いなく営業(特に店長)が中心になるべきだと思う。やはり「何を売りたいか」「どうやって売っていくか」は販売計画の基本で、それは現場により近いところで進めて行かなければ売場に「魂」が入らない。完全に店は作業だけで本部主導ですべて決定していけるのは、組織がきちんと機能している優良企業のみではないかと思う。ただ店に対するモチベーションアップの切り口は絶対に必要で、優良企業でも何か店が起因するプランもあると思う。

ストアメイキングマニュアルは各社にあると思うが、それは理想像に過ぎず、ほぼマニュアル通りにはならない。演出の仕方や陳列の仕方のマニュアルは当然あっていいが、最低限すべきことだけでいいと思う。例えば主通路の通路幅やサブ通路の通路幅、最高陳列量、最低陳列量など売り場を作るにあたっての基本を徹底し、あとは店に任せればいい。過去大手小売業で有名なコンサル会社を利用してVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)を推し進めていたが、成功したとは聞かなかった。(すぐ崩れたので失敗だったと思う。VMDではなくVP(ビジュアルプレゼンテーション)に過ぎなかった。)やはり売場作り、演出も現場に近いところで進めるべきだ。

最後に、売場環境で一番大きなポイントになる内装だが、内装には大きな経費が掛かり収益に直結する。素材の値段も上がっており、人的コストも上がっている。簡単にいうとローコストでインパクトある内装がベストだが、安い原価の商品をなかなか高く売れないのと同じで難しい。商品の値段が高ければ高いほど、売場のグレード感は必要だが、商品がボリュームゾーンであれば値ごろ感ある内装であっていいということはない。多店舗展開の店は当然売場区画の大きさや商品アイテムや商品ボリュームも大きく変化しないので同一イメージ、レイアウトが望ましいが、店舗数が少ない店やエリアに複数店持たない店は、できるだけ印象に残る内装が欲しい。友人の店で作業足場を組んだ店や、鉄骨むき出しの店など工夫した店は面白かった。什器以外でも映画や音楽のテーマで売り場のイメージを出すなど考えることはできる。お客様に商品だけでなく興味を持ってもらうべき店にしてほしい。

近頃SCを見ていると、興味を持つ店が全くなくなってきた。どこに行っても同じ店があり、その傾向が強いので「わざわざ感」を持てない。デベロッパーのリーシングの面白さがなくなってきているのが最大の原因だが、実はテナント側からも興味を持つようなインパクトがなくなってきている。ファッションビルのデザイナーブランドの内装インパクトまでは必要ないが、MDも含めて興味を持てる店がなくなっている。逆にテナントゾーニングで「こんなところになぜ?」と思う店は多い。その多くはショップとゾーニングがあっていない。

出店する側も冷静に出店環境を精査し、お客様を引き付ける店づくりを考えていくべきだ。

■今日のBGM

本当に景気は上向くのだろうか?

GW期間中に近くのモールに買い物に行ったが、例年通りか、少し少ない集客だったように思う。行楽もあるし普通の土日よりも客数は少ない。

賃金を上げれば消費につながり、景況感は上がっていくと報じられている。経団連や同友会が給料を上げて引っ張っていくと言っているが、国民の労働者の大企業に占める割合は30%弱であり、大企業の下請的企業は中小企業の50%弱を占めるという。当然コストを下げると中小企業に跳ね返ってくる。円安の流れで輸出企業のメリットは大きいが国内向け企業は厳しくなる。「国外向きに会社の方向性を変えるとチャンスだ。」と経済評論家はいうが、そうするには相当の労力が必要になる。つまり労働者の70%の中小企業労働者の景気の恩恵にはしばらく時間はかかる。さらに年金受給者数は平成23年度で3600万人超となっており、総人口の約30%が賃金アップの対象ではない。

前向きな意見は多いが、後ろ向きに考えればいくらでも不安要素は出てくる。事実小売業の売上の上昇機運は低く、インバウンド需要や高所得者層以外に好調要素はなかなか見当たらない。特に中小企業はコロナのゼロゼロ融資の返済が始まり、友人の会社もM&Aをしたり、廃業したりしている。

4月の月次売上速報を確認すると、日祭日1日減でも前年越えの企業は多い。特にファッション系は気温が上がり初夏物の流れが良かったようだ。確認できた中では既存店売上で、ユニクロ前年比118.9%、ユナイテッドアローズ112.3%と2桁増の好調な数字となっている。ただユニクロは今期期首からの累計では99.3%とまだ前年未達となっている。ユナイテッドアローズも年度で見ると先月までの1年間で小売既存店は100.3%と大きくは伸長できてない。数字の流れが悪いジーニングカジュアルのマックハウスはレディス強化で95.5%と少し上向き、ライトオンは状況変わらず82.7%となっている。

大きなヒット商品もない現状、「総中流」の流れは完全に終わっている。大部分がユニクロで商品を納得して買っている現実の中、価格対応ができてない店はせめて付加価値のある環境(売場内装、演出など)を作って付加価値を感じさせる商品を売っていくしかないのではないだろうか?

また、当たり前のことを書いてしまった・・・ 毎日、新聞を読んでいるとずいぶん景気が良くなったように書いているけど、やはり読み物であって、暗い気持ちになる記事は避けているように感じる。新聞社も企業だし、悪いことはほとんど記事にしない。毎朝明るい気持ちになるほうがいい一日になるからかな?

■今日のBGM

利益率は商売の結果であるべきだ

前回書いた研修のプログラム「基本的数値の教材」の最後は「商品の回転率、回転日数の意味すること」で終わっている。「商品回転率が高く、回転日数が短いと不良在庫の発生が少なく、仕入れ活動がしやすく、新商品の導入や気候変化に柔軟な対応ができ、売場が新鮮になる」とまとめている。これが私自身の商売の基本にもなっている。

商売は現状COD(キャッシュオンデリバリー:金を支払ってから商品を納入すること)はほとんどなく、支払いサイトは現金払いでは一般的に月末締め月末払いでスタートが多く、最長2か月後最短1か月後の支払いになり、平均すると45日後の支払いになる。伸ばしても2か月後には支払いになる。(近頃手形払いはあまりないのでは?)つまり商売の理屈では商品を2か月で現金にして代金を払い、その差額が利益になるということになる。資金がなければその流れを繰り返して手持ち資金を蓄えていく。資金が回ってくれば銀行から融資もあるし、規模を広げていける。

PB商品や取引先との別注商品などが増え、「買い」の商品が減ってきているので原価率も下がり、回転日数が増えても利益には響かなくなってきているが、やはり回転日数が増えれば売場の鮮度感がなくなってしまう。つまり売場に変化が見えてこず、売場のイメージが変わってこなくなる。

回転日数の悪い商品をなくすために、商品の値引きをして販売する。値引き販売をすると利益は当然下がる。値引き販売をしなければ不良在庫が減らないし売上金が入ってこないので、新しい商品を仕入れられない。規模が大きくなってくると、利益を落とせなくなって、その状態で仕入れを続けてしまう。回転日数が増え、悪循環の始まりになる。どうしても利益率優先になってくる。しかし、ここで計上された利益率は実態とはかけ離れている。

イオングループから離れてファンドのもと再生を図るタカキューの2024年2月期決算の数字を見てみる。営業状況はわからず、あくまでも数字だけだが、利益率は61.4%(前年差;+1.5%)回転率3.00(前年3.36回転)売上高100.3億(前年比83,7%)となっている。前年の純損失は10,5億で、今年は店舗大幅減で人件費と家賃の削減で10億以上改善して約1億の損失になっている。現金は11億(しかない?)で債務超過は続き、危険な状況には変わりない。

回転率年3.0であれば1カ月0.25回転になる。4000万の商品で月1000万の売上を作っていることになる。支払いサイトを長く見て90日後支払いで設定しても、回転率は月度0.33回転しなければキャッシュは回っていかない。リストラにより規模縮小があり売上は減っているが、回転率は悪化しているので商品は売上に合わせて減っている状況ではない。商品が売れなければ商売にならない。利益率61.4%あっても売れなければ利益にならない。最近の専門店決算でも利益率はユニクロ51.9%、アダストリア55.3%、スーツ業界では青山51.1%、コナカ58.0%となっている。つまり売上は上がってないのに在庫は多く、利益率は高いままという構図が見えてくる。なぜ値段を下げて、売れてない商品を減らそうとしないのだろうか?

利益率を上げていくのは当然企業としての大命題だし、そこを目指していくことは当たり前のことだ。ただ売上を上げていくことがさらに優先されるべきであって、そのための手段として値段を下げて売っていくことも当然ある。商品が売れて消化されることによって、新しい商品を入れるキャパができる。そうすることがあって売場が変化し新鮮になっていく。

利益率は当然高みを目指していくべきだが、努力した商売の結果で算出された利益率こそが本来のあるべき姿だと思う。

■今日のBGM

従業員教育

以前立ち上げた会社での従業員教育のファイルがある。「仕事の基本とは」「販売について」、「基本的数値の教材」、「受講した社員からのフィードバック」の書類などが入っている。

「仕事の基本とは」は①仕事の姿勢、➁仕事の進め方、③前もって備える、④仕事の質を上げる、の4項目で仕事の基本的な心構えについて整理されている。

「販売について」は、①店に立つ前のちょっとしたアクション、➁お客様にアプローチするときのちょっとしたアクション、③ニーズをつかむには、④商品説明のコツ、⑤クロージングテクニック、⑥店内にお客様がいない時、⑦店のおすすめは何?⑧さらに生かすには?の項目で、販売に必要なことをまとめてある。

「基本的数値の教材」は、①売価・原価と値入率、②粗利益高と粗利益率、③値入額と粗利益高、④仕入・売価と在庫、⑤仕入、売上、在庫と値入、荒利、⑥仕入、売上、在庫と売価変更、ロス、⑦回転日数と回転率の7項目で基本的数字をわかりやすく説明している。尚、コメントとして「①~③までで1時間かかる。2.3回は必要。」と付箋が貼ってあった。

その他、受講者の事前アンケートや事後の感想などがファイルされていた。2日間の研修プログラムで、特に数値については、もう何度か研修の場が必要のようだった。

こういうことが必要だなとは改めて思う。賃金が上がり、従業員確保が大命題になっている小売業で、現状スタッフ教育には手が回ってない状況ではないだろうか?そんな中で、各店舗で差がつくのはちょっとした販売の仕方だったり、スタッフの力量に左右されていると思う。スタッフ教育は組織力のある大手企業が先んじているのかもしれないが、個店でもやるべきことは多い。店長がスタッフとのコミュニケーションをとって、売場の販売体制ができているだけで売上は大きく上がってくる。

「基本的数値」についての教材は、マイカル時代の教育教材だった。新入社員には少し難しく、売場に慣れてきた段階で随時行っていくほうがいいかもしれない。ただこれが商売の基本でもある。昔売場の部門責任者は、この数値は完全に頭に入っていたと思う。その上で、仕入れ活動もしてきた。今の小売業でどれくらいの店長が理解しているのだろうか?セントラルバイイングになったり、店長の職務ではなくなったりしているかもしれないが、この「基本的数値」を理解して商売をしているようには思えない企業は多い。これが理解できて、売上と結びついてくれば小売業が楽しくなってくる。

「仕入」「販売」「営業」「管理」と分業になっていても、販売現場からいろんなことは発信される。従業員全員が同じ方向を向いて、同じ言葉で話せなければ数値は上がってこない。

■今日のBGM

値段の影響

服を選ぶとき、「好きであこがれているブランド」「何とかこのラインまでは頑張って着たい」「普段着ならいい(このゾーンは年々広くなっている)」「買わない」のランクが個人的にはある。当然そこには価格の壁があり、価格のランクもある。

店を立ち上げた時、洋服屋ではなかったが「普段着ならいい」グループの商品をきちんと売れるように環境も考え、品揃えしたつもりだ。自分なりにビジネスモデルも検証してスタートさせた。

商売の理屈を単純に考えてみる。5000円で商品を販売する。利益は50%必要だとすれば仕入原価は2500円になる。取引先も50%の利益を得るには1250円で調達する必要がある。3年前の為替レートは1ドル105円だったのが155円近くまで円安になっている。企業努力を考えず単純に価格を置き換えると、取引先原価が1850円まで上がり、やはり取引先が50%乗せると仕入原価は3700円になる。単純に計算すれば7400円で販売しなければどこかにひずみが出る。為替の変動で当たり前だが、値段を据え置けば小売店か取引先にひずみが出てくることを再確認してほしい。例えば小売店が上場企業なら、無言の圧力はあり取引先の利益減になるし、取引先が強ければ必然的に小売店の利益減になる。

当然、商品はコストを考えて、素材を変化させたり、工場を変えたりするし、店も経費削減をやっていく。その前提で、商品がどの値段まで通用するか?例えばワイシャツで考える。ブランド品や10000円以上の商品ならその購買客層から大きな抵抗感はなさそうだが、5000円から10000円までの商品なら2000円上がると間違いなく売上は鈍る。一般的には値上げが大きく影響するのは30%アップくらいからだと言われている。個人的にも5000円で買っていた商品が7000円になれば買わない。5000円以下の購買層になると完全に値段志向になる。つまりモデレート層が価格志向層に引っ張られる。

先日ネットで年収2000万以上のラグジュアリーカード会員の調査が掲載されており、よく身に着ける「ハイ」ブランドはヴィトン24%、エルメス18.1%に対して、よく身に着けるブランドはユニクロが42.1%となっていたそうだ。普段着やインナーはユニクロという流れかもしれない。ファッションにおいては、高所得層はモデレート層ターゲットにはあまり流れてなさそうだ。

モデレート層が減ってきて、さらにその層が両極に引っ張られている。モデレート層を取り組むべき専門店が厳しくなってきている。

常々、「感性」「値段」「環境」を念頭に店づくりをしていくべきだと思っている。「値段」が厳しい状況下で、ちょっとしたこだわりを見せる商品の開発力が必要になってくる。さらに商品以外の売場内装や販売環境を再度見直し、強化する必要性も高まってきていると思う。

言うのは簡単だけれど・・・

■今日のBGM

« Older posts Newer posts »