カテゴリー: SC (2ページ目 (11ページ中))

大型モール(RSC)の寿命 3

今年の1月に、この標題で2本ブログを書いている。その他のブログでも、大型モールに関しては悲観的な見方で書いている。ネットでAIに「ショッピングセンター(SC)の推移」と聞けば、「新規開業数は減少傾向であり、小型で生活密着型のSCが増加している」と答える。さらに、「テナント構成比は衣料品の割合が低下し、取り巻く環境は人口減少や建築費の高騰が要因で非常に厳しい」と答えている。

一番の要因は、テナントの新鮮さがなくなってきている事だと思う。これだけSCが増えると、どのSCも入店テナントが似てきて、テナントでの買い物をするためにわざわざSCに行くより、デイリー的な買い物で行く比率が完全に上回っているように思う。RSCのスタート期は大手アパレル(ワールド、オンワードなど)や旧DCブランド系(ファイブフォックス、サンエーなど)の百貨店以外へのチャネル開発もあり、テナントには新鮮さがあった。さらに路面店やファッションビルに出店していたヤングターゲットのテナントを積極的に誘致していった。つまりそれまでの「ダイエーと50の専門店」とか「イトーヨーカドーと70の専門店」といったチェーンストア目的のデイリー的なSCから専門店目的のSCへ大きく転換していった。ただそれから30年近くたち、テナントの新陳代謝は進んでいない。

では、テナントのラインアップが変わらない要因は何だろうか?現状上記したようなどこにでも出店しているテナントは大型区画が多い。「ユニクロ」「GU」「無印良品」「ABCマート」などは、区画がどんどん大きくなっている。大型カテゴリーとしての家電、書籍やニトリなどの住まい関連、ムラサキスポーツなどのスポーツ関連、さらに近年は100均、300均の店舗も大型化している。ファッション系ではアダストリアやパルの各ショップも大型化しており、アダストリアでは基幹のグローバルワークも標準面積を150坪となっている。他のほとんどのブランドも100坪前後の標準面積となっている。従来からの大手アパレル系テナントは100坪前後だし、付加価値のあるセレクトショップも100坪前後と大型区画としての出店が多い。

大型区画は一般的には、歩率契約が多く、最低賃料があったとしても単価は安くなる。以前の会社で約30坪の店が契約満了の際、再契約なしということがあった。売上は順調に推移しており、標準的な契約で賃料も安いわけではなかった。続ける意思はあったが、隣の大型区画を拡大するとのことで退店した。過去のリーシング経験からおそらく広がっただけで、固定賃料の増加はほぼなく、売上アップ分の歩率賃料増加のみがデベロッパーの賃料増になる契約だろうと思う。デベロッパーはその拡大区画だけを見ると、賃料ダウンにしかならない。当然そこには企業同士の思惑はあるが、どこかでその賃料ダウン分を埋め合わせしなければならなくなる。

大型店舗を導入すると、SC全体のバラエティ感がなくなってくる。当然複数店舗の固定賃料や共益費など合算のほうが、大型区画1店舗の賃料収入よりは大きい。ただ大型区画が、そのSCイメージを上げ、集客策としてはプラスになることもある。しかし、これだけ大型区画が増えてくると、50坪以下の標準区画への賃料にしわ寄せがくる。その結果として、出店へのハードルが上がる。標準区画への出店交渉が厳しくなった結果、出店コストがかからないショップや催事要素の強いショップが増えている。そして大型店舗が増えることでSCの個性がなくなり、狭商圏化が進む。

さらに賃料のしわ寄せによって、次世代のテナントが入店しにくくなっている。実際に、ここ数年大手企業以外で、興味を持つようなテナントは非常に少ない。内装経費上昇など出店するハードルもどんどん上がっている。各地域で成功して、全国展開していったテナントは本当に少なくなった。そういうテナント開発をしていくのもデベロッパーの使命だと思うが・・・

国内のGMSは約50年で淘汰が始まった。国内大型モールもおおよそ30年を過ぎようとしている。ラインアップが同じようなRSCが増えてくると狭商圏化し、淘汰が始まる。

■今日のBGM

競合激化するSM(スーパーマーケット)業界

再三、このブログで取り上げているが、国内需要は高齢化によって必需品中心にならざるを得ない状況にある。現状国内の60才以上人口構成比は35.4%であり、30年前の倍の構成比になっており、その人口は43800(千)人になっている。まだ働ける年齢とはいえ、現役ではなくなりつつある世代になる。当然、ファッション関連やビジネス志向の商品は伸びるわけはなく、食品を中心に必需品の購買ウエイトが上がってくる。その流れ通り、SM業界の数字は堅実に伸びている。6月のスーパー全体の売上は前年比104.2%と4カ月連続伸長となっている。

近隣にまたヤオコーができるようだ。駅前に昨年5月オープンしたばかりだ。新物件のオープンは来年6月となっている。ちなみに駅前物件と新物件の距離は500mくらいしかない。調べてみると駅近辺1km圏には、ヤオコーを含めて、マルエツ2店、コープ、ベルク、オーケーなど10店程度のSMがある。マルエツは500mくらいの距離に2店出店している。武蔵浦和駅前から2kmで浦和駅の商業集積があり、3Kmのところにイオンモール北戸田もある。そしてSMの密度は濃い。

おそらく、近隣2店舗出店は競合激化によるところだろうと思う。オーケーは近隣にあるが、オーケーも含めてロピアなど新興ディスカウントSMの進出に抵抗した結果かもしれない。マルエツの近隣の2店舗戦略も「競合に出店されるなら・・」という同様の結果だと思う。ただ今回の出店で一番ダメージを受けるのは300mも離れていないマルエツの1店舗になる。

地元民として、新物件は決していい場所だとは思えない。南側には学校が2校あり、その先にはベルクスやイオンモールがある。東側にはロッテの工場や2軍球場があり、その先は線路で商圏が分断されている。駅に向かっての東北側はマンション群だが、駅中心に商業集積があり、西側はマンションや住宅地になるが、SMのコープが近隣にある。さらに新物件は駅に向かうメインの道路に面しておらず、立ち寄りやすい場所ではない。

間違いなくSMの魅力だけでは、自社も含めて各社との食い合いになる。SM以外で何か引き付けるものが絶対必要になってくる。説明会の資料には述床面積9140㎡で3層、1階はピロティ(駐車場)と飲食、2階がヤオコー、3階が専門店となっている。この立地で、ある程度わざわざ性を高めるには間違いなく魅力ある専門店が必要になってくる。

昨年の駅前出店の時にもヤオコーの「テナントの弱さ」を指摘したが、今回の出店場所は、ますます集客力のあるテナントが必要になってくる。現状、武蔵浦和駅周辺には、ある程度の商業集積には必要な「ユニクロ」「無印良品」がない。これだけ高層マンションがあり、交通の利便性がいい立地でこの2店舗がないというのは、街自体に欠落があるようにも思えてくる。フロア構成上2社は難しいかもしれないが、この商業物件としての成功は、この2社へのリーシングにかかっていると思う。

国内の大型モール(RSC)はもうすでに停滞期に入っており、今後は、少しずつ淘汰されていくように思う。商圏に合わない大型化しすぎたRSCが多く、空床部分も目立ってきている。さらに、先述したように高齢化が進んでおり、以前のGMSのようなCSC(コミュニティSC)や、SMが中心のNSC(ネイバーフッドSC)といった利便性あるSCの時代に戻っていくと思う。その時には自店でのSMのMD力だけでなく、フル感性で日常的なテナントとの共存が絶対に必要になってくる。

■今日のBGM

イオンは優れた会社だが・・・

前回、再生に向けた3社について書き、その中で、今回はタカキューの再生について書こうと思った。イオンは優れた企業だと感じていたので、そのイオンが手放そうとしている企業の再生は難しいと思ったからだ。イオンがいろんな角度から分析、対策した結果からの結論だし、業界自体もアゲインストの中での再生になると思う。タカキューの決算短信やHPを見ると「感性?」を打ち出しているようで、過去のイオンでの再生の方向性とは違うようなので、それはそれでいいのだが・・・

その内容を書きながら、優秀な企業であるイオンがなぜGMSをやめないのかをずっと考えていた。以前も同じようなことを書いたが、やはりやめない理由がわからない。

私事になるが、イオンがマイカルの経営再建に乗り出して約1年、イオングループで働いた。結局は辞める決断をしたが、その1年はその後小売業を続けるうえで非常に有意義だった。その期間にイオンの研修を受講した。退職したため中退したが、有意義でレベルの高い研修だった。退職時にそのテキストや資料は全部返却させられたので、あまり詳しくは書いてはいけないのかもしれない。研修期間は1年以上で毎月の集合研修とG別課題解決に向けての自主研修、さらにはネット講座もあった。その後その受講していた社員はイオン本体やグループ会社の経営職になっていったようだ。その時のノートは、その後自分で起業した時や経営課題を考える時に何度も見返した。そんな有意義な研修をいろんなポジションでやっている企業が成長しないわけがないと思う。

なぜGMSは続けているのか?2025年決算ではGMS事業として売上は全体売上の35.1%を占めているが、営業利益では6.8%しかない。グループでの営業利益は金融、デベロッパー、ヘルス&ウエルネスが上位3カテゴリーで、その構成比は合わせて54.7%と半分を占める。SM事業も営業利益はGMSの2倍であり構成比は13.8%になる。GMSの詳細は読み取りにくいが食品事業は伸長しており、衣料品は前年割れの状況のようだ。GMSではイオンより優等生だったイトーヨーカドーが衣料品から撤退しており、もうGMSとしての存続は厳しい状況になっている。イオンのGMSも食品頼りになっており、その食品もSM(スーパーマーケット)事業と併せれば改善がさらに進むのではないかと思う。そして、間違いなくGMSの解体を考えるべきだと思っている。

続ける理由は何か?大きな要因は収益の柱になっている金融事業の根底にGMSがあるということかもしれない。カード戦略を中心とした金融事業の根底にあるのはGMSの客数、客層にある。GMSのポイント戦略や販促面へのアプローチでカード顧客を広げていっている。ただこれはGMSからデベロッパー事業に置き換えることはできないのだろうか?当然テナント各社独自の戦略もあるが、ルミネカードやエムズカードなどの普及を考えれば可能だと思う。そしてまだまだ好調なSM業態を起点にしてもいい。

さらに、東日本大震災の時、セーフティゾーンになったように災害時の生活拠点化としての位置づけを想定しているということも考えられる。これは地域貢献の最たることではあるが、これも現状のSCの機能に委譲し、各テナントにその役割を明確に依頼すればいいと思う。その他、従業員の処遇など当然のように課題は数多くあるが、それはどこの企業でもよくあることだ。

きっと一番大きな原因は、創業者一族の、「礎だったGMSをなくせない」という強い意志のような気がする。そして、間違いなく、イオングループの次のステップは、祖業でもあるGMSをきれいに解体することから始まると思う。

■今日のBGM

難しい靴業界で成長続けるABCマート

ここ数回ずっと在庫のことを書いてきた。自分で商売するときは「在庫を持たない」商売をしようと思っていた。過去小売りの仕事をしてきて「ジーンズカジュアル」と「靴」は在庫を持って商売しているイメージしかなかった。両カテゴリーに言えることは、サイズが細かいということになる。細かなサイズに合わせて在庫を持てば当然在庫は増える。中心サイズがなくならないように多く持つと1品番当たりの在庫は増えていく。さらに定番的な商品が多く、値段を打ち出しにくい。

ビブレの店長時代、店長は自主直営売場の数値責任を持っていた。当然各売場には、仕入れ権限のある売場の責任者がいるが、MD計画、数値計画は店長が確認する。一番利益面でわかりにくかったのが靴業種だった。サイズが多岐にわたり在庫も多くなる状況はジーンズと同様だが、ジーンズの売場はトップス、アウターでの調整ができる。靴は皮革とケミカル、スポーツなどに分かれるが、調整できるアイテムは少ない。取引先との商売条件も多くあり(消化、委託など)買い取り商材は大きな値下げが発生することも多く、利益率が高い状況で安定することがなかった。難しい業種だった。

ジーンズのナショナルチェーンはどんどん厳しくなり、全国チェーン展開の専門店は近年のライトオン、マックハウスの事業譲渡もあり、ビジネスとしては成り立ちにくくなってきている。一方靴業界も同様でありアメリカ屋靴店やマルトミなどの倒産例もあり、特にカジュアル志向が強くなった現状では靴業界も淘汰されようとしているように見える。そういう状況下、靴業界のABCマート、チヨダ、ジーフットの大手3社の決算数字をチェックしてみた。

売上面ではABCマートの絶好調ぶりが群を抜く。2025年決算で3772億計上されておりコロナ期以前の数字から136.7%伸長している。チヨダはマックハウスを除外して調べてみた。売上数字は年々マイナス傾向で1000億企業だったのだが、2025年787億まで落ち込み、コロナ前からでは89.5%の売上となっている。ジーフットは2025年売上が600億でコロナ前からでは67.3%の状況となる。

利益率は2025年決算でABCマートは50.5%、チヨダは47.7%、ジーフットは44.1%。営業利益率はABCマート16.8%、チヨダ5.3%、ジーフット-1.3%となっている。チヨダはコロナ期以外黒字体質ではある。ちなみにジーフットは2023年に債務超過になっており、2025年親会社のイオンからの第3者割当で解消している。1店舗当たり売上はABCマート248(百万)、チヨダ87(百万)、ジーフット63(百万)と大きな差がある。

一番重視している回転率はABCマートが年2.04回転で数年はほぼ2回転前後。チヨダは年2.21回転と前期大幅改善しており、過去の1.8回転前後から良化している。ジーフットは年1.46回転で、過去の1.3回転前後からは改善しているがまだまだ低い。

完全にカジュアル化の波が大きく、スポーツブランドを打ち出すABCマートの出店戦略が成功しており、特に売場大型化がその要因にもなっている。近年主流になった大型モール(RSC)の全国拡大に併せて企業規模が拡大している。逆にチヨダは大型モールへの流れに乗れず、従来のGMSやSCでの商売を続けている。ジーフットは当然イオン系SC中心になるが、イオンGMS内(所謂ジャスコ)の靴売場も運営しているため、SC部分への出店が大きく出遅れた。さらに現状のGMS内の衣料服飾品の赤字体質が続けば、企業存続にも赤信号が灯る可能性もある。

在庫面に関して考えると、ABCマートは常にプライスダウンを打ち出し消化率を上げようとしている。売場内でも大きなセールコーナーを取っているし、いたるところで催事も見かける。アパレルを加えた売場が増えているのも在庫面の課題解消策かもしれない。それでもあと年0.5回転くらいのプラスは必要だと思う。チヨダも回転率の大幅上昇もあり、意識は高まっている。逆にジーフットは決算時に在庫課題はいつも上げているが、全く改善は見られない。

追随する企業のアゲインストの流れが大きく、対抗する企業がない状況下で、カジュアル志向が続けば「ABCマート」1強の流れは確定的になっている。

■今日のBGM

やっぱり、この会社は・・・

このブログの今年3月にヴィレッジヴァンガードについて書いた。私自身「小売りのキーは在庫」を念頭に仕事をしてきたし、その観点で企業を見る。ヴィレッジヴァンガードの回転率の低さは業態が複雑であっても、少し異常に見えた。今期決算が発表され、リストラ案も併せて出されているが、おそらく再浮上には大きな改革と多数のヒット商品が必要な気がする。

商売の基本は、「商品を仕入れ」て「商品を売って現金化」して「代金を支払う」ということに尽きる。売れなければ支払えない、支払えなければ仕入れられない、仕入れられなければ商売は続かない。簡単な仕組みだ。いろんな形態はあるが、一般的に現金払いの時は(もうさすがに手形はない?)、末締めの翌末払いが多いように思う。つまり月初に仕入れれば約60日後に、月末に入れれば約30日後に支払う。平均すると45日後には支払いが発生する。その間に売れなければ支払えないということになる。企業の規模や取引年数にもよるし、原価率にもよるが長く見ても4~5か月後には商品は現金に変わってないと商売は続かない。さらに衣料関連では四季があるので、季節外れでは売れない現実もある。つまり商品は最低でも年3~4回転は必要ではないかと思う。

ヴィレッジヴァンガードの商品回転率を年度別に出してみた。年初売価在庫、期末売価在庫(原価率から逆算)を2で割って平均在庫とし年間売上で割ってみると、2024年は1.13回転となる。つまり1年間でやっと1回商品が入れ替わるということになる。取扱商品が衣料服飾品だけはないので季節指数があてはまりにくく、さらに書籍の一般的な回転率もわからない。ただ、近年は衣料品や雑貨の比率が高まっていたようにも見えるので、あまりにもこの商品回転率は、低すぎるように思う。過去10年の回転率を計算してみたが2016年の1.56回転からほぼダウントレンドになっており、2023年は0.97回転と1回転していない。つまり在庫過多状況が続いているということになる。

当然、経営側はその事実を理解している。毎年の決算短信にはコメントしているし、実際今期は店舗縮小の名目ではあるが2472(百万)の商品の評価損を計上している。さらに2013年にも同様に4692(百万)の商品評価損を計上している。そして今期以降に81店舗、今期39店舗の退店計画を発表している。決算時の店舗数は293店舗となっているので今後約3割の店舗を減らす計画のようである。

尚、今年度の数値予測は売上25921(百万)前年比103.8%、売上総利益率43.2%(前年度差+5.7%)営業利益1048(百万)(前年差+1984百万)と発表している。今期は出店1退店39となっていて期末の店舗数は-38であり、計算すると次年度1店舗当たり売上は101650(千)で今年度の85195(千)に対して119.3%となっている。この状況下で店舗当たり売上が119%伸長し、利益率が5.7%も上がる計画はどう考えてもあり得ない。当然39店舗の閉店セールは実施するのだろうし(それが売上の上昇予測要因?)、この在庫状況ならもっと値段を下げなければ商品はなくならない。利益はどうやって上げていくのだろうか?ネット売上にそこまでプラス効果は期待できないのではないか。

個性が強く、「宝物探し」的なMDで大きくなっていったが、郊外モールなどへの出店も増え、標準化された売れ筋の品揃えも増えていった。商品量が少ないから、マニアは探して買う喜びがあるが、ありすぎるとどこにでもある品揃えになり、「わざわざ感」がなくなってしまう。前回も書いたが、昔経営していた店の商品品揃えとも重なることがあったので、定期的に見ていたが、間違いなく「切り上げ期」が遅すぎた。ひどいときは次年度まで商品が寝てしまっていた。本や雑貨と同じように衣料品や服飾品も年間商品と捉えているように感じていた。当然売れずに在庫は増える。アイテムが広いので店長や本部スタッフの得意分野でのみ商売をしていたのではないだろうか?売場の個々の商品サイクルがわかってないように見えた。

そういえば、昔も商品の評価損を出していたなと思って調べると前述した2013年だった。結局10年以上たっても同じことをやっている。そして時代は、その時分よりもヴィレヴァンに迎合していない。このカテゴリーに手を差し伸べる企業はあるのだろうか?

■今日のBGM

ららぽーととイオンモール ➁

前回、セレクト系のショップのRSC(大型モール)への出店傾向についてコメントした。そしてその出店先は「ららぽーとに限られているように見える」と書いた。RSCのアッパー層をターゲットにするセレクト系ショップのリーシングが、イオンモールとららぽーとの立ち位置の違いに現れてくると思うので、再度まとめてみる。

まず、ユナイテッドアローズの出店について調べてみる。主な出店ブランドは「UAグリーンレーベル」であるが、このブランドのターゲットはRSCや地方ターミナル客層を想定している。そのため、当然出店店舗が各地のRSCには多くなる。ららぽーとへの出店は11店舗(ラゾーナ含む)、イオンモールへの出店は3店(レイクタウンとモゾ、京都)となっている。その他の店舗もテラスモールやマークイズ横浜など大型物件中心になる。イオン系ではモゾや京都はもともとの開発運営母体からイオンモールが引き継いでおり、実際は規模感の大きいレイクタウンのみへの出店とみてもいいような気がする。「ビューティー&ユース」もららぽーと2店、イオンモールはなし、「シテン」もららぽーと9店、イオンモールは前述したモゾのみ。やはりユナイテッドアローズのRSC出店はららぽーと中心であり、他は各地の大型モールへの出店(テラスモールなど)という流れになっている。

ビームスの出店については、ビーミングでららぽーと9店、ビームスで1店。イオンモールは前述したモゾのみ。その他西宮ガーデンズ、コクーンなど。シップスについてはららぽーと2店、その他テラスモールや西宮ガーデンズ。ベイクルーズはレリュームを中心にららぽーとに20店舗弱。ららぽーと福岡にはベイクルーズストアがあり、エキスポシティにはスピック&スパンも出店している。イオンモールはレイクタウン1店のみで、その他テラスモールや西宮ガーデンズには出店している。

上記データを見ると、やはりセレクト系の出店は大手SCではららぽーと中心であり、その他テラスモールや、西宮ガーデンズのような大型化され立地にも恵まれた都市型物件への出店がほとんどとなっている。そして、イオンモールへの出店はほぼレイクタウンだけという結果となった。

セレクトショップへの客層は、都市型の客層が多い。都市部の路面店やターミナルの駅ビルで買い物するお客様が中心となっている。その流れで見ると、ららぽーとのほうが、比較的都市部に近い場所に立地し、イメージも大型モールではあるが駅ビルに近いかもしれない。

イオンモールは、もともと「狸が出るところに店を出せ」からスタートしており、地方郊外の大型モールの位置づけになっている。さらにキーテナントがGMSのイオンというSCでは、ターゲット客層が量販店寄りになりつつある。SC売場面積の四分の一くらいを占めるイオンで中心客層が絞られてしまっている。ららぽーとにはその見え方はなく、SCに「小売企業の色」が強くない。現状一番減少している業態であるGMSの客層がメインターゲットでは、SC内でもアッパーゾーンを取り込みたいセレクト企業には魅力は小さい。レイクタウンへの出店は、他のイオンモールと違いモールにバラエティ感があり、GMSとしてのイオンの匂いが薄いからだと思う。

ずっと書いてきているが、イオンモールから量販店イオン(ジャスコ?)の匂いが小さくならないと、何年後かには、イオンモールも今のGMSと同じような状況になってしまいかねない。

■今日のBGM

若干アッパーゾーンの客層

近頃は、このブログで「ユニクロ」や「無印良品」の商品戦略や売場を持ち上げてばかりいる。5年位前までは「ユニクロ」を真剣に見たことがなかったし、「無印良品」も近年やっと無印創業時以来の頻度で通っている。10年くらい前は、店舗巡回の折にセレクトショップのアウトレットを見て回り、掘り出し物を見つけては喜んでいた。生活環境の変化で「衣食住」の買い方は変わる。そして、コロナ以降、小売業界も2極化が進んでいる。

百貨店やセレクトショップ等でプロパー価格での買物をする層は、どれくらい減っているのだろうか?ネットで調べると、百貨店売上は1991年9兆7130億がピークでそこから大きく落ち込み、近年はインバウンド効果で昨年は5兆7722億まで持ち直しているようだ。この現象はいろんなデータが発表されているので周知のことだと思う。ただ地方は現状、百貨店は淘汰され、購買層も大きく減少している。

衣料関連の専門店の動向をチェックする。コロナ前の売上と近年の売上を比較してみる。前述したユニクロはコロナで落ち込む前の売上比で135.5%(2020年比)、無印良品は150.8%(2019年比)。その他企業でもアダストリア123.9%、パルG145.7%、ABCマート126.4%、ニトリ147.3%、西松屋134.6%とコロナの不振をばねに大きく伸長している。逆にタカキュー43.1%、ライトオン52.5%、マックハウス55.0%とコロナを乗り越えられず、会社の方向性が変わった企業もある。そういう中で比較的アッパーゾーンがターゲットだった企業も、まだ元の数字に戻っていない。ワールド81.0%、オンワード76.4%、ユナイテッドアローズ84.5%、TSI91.4%とまだまだ顧客を取り戻していない。つまり悪い流れだった企業は淘汰され、さらに値頃価格志向の企業が上向いているように見える。

百貨店が中心の販路だった企業は当然のように厳しい。そしてユナイテッドアローズのようなセレクト業態も、前年数値をクリアしては来ているもののコロナ以前の数字にはまだ届いていない。課題は、百貨店等値段が通る販路のマイナスをどこでカバーするかになっているようだ。当然EC戦略が大きい流れではある。EC売上高はオンワード431億、TSI430億、ワールド356億と非常に大きい。しかしまだまだ過去の全体数字をカバーできてはいない。そしてここにきて大型モールへの取り組みも増えてきている。

近年、大型モールにセレクト系の店舗が急増している。ユナイテッドアローズは「グリーンレーベル」というそのゾーンのターゲットのブランドを作り広げてはいるが、ビームスやベイクルーズも「ビーミング」や「レリューム」などのブランドで広がってきている。「グリーンレーベル」の店舗は現在91店舗もある。ただし、他のセレクトショップは出店場所を見極めているようで、現状は大型モールの中でも出店は「ららぽーと」に限られているように見える。(ここに量販系イオンモールとららぽーとのモールの格差が出ている気がする。)旧百貨店対応メーカーもメーカー名を打ち出して出店が増えている。さらにオンワードが「ウィゴー」をグループ化しワールドも「ナルミヤ」や「ライトオン」を傘下に入れており、従来の販路とは違う企業を積極的に取り込んでいるようにも見える。

アッパーゾーンを取り組むより、ボリュームに流れるミドルゾーンを、どうやって引き留めるかが今後の小売業の大きな戦略になってきそうだ。

※日曜日、駅前のヤオコーに朝10時前に買い物に行った。入口近辺に備蓄米が2160円で山積みされていたが、販売員だけでお客様はいなかった。その後売れないので米コーナーや、特売品のエンドで販売していた。加熱した報道にあった混乱は、もう終了したのだろうか?

■今日のBGM(ネットで映画を再度見直したので・・・)

ららテラス川口

見た第一印象は「大丈夫?」だった。

売場区画を作りにくい地形、食品売り場に「?」、テナントのターゲットに「?」。駅前の1等地物件が、空いたままだった理由がよくわかった。

川口市は人口約60万人。隣接駅は東京都赤羽駅。通勤に便利で、駅周辺には大型マンションが多い。クルド人問題で取り上げられ、外国人も多い。昔は駅前にそごうだけでなくマルイもあった。さらに郊外にも大型RSCのイオンモール川口前川、イオンモール川口もある。JR川口駅の1日乗降客は149千人で埼玉県では5番目の多さとなっている。

「ららテラス」の他施設を調べてみると、地域密着型で比較的買いやすいテナントが多く、わざわざ感より、利便性を重視しているように見える。ただ、旧川口そごうの物件であり、デッキで駅と直結しており、何よりも11階建てで3万㎡近い売場面積がある。そごうの売場面積は32621㎡となっていた。床はおそらくそごう時代のままで、「からくり時計」も復活している。所謂、百貨店のハコのままになっている。

沿線の大宮には、百貨店が2つあり、ルミネ、丸井がある。浦和には伊勢丹とパルコがある。百貨店は川口にはもういらないことは実証済み。駅ビルスタイルにするのか、従来の「ららテラス」ターゲットのするのか非常に難しかったのではないだろうか。結局は両方取り組んだという結果のように見える。近隣の浦和パルコがそのモデルになりそうだが、決定的に課題になるのは、各フロアの地形が悪く、各フロアの大きさが小さい事だと思う。

B1Fに食品SMの入店は難しかったのだろう。それでも、フードコートをやめてB1F全部を提案しても導入できなかったのかと感じる。駅近ならマルエツくらいしかないし、なんとか地元の「ヤオコー」か、流行りの「ロピア」など賃料を度外視しても優先的に入れたほうが良かったのではないだろうか?「対面テナント」と「成城石井」は客層とアンマッチのような気がする。メインフロアではない1階の半分を銘店や「西武そごうショップ」にして1Fを食物販にしてもよかった。全部を提案してもSMの導入は無理だったのだろうか。三井不動産の企業力をしても難しかったのだろう。

デッキとつながったメインフロアの3階は何とかして「館の顔」のフロアにしたかったことはよくわかる。ただおそらくあまり食指が動かない物件だったのか、3.4階のテナント揃えは「何とか」のイメージが強い。セレクトも「UAグリーンレーベル」「アーバンリサーチストア」をメインフロアに導入しているものの、都心近郊の駅ビルより厳しいテナント揃えに見える。5階以上はカテゴリー大型区画になり、実需と利便性を考えたフロアになっている。5階は「ユニクロ」「GU」の1フロア構成で、6階はボリューム路線の「パシオス」と「ムラサキスポーツ」「ウィゴー」「コカ」、7階は「ダイソー」「ノジマ」、8階は「西松屋」とアミューズ・カルチャーのフロアとなっている。

全体を見ると、引き継いだ百貨店のグレード感ある内装が、逆にマイナスになっているようにも見える。まだオープンしてから日が浅いからかもしれないが、来店客層は駅ビルの客層に見えた。対面の食品テナントと「成城石井」が「パシオス」「西松屋」と共存して正解なのか?各フロアの客層が違いすぎているようにも思うが、今後回遊性はあるのだろうか?賃料設定も厳しそうに見えるが、SCの採算は取れるのだろうか?

好立地なのに、なかなか借り手がつかなかった理由はわかる。簡単ではない物件だろう。ひょっとしたら賃貸条件も破格なのかもしれない。またしばらくしたら、見に行ってみる。

■今日のBGM

アリオ、イトーヨーカドーとファウンドグッド

飲み会に行く前に、川口そごう跡の「ららテラス川口」でも見ようと、川口駅に立ち寄った。そのついでに「アリオ川口」にも足を運んだ。久々に「アリオ川口」を見て、いろいろ考えさせられた。

まず、イトーヨーカドーの食品売場のレベルは、相変わらず高い。足元のマンション群に囲まれ、その客層への総菜中心のデイリー食品は充実している。値段もいつも買物しているイオンよりは安い。エリア特性があるのか生鮮3品の売場の大きさに変化があるが、相変わらず欠品は少なく、きちんと売場管理がなされている。売場が大きく、持て余している感じはあるが、足元商圏のシェア率は高そうだ。

撤退した衣料売り場だが、アダストリアとの協業の「ファウンドグッド」は、うまくいってないようだ。立ち上げの時に見たが、現状の売場はその時の売場より30%くらい縮小されている。やはり客層とのギャップが大きい。浦和イトーヨーカドーの「ファウンドグッド」をたまに見るが、イトーヨーカドー来店客とのギャップが大きすぎて、全く売れてないように感じていた。逆にモール内のイトーヨーカドーだと受け入れられているのかと思ったが、やはり客層のギャップはここでも大きかった。衣料売り場は「ファウンドグッド」を縮小し、量販店委託ブランドのコーナーを増やしている。所謂、メーカーコーナーで「クロコダイル」「ハッシュパピー」「ケント」「ギャロリア」「アンナルナ」「インスパイア」などのブランドがコーナー展開をしている。取引形態はいろいろあるが、最終商品リスクはヘッジできる取引だろうと思う。浦和店の衣料品売場も同じような展開であり、やはり従来のイトーヨーカドーのお客様中心であり、新しい客層は取り込めてなさそうだ。「ファウンドグッド」も、どのゾーンを狙っているか見えにくく、さらに「ユニクロ」「GU」よりは高い値段では量販店の顧客は取り込めない。アダストリアは今までの出店場所を選んでの出店とは違い、量販店の客層との相違に苦しんでいるようだ。人的課題もあり、どちらがリスクをかぶる契約かわからないが(おそらくイトーヨーカドー)、おそらく全店展開は難しいと思う。

「アリオ川口」だがやはり「イトーヨーカドーと〇〇の専門店」という域を出ていない。売場面積も3万㎡強と大きくもなく、イトーヨーカドー食品とシネマやジョーシンなどの強みしかなく、引き付けるテナントも多くはない。アリオはイトーヨーカドーグループの商業施設の開発運営会社(セブンアンドアイ・クリエイトリンク)のPMだと思うが、独立してのデベロッパー会社ではなくあくまでもグループの不動産管理会社にしか過ぎない。ということは、あくまでも発言力が強いのは「セブン&アイ」であり、独立性はほぼないという位置づけだと思う。そのためイトーヨーカドーの売上をどう上げていくかが主の目的になり、テナントのフォローや、パワーアップさせたテナントの導入がおろそかになってしまっている。イオンの本体のイオンリテールが運営する「イオンモール」が、モールとして完成度が低いのと同様の状況下にある。そのため大きな投資はかけられず、テナントの劣化が進み、モールとしての魅力はどんどんなくなってくる。独立性が強いイオンモールが運営する「イオンモール」との差は大きい。

間違いなく、脱GMSとしてのイトーヨーカドーは方向性が見えていない。SMもあれほどの大型売り場は必要なのだろうか?そして、特に衣料品撤退後の売場が解決できてない。そんな状況下では、モール全体の改善はどんどん後回しになる。発言力もなさそうな子会社では、モールのテナントゾーンのケアもできない。今後も、広域からとるべき客数は恐らくどんどん減っていくと思う。イトーヨーカドーグループ(ヨークホールディングス?)は、完全に迷走していると感じた。

■今日のBGM

商業PM(プロパティマネジメント)のもどかしさ

前回、㈱イオンモールと㈱イオンリテールの関係を書いていて、過去の経験から、商業施設のPMのもどかしさを思い出した。

前回書いたイオンの例で言うと、㈱イオンリテールの所有するイオンモールの名前のSCを、㈱イオンモールが数多くPM(管理運営)しているということになる。わかりやすい事例で言うと、近隣に北戸田イオンモールがあるのだが、ここは恐らく㈱イオンリテールの所有物件で、PM(モールの管理運営)は㈱イオンリテールからフィーをもらって㈱イオンモールが行っている。尚、食品含めたイオンゾーンはGMSとしてイオンリテールがキーテナントとして運営している。賃貸面積は44000㎡あり、RSCの大きさはあるが、テナント揃えは狭商圏型で、現状は大きなCSC(コミュニティSC)の見え方でしかない。もう少し広域からも集客できるテナントを導入することによって、川口や浦和からの集客をとるべきSCだと思う。特にグランドフロアのテナントラインナップが弱い。

この場合PMである㈱イオンモールがテナントの入れ替えなどの改装提案をしても、投資対効果を検討して㈱イオンリテールがジャッジする。半年くらい前に、イオンの直営売場の2階は投資をかけて大きな改装をした。それも、㈱イオンリテールのジャッジでの改装になる。イオンの2階直営平場の改装と1階グランドフロアのテナント入れ替えはどちらが重要か?そしてどちらを優先するか?ここでSCを㈱イオンモールが所有していれば、グランドフロアの改装の内容次第では1階のテナントの入れ替えの改装をするジャッジがあるかもしれない。当然グループ企業なので話し合いはあると思うが、投資内容をジャッジするのは資産を保有する㈱イオンリテールで、㈱イオンモールには権限がない。

ここで商業PMについて考える。仕事の内容は、商業施設の価値を向上させることを目的とした管理運営業務ということになる。ただSCの運営業務での最も大事なことは「お客様に満足してもらうこと」になる。そのために販促活動や演出をしたり、対テナントとの話し合いをしたりしていく。その他の業務もあるが、その業務は「お客様の満足」につながる。その見え方は俗にいう「BtoC」であり、企業が一般消費者へのサービスを提供する、例えば小売業のようなビジネスモデルに見える。ただ、フィーをもらっているのはお客様からではなく請負先になり、つまり企業間取引の「BtoB」になっている。

わかりやすい一例をあげる。SCを活性化するため、有名テナントを誘致して、そのSCのグレード感を上げ、広域から集客しようとする計画を提案する。そのテナントも出店に前向きだが、誘致するために店の一等地を提供する必要がでてくる。そのためには既存のテナントを移設しなければならない。さらに有名テナントの賃料は固定ではなく、低い歩合でのケースもある。その計画を実行するには、現状テナントの移設交渉、さらに移設費用の交渉等も必要になってくる。さらに売上歩率であれば、売上を読み違えると当然今までの賃料を下回るリスクもある。ただ、実行すると商業施設としてのプラス要素は大きい。

どちらのビジネスモデルでも、大きな検討事項であるが、「BtoC」のケースではその改装の影響力を理解してもらいやすく、社内決済までのスピード感もある。「BtoB」の場合は企業風土や業種も違う場合が多く、自由に提案もしにくく、検討にも時間がかかることが多いし、決済は厳しいことが多い。特に商業PMは請負先が不動産業や金融業が多く、商業の話に壁は高い。

今はもう変わったかもしれないが、商売感覚が異なる業種との企業間での交渉は非常に難しかった。いい経験にはなったが、商業PMはもどかしいことが多かった思い出がある。

■今日のショット(万博に行って来た)

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