カテゴリー: SC (6ページ目 (11ページ中))

ティーンズヤングショップの寿命は短いが・・・

キャラクターを打ち出したティーンズヤングのブランドを多数見てきた。時代の流れに合わせて、大きく伸びて光輝いた時期があったブランドも数多くあったが、今も続いているブランドは本当に少ない。顧客が年を重ねて、離れていくか、その客層と同じようにターゲット年齢を上げていくかしかない。実際残っているブランドは百貨店に出店場所を変えており、客層も当然上がっている。品揃えショップもインパクトが強かったショップは特に続きにくい。ボリュームプライスで値頃を打ち出したショップでも、往年の流れはない。堅調なショップは思いつく中ではハニーズくらいかもしれない。ショップにインパクトを持たせず、売れ筋を細かくチェックし海外の工場でコストを落として作り量販するスタイルを続けている。ティーンズヤングのトレンドは短サイクルで、一挙に盛り上がる反面冷え込むのも早い。

ANAPの社長交代の記事が新聞にあった。20代の女性のようだ。ANAPとはある商業施設のリーシングで、地元FCを介して出店してもらったことがある。何度か創業社長と話した程度で、その社長独自の個性ある商品戦略だったと記憶する。「109」ブームの後半ぐらいだった。その後販売代行をしていた時、イオンモール泉南のオープンでANAPも出店しており、すごい人気で大きな売上と聞いて驚いた。このゾーンがイオンモールに出店するのかと驚いた記憶がある。その後上場したのは数年前に知った。数字を見てみると業績のピークは売上が2010年91億で営業利益は2012年5.7億となっている。コロナ以降赤字に転落し、前年決算は債務超過となっている。出店店舗を見るとイオンモールが多く、アンテナショップはあるが、郊外モールを主戦場にしている。近年は少し気にしてみていたが、営業面ではタイムサービスが多く、それでも販売員が一生懸命売っていたので、ある意味すごさを感じていた。

少し詳しくデータを見ると2016年くらいから、インターネットでの売上が店舗売上よりも大きい。その流れが今回のネット会社のファイナンス契約と社長交代につながっているようだ。しかし「109」ブームからここまで残っていることがすごいし、上場したのもすごい。個性的な社長だったし、そのあとをよく上場し経営してきたと思う。モールに出店した戦略がすごかったのか、仕入れ政策を含むMD能力が高かったのか、スタッフへのマネジメントが優れていたのか。さらには、上場にはどういうビジョンがあったのか。債務超過になった経営よりも、若い社長に変わったことよりも、続いてきた理由のほうに興味がある。ネットの影響の大きさにはびっくりしたが、ネットでもこの客層にこれだけ売れた根拠は何だろうか?

今後は新体制になって、戦略を変えていくのだろう。決してターゲットゾーンのトップブランドでもなく、ブームが下火になっても生き残り、上場までした会社の大きな強みは何だったのかを十分検討してほしい。短命と言われるティーンズヤングショップの次のステップは何かを示してほしい気がする。

■今日のBGM

GMSの終焉 ➁

前回イトーヨーカドーのことを書いたが、ここでは以前も記したが、イオンのGMSについても触れたい。企業の動き方や方向性の違いがあるが、イオンもGMSはもう終わりに近いと感じる。

イオングループの決算説明会の資料を見ると、2024年度はGMS事業で3.4兆円(関連会社込み)の売上で企業での構成比35.4%、で営業利益は283億円で構成比は11.2%となっている。グループの営業利益は金融、デベロッパー、ヘルスウェルスの順で、その3事業でグループの56.3%を占めている。近年は合併を重ねてSM(スーパーマーケット)事業が大きく伸長しており、営業利益ではGMS事業を大きく上回っている。尚、GMS事業のうちSM(食品)の構成比は2023年で63%であり、物販は食品に負うところが大きい。多少の計算方法の違いはあるかとは思うが、ヨーカドーの2021年度の食品構成比は67.1%となっている。以下に述べるテナント賃料の計上次第だがヨーカドーの状況とほぼ変わらない。

決算数値の詳細は、各社違ってくるので一概にジャッジはできない。イオンの大型モール(RSC)にはイオンモールが運営している物件と、GMSであるイオンリテールが運営している物件がある。この営業利益はどう分けているのかわからないが、おそらくそれぞれに計上されていると思われる。この営業収益は大きい。2013年にイオンリテール物件の管理運営をイオンモールが受託しているが、あくまでもイオンモールの収益はPMフィーということと発表されている。この時点でイオンリテールのモール型物件は54モールと記述されており、モール物件自体はイオンモールに移管されていない。とすればイオンリテールのテナント収益は大きく、衣料品売上構成比はヨーカドーより低いかもしれない。

おそらくGMS事業の非食品の構成比はどんどん下がっているだろうし、赤字状況だと思う。イオンリテールの衣料月坪売上は100千以下だと聞く。普通に考えれば商売になっていない。もともとGMSの衣料の儲けの大半は、インナーウェアだった。肌着からスタートしたGMS企業も多かった。利益も取れるし、商品の回転も早い。呉服からのスタートが多い百貨店との違いが現代の商売の違いにつながる。得意なインナーを「ヒートテック」や「エアリズム」のユニクロや他の専門店に奪われ、中心客層の高年齢層までが専門店に目を向け始めたことが、GMSの衣料品からの客離れの要因の1つだと思う。

衣料品は、もともとEDLP(エブリデイロープライス)と言い続けていたのが、どう間違ったのか「イオンスタイル」で付加価値を求め始め、失敗した。ヨーカドーが伊勢丹からカリスマバイヤー?を招聘して失敗したのと同じ道をたどった。

GMSはもう完全に終わっている。イオンはデベロッパー業態のイオンモールも安易なショップMDで頭打ちになってきている。イオンモールの成功のポイントは当初三菱商事と合同で開発運営しており(ダイヤモンドシティ)、流通業以外からのポジションで開発したSC(営利よりあるべき姿を求めた)でスタートしたことが非常に大きかった。近年はその魅力が薄れてきておりテナントMDはららぽーとに後れを取っている。小売業としてのイオングループの課題は、GMSを解体して思い切った収益の構造変革をすることが必要になっている。逆にそれがデベロッパー業であるイオンモール自体の活性化にもつながるかもしれない。さらにSM事業やヘルスウェルス事業の活性化にもつながる。

鈴木敏文氏がいなくなったヨーカドーは、株主である外資が決断を迫った。イオンは誰が創業者一族の首に鈴をつけに行くのだろう?

■今日のBGM

GMS(総合スーパー)の終焉 ①

このところイトーヨーカドーの閉店のニュースが頻繁に流れる。それを見て、妻が「何故、優等生だったヨーカドーがなくなっていくの?」と聞いてきた。去年の4月にも同じような内容で簡単に書いた記憶があるが、現状のGMSについても併せて少し書いてみる。

GMS全盛期はダイエー、ヨーカドー、ジャスコ、マイカル、ユニーが大手5社だったが、ダイエー、マイカルはイオン(ジャスコ)傘下になり、ユニーもパンパシフィック(ドン・キホーテ)傘下になっている。売上は年々減少しており、手元のデータでも2022年のGMS合計売上は2年前の-1.7兆円と凋落の一途の状況となっている。

ヨーカドーのイメージは「優等生」であり、他の「やんちゃ」な関西系GMSとは一線を画していた。本当にお客様第一だった。以前も書いたが本社スタッフのデスクも役職者に向かず、入口(お客様)に向いている。組織図も一番上はお客様、取引先それから店で一番下が社長、取締役会、株主総会だった。接待や贈り物は受け取らず、流通業の優等生のイメージが強い。徹底したデータ管理で利益率も他のGMSの+3%以上だったと記憶する。大学時代の有名なマーケティングの先生が「流通行くなら絶対ヨーカドー」と言っていた記憶もある。

ではなぜ現状があるのか?GMS全盛期は、「集中と分散」でいうと「集中」期だったと思う。「1億総中流」と言われたように、目指すライフスタイルも大きな変動はなかった時代だった。ところが近年は生活スタイルも多様化され、ニーズも「分散」化している。ヨーカドーは「集中」するマネジメントにはたけている。現状のセブンイレブンもそうだ。逆にイオンGはGMS事業以外にも多様化した企業をマネジメントしている。

転機の1つは、「SCの大型化」だと思う。効率重視のヨーカドーはその流れに乗らなかった。その前にダイエーは「自前主義」で出店に投資をかけすぎ(出店場所を借りるのではなく所有する)有利子負債が大きくなっていった。マイカルがマイカルタウン構想で今のモールに近いことをやっていったが、「力不足」と「出店エリアのミス(なぜか海沿いが多く、商圏の半分は海)」で負債が積みあがっていった。その後イオンが「狸が出るような土地」に大型SC(RSC)を開発し、街づくりにつながり成功していく。車社会になって駅前立地よりも郊外の駐車能力が大きく、テナントのバラエティ感があるSCにお客様が流れていった。都市近郊に多かったヨーカドーはその流れには乗らなかった。後に大型SCのアリオを開発するが、やはり「規模」より「効率(利益)」を求め成功には至らなかった。

次に、大型専門店の出現と、新鮮な専門店が増えたことがあげられる。手元数字では2006年ヨーカドーの売上は1.49兆、ユニクロは0.45兆に対して2023年ヨーカドーは1.23兆、ユニクロは2.77兆と売上規模は完全に逆転されている。ちなみにテナントとしてユニクロを積極的に導入したイオンに比べて、ヨーカドー内への出店は非常に少ない。生活雑貨でもニトリや家電などの専門店も大きく伸長した。専門店各社は拡大していくRSCに出店を加速させていった。さらに堅調だった食品(SM)の数字も近年は地元密着型SMや値段志向のSMに流出しつつある。その多様化された専門店の波をヨーカドーは取り込めなかったし、立ち向かえなかった。

もう1点あげるとすれば、グループの位置づけ上位がヨーカドーからセブンイレブンに変わったことが大きい。集中型体質企業では当然好調業態に投資は向けられるし、人材にも比重をかける。ここでダウントレンドだったGMSへのテコ入れは完全に遅れていった。

今回の「衣料品からの撤退」でGMSとしてのヨーカドーはもうなくなった。もう一度今のGMSをリニュアルできるのなら、NSC(ネイバーフッドSC)として新しくスタートはできるとは思う。今後は多すぎるRSCよりNSCが注目されると思う。そのためにリニュアル投資やテナントリーシング力は必要だが、現状の立地や食品のMD力を生かせば「イオンタウン」には勝てそうな気もするのだが・・・

■今日のBGM

会社の存続は出店戦略にあり

以前、立ち上げた会社が何とかやっていけると思ったのは最初の2店舗の成功によるところが大きい。2店目が先日営業を終了したマリノアシティ福岡だった。最初の2店とも坪数は40坪強で間口の広い店だった。ピークには両店とも年間2億くらいの売上があったと記憶する。ただそこから出店した数店舗の数字は苦労した。

落ち着いて分析すれば、商品のSKUや在庫金額から考えて35坪~45坪の大きさが必要で、間口が広く、長方形かそれに近い店が一番フィットしていた。モール出店では、間口が狭く30坪以下の小型店で、さらに3階に出店すると失敗の確率は上がった。3階でもエスカレーター前とかはまだ戦えた。もう1つの基準として、競合になる店や、いつも数字を意識している店の売上を確認していた。それによって自店の数字の想定を立てることができる。

整理すると、昔運営していた店舗の出店場所としては、間口が広い店がベストで、モールであれば2階まで、そして35坪前後の大きさ。さらに、競合の売上を確認して提示された条件をもとに数値予測を作り社内会議をした。

数値予測は5か年(契約年数)の店損益を簡易なPL(損益計算書)で作成した。それによる店予測損益に投資経費として初年度に総投資額の20%を経費計上し、残金額を毎年35%償却したとして計算した。その数字を見て出店の参考資料としていた。

その数字に加えて、商品バッティングや競合関係、エリア特性(人的交流ができるかなど、特に人的マネジメント)を検討し、最終の細かな調整をデベロッパーとしてきた。出店の可否に関して、妥協して出店した店舗は、ほとんど成功しなかった。

内装投資や、敷金、その他のデベロッパーへの出店費用、品揃え商品費用や、備品経費を想定すると30坪~40坪の出店で2000万以上のキャッシュが出ていく。ぎりぎりで回している中小企業には大きな負担となるし、真剣に考えるべき事案である。キャッシュ残高によっては、借り入れも必要になり、実際出店ごとに融資を受けていた。さらに出店にかかわる経費は、出店投資だけでなく、それに付随する人的戦略への経費もある。転勤させると、その転勤経費や、住宅経費も発生する。さらにスタッフの募集経費も必要になってくる。

多店舗化することによって、商品コストの削減や、オリジナル商品にも取り組める。情報の精度も上がるし、社内の自信や社外の認知度も上がる。出店戦略が中小小売業にとっては企業存続の最も大事な要素になる。それだけに、出店の社内ルールを制度化し、感覚でなく数字でジャッジできるようにすることが必要だと思う。

出店店舗の成功こそ、次のステップへの礎になる。

■今日のBGM

バーゲンでもあまり値段が下がらない

8月はできればお盆までに夏物商品をなくす目途をつけたい。お盆すぎると集客はぐっと落ちるので値段を下げてでも売っていく。商品をなくしていく。盆過ぎには初秋物が投入され、売場の色を秋色に変える。昔の販売計画はこんな感じだった。

8月に入ったが、SCの各店の売場はあまり乱れていない。なぜか年間通して割引している店はあるが、この夏物最終処分時期の売場のイメージはない。「いい買い物をした」のイメージがだんだんなくなっている。

いつ商品をなくしていくのだろう?ユニクロを中心としたSPA型の小売業が増え、大きなセールに比重をかけてない。52週の販売計画の下、在庫状況を見て細かなセールを増やし、商品をなくしていく体制に変化している。それに合わせて取引先の体制も変わっていったのかもしれない。

ただ、そういう企業体質の会社ばかりではない。本当にやるべきことをやっているのかという疑問がある。上場会社の決算を見ると、利益率を上げることを優先していると感じることが多い。回転率は鈍化している。商品動向に基づいて、商品を処分しているのだろうか?「品揃え失敗」で利益を落としている企業はあまり見当たらない。「1月、7月は売上を確保して利益率は落とすが、利益額でカバーし、在庫は減らしていく。2月、8月は減った在庫に先取り商品を入れて利益率を回復させていく。」という昔の商売はなくなってきたというのだろうか?在庫高によって利益率が変動していくような細かな予算を組んでいないのではないかと感じる。季節商材が少なくて、商品回転率が年2回転と低くても、残商品を年2回はなくしてしまわなければならない。商売が攻撃的でなくなったのかもしれない。逆にユニクロのほうが、あれだけ商品を自社で作って利益率51.9%(23年決算数値)は十分攻撃的な結果かもしれない。

売上予算、利益予算、在庫予算、それに伴う仕入予算を細かくボトムアップで作成するべきだと思う。当然修正は会社トップがするが、トップダウンでの予算作成ではひずみは大きい。店に予算責任への比重を上げることによって、店の動き方は変わる。本部主導になればなるほど店の動き方は鈍い。ユニクロのように商品の動向ジャッジを数字で判断できる状況にないのなら、店の判断で数字も変わるようにしたほうがいい。「売り場の意思」が見えたほうが店は勢いづく。

SCの8月の売場を見ていると「欠点を隠した優等生」のようなショップばかりのような気がする。「必死感」もあったほうがいい。そういう感覚が一番お客様に伝わると思う。

■今日のBGM

トマム(星野リゾート)の事例と小売業

トマム(星野リゾート)を持っていた中国企業が不動産投資会社に売却するというニュースが今月初に流れた。どういうことかわからないのか、先日ニュースで説明をしていた。

星野リゾートはコンセプトを明確にしてリゾートでのおもてなしを大事にしたホテルを複数運営している。非常に評判が良く、心地よく過ごせる施設が多い。近年急成長しているイメージが強い。以前、資金はどこから出ているのかと調べたら、「星野リゾート・リート」という投資法人があり、そこから受託を受けて「星野リゾート」が運営をしているという仕組みが分かった。つまり「星野リゾート」は運営会社ということになる。トマムも今回売却した中国企業に以前183億で売却しており、その企業が今回408億で売却したということだ。売却差益が225億ということになる。

去年の7月に商業施設のPM(プロパティマネジメント)について書いたことがあるが、商業施設で起こっていることがホテル業界にも当然のようにある。企業に投資をすることと同様に、ホテルや商業施設に投資をする。そして投資先の収益率を高めてそこから利益を享受するか、再度投資物件を売却して売却益を得る。その投資物件の維持管理や物件価値を高めるための星野リゾートなどの運営会社や商業施設のPM運営会社が必要になる。

商業施設でも「イオンモール」と名前はついていても物件の所有者は別(イオンではない)の施設もある。そこを企画フィー、PMフィーをもらって「イオンモール」がテナントを集め、運営をしているということになる。詳細はわからないが、前回書いた「マリノアシティ福岡」も一部は「福岡リート」が所有しており、三井不動産がアウトレットの企画、運営管理を受託するという図式の可能性もある。

株と同じで不動産として、商業施設やホテルを所有することは近年増えてきている。ただこの状況は必ずしもいいことではないと思っている。小売業はずっと小売業を続けるために努力するし、観光業はお客様を呼び込むために快適な環境やホテルを運営する。その結果、つまりお客様の満足料が利益になってくる。それが小売業や観光業だった。証券化してしまうと「利益を出して売りぬけること」を優先する。商業要因以外(施設の維持管理面など)のわかりやすい投資はするが、よほどの根拠がない限りなかなか大きな投資をしない。そうするとどうなるか?長期的なビジョンはなくなる。証券化された物件はとりあえず物件価値を上げて、高く売り抜けることを目的としかしなくなる。

「そごう西武」の池袋西武も同じ流れのように思う。ヨドバシが土地代を出し、おそらく百貨店以上の収益は稼げると思う。そこで収益を確定して「そごう西武」を売り抜ければそれでいい。将来おこるだろう環境変化や池袋以外の残りの百貨店のことはあまり関知しない。「文化」を担ってきた西武百貨店は完全になくなる。

金融資産としての考え方と商業や観光業の考え方とには大きなギャップがある。商業施設や観光ホテルはお客様を見て商売し、「お客様第一」と考える。持ち主がファンドなど「金融業」になると、決定権は「小売業」や「観光業」になくなり、当然「金融業」になってくる。将来的ビジョンのジャッジも「金融業」になってくる。現状ではなかなか長期的な計画は決済されにくい。

商業施設のPMをしていて感じることが多かった「どこを向いて仕事をしているのか(お客様不在感)」が、観光ホテル業でも表れてくるのではないかと思う。同じ気持ちで同じ方向を向いて仕事をするのが難しくなるのではないかと思う。

■今日のBGM

量販店衣料ブランドはどうなるのか

アダストリアがイトーヨーカドーで展開している「ファウンドグッド」がどうなっているのかをたまに見に行くが、現状は大きな進展はないような気がする。売場は基本レイアウトに沿ってきれいに整理されており、立ち上げ時に比べてすっきりしていて買いやすくなってはいる。ただ運営体制がまだまだ厳しく、おそらくイトーヨーカドースタッフが少なく、うまく連動されていないのだろうなと感じる。アダストリアが単独で出店したら考えるだろうスタッフ数や業務内容とは開きが大きいと思う。さらにアダストリアなら出店をしないだろう店も多いと思う。ターゲット客層とギャップのある店も多いのではないだろうか?以前から述べていたように、合同で別会社化しないと厳しいような気がする。

イトーヨーカドーは「ファウンドグッド」が売場を固めたことにより、従来衣料売場で展開していた取引先展開型のコーナー売場が逆に引き締まり、さらに従来のGMSのお客様を集めているような気がする。イオンスタイルで売場を変えたイオンでも同様に感じた。イトーヨーカドーは従来隣接していた衣料服飾品がなくなり、取引先展開型の売場を集約しており、ボリューム感が出たように感じられ、肌着等の売場に隣接して客数も増えているのではないだろうか?イオンは、衣料服飾品の効率改善するために商品区分ごとにコーナー化し、セグメントすることで在庫を抑えている。そのため直営の売場が小さくなったことで取引先展開型のブランドを同様にコーナー化している。

ここでいう量販店ブランドとはコーナーショップ化しているものを指している。イトーヨーカドーはオリジナルで「KENT」などをやっているし、イオンでは「ジュンコシマダパート2」「インスパイア」(ヤングDCブランドがいつのまにかミドル世代のブランドに・・・)、フォーマルの「イギン」「ソアール」などをコーナー化している。他にも昔からある「アーノルドパーマー」や「ニクラウス」「クロコダイル」などのスポーツ系のブランドなどもある。

イトーヨーカドーは衣料品をなくしていくとのことだが、売場を見ていて直営売り場がなくなることにより、過渡期の売場ではまだ量販店ブランドのニーズはありそうに感じる。イオンもGMSの衣料品を続けるなら、直営の効率アップのために、間違いなくこういうブランドのニーズは大きい。特に販売員を派遣しているブランドの売上は固いのではないだろうか。

GMSの量販店ブランドは今後なくなっていくのだろうか?ユニクロやGUに流れていくのだろうか?体型が変わり、さらに消費動向も変わらないアダルトシニア層のニーズをどこが受け持つのだろうか?

現状、GMSの売場は「ユニクロ化」を目指しているために活性化しないのではないだろうか?現状の顧客は、ちょっとしたお出かけ用の服をどこで買うのだろうか?ショップチャンネルやネットに流れているのかもしれない。そういう中で、逆に取引先展開型の売場をもっと打ち出すのも一つの方法かもしれない。販売は取引先スタッフのケースが多いと思うが、客層と同年齢くらいのスタッフを配置すれば、売れていくことは間違いない。このターゲットのスタッフは時間的に余裕があり、集めやすいと思う。そして何より一番販売力はある。

将来的にどうなるか断定はできないが、量販店ブランドはGMS衣料品の過渡期には必要な売場かもしれない。

■今日の日経見開き広告(ヴィトン フェデラーとナダル)

マリノアシティ福岡

マリノアシティ福岡が8月18日で閉館だという。後継施設は三井不動産の「三井アウトレットパーク」との報道がある。

マリノアシティとはなぜか縁があった。ちょうどオープンした時、あまり意図はなかったが訪れている。当時は天神ビブレの店長をしていて福岡で勤務していた。その時はいい場所にあると思ったのと(観光として)、キーテナントの「ミスターマックス」とは違和感があるなと感じたぐらいだった。その後退職し、友人がマリノアで仕事を立ち上げて会いに行ったとき、アウトレットとして増床されており変化に驚いた。その時閉店していた店舗があり、いい場所だったので興味を持ち交渉し、その場所に出店した。調べてみると17年前だ。好調に推移し、その後会社の譲渡はあったが、今回の閉館まで営業している。月に1度は店巡回をしていたので200回以上は訪れている。

「三井アウトレットパーク」で成功するのだろうか?アウトレットでは難しいのではないかと思う。スタート当初はマリノアシティくらいしかアウトレットはなく、都心に近い(天神から30分くらい)メリットが大きかった。その後鳥栖にプレミアムアウトレットができ佐賀、長崎を止められ、北九州と広島にイオンのジアウトレットができ、北九州、山口、大分からのお客様を止められている。MDレベルは一般的に見ると三菱地所のプレミアムアウトレットが優っていると思われ、さらに天神に近すぎるアゲインストもあり、ブランドを集めにくくなってくる。加えて福岡のお客様はファッションにこだわりが強く、今回どれだけメニューを揃えられるかが課題となってくると思う。

SCとしては「三井ららぽーと」のほうがイオンモールよりショップMDが福岡にあっており、可能性は高いが、5km圏にある三菱地所の「マークイズ」やイオンの「マリナタウン」が成功しているとは思えず、よほどの吸引力のあるものがないと厳しいと思う。

ただ、環境的にはいい場所だし、マリノアシティ自体も成功した物件だった。もし、投資対効果を考えずにプランを提案するとすれば、現アウトレット棟は三井不動産の「ららぽーと門真」タイプ(アウトレットと共存)のららぽーとにしアウトレットを活かし、ハーバーサイドは少しグレード感を上げてみたらと思う。ハーバーサイドはヨットハーバーに隣接していてイメージはいい。神戸三宮の居留地のように百貨店(岩田屋?)の力でテナントミキシングはできないだろうか?もし食品SMを加えるなら「紀ノ国屋」「イカリスーパー」などの高級志向のSM誘致はどうか?話は逸れるが、絶対試みてほしいことがある。ハーバーサイドの駐車場は、1台の駐車スペースを広くして大型車を止めやすくしてほしい。駐車台数は減るが駐車代金を上げればいい。車の停めやすさは特に平日女性客には大きなメリットになる。小さなことだが差別化になる

マリノアシティ福岡は、観光スポットとしてもいい場所だし、自らやっていた店も順調だった。全く悪いイメージはなく、訪れるには本当にいいところだった。思い入れも大きい。ただ商売環境として、アウトレットの吸引力が弱くなってきたのは間違いない。商圏の半分は海なので、さらにもっと大きな吸引力が必要になってくる。

またいつか訪れた時、いい印象が続いてくれていることを期待したい。

どうもありがとうございました。

■恒例の日経新聞広告(見開き表裏)

商品回転率が低い企業はリスクが隠れている

商品回転率を上げることが商売の基本だと、常々言っているし、当然だと思っている。何度も書いてきたが、「商品を仕入れて、それを売って、その金で支払う」が商売の基本だからだ。企業が大きくなってくると、その基本が見えなくなる。商品回転率が低い企業はリスクが隠れていると思っている。

ライトオンの上期の決算短信を見ていて、やはり何かが隠れていたと思った。くれぐれも今回はライトオンの業績に意見する物でなく、こういうことがあったのではないかという個人的な推測を記す物であり、個人の感想と思ってほしい。売価還元法で原価を算出している旨あったので簡単な計算方法で数字を出してみた。

前期末、原価在庫10479(百万)で、今上期末は原価在庫8326となっており、原価在庫の前年比は79.5%、売価在庫は原価率から逆算すると前年差は-5243と大幅の削減をしている。ちなみに上期の売上は21298(百万)で売上前年比は86.6%となっている。回転率は在庫が減ったことで前年が半期で1.12回転、今年が1.26回転と改善している。これでも回転率は年間3回転しない。年3回転することは4カ月で商品が売れてなくなるということなのだが、そこまで回っていない。付け加えるとおそらく支払いは4か月以内だと思う。

今期首の売価在庫は(単純に原価率で計算する)20191(百万)となり、同様に上期末の売価在庫は14948となる。売上は21298なので、値段を下げなければ、計算式でいうと期首在庫(20191)-売上(21298)+仕入売価=14948となり仕入売価は16055となる。これを所謂5掛けで入れたとすると仕入原価は8027となり、そのまま計算すると利益率は48.9%になる。ただ実際には上期利益率は44.3%になっている。概算してみたが仕入れを原価50%でして(所謂5掛け)、さらに約3400(百万)の商品がなくなることで、公表されている利益率44.3%になる。簡単にいうと6800(百万)の商品評価を半額処分すれば公表数字が導き出される。

どうしたかはわからない。ただ34億円の金額分だけ商品の評価を落としたとは考えられる。その他の原因もあるかもしれない。評価を落として販売したとしても売上前年比は86.6という数字だ。評価ダウンした商品が売れたとしても、既存の商品は売れてない。逆に評価を落とした商品が売れてないのかもしれない。

再度言うが、今回はライトオンの業績について言及する物ではない。あくまでも私自身の主観での数字で、現実とは違っているかもしれない。ただこの数字から、商品回転率の悪い企業は何だかの負の要素があるのではないかと考えられるということだ。悪く考えれば、在庫高で決算数字を変えることができる。昔は決算セールという名の下で売上を稼ぎ、在庫も減らしてきた。決算が終わって在庫を減らすということは正確な決算だったのかとも考えられる。管理体制も疑われる。回転率の悪化は、営業面だけでのキャッシュフローは悪化すると思われるし、利益率を優先した在庫評価と言われても仕方ない。

商品の価値はお客様が評価し、売る側が決める商品評価(売価)ではない。お客様、つまり市場が決めるものだ。そして商品回転率が悪いということは、商品がお客様に評価されていないと認識するべきだと思う。

■今日のBGM(まだトノバンがあった。)

イオンモール浦和美園

見たい映画があり近隣では浦和美園のイオンシネマしか上映してなかったので行って来た。車で30分かかるので映画のタイミングでしか行く物件ではないのだが、またまた表題の物件について書くことを、ご容赦願いたい。

本当に潜在能力を感じるモールで、前回記したように交通の便もよく、行くたびに都市化が進んでいるように感じる。微妙な問題だが旧浦和市民をうまく取り込めれば、レイクタウンやコクーン、大宮駅前とは一線を画すことができるのではないかと思う。

今春、大改装を実施したようだが、収益が合わなかったのか、投資金額が抑えられていたのか、中途半端な改装になっている。物件のポテンシャルを誰も認識してないのかなと思う。この物件は都市型のRSCとして意識すべきだと思う。

まず、モールのグランドフロアのテナントの棚卸ができてない。契約期間の問題もあり移設はできにくかったのかもしれないが、誰かが腹をくくればできるはずだ。2階以上で展開すべきショップがそのままになっている。逆にその移設ができてないから上層階にまだ空床があり、上層階の魅力が上がってこない。ここでは具体的に記さないが、都市型のららぽーとなら間違いなく1階にはないテナントが多数あり、そのテナントがそのままになっている。

さらにユニクロ、GUを外部棟にするなら、ユニクロではなく外部棟のグレード感を上げてみることもできたはずだ(セレクトショップなどの誘致)。極論でいうと、モール棟での出店がユニクロと合意できないなら、イオンGMSの2階を渡せばよかったのではないか。(駐車棟とつながっているので出店メリットは大きい。)

イオン(GMS)の2階、3階だが、果たして合格点なのだろうか?前回改装した時(?)、感じたのだが、坪売りや効率がイオン内基準で想定されており、専門店や他の競合との基準とかなりかけ離れている気がした。つまりイオンではクリアされていても一般の土俵では全く戦えないのではないかということだ。「トップバリュコレクション」として改装されていたが、平場感をなくし立体感を見せただけで、商品のセグメントは変わっていない。以前より取引先との協業スペース(量販店販売員付きブランド)を大きめにとって自主MDの売場を小さくして効率を上げようとしているが、おそらく大きな変化はないように思う。イオンの平場から、次の「ユニクロ」「GU」「無印良品」を作るべきステップとして改装するべきだと考えるのだが、そういう話し合いの結果がこの改装なのだろうかと思う。この売場ならやはりGMSの非食品(特に衣料服飾品)はいらない。

店舗数が多くなると、個店、個のSCの位置づけが見えにくくなる。特にイオンのように上場企業になればコンプライアンスの問題もあり、責任者は同じ部署(SC)に長く駐在できない。そのSCを一番わかっているのはSCの責任者であり、本部のスタッフではない。 SCに思い入れをどれだけ持てるかで、物件の価値は変化する。SCの数も多く、責任者も在籍時の数字しか考えないと 、思い切った店舗戦略をとれないのかなと思う。

どこでも一緒のイオンモールと「ららぽーと」の差はそこにあるのかもしれない。

■今日のBGM・・・「トノバン」見てきた。このアルバムは学生時代大きなインパクトがあった。

«過去の 投稿 新しい 投稿 »