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顧客はどんどん年をとる

ずいぶん以前に書いたと思うが、顧客管理をやればやるほど固定客の年齢は上がっていくので客層は高くなっていく。昔から中高年対象の店なら新規顧客になるかもしれないが、ヤングターゲットだった店はどんどん顧客ターゲット年齢は上がっていく。

「レイカズン倒産」と聞いて、原因はそこにあると思った。平成系ブランドと言われて、どちらかというとショップブランドというより平成系品揃えショップの主力ブランドだったと思う。もうずいぶん前のことでほとんど忘れてしまったが、DCブランドの流れが悪くなってきて光が当たったブランドだったと記憶する。当時カジュアル品揃え店舗でカットソーが売れていた「ナイスクラップ」が大ヒットし、追随していったブランド群の1つだったように記憶する。同じ流れだった「マジェスティックレゴン」も別会社の経営になっている。

今その当時のカジュアル系ブランドで残っているのは、「45RPM」「「チャイルドウーマン」「ヒステリックグラマー」などがあるが、完全にブランドのターゲットや立ち位置を変えている。

特にカジュアル品揃え系の店は近年激減している。ユニクロに代表されるSPA型専門店が増え、さらに駅前ファッションビルから郊外モールへ買い物の主戦場が変化しており、各ショップや品揃店の立ち位置が見えなくなってしまった。さらに前述したが、従来の顧客は年齢を重ね、新しいターゲットの開発ができてない。郊外モールにシフトした「ストライプインターナショナル」や「ハートマーケット」、少し意味合いは違うが「アナップ」や「イング」もどんどん店舗を減らしている。

「レイカズン」はもともとの卸先は専門店だった。その専門店がもう成り立っていない。前述したターゲット年齢もあるが、やはり値段の壁も大きい。例えば、販路が専門店であれば専門店もメーカーもともに利益を50%出すとすれば、25%で作って50%で卸す構図になる。ユニクロなどSPA企業は25%で作って60%で売っても40%分値段が安くなるし、利益も大きい。引き付ける商品がなければお客様はもう専門店には足を運ばない。

今残って成り立っている専門店は、昔のジーンズ専門店くらいしか見当たらない。ジーンズにトレンドは少ないし、値段も崩れていない。ある程度の値段は通る。重厚な内装なら、なおいい。Bshop系の「ダントン」や「オーシバル」などを組み合わせれば根強いファンもついてくる。ただ以前から述べているように、在庫の問題があり多店舗化は難しい。

昔売れていたレディス品揃えブランドは、「客層の変化」と、「卸先の減少」、「値段の壁」で大きな戦略変更がなければ、どんどんなくなっていく。

■今日のBGM

ワークマンのフランチャイズチェーン

「ワークマン」の売上の伸びが止まったという記事を見て、何気なくそうだろうなと思ったのだが、あまり詳細を知らずにいた。以前やっていた店と同じSCに入店していて、すごい集客があったので少し驚いて観察したことがあった。その時は「ブームだし、この商品をみんなが着る?」と懐疑的でさらにFCだと聞いて驚いた記憶がある。

DCブランド全盛時代、大都市は直営店、地方都市はFC店という構図があった。FC契約の構図はFC先が内装を作って、商品を仕入れそのブランドの服を売るというもので、ブランド側はその商圏内にはそのブランドを卸さないことが前提で、取引形態は委託販売(年2回セール値引きあり、残商品は返品)が多かったように思う。

「ワークマン」のFC条件を調べてみた。少しわかりにくく、きちんと確認が必要だとは思うが2タイプある。わかりやすいのはBタイプで従来の俗にいう販売代行と言われていた契約内容だ。昔、サンエーインターナショナル(現TSI)と代行契約をして10数店舗やっていたので内容は理解できる。月度売上3500千までは500千の収入。それを超えれば超えた分の3%分が上乗せされる契約内容で、月度売上月10000千であれば500+(10000-3500)×0.03=695千の収入になる。一般的な販売代行手数料率は13~15%(※その前後はある)で、この契約なら10000千売上で手数料率が約7%になり契約自体は全く魅力がない。おそらくこの契約を選ぶことは少ないのではないか?

Aタイプは細かい経費は別として、オープン時商品原価分2240万を負担するということ。その在庫はオーナーの資産になるということらしい。さらに利益は月間の荒利額の40%が収入のようだ。つまり月度売上が1000万で荒利率が36%だと利益額は(1000千×0.36)×0.4=1440千が月度収入になる。その他営業経費が300千くらい引かれる。つまり月間収入は1140千となる。報奨金制度もあり上乗せはあるらしいが、オープン時の商品原価分の負担は大きい。その返済は分割でもいいようで立ち上がりの資金は少なくても済むようだ。

想定面積が100坪ということだが、夫婦でやるとして、店をやっていた経験上要員数は最低5名(これでも厳しい)で、そのうちフル勤務(1日8時間×20日)3名(当然オーナー夫婦も込み)短期バイト(月80時間前後)2名は必要となる。夫婦以外に月度給与は交通費や社保を入れると400千は必要になる。そうすると、夫婦の収入は月740千になる。これをどう考えるかだが、おそらく夫婦そろっての休みは取れない。さらに給与計算や経費処理等の会社としての仕事もあり、ほぼ休みなしの状況は予測される。最近の採用難を考えると募集も難しい。販売員が確保できて何とかやっていけるとすれば上記した最低月売上1000万は必要だと思う。

さらに、品揃えは「ワークマン」側に任せるのだろうか?発注責任はどこにあるのだろうか?「ワークマン」側に優秀なSV(スーパーバイザー)が必要で、そうでなければ売場の維持管理ができない。原価在庫が22400千はあるので不稼働な在庫をどう処理していくかも指示がないとできない。

詳細は分からないところが多いが、「ワークマン」のFCになかなか魅力は感じない。オリジナル商品をどんどん作って荒利益を上げることでFCに収入が増えなければ続かないのではないだろうか?直営店もありそうなので、儲かりそうな店は直営で賄うのではないか?

今後の「ワークマン」の伸長がFCにかかっているのであれば、ブーム的なものはあるにしろ、大きく伸長していかないのではないだろうか。

■今日のショット(山中湖)

中流?

いつも読んでいる漫画雑誌の4コマ漫画(作:業田良家)で、「夫婦が買い物に行って値段POPの大きいジャンパー、シャツ、パンツを見て最後に旦那さんが「俺の着ているもの全部値段がわかる。」と言ってユニクロらしき店から出てくる。」というものがあった。そのあと最後の1コマで「この店で、買った服しか、持ってない。」と詠まれている。

「ブラックフライデー」+「感謝デー」ということもあり近くのイオンモールに買い物に行ったが、集客があったのはユニクロと食品売場くらいだった。いつもの「感謝デー」より少し多いぐらいの客数のようだった。ユニクロは販促に呼応してセールコーナーを大きくとっていた。

また別の話だが、先日実家に帰った折り、所謂値頃価格のホテルに3泊した。観光地のグレードの高いホテルはほぼ満室で、中途半端な値段なら安いほうがいいと思って予約したのだが、ほぼ高齢者のツアーや夫婦客で満室近かった。ちなみに観光地は東南アジアの訪日客でほぼ埋め尽くされていた。

自分がそう思っているだけかもしれないが、どうしても値段訴求に向かっているお客様が多くなっているように感じる。少し前まで洋服はセレクトショップのアウトレットで買っていると言っていたノンポリの友人もユニクロ派に転じた。

ファッション業界もユニクロや無印、アダストリアの値段が中心になりブランド志向が崩れていっている。「取引先から買って仕入れて売る」時代から「自社で作って売る」時代に変わっているのでそうなるのは必然だとも言える。中にワンクッションはいらないだけで値段は下がるに決まっている。そしてお客様はもうそこに気づいている。

方や先日の日経新聞には「モンクレール+sacai」の広告が大きく掲載されていたり、地方でもラグジュアリーブランドのホテルがどんどん建設されている。お金を出せばそこに心地よさがあることも分かっている。

中流がいなくなったというよりも、仕組みがわかってきたという感じのほうが強い。

ただ、ニュースでは「コロナ前に戻った」と言っているし、有識者もそういっているが、「失われたコロナの3年間」の代償は大きいことも忘れてはならない。

■今日のショット(忍野八海)

買いやすい売り場と値段とは?

イオンの売場などのGMSの売場を見ていて、「何故、売れてないのだろう?」と思っていた。しまむらを見たときに平日でも商品を持ったレジ待ちのお客様がいた。ユニーからドンキに変わって数字は大きく改善した。GMSの売場はきれいで商品も見やすい。何が違っているのだろうか?

売場が広くなりすぎた。今のRSCの核としての位置付けからゾーニングしての結果かもしれない。その結果、効率を考えず品種を増やした結果かもしれない。さらに効率を考えずに指摘された「欠落品種」を足していったからかもしれない。最低限の品種で最高の効率を考えての売場になってないということではないだろうか?

さらに今のGMSの衣料品、服飾品の売場はきちんとしたストアメイキングマニュアルがあり、売場も大きく、比較的通路も広く、カラーフォーメーションに基づいた売り場づくりがされている。逆に商品がばらつき、商品密度が薄くなっている。百貨店に近いVMDを展開しても単価はそこまで上がらず、効率も上がっていないのではないか?

昔と違って、細かい売場区分がなくなっているようで、スタッフの姿も見えず、会計も集合レジになっている。いつごろから部門レジはなくなったのだろうか?おそらく1人1人の守備範囲が広くなり、それだけ業務の幅が広がり、販売にかける時間は大幅に減っているような気がする。百貨店型を模索しながら販売員がいない。そのためか、派遣社員付きのブランドは好調と聞く。

衣料品をセルフでレジにすぐ持っていく値段はいくらぐらいだろうか?3000~4000円くらいになっているのではないだろうか。プライスラインはどれぐらいの幅で、どのプライスゾーンを打ち出しているのだろう。ユニクロに劣らない商品開発もしており、企業商品のレベルも高い。ただやはりボリューム感やプライス訴求で完全に負けている。単品を売りこなそうとしていない。着装感を打ち出してコーディネイトで売っていこうとしている。

いらない商品を省き、売りたい商品のボリュームを持たせ、値段を訴求する売り場にする。まず担当者が考えるミニマムの基本品揃えに戻るべきではないか?そこに必要なものが出てきて初めて品目(アイテム)を増やしていく。

ユニクロの単品量販訴求とボリューム感。買いやすい値段への追求。しまむらのローコストで「売れる商品を売れる値段」でのわかりやすい売り場。お客様に支持されている売場が正しいということを再認識する必要がある。

しまむらを見て以来考えさせられ続けている。

■今日のBGM

中小小売業はどうやって給料を上げていくのか?

政治ネタを書く気もないのだが、岸田首相が「賃金を上げていく」と言うたびに力が抜けていく。それに同調する財界にもあきれてしまう。国は企業にどういう力を貸してくれるのだろうか?

中小機構によると日本の全企業数の99.7%が中小企業であり、労働者の68.8%が中小企業で働いているとのことだそうだ。私自身も大企業で働き、最終的には会社を興し、中小企業の社長で引退した。

小売業しか細かくはわからないので、小売業の中小企業がどうやって賃金を上げていくのか考えてみたい。当然のことだが利益を従前よりも稼ぎ出すことが必要になってくる。

利益を上げるにはまず売上を上げることが最低限必要なことになる。コロナで傷ついた売上を簡単に回復できるのか?何度も書いてきたが、小売大手を含めても売上を堅実に伸ばしている企業は少ない。10月の上場企業の既存前年比をみても、無印は112.9と伸長もユニクロ91.5と数字に大きな変化は見られない。コロナ前よりも伸長している企業は少ない。

次に利益率を改善することが必要となる。仕入れ原価を安くすることが一番の方法だが、海外の工場でロットを増やして生産しても、円安の影響で値段を抑えれば利益率は改善できず、さらに値段も上げにくい。ましてや中小企業はロットを確保することも難しくなってくる。その環境でなかなか利益率も上げにくい。

次に経費を抑えられるかということだが、デベロッパーも厳しい中、家賃を下げることは難しい。人件費だが、最低賃金も上がってきている。小売業は工場等と違って、仕事の範囲が見えにくい。時間を増やせば生産量が必ずしも増えない。その他のランニングコストは十分絞っているだろうし、水道光熱費などは逆に上がっている。

さらにコロナで融資を受けている。当然返済も始まっている。新店や改装などの店への投資にも、よほど企業財務体質がよくなければ、金融機関は融資には応じにくくなる。応じてもらえても金利は今までよりは確実に上がる。

そういう環境下で、どうやって中小小売業は賃金を上げていけるのか?

先日、新聞で有期社員から正社員に待遇変更したら助成金が出ることを初めて知った。会社を経営していた時20人近くは待遇変更した。調べると1人57万円の助成金とある。月に1度はハローワークにいっていたが、この話は聞いたことがなかった。ほかにも多くの助成金制度があるようだ。もう少し周知させる必要があるのではないか?

国は何を手助けしてくれるのだろう?99.7%の中小企業はそれを探す力が弱い。助成金だけでは給料を上げるだけの原資には遠く及ばない。

上場企業だけを見て、政策を立案したり、財界と話ができれば経済は動くと思っていては約70%の労働者の幸せには結び付かない。政治が国民の給料を変えることはなかなか難しいと思う。

■今日のBGM

再び「在庫」と「利益」

しまむらの数字を見ていてつくづく感じたことがある。しまむらとライトオンの前年の決算数値から少し数字を引用する。

月度数値

・しまむら 1店舗 売上36.2(百万) 売上総利益12.5(百万)

利益率34.5%  平均在庫 58,42(百万) 月度回転率 0.62

・ライトオン 1店舗 売上10.02(百万)売上総利益 4.94(百万)

利益率49.3%  平均在庫57.3(百万)  月度回転率0.18 

※上記数字は単純に数字を店舗で割っただけで、ネット等売上やその在庫なども含まれる。

この数字をしまむらの回転率を0.5回転/月、ライトオンの回転率を0.3回転/月に変えてみる。その想定ではしまむらの在庫は72.4(百万)、ライトオンは33.4(百万)となる。しまむらは在庫を増やし、ライトオンは減らしてみる。

しまむらは単純に在庫増分を仕入れしたとする。その値入率を45%と想定する。売上は変化なしと想定。分母は在庫+仕入れで 58.42+13.98=72.4 分子は38.27+7.69=45.96  万引きなどの商品ロスを0として、利益率は36.5%に2%アップする。

ライトオンは仮定として20(百万)現状の原価率で返品し3.9(百万)は値段を下げると設定する。(おそらくこの原価率で返品は不可能で、ましてや返品できない。さらに不稼働在庫は不明だが、あくまでもシュミレーションとして計上。) 分母は57.3―20―3.9=33.4 分子は29.05―10.14=18.91  万引き等商品ロスは0として、利益率は43.4%と6%近くマイナスする。ただし値段を下げることで売上は上がるとは思う。

上記はあくまでも想定で、現実的な計算ではないが、在庫が多い企業は間違いなく不稼働在庫も多いと思う。商品の支払いは遅くても3か月後(ふつうは遅くて2か月後。もうほとんど手形支払いはないと思う。)としても3か月で商品が売れないと支払いはできない。仕入れの原価率次第だが3か月で商品が売れるとして年間4回転はしないとキャッシュは回らない。

しまむらの数字を見ればわかるように、在庫を増やせば利益率は上がる。利益率を優先して不稼働在庫の処理を遅らせることによって利益率の低下は抑えられる。だが、不稼働在庫の処理が遅れることで、売場の新鮮さが損なわれ、売上も上がってこない。そういう意味から商品回転率が低い企業は在庫過多の状況であり、利益率の信憑性は低いのではないかと思う。

「在庫」と「利益」は相関性が強く、特に「在庫」は第3者が調べにくい。あくまでも企業が決定する。企業として「利益」を追求することは当然だが、私自身は「利益率」より「回転率」を追求する会社を信用する。

■今日のBGM

チェーンストア理論➁

品種・・・商品部門より小さな概念で(商品)ラインより大きな範囲を指す。ライン…特定の価格ゾーンの商品品種をいう。 品目・・・アイテム。お客様が識別できる商品の最小分類。 単品・・・「SKU」生産者や流通業者にとって考えられる限りの商品の最小分類を指し、POSが扱うのは単品で、いくつかの単品をグループ化したものが品目。

「単品」「品目」「品種」の説明である。

「何が売れている?」漠然とした質問だが、品種なのか、品目なのか、単品なのかわからない。何を指すのかちゃんとした言葉が必要で、話が通じなくなる。さらに各社独自の言葉もあり何を言っているかわからないことがある。マイカルがイオン傘下に入ったとき、旧マイカルの従業員は、言葉の違いで悩んでストレスを感じたと多くの人が言っていた。

この言葉を統一しようとしたのがチェーンストア理論の渥美先生で、上記の説明は手元にある2002年度版の「チェーンストアのための必須単語1001」での説明を記入した。

前回しまむらについて書いたが、しまむらの業態はVS(variety store)と記したが、これも「必須単語」の業態の類型で、以下の通りの内容となっている。VS・・・価格レンジ「ロワーP」 商品特色「廉価短期消耗実用品 衣料4~6割」                                「必須単語」説明では以下の通り。・・・商品頻度の高い非食品を幅広くそろえた、便利総合品、売価の上限が低く抑えられている。実用衣料が主力で、売り場面積150~500坪でセルフサービスである。NSC,CSCの第2、第3の核店となる。1人売り場60坪以上でやりくりし、売場販売効率が低く、低商品回転率でも高収益なのが特徴。(抜粋)

しまむらについては業態の説明とおおむね一致する。20年以上も前の必須単語だが「SPA(speciality retailer of private label apparel)」の説明もあるし、主要経営効率計算公式もまとめてある。   

チェーンストア理論の在り方は理解できるし、各社ともそれを基本にしてフォーマットを作って戦ってきたと思う。私自身はチェーンストア理論とは考え方は違う店をやってきたが、言葉の統一は必要なものだと思っている。その中で「必須単語1001」は絶対必要なもので、標準語として続けてほしい。

各社、言葉が通じないのは小売業界としておかしい。標準語は絶対必要だと思う。

■再度画像アップ ※祝阪神優勝 岡田監督とは同じ年。学部は違うが同窓。六大学で江川を打てるのは岡田しかいなかった記憶がある。

しまむら ➁

いろいろ考えてみた。

なぜ、この業態で好調を続けられるのか?同じようにチェーンストアの成功を目標にして、GMSに向かわずにVS(バラエティストア)に向かったのか?それをぶれずに60年以上もやり続けることができたのか?なぜ好調を維持できるのか?

GMSがなくなっていく理由がわかったような気がする。非食品は完全にお客様から「No!」のジャッジをもらっている。高度成長期に充実させようとした「中流意識層」への対応売場が現状は全く必要とされてない。大きな売り場を埋めるために、不要な商品を集めすぎている。シーン別の売り場などは完ぺきに自己満足だし、儲かる売場(必要とされる売場)だけでもういいのではないか?作ってきた売り場を進化させているつもりでいるだけで、実は進化させていなかった。無駄なことばかりやってきた。売れない商品でも仕入れたし、欠落アイテムも補完した。でもそれは必要なかった。

特に時代の変化は大きい。円安不況の中、中流層の崩壊が顕著で、購買動向も大きく変わってきた。特に20代~40代の変化は大きい。そこを百貨店やGMSは拾えていない。ユニクロやABCマートのような一種のカテゴリーキラーやしまむらや西松屋のようなVSに流れている。

そこまでは整理できるが、あの雑然とした売り場でいいのだろうか?GMS時代のストアメイキングマニュアルは不要なのだろうか?商品はペラハン(入荷時のペラペラのハンガー)のまま陳列していてもいいのだろうか?陳列量はあれでいいのだろうか?演出もレイアウトもあれでいいのだろうか?

おそらく要員数や経費と関係していると思う。新しいハンガーに変える手間と購入経費より、人件費や商品動向(POS)経費を優先した結果かもしれない。おそらくぎりぎりのオペレーションコストなのかもしれない。レジ要員と品出し要員を中心に回していると、細かなところまで手を回せないというのが現状かもしれない。

さらに、割引商品の比重も高い。在庫と利益のバランスはあるが、どういう指標で割引対象にしているか興味深い。今まで言って来たが「利益率」より「回転率」を重視する会社のほうが小売業では正解だと思っている。(利益率を優先する会社は将来的には成り立たない。)間違いなくしまむらは「回転率」重視で動いている。プライスダウンする決定プロセスを知りたい。今の回転率で今後どのように利益を改善していくかを知りたい。

もう何店舗か見ないと、いろんな仕組みややり方が想定できないが、どういうマネジメントをしているか聞いてみたい。

近いうちにまた違う店を見に行こうと思った。

■今日のBGM

しまむら①

しまむらに行って来た。非常に驚いた。

しまむらに行ったのは2度目で、前回は母親が入院するので必要なものを買いにロードサイド店に行っただけで、真剣に見たのは初めてだった。

1店舗しかゆっくり見ていなくて、評論するのはおこがましいし、好調企業に意見をするつもりもない。思ったことだけを書く。思ったことを並べる。

値段を打ち出し、余計なものはおかない。売れない商品は即なくす。ストアメイキングマニュアルなんかいらない。来ているお客様のニーズに合わせて売り場を作る。ロープライスで徹底する。その上を見ない。ローコストオペレーションに徹する。いらない商品部門はやらない。売り場は1980年に私がニチイ(マイカル)に入社した時以上に雑然としている。

しまむらの年度の実績を再度確認する。

売上高 616125百万  営業利益 53202百万  1418店 

売上総利益 209986百万(34.5%)  人件費 66420百万 人件費率10.8%

商品在庫 54266(百万)従業員数 11942人 

総面積 2233275㎡ 賃借料32678(百万)

単純に店舗数で割る

売上 434.50(百万) 在庫38.27(百万)売価在庫58.42(百万)

1店舗面積平均 1574.9㎡(476.4坪) 1店舗人件費46.840(百万)従業員8.4人

1店舗平均月度売上 36.2(百万) 1店舗月度平均人件費 3.903(百万)

1店舗平均家賃 23.045(百万) 1店舗月度平均家賃 1.920(百万)

1店舗の概況は以下の通り

売場面積 476.4坪 ※インショップ、ロードサイドすべて込みの平均

月度売上 36.2百万 (月坪売上7.6万)月度売上総利益 12.5百万

平均在庫 58.42百万 月度回転率0.62

家賃 月坪家賃4000円強※自社物件も混みなので実際はこれより高い。月坪6000円前後か?

店舗人件費 本部要員を考えると 3.5百万前後/月くらいか?

大雑把な数字なので正確には読めないが家賃比率7~8%、人件費率10%前後、労働分配率30%前後になる。十分に利益は出る。回転率は月度0.62と非常に高い。チェーンストア理論通りの数字になる。

坪売上はユニクロに大きく劣るが、人件費率、商品回転率で上回る。商品特性、調達方法の違い利益率の低い商品部門もあり、利益率は大きく下回るが、経費項目はほぼすべて優っている。利益を上げるにはどれだけ商品の値段をどこまで値段を下げずに引っ張るかだが、ここが企業特性の違いだと思う。当然値段を下げなければ利益率は上がる。ただ半面在庫が増える。利益率と在庫高は調整できるといえばできる。

色々考えさせられたことがあるので、次回再度まとめてみようと思う。

■今日のBGM

㈱ニットプランナー 倒産 

「KP」ブランドの子供服を展開していた㈱ニットプランナーが倒産との記事を見た。ブランドはワールド傘下のナルミヤが続けるようだ。去年ナルミヤがワールドの傘下に入ったのも驚いたが、子供服業界も少子化もあり大変厳しそうだ。 

昔在籍した高崎SATY時代、1995年ごろキッズDCブランドを集積させてフロアを構築していた時代があった。「コムサデモードフィユ」「ミキハウス」「べべ」「ミニバツ」「ハッカキッズ」「ミニK」「メゾピアノ」「KP」などのブランド構成だったと思う。DC全盛期でお母さんが子供にブランドを着せるのが目的で脚光を浴びた。「コムサデモードフィユ」「ミキハウス」は年間1億くらいの売り上げだったように思う。その後ビブレ業態変更時、客層を絞るため子供業種はなくした。 

調べると中心ブランドだった「ミキハウス」は帝人グループになっており、「べべ」は投資ファンド傘下(もともとは神戸のジャバグループ。ジャバグループはその後伊藤忠から投資ファンドに。)「コムサフィユ」はファイブフォックスHPによると直営店は20数店舗。ナルミヤの「ミニK」はブランド中止?「メゾピアノ」は全国主要百貨店。「ハッカキッズ」も同様全国主要百貨店。「ミニバツ」は「バツグループ」がなくなったため、ブランドだけ残って量販店ブランドになっているようだ。 

子供服はベビー(~2歳)、トドラー(2~5歳)、スクールとサイズが細かく、商売としては非常に難しく、現在は子供はすぐ成長するのでファッション衣料ではなく、必需品になってしまった。昔は特にかわいい時期のトドラーサイズ中心にブランドニーズはあった。現状はそのブランドニーズがあるのは百貨店のみのようだ。 

2022年の子供服の全国売上高は8000億規模のようで、靴業界1.1兆円、カバン業界1.2兆円よりも小さい。きちんとしたデータがないので推定ではあるが(2010年が9000億前後)2000年ぐらいで1兆円前後の規模と思う。減少傾向であり、 店舗数や売り場面積を考えると売り上げ規模は非常に小さく感じる。特にスクールニーズがユニクロやしまむらに流れ、従来の子供服メーカーは大きなアゲインストになっていると思われる。それでも売り上げの規模にかかわらず、百貨店やGMSでは、つなぎたい客層ということもあり、売り場面積も大きく販促も多い。 

子供服は「かわいい」から実需中心に変わってしまっている。ブランドは百貨店顧客のみで成り立っている。特にスクール需要はユニクロなどのファッション実需に変わってきている。年々少子化は続き、需要自体が減少してくる。現在のファッション業界の2極化や経済環境を考えると、マスに受け入れられる子供服のブランドビジネスは難しい。 

従来の子供服専業メーカーは成り立たなくなってくるのは当然のことかもしれない。 

■今日のBGM

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