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久々の越谷レイクタウン

アウトレット棟増床になって初めて見に行った 。レイクタウンは3年くらいぶりかもしれない。

イオンモールの「kaze」とイオンリテールの「mori」、アウトレット棟の3棟あり、商業施設面積24.5万㎡、店舗数710、駐車台数10400台の店舗面積日本No1の商業施設となっている。

何でもあるけど、買いにくく、車、電車共に1時間以内の商圏内にもかかわらず、買い物にはほとんど行かない。所謂、名所的な物件というイメージになる。立ち上げた会社でオープン時から出店していたが、お客様が比較購買するには広すぎて、再来店時に必ずフロアマップをもっていて「場所が覚えられない」と言っていたのが印象的だった。大きすぎてなかなか比較購買しにくいSCだった。

モール(RSC)のことは今まで書いてきたが、これだけ多くのモールができると差別化もしづらくなっている。「シネマ」「家電」など目的で来る大規模なテナントがどれだけあるかだが、近年はそれも「わざわざ」でもない。「百貨店」や「セレクトショップ」で呼ぶにも、やはり買い物環境が違いすぎる。成り立つのは都市部に限られる。そんな中で門真のららぽーとを見て、大都市近郊での成功事例はアウトレット併設かなと感じてはいた。ただやはり大都市に近ければ近いだけプレミアムブランドはリーシングできないし、集められるショップのパワーがどれだけあるかが「わざわざ」のポイントになるかだと感じていた。

今回のアウトレット棟の増床で「わざわざ」は感じない。ただ郊外のアウトレットモールに行くなら十分のラインナップにはなっている。引き続き「ビームス」「ユナイテッドアローズ」「ベイクルーズ」はアウトレット専用ブランドでの展開で、新たに「ノーリーズ」も出店しているがここもアウトレット商品での展開になっている。セレクトショップもアウトレットブランドのショップで出店すれば売れないだろうなと、つくづく感じる。もうそろそろお客様も分かっている。他のテナント揃えでもメジャーの海外ブランドはあまりないが、ノンポリのお客様はつかめている。ただテナントを見ていると、リーシングは厳しかったようで、催事出店が多いようにも感じた。それでもレイクタウンのお客様としての選択肢は広がったと思う

それでも全体を久々に見て回ったが、moriに高知の「ジーンズファクトリー」やkazeに宇都宮の「アーク」などが出店していて、リーシングの努力も見えた。個人的な意見を言わせてもらえば、投資するならアウトレット棟の一部をなくしてでも、湖畔(?)に路面店を作って地方有名セレクトショップを集めたらどうかと思う。環境も営業時間もそこだけ変更して「わざわざ感」を作り出せればイメージもアップするし、その客層も広域から来店する。今のテナントロケーションなら単なるテナントの1つにしか見えてこない。残念に思う。

頑張ってはいるけれど、やはり大きすぎるし、そのランニングコストも大きい。それなりの賃料でリーシングしなければならないし、テナントはその賃料で出店しなければならない。小型店(~50坪)は出店場所がわかりにくければ、完全に埋もれてしまう。実際、催事や空床はあり日本一のSCでも維持するのは大変そうだ。さらにデイリー需要は少ないため、今後もイオンの看板SCとして投資を続けていかざるを得ない。例えば人工湖の周りの環境を整備して観光要素も増やすとか、小売以外の切り口もたくさん必要になってくる。

「色々大変だな」と思いながら1万歩以上歩いたけど、久しぶりに面白かった。

■今日のBGM

モール戦略が崩れれば・・・

GMSは1970年くらいから活気づき約50年で終焉を迎えた。郊外モール(RSC)ももう20年以上は経過している。ここから変化を取り入れていかねば間違いなく衰退期に入る。資本構造も変わってきている。金融資産化されていくと淘汰のスピードは速くなる。現状を冷静に把握して、ここ数年で大きな経営判断が必要かもしれない。

商売の基幹としてGMSを続けていくのは大手ではイオンとイズミくらいになっている。両社に共通しているのは企業としてモール戦略を打ち出していたことだ。2核1モールのイオンとGMSを取り囲むようなモールのイズミと形は違えども、大型モールの吸引力で自主売場(GMS)を活性化してきた。裏を返せば集客のあるモールでの商売だからGMSは何とか成り立ってきた。

モールの収益はテナントの賃料で成り立つ。現状簡単にはテナントを集めることはできない。何とかテナントを埋めても、魅力ないテナントは長続きしない。魅力あるテナントの誘致には賃料のディスカウントや大型化などで当初の賃料プランは崩れていく。当然モールは減価償却などで経費の減少はあるが、退店による改装や修繕計画もあり、おそらく収益が安定しているところは数少ないと思われる。何カ月前かにイオンモール太田の改装についてコメントしたが、おそらく投資の回収計画は大変厳しいものになっていると思う。

考えられることは、おそらく今後はキーテナントであるGMSの家賃の見直しが始まるだろうということだ。テナントからは賃料ダウンの要請が多くなるだろうし、新規テナントも当然条件改定交渉は厳しくなる。イズミの「ゆめタウン」も賃料の見え方は低いが、あまりにも多いポイント負担金への抵抗は根強い。両モールとも、特に50坪以下の小型テナントの固定賃料の高さが原因で出店件数が減ってきており、テナント賃料は確実に減っている。そうならば、大きな面積を抱えるGMSの賃料を改善していかなければ、モールの収益は確保できなくなる。特にリートなどで資産を流動化していれば、まちがいなくキーテナントへのプレッシャーは強まる。それに対してGMSは呼応していけるのだろうか?

GMSの売場で課題となるのは衣料服飾品だが、イオン(GMS)の衣料服飾品の年間売上は年間2842億、利益率は37.1%(いろんな形態はあるが合計で)となっている。イズミは従来基準で、非食品で売上930億、利益率36.1%と公表されている。これを専門店と比べると、厳しい状況のライトオンでさえ売上469億、利益率48.1%でありユニクロの去年の利益率は52%となっている。おそらく坪売上も専門店よりは大きく下回っていると思われる。つまりイオンの衣料服飾品売場は一般企業に置き換えると、全く成り立たないことになる。GMSとして人件費等他の経費は当然抑えてはいるだろうが、モールへの賃料アップによって家賃比率が上がれば全く商売にならないのが現状の数字になる。

今後、モール事業で割り出される予算賃料でテナント誘致が進まないと、モール戦略の中で維持されてきたGMSの収益基盤も崩れてくる。イオンのGMSも完全に赤信号だ。

■今日のBGM

大型モール(RSC)の評価基準

近隣に大型モールがたくさんあり、買物のついでに店を見て回る。厳しい状況だと感じるモールも少なくない。

大型モール(RSC)の創成期からいろんなモールを見てきた。売場企画に加わったこともあるし、最後は出店者側として、出店交渉もしてきた。つまりモール側で企画や、運営もしたし、出店側で開発業務やテナントとして商売もしてきた。現状でも、モールを見るとそのモールの状況はわかる。資産流動化されていたり、資本関係が複雑で最終の損益までは見通せないが、おかれている現状は見える。今のモールでチェックすべきショップMDとしてのポイントを何点か上げてみたい。

まず当たり前のことだけれど、テナントがきちんと埋まっていること。空床区画はすぐわかる。催事区画で埋めている場合もある。催事区画も空床区画と同じ扱いに過ぎない。什器や商品ですぐわかるし、きれいな催事も内装の作り方や店名の電飾の有無で判断できる。(定借物件の内装規定で店サインに電飾を加えるように指定されることが多い。)近年は3層のモールで3階のテナントや、食品側と離れている場所に空床(催事)は多い。

さらに、空床を埋めるためのサービス業種をリーシングするケースが多い。顕著な例は「携帯電話ショップ」であり、「ガチャガチャ」や駄菓子屋、古着屋、各種教室などのサービス系のショップが増えてきていないかもポイントになる。

3番目としてきちんと集客できるテナントは揃っているかをチェックする。「ユニクロ」、「GU」、「無印良品」、「ABCマート」など。そういう大型集客ショップは、できればメインフロアではなく高層階にあるほうが望ましいと感じる。個人的にはアダストリアであれば最低2店舗(3店舗?)はあるべきだし、近頃モールから退店しているがユニクロの「プラステ」があるモールは個人的には信頼できた。

さらに、メインフロアは店の顔になるフロアなのでテナントのラインナップは当然チェックすべきポイントになる。感性やトレンドを意識できるテナントがあるのがベストだと思う。値段を打ち出すショップがメインフロアに見えるのはそのモールがあまりいい流れではないように感じる。ファッションだけでなく「旬」を感じるテナントや「わざわざ買いに行きたい」テナントがメインフロアには欲しい。

その他、ショップMD以外では「SM(スーパーマーケット)の集客力」や「集客カテゴリー(シネコンなど)があるか」「交通アクセス面」などの環境的なポイントはある。

上記の観点で近隣のモールで見ると「コクーン」が最もポイントが高いが、規模が大きいだけに今後のメンテナンスが課題になる。逆に「アリオ川口」は現状大変厳しい状況で、イトーヨーカドーの動き次第ではオーナー変更も考えられ、大きな変革がありそうに思う。

今後は、理想的なテナントリーシングが厳しい状況が間違いなく続く。

■今日のBGM

ファウンドグッド

“「場所によって客層が違う。」とアダストリア関係者は語った。”と新聞にあった。「ファウンドグッド」をイトーヨーカドーに展開しているアダストリアの感想のようだ。

まず店を始めるには、ビジネスモデルを作る必要がある。誰に売るのか?そのターゲットは商売をするには潤沢か?何を売るのか?など・・・

誰に売るのか?で悩んでしまった。というのが冒頭の言葉のように思う。

「ファウンドグッド」の立ち上げの状況を見てこようと思って近隣のイトーヨーカドー浦和店に行った。昔はドル箱店舗と言われていた浦和店もオープンから50年以上も経過し、完全に古い足元客のための店になっている。天井も低く1フロア400坪くらいの昔の駅前型GMSになる。1階の共用部以外をほぼすべてをつかって「ファウンドグッド」はある。浦和駅徒歩4分という立地で、伊勢丹No2の売上の浦和伊勢丹の北側にある。浦和駅にはアトレ浦和があり、開発された東口にはパルコ(食品はヤオコー)がある。イトーヨーカドー浦和店のメイン客層は昔からの顧客の足元の中高年になる。言い換えるとシニア層が多い。ここだけ見ていたら偏った見解になると思って、アリオ川口のイトーヨーカドーに向かった。アリオ川口のイトーヨーカドーはモールに来るお客様になっている。

冒頭のコメントと同じ感想になる。GMSがダメになった理由でもある。イオンやイズミの衣料品平場が悪いながら持ちこたえているのは、モール戦略で客層を若返らせ標準化させているからだ。アダストリアの社員はおそらくGMS、特にモールにあるキーテナントとしてではないGMSを見たことがなかったのではないかと思う。裏を読めば、アダストリア側には大きなリスクがない契約になっているのだろう。

感想は、まだ真剣に取り組めていないに尽きる。「とりあえず、商品を埋めた」感が強い。単品量販ではあるが、あくまでもグローバルワークやローリーズファームのベーシック商品を値頃にした感が強い。内装や演出もお互いどこまでやっていくのかが見えてない。

やはり、お互いの方向性が固まっていないように思う。特に本部での意思は現場まで届くのには時間がかかる。以前、お互いが資本を出し合って「別会社を立ち上げるべき」と指摘したが、その必要がありそうだ。ちなみに広い売場に浦和店にはスタッフは見えず、川口店には1名しかいなかった。

思いつくまま書く。商品では衣料品以外でお客様を呼び込む必要を感じる。なぜ、インナー商品をやってないのだろうか?必需品で回転率が高い商品を取り組むことによって、来店頻度が増す。ユニクロも素材感を打ち出した「ヒートテック」で完全にフルライン客層になったように思う。無印のように生活雑貨を増やしてもいいようにも感じる。さらに店のカテゴリーが浦和店と川口店のように違っているので、店を分類して基本品揃え以外での対策が必要になる。例えばプライス志向の強い店に不稼働商材の処分コーナーを常時設けるとか、イトーヨーカドー得意のデータ分析で店の特性を活かしたレイアウトを作ったりするべきだ。

アダストリアは、こちらが指摘するまでもなく、感性だけで生き残らず、優秀な企業体質なので、今後はどんどん変革していくだろう。ただ、大多数が大型モールや駅ビル、ファッションビル育ちでもあるので、「しまむら」や「西松屋」の商売をどうとらえるかが成功の鍵のような気がする。「ファウンドグッド」の取り組みによってこのゾーンを開拓することが、企業として大きな成長につながると思う。

定期的に見てみたい。

■今日のBGM

イトーヨカドー アリオ

「ファウンドグッド」の売場を見ようと思って、イトーヨーカドー浦和店に行って見たが、完璧に食品ニーズの古いイトーヨーカドーで、少し客層が違う店を見なければと感じて、アリオ川口に行って来た。アリオを見て少しびっくりしたので、アリオについて書こうと思う。

以前書いたと思うがアリオが千葉の蘇我に1号店を出店するとき、コンサルをした経緯がある。その後立ち上げた会社で数店舗出店依頼があったが、出店場所やタイミングが合わず見送った。近年のアリオはRSC(郊外大型モール)というよりCSC(コミュニティショッピングセンター:中規模)の意味合いが強くなっている。

アリオ川口は近隣でも行ったことはなかった。好立地にもかかわらず、全く魅力がなく手を入れている感じが全くしなかった。

現状20あるアリオのSCを調べてみたら、見たことのあるSCが4SCしかなかった。フロアマップで確認すればおおよそのイメージは、ショップMDで理解できる。あくまで主観ではあるが、おそらく全国のRSCレベルでの及第点はアリオ亀有ぐらいだろうか?(亀有には行ったことがある。)CSCとしての及第点のSCが10ぐらいはある。

感じられるのはテナントの改廃により、どんどん出店店舗のレベルダウンが進んでしまっている点だ。全店のフロアマップを見るだけでもそれはわかる。おそらく魅力ある店舗のリーシングより損益を考え、賃料を優先してきた結果だと思う。人気のあるSCはその政策でも競い合ってさらに良くなっていくが、厳しいSCはその結果、携帯などの通信業や利幅の大きな業態の入店が多くなり、魅力あるテナントが減っていく。

イオンもRSCはたくさんあるが、イオンモール物件とイオンリテール物件のRSCがある。イオンモール物件は㈱イオンモール(デベロッパー事業)が運営し量販店イオンがキーテナントの1つになっている。イオンリテール物件は㈱イオンリテール(量販店イオン)が運営しているSCということになる。テナントの立場でいうとイオンモール物件のほうがテナント寄りの思いが強く対応が心強い。逆にイオンリテール物件はあくまでもイオンを儲けさせるためのテナントという位置づけの印象が強い。さらにテナントの売上や特性より賃料を優先させているイメージがある。つまりモール物件のほうがモールイメージを優先させており、リテール物件のほうが収益重視に見えた。以前立ち上げた会社ではイオンリテール物件には数店舗入店したが結果的にはすべて退店した。

おそらくアリオは、あくまでも量販店イトーヨーカドーを底上げしようという手段のSCになっていったのではないだろうか。グループの収益を重視した結果、数字優先のテナント揃えになってSCの魅力がなくなっていったような気がする。おそらくテナントの改廃時、商環境より賃料を優先したリーシングの結果が積み重なって、リーシングの首を絞めてきた結果だろうと思う。

アリオ川口を見ても、さすがにイトーヨーカドーのSMは商品や値段の絞り込みが優れていて、足元のお客様は十分つかみきっている。だが、シネマとSMが主な集客要素では広域からのお客様は集められない。川口には大きなイオンモールが2つもあり、さらに「ほぼ東京」でもある。足元客だけではあれだけのSCは存続できない。

イトーヨーカドーグループのセブンイレブン一極集中が進む中で、イトーヨーカドーの衣料撤退に続いて、デベロッパーとしてのSCの存続問題も今後課題として出てくるのではないだろうか。

■今日の1枚(やっと満開の散歩コース)

3月の数字から

経験上3月の売上はセール期の7月、1月を除いては、12月と並んで売り上げが高かった月だと思う。季節の変わり目でもあり、さらにフレッシャーもあり、モチベーション需要も高い月でもある。今年の各社の数字を速報値で確認したが、土日各1日増の中でも厳しい数字になっている。気温が低かったこともありファッション系が厳しいようだ。

無印が既存前年比116.1%、ニトリ114.6%と生活雑貨系は好調、さらにABCマート110.7%、チヨダ107.2%とシューズ関連も順調だったようだ。逆にユニクロ98.5%、アダストリア99.2%、ユナイテッドアローズ105.8%とファッションは前年の攻防で土日プラスの要因を考えると厳しい月だったようだ。堅調だったしまむらも101,1%、西松屋100.7%と少し流れが悪い。好調な流れだったハニーズも89.0%と大きく落ち込み、マックハウス81.3%、ライトオン78.9%と引き続き厳しい流れは続いている。

特に気になるのはやはりライトオン。今期決算(2024年8月期)の下方修正が出ていたが、今期予測が売上前年比87.4%、経常利益は赤字24億で25.5億のマイナス修正となっている。第一四半期決算の数字も公表されているが売上前年比85.7%、売上総利益率前年差-3.5%、営業利益は-517(百万)(前年差-548百万)、在庫回転率(月度)0.16回転(前年差-0.03)とすべて悪化している。さらに前期に複数の金融機関と規定している財務制限条項の「前期決算期の末日または2019年8月決算期の末日の純資産のうちの大きいほうの60%以上の純資産を維持する。」と「2半期連続して経常損失をしないこと。」に抵触することになった。この条項は金融機関と話し合いシンジケートローンの契約は継続される旨記載されているが、今後対金融機関との障害になる事は間違いない。

営業面で見るとやはり「在庫適正化への取り組みとして大幅な在庫圧縮を実施」とあるが、回転率は悪化しており在庫圧縮はできていない。気候のせいもあり売れ筋商品が見えなかったようだ。マイナストレンドの中、利益率を維持しながら在庫を減らしていくのは非常に難しいと思う。特に年間2回転しない状況ならば在庫は減らせない。在庫を減らすと利益率は大きく落ち込むし、利益率を意識すると在庫は減らない。在庫を減らして売れ筋をわかりやすくするには、売場を思い切って小さくしていくことしかないと思う。

ワールドと協業を発表したマックハウスも含めてジーンズカジュアル専門店の流れは浮上してこない。

4月にこの反動があればいいのだが。

■今日のBGM

3月の「全品オフ」

いつも行く近くのSCの1階メインフロアのレディスファッションの店が大々的にセールをしている。ある店は「全品10%、20%オフ」で、ある店は「全品1000円引き」になっていた。春休みは、入園入学のシーズンでもあり春休みの需要は大きい。売り上げ確保策としては強い販促ではある。近頃よく見る「全品オフ」だが、間違いなくマイナス効果のほうが大きいと思う。

「全品オフ」はストライプインターナショナルが、タイムサービスを連呼し始めてからいつの間にか増えてきた。当然の結果としてストライプインターナショナルは去年まで3期連続赤字に追い込まれ、息巻いていた上場の夢は消えてしまった。

全員周知のことだと思うが、「全品オフ」は売場商品の売れ筋からなくなる。売れ筋商品がなくなると売上は止まる。さらに利益が落ちることは当然わかっているので、商品担当者は取引先に仕入原価のダウンを要求し、さらには導入商品の原価値引きを要望するようになる。対ストライプインターナショナルでは取引先からそういう情報は出回っていた。

ここからどうなっていくか?売れている取引先は、他社では売れているし値引きも要求されないので、大きな取引額でなければ、取引をしないようになるし、たとえ大きな取引額があってもフェイドアウトしていく。ついていかざるを得ない取引先のみ残っていく。つまり取引先に利益補填を強要することで、対取引先との商品MDが崩れていく。築いてきた信頼関係がなくなっていく。原価値引きは小売企業が大きくなればなるほど取引先は断れない。余談だが、不当な要求を公取(公正取引委員会)に訴えればいいと思うだろうが、そうすれば狭い業界では生き残っていけないのが現状でもある。中小企業の利益が上がらない構造は小売業にもある。

そんな理屈はわかっていても、「全品オフ」は続く。一度やってしまうと、売上実績が計上され、その実績をもとに売上予算や利益予算は作成される。業界の流れが良くなっていれば、何もしないで前年数字をクリアできるが、なかなかそういう状況にならず前年と同じことをやってしまう。負の連鎖に陥る。

本来3月は多少の不稼働商品をプライスダウンすることがあっても、量販期であり、小売業としては利益を稼ぐ月である。RSC(大型モール)の1階にあるテナントということはそれなりの規模感があり、売上額の大きなテナントだと思う。現実としてはなかなか1階では商売はさせてもらえない。「全品オフ」をするテナントを1階に配置せざるを得ない、さらにテナントをマネジメントしているSC側もそのプライス政策を容認している。何度も書いているが、RSC自体も末期状態になっているのかもしれない。

※食品売り場はどんどん値段が上がっていく。お客様はエブリデーロープライスのSMにどんどん流れていっている。

■今日のBGM

イトーヨーカドーとアダストリア 2

GMSの衣料服飾品売場の課題が浮き彫りになっている。イトーヨーカドーは廃止の方向だし、イオンは別会社化している。イトーヨーカドーの売場をアダストリアが商品を供給し、売場作りや演出方法についても提案していくとのことである。

何故、イトーヨーカドーの衣料服飾品売場は売れなかったのだろうか?MDや演出方法が間違っていたのだろうか?おそらくイオンのトップバリュがイトーヨーカドーの衣料服飾品をやっていても同じ結果だっただろうと思う。さらに悪い数字だったかもしれない。完全にSCの集客力の違いで、GMSという業態がもう終わったということに尽きる。

今回のアダストリアとの取り組みについて考える。専門店と百貨店、量販店(GMS)は売り方が全然違う。過去に伊勢丹のカリスマバイヤーがイトーヨーカドーの役員になり衣料服飾売場や商品の変更を企画実施したが成功しなかった。土俵が違うし仕事のやり方が全く違っていたからだ。あの事例は簡単に予測できた。ファッションを売ることと商品を売ることは違う。そこに買い物に来るお客様も違う。そこに大きな差があった。

ここからはあくまでも個人的な意見になるが、アダストリアには、イトーヨーカドーのスタッフの小売としての業務レベルが相当に高いと思って臨んでほしい。私事で書くが、あまり業態の差はないと思われそうだが、GMS(サティ)と専門店(ビブレ)を両方経験した。「ビブレ」はファッションビルに見えるが、自主MDの店を30近く運営していた。当時の流れの差もあるが「ビブレ」は「サティ」を認めてなかったように感じた。私自身は「サティ」のほうがファッション業界の流れやトレンドはつかみきれてないが、数値意識や商品知識や販売スキルは高いと感じていた。つまり「感覚」や「トレンド」はあまり意識してないが「売れる商品」や「売れる素材」は理解していたように感じた。実際業務のマニュアルやデータ分析は「サティ」のほうが先行していた。そのGMSを引っ張っていたのがイトーヨーカドーだったのだから、実務レベルは、相当高いだろうし、取引先からもそういう情報を聞いていた。さらにディストリビューターの権限が強くデータ分析力も高いと言われていた。

間違いなくトレンドのつかみ方や、時流に合った売るための内装、演出の仕方、さらに一番差が出るお客さまへの接し方はアダストリアのほうが確実に上回っている。さらにこのブログでも書いてきたが、アダストリアは素晴らしい経営者がいて素晴らしい会社だ。

このターゲットのお客様をつかむ事業を開発し、ユニクロに負けない事業を構築する目的で両社が新しい会社を作っていくことが望ましいことだと思う。現状の報道を見る限り、イトーヨーカドーをアダストリアが助けるイメージが強い。まだ完成形を見てないが、導入された店を見る限りだと、イトーヨーカドーの声が聞こえてないなとも感じた。新しい売り場を作っていこうとする気概を是非見せてほしい。今回はイトーヨーカドーの底力に期待したい。

今回、この内容を書くかどうか迷った。GMSの衣料服飾品の収益が悪い記事を見るたびに、GMS衣料品出身としては悔しい思いがあった。商品よりも環境が大きな問題で、そのMDや売り方はそんなに大きな問題はないように感じていた。百貨店の取引先主導のMDよりも専門店の感性型MDよりもGMSのほうが理詰めだった気がする。GMSから離れて、百貨店や専門店の人たちと交流したが、商品素材や縫製についての知識や、数値面、システム面で劣っているとは感じなかった。逆に商売の理論は上回っていると感じていた。決して卑下することはないと思う。

今後どうなっていくか、一番注目している。

■3月23日の日経朝刊 ※掲載料は?

2件の取引先との協業について

前回のブログを書いているときに思うことがあった。イトーヨーカドーとマックハウスは売場の改善を目的にしているのに対して、アダストリアとワールドは新客層への取り組みを大きな狙いにしているのではないかということだ。

現状のアダストリアの主戦場はRSC(大型モール)であり、ワールドは百貨店、ターミナルビルのように見える。所謂、モデレート層をうまく取り組んでいる。特にアダストリアはそのターゲットでは一番のシェアを取っていると思う。

このブログでも再三書いているが、現状の客層はインバウンドを含む高級ブランド、百貨店志向と、ボリュームプライスを打ち出している専門店の客層に2極化されているように見える。中間層ターゲットの専門店の流れは悪い。ボリュームプライスの専門店はユニクロ、しまむら、ニトリ、西松屋などがあげられ、好調な数字が続いている。

アダストリア、ワールドは2極化されたボリュームプライスニーズには、現状取り組めていない。今後の戦略としてどうしてもそのゾーンにも参入が必要になってくる。つまりボリュームプライスの商売を模索しようとしているのではないか?主戦場のRSCや駅ビルでは確実につかめない客層を把握していきたいのではないだろうか?

そういう意味では100店舗以上あるイトーヨーカドーの衣料服飾売場はチャレンジするのにベストの状況になる。ワールドは少し読みにくいが、マックハウスも、従来ダイエー中心に出店していてイオンモールなどRSCに乗り遅れた経緯がある売場が多い。

さらには今回の取り組みは、いずれも厳しくなった売場を開発する目的でスタートさせるので、どちらかというとイニシアチブをとれる。優位性を持てれば商品MDだけでなく売場の内装、レイアウト、演出までリーダーシップをとれる。

アダストリアにとってイトーヨーカドーは非常にいい相手だと思う。大型の売場をコントロールできるし、安定したSMを持っているSCで取り組める。さらに、おそらくシステムやデータ分析はイトーヨーカドーに1日の長がある。その部分も取り込める。いろいろ試行錯誤ができそうだ。阿倍野キューズモールのイトーヨーカドーで商品を少し見たが、「袋入りの商品はどういう目的があるのか」など気になる事はあるが、修正を重ねていくと思われる。フルラインの衣料と雑貨までの展開で、優等生企業同士の取り組みには期待できる。唯一問題があるとすれば、元気がなくなったように見えたイトーヨーカドー側のスタッフのモチベーションが上がるかだと思う。

ワールドの取り組みは、前回のブログで書いた通りで、ワールド側が「うまくいったら儲けもの」くらいの取り組みのような気がする。思い切って両社で金をかけてどこかで成功事例を作る必要がある。お互いの出方を見ながらのスタートなら、うまくいかないし、マックハウス側に傷が残るだけになる。

専門店各社のボリュームプライスへの取り組みが、過熱しそうな気がする。

■今日のBGM

マックハウスとワールド

前回、南浦和の丸広百貨店について書いたのだが、どう見てもやる気のない売場がマックハウスだった。200坪近くある売場に商品は埋まっているだけの感じで、定番のデニムと持ち越しのキャリー品のみで退店するのかなと思っていた。あまりにもひどいのでマックハウスを検索していたらワールドの「ハッシュアッシュ」とのコラボの件が出ていて、商品投入する店の1つが南浦和丸広店になっていた。

イトーヨカドーとアダストリアのコラボについては以前書いたが、今回の協業は非常に厳しいと言わざるを得ない。

まず店のイメージをどうするのか?どういう店にしていくのか?MDをどうしていくのか?今までの「ハッシュアッシュ」ならファミリーニーズの商品だし(もしイメージが変わるならブランド名も変える)、ジーニングカジュアルの店と整合できるのか?売り場を見るまで分からないが全く想像できない。今のMDの中にコーナー化していくのか?テーマ、イメージを整合するにはそのテイストにすべき売場に改装が必要になる。大きな内装変更が必要になるが、そこまで投資していくのだろうか。

取引先と小売業にはいろんな力関係があり、ベストな関係は対等な関係だが、今回はどういう力関係なのだろうか。2社の規模やマックハウスの経営状況を考えると、ワールド主導になっていきそうに感じる。従来のワールドの取引先は、専門店販路と百貨店販路が多く、どちらかというとメンズイメージが強い小売店主導のマックハウスとの対応は難しくなると予想する。さらにメンズのイメージが小さいワールドと、レディスのMDがうまくなさそうなジーニングカジュアル店(ライトオンも同様に感じる)とのハレーションは大きいのではないか。どちらが持ち掛けたか知らないが「ハッシュアッシュ」も失敗したブランドとも思えるので、この力関係は大きなポイントとなる。以前「イトーヨカドーとアダストリア」で記したが、経験上、協業するには別会社をたちあげてまでやる覚悟が必要だ。

さらに気になるのが、既存のマックハウスの経営状況、特に商品在庫をどうしていくのかということだ。去年9月のブログで触れたが、前期のマックハウスの回転率は年間2.2回転、月度回転率0.18回転で、決算数字を店舗数で割ると1店舗平均で月度売上4800千、在庫26100千となっている。今期どれだけ改善されているかだが、今期も売上は既存前年比92.3%、今期純利益予測も赤字1145(百万)に悪化修正されている。2018年2月期から6年連続赤字という状況になっている。利益を確保するために在庫を減らせないでいる状況になっているので、今のデッドストックの改善が進んでいないような気がする。その状況下に新ブランドの世界観が表現されるだけのフェイスの商品を入れていけるのだろうか?(消化仕入かもしれないがまず考えられない。)

マックハウスの赤字決算が続いている中で、売場への大きな投資も想定できない。現状の在庫の課題も解決できていない。この協業が成功するとしたら現場を離れたトップ同士の話し合いでなく、現場同士の話し合いをどれだけ重視できるかにかかっている。そういう意味では、なんだか現場感がない協業のような気がする。

近年いろんな会社を傘下に収めているワールドがその目的をもって協業していこうとも考えられる。今回の協業はワールド側のメリットのほうが大きいと予測されるし、ワールド主導で進むと思う。

■今日のBGM

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