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トップバリュコレクション(TVC)

「イオンは衣料品ブランドを刷新した。」というニュースが流れた。記事を読んでみるとイオンのカジュアル衣料を子会社の「トップバリューコレクション」に移管し、PB名を変え、新商品を開発していくということのようだ。

イオンはGMSをあきらめないそうだが、すでに結果が出ている。商品やシステムでは完全にイトーヨーカドーには勝てなかったと思う。何とか、イオンモールの成功で、2核1モールの1核として比較的恵まれた場所と賃料でイオンのGMSは成り立ってきたと思う。イオンを利用する者として見ても、衣料品で購入するのは下着ぐらいで、フロアにいる客層もシニア層が多いと感じる。

昨年、衣料品売場を「トップバリューコレクション」と題して改装し、「これがイオンの衣料品の売場」と方向を示したという記事があったと記憶する。その売り場を浦和美園イオンで見たことがあるが、企業人が机上で計画して、やって見せた売場に過ぎず、今までとやっていることは何も変わってない。販売区分ごとにきれいに見せただけにしか見えない。見せ方を変えた分わずかに効率は上がったかもしれないが、損益を大きく改善できるものではないと感じた。岡田会長が「GMSはやめない」と言っているためにやっている感しかない。誰も言えないのだろうな。

衣料品で戦うなら、ユニクロのように1つの大型ショップとして戦っていく気概が絶対に必要だと思う。イオンの友人と話しをすると「その計画は何度も出ては消えている。」らしい。守られ、恵まれた環境で、商売をしていても成長はしていけない。イオン直営ゾーンの外に出てアウェイでどれだけ戦っていけるかを知ったほうがいい。西友から無印良品ができ、西武からロフト、東急からハンズができたように1人歩きできる大型店をイオンも作るべきだと思う。住居関連の直営売り場もニトリのような専門店を開発したらいい。比較的恵まれた環境で仕事を続けているから、中途半端なことしかできないのではないだろうか。私自身も、GMS出身で、会社を立ち上げ大きなSCに店舗を持って、商売環境について感じることはたくさんあった。何度も書いているが、イオンのGMSは、成功したイオンモールの中にいるから何とか成り立っている。今後郊外モール(RSC)が厳しくなれば、当然もっと厳しい数字になるのは目に見えている。

近年イオンモールからユニクロなどの大型店が、別のSC、路面店に移設するケースもみられる。売場の大型化や賃料の問題などが要因だとは思うが、その対策としても大型ショップの開発は重要な要素だと思う。さらに家電など大型カテゴリーの欠落しているRSCもあり、その対策としてもGMSの売場の整理は大きなプラスになるのではないだろうか。

「井の中の蛙」でずっといると、間違いなく取り残される。イオングループから大型専門店が開発されて、「ユニクロ」や「ニトリ」「無印良品」と戦える業態が出てくることが、小手先の改装や社内の組織変更より大きな意義を持つと思う。

■今日のBGM ・・・映画「パーフェクトデイズ」は良かった。ルーリードは持ってないので。

ファッション業界

「これがいいより、これでいい」 無印良品のスタート期のスローガンと言われている。今の時代に当てはまる言葉のような気がする。

日経平均株価が最高値で、上場各社は大幅なベースアップを行い、初任給も大幅に上がっている。日経平均が高かったバブル期はもう少し生活に実感があったように感じる。

当時のファッションはブランドブームで俗にいう「ボディコン」ブランドが全盛だったし、20代中心にDCブランドが席巻していた。マルイには「ピンキー&ダイアン」や「J&R」が並び、まばゆいフロアがあった。ビームスやシップスもトラッドの流れから変化しセレクトショップのスタートにもなった。好景気到来と言われている現状と比べるとファッションへのあこがれが強かったように感じる。少し前にも「モンクレール」「デュベチカ」などからブームになったダウンジャケットの人気の中、「カナダグース」が世間にはあふれかえっていた。しかしファッション以外の理由もあるが、今はほとんど見なくなった、ファッションの話は一部でしか上がってこない。

ファッションは「憧れ」からスタートするように思う。そういう意味もあり昔は働きたいと思う人たちも増えていた。「好きな服を着たいから」「好きな服を売りたいから」ということから販売員になる人たちもたくさんいた。当然待遇面の問題もあるだろうが、まず「好きな服」から仕事を見つける人たちがいた。今の時代にそういう憧れを持って販売の仕事に向き合う人たちはいるのだろうか?

今、好調な小売業はユニクロやしまむら、西松屋など接客が重視されない会社になっている。本部がマネジメントできる体制が整っている会社だ。当然単価が低く品数も多いので必然的にそうなる。仕事も作業化されている。会社で売れる商品を作り出し、データで商品動向を把握し、そのデータに基づいて売場体制を構築する。

小売業はどんな業態でも、売りたい商品を売るのが仕事にはなる。ただ思い入れが強く、「人」の要素が強い企業が厳しいのが現状である。

人手不足は深刻と聞く。販売業は土日も勤務が普通だし、立ち仕事でもある。定職としては最も敬遠される職種となる。さらに、そこまで大きな収入にはならない。収入を得るのが目的で待遇面を重視する人には向かない。

なかなか「これでいいより、これがいい」時代には戻ってこない。

■今日のBGM

大型モール(RSC)の収益悪化

何故、モール(RSC)から小型店舗が減ると収益基盤が弱くなるのか?

SCの賃貸条件は固定賃料、歩合賃料、共益費、販促費、駐車場負担金が主な条件でその他ポイント負担金などが加わる。さらにオープン時に共通部分の内装負担金、内装監理費、現場協力金、オープン販促費などが必要になる。

衣料品店舗で想定してどれくらいの支払いになるか推測する。30坪を定期建物賃貸借契約で借りる。売上は月4500千とする。以下想定で計算する。賃料は月坪売上150千10%超10%=450千、共益費月坪50千=150千、販促費1.5%=67千、駐車場負担金坪2千=60千。支払額は最低月727千となる。(条件はSCの売上状況によって当然上下する。)

1000坪に店舗を張り付けると、共用部を想定して20店舗(30坪)導入したとする。SCの月度受取金額は727×20=14540千となる。年間賃料は174(百万)くらいになる。例えば大手家電に1000坪(小さい?)貸したとする。ケーズデンキの去年の決算から計算すると1店舗あたり売上は年間13.4億、賃料は57百万となり、家賃比率は4.2%となる。※ケーズデンキは売り場面積3700㎡(1100坪強)が基準のようだ。

衣料品店舗の賃料を月600千に変えても年間賃料は140(百万)、家電導入時賃料5%にしても年間賃料は67(百万)となる。さらに入店時の負担金も非常に大きい金額になるが、大型区画では入店時の負担金も大幅に減る可能性が大きい。入店時の負担金に関して言えば共通部分の内装負担金の内容が明確でないうえに、その共通内装の全体の金額も分からない。その負担割合が店舗によって違うのも気になるところだが・・・

衣料品でも100坪近くなれば固定賃料ではなくなり歩率契約が多くなっている。売上が大きければ賃料収入に貢献するが、近年の大型店の坪売上はどんどん下がってきている。さらに、売れている大型店舗は歩率ではなく坪賃料固定での契約も多くなっていると聞く。つまり大型区画が増えれば増えるほど、その大型区画が想定売上より落ち込むと、賃料収入は減っていくことになる。

大型区画が増えるとRSCの強みである「店舗数の多さ」「バラエティ感」「わざわざ行くべき店がある」などの要素がどんどんなくなってくる。大きなNSC(ネイバーフッド型SC)になっていきつつある。つまり小さくて成り立つSCが大きい規模で運営されているということで、それは絶対に儲かる図式ではないということだ。

現状のRSCは「売上が上がらない」=「収益が上がらない」の負のスパイラルに向かっている。

■今日のBGM

今後のSCはどうなっていくのか

群馬県の商業については非常に詳しいと自負する。今までの職業柄多くのSCを見てきたが特に群馬県は詳しい。群馬の4店で店舗勤務をしたし、高崎ビブレでは初代店長も経験した。ビブレは成功させたと思っている。

イオンモール太田(60500㎡)が大改装するようだ。ここはイオンモールの古い店で関東では成田の次ぐらいのオープンだったと思う。新しい物好きの群馬では大成功を収める。イオンモール初期の成功店舗で300億超の優良物件だった。その後20Km圏に300億超でさらに成功を収めた羽生イオンモール(75000㎡)ができ、同じく20Km圏に200億規模のスマーク伊勢崎(55000㎡)ができる。さらに30Km圏に足元が強いユニー系の前橋けやきウォーク(55000㎡)があり、40Kmと距離は離れるが群馬の中心に規模の大きいイオンモール高崎(76000㎡)ができた。イオンモール太田は今回の改装で76000㎡となり高崎と同等の賃貸面積となる。群馬には近年人気のコストコも前橋と明和にできている。

群馬県は車の保有台数が多く、1世帯当たり2.1台とのデータがあり、普通の商圏調査ではなかなか表せない。太田からでもおそらくイオンモール高崎くらいには普通に買い物に行っている。どこでも車で行くので「行きやすくて、停めやすい」SCが求められる。

今回の太田の改装についてニュースリリースを見たが、家電(ジョーシン)を入店させ、増床棟にフードコートを移設し拡大し、旧フードコートにダイソーを拡大して導入するということに尽きる。大工事をして別棟を建設し、賃料としては厳しいだろうゾーンを新規で入店、移転させている。大きな目玉は「ジョーシン」と「ダイソー」と「フードコート」ということになる。大型店舗の賃料は厳しいし、フードコートは共用部が大きいので収益面では厳しい。おそらく前向きに出店を考えるテナントは少なく、出店しても賃料は厳しい交渉になったと思う。

きつい言い方をすると、マイナスを止める改装というところだと思う。半年くらいは改装効果があるが、そこから大きく伸びていくと思えない。やはり太田市中心の商圏は変わらない。同じ金をかけるなら、もう少しエポックメイクがあっていい。営業時間や場所、内装、賃料などを全部先方に丸投げしてでも驚くようなことをしないとSCのインパクトはない。大変難しいと思うが、桐生の「STカンパニー」や高崎の「ギャレリア」など群馬の誇る会社はたくさんある。当然、食も住でもある。

先日、大阪であべのキューズモールに行って来た。ここには何度か出店の件で行ったし、出店したいSCだった。調べてみると,2018年のデータではイトーヨーカドー抜きで428億の売上となっている。出店場所さえ間違わなければ売れるだろうとも思っていた。郊外のRSCにはない少し都会的なSCのイメージがあった。川崎のラゾーナに近いイメージを持っていた。現状はまだ改装中で、全体がオープンしてないので結論は出せないが、全体的にボリューム路線になっているように感じた。話題だった「109」がもうプラスイメージでなくなっている。「アダストリア」と「パル」で押さえて、ここもダイソー大型化が打ち出されそうだ。核店舗のイトーヨーカドーが元気ないので、昔の少しハードルが高いSCのイメージはない。「109」を今後どうするかでSCのイメージは変わると思う。

キューズモールの改装もテナント大型化とボリューム路線への流れになっている。

RSCの収益は大型店舗で集客して、バラエティ感のある小型店舗(50坪以下)を多く導入して収益を安定させることが成功の大きなポイントの1つだ。コロナ以降小型店舗の出店が大幅に減っていると思う。大型店舗が多いと、ある意味モール自体の面白さがなくなるし、競合SCとの差別化もできない。広域商圏のRSCがどんどん商圏を小さくしている。

各RSCの体力勝負になるような気がする。

■今日の1枚(近くの公園の河津桜)

日経平均株価最高値と小売業

株価最高値ということだが、どうも好景気という雰囲気は感じない。国民の約3割位しか株取引をしてない中で、その恩恵はどれくらいあるのだろうか?当然円安で輸出企業は高収益予測となっている。トヨタは今年の見通し営業利益は4.9兆円と発表されている。熊本の半導体工場の大卒初任給は28万ということで好景気のニュースが流れている。

就業者の70%は中小企業で働いている。中小企業がどれくらい恩恵を受けているのだろうか?給与は物価高騰率よりアップするのだろうか?現人口の3割位いる年金受給者に恩恵はあるのか?さらには2010年くらいから国としては輸入超過が続いている。現状は値上げに収入が追い付いてない状況で厳しい生活感しか感じていないのではないか?今後の金利上昇にどれだけ収入が追い付いていけるのか。

景気は小売業に大きな影響を及ぼす。バブル期はボディコンやブランドファッションが好調で幅広い層にも好景気が伝わった。さて今回はどういう流れになるのだろうか?

現状の小売業の流れは、衣食住とも低価格路線になっている。ファションでは「ユニクロ」「しまむら」「西松屋」など、食では「ロピア」や「OK」など、住では「ニトリ」など比較的価格志向の強い企業が強い。モデレートなポジションだったイトーヨーカドーに代表されるGMSはほぼ終焉を迎えたし、そのゾーンで堅実なのは「アダストリア」くらいしか思いつかない。その「アダストリア」もIYやイズミと低価格帯を模索している。

ブランド人気は当然あり、インバウンド中心と言われているが、当然日本の金持ちはさらに含み益が増えているので、そのゾーンは絶好調と聞く。百貨店の外商は比率を上げているし、高級車も売れ続けている。大都市の百貨店はインバウンドもあり大きく数字を伸ばしている。

ファッションに関しては昔ほどこだわりを感じず、ブランド意識も下がっているように感じる。高給与と言われている会社の会社員も、とりあえずセレクトショップのオリジナル商品を買っているという流れで固執している感じはない。上場している「ユナイテッドアローズ」や「TSI」も伸びてはいない。気に入ったものがあれば買うという自然な買い方のようだ。

この2極化はここ数年続くと思う。低価格志向は同質化に向かう。そこからの差別化する方法を模索しなければいけない。商品なのかシステムなのか、売場などのハードなのか、売り方なのか、ここから差別化の糸口を見つけなければならない。

■今日のBGM

マルイとパルコ

実家に用事があって、そのまま大阪で少しぶらぶらした。(今回も飲んだだけのような気がする・・・)

旧正月も終わったのだが、インバウンド景気はすさまじい。特にミナミには人があふれていて、観光客が全体の7割くらいいそうな気がした。

そんな中で印象に残ったのが、マルイとパルコの存在感の違いだ。マルイもパルコも俗にいうファッションビルを代表する企業だった。私自身もビブレに在籍していたのでよく見させてもらった。DCブランドブームはマルイが引っ張ったし、もともと文化的要素が強くセレクトショップや専門店をうまく育てたのはパルコだった。

難波マルイは高島屋前が整備されて一等地になっている。ただ売場は雑居ビル化していて、空床も目立つ。フロアコンセプトもなく、催事出店が目立つ。立地や客数を考えればもっと成功すると思うし、何よりも昔の得意ゾーンで戦えば収益店舗になりうる可能性は大きい。「もうちょっと頑張れよ!」と思ってしまった。

マルイはもう小売業を完全に捨てている。収益基盤はカード事業が築いた金融業や、物流などその他の事業で賄っているのではないか?従来のファッションビルのマルイも不動産賃貸業としてのビルで、もうすでに小売業ではなくなっている。商業施設としてのコンセプトはどんどん薄れていて、場所貸しに徹している。以前グループのビルに出店していたことがあるが、店のショップMDという概念がどんどんなくなってきて、退店した経緯がある。

パルコは成功しているのではないか。オープン時はこのMDがいつまでもつかと思ったが、インバウンドもあり、さらに大丸との相乗効果がうまく作用している。「sacai」や「マルジェラ」「kolor」など難しそうなブランドも商売できてそうだし、入口の「ヒューマンメイド」は入場待ちの列もあった。飲食ゾーンや高層階の無印やハンズもうまく回っていそうだ。

都心百貨店は2館連動でうまく分けられているところが成功している。伊勢丹や梅田阪急のメンズ館。心斎橋パルコも大丸とうまくすみわけができている。でもやはり都心のみしか成功しそうにない。都心の一等地でも2館連動しないと厳しいのではないか?「ギンザシックス」も空床が多いし三越から少し離れるだけで厳しそうに見える。そういう意味では難波駅前で高島屋に近いマルイは戦えると思うのだが・・・

もうすでにファッションビルは都心でも成り立ちにくいようになっている。乗降客が多いターミナル型しか成功していない。やはり隣接して百貨店やデイリーニーズの店が必要になってくる。

ファッションビルと言われていた業態はもうなくなっているのかもしれない。

※友人の店が阿倍野キューズモールでリニュアルしたので行って来た。中に入っているイトーヨーカドーは全く元気がなかった。火曜の午前中という時間帯のせいかもしれないが食品に欠品が目立った。衣料品は売り尽くし中で売る気は見えない。アダストリアとの「ファウンドグッド」も入荷していて、売場に出てはいたが、什器や内装や人が変わらなければやはり魅力は感じない。雑貨系は売れそうだった。とりあえず売場に元気が出ないと厳しい。

■今日の逸品(アレンパの芋焼酎)

イトーヨーカドーとアダストリア

イトーヨーカドー(以下IY)の撤退についての感想を書いたばかりでいたら、「IYが撤退した衣料品平場をアダストリアが改革。6月までに64店舗に導入。」との記事が報道された。

IY専用のアパレルブランド「ファウンドグッド」(100坪~300坪)をアダストリアが商品提供し売場演出、販促、販売員教育もサポートするという。イズミとは「シュカ」というブランドをプロデュースしているが規模は今回のほうがかなり大きい。

こうなったいきさつを想定してみる。(あくまでも想定。)IYが衣料からの撤退を決め、テナント導入を進めるという政策は去年の春くらいからは動いていたと思う。そして、おそらくテナント導入はうまくいかなかったのではないか。ここでも何度か書いたが今のGMSのIYにRSCモールになれたテナントは興味を示さないし、デベロッパーが収益を優先する条件ではなかなかリーシングできない。そんな中で友好関係にあるイズミと協業を始めたアダストリアとの話し合いでのスタートの気がする。「スタディオクリップ」のFCもスタートさせ、話し合いを続けた結果、今回の協業に至ったのではないか。

果たしてうまくいくか?

マイカル在籍時、同じようなことをした記憶がある。取引先とブランドを立ち上げビブレ(ファッションビル)だけでなくサティ(GMS)までの導入を図り、GMSの売場の活性化を図ろうとした。取引先は「サンエーインターナショナル(現TSI)」、「ピンクハウス」「ワールド」「イトキン」だったと思う。「ZARA」とも取り組んだと記憶する。結果は失敗だった。お互いの会社の取り組み方にずれが出てきて整合が難しかったと思う。お互いの社風も違う。育ってきた風土も違う。組織体系をきちんとしなければうまくできない。さらにお互いのリスクの大きさも違ってくる。

今回の詳しい取り組み内容はわからないが、内装などハード投資や商品リスク、運営問題などの整理がきちんとできるかがポイントになる。成功させるには別会社を作るくらいの労力はいる。今回はファッション小売業で最も優れている「アダストリア」と流通業での優等生のIYとの協業なので、昔私たちが経験した失敗は少ないとは思う。IYで「スタディオクリップ」のFCが成功したことも要因の一つとあるが、そのブランドは認知度が高く、関係は「取引先対小売業」で一般的なものだ。今回の取り組みはIYの活性化がメインなのだろうが、事業としては西友がスタートさせた「無印良品」のようにIYだけでなく、どこにでも出店するブランドを作る意気込みでないと失敗する気がする。当然アダストリアとしても現状の低価格帯の専門店の好調さは織り込み済みで、販路拡大を探っていたはずだ。

将来的にはチェーン展開できるショップを目指すべく、資本を持ち合い、人の交流もし、同じ目標に向かっていくことが成功のポイントになると思う。いち早く運営会社を立ち上げるべきだと思う。

今後の動向に注目したい。

■今日のBGM

イトーヨーカドーのエンディング

イトーヨーカドー(以下IYと記述)の退店ラッシュとの記事がTV、新聞やネット上に多く出てきている。セブンアイの政策通りの動きではあるが、少し寂しい。数字を見てもGMSとしてのIYがどうだったのかが比較するものがなくできないので、今までの私自身の経験や感想のみで書かせてもらう。あくまでも感想ということを前もって書いておく。

IYのGMS事業の収益は低くなっているが、イオンのGMSと比較すると間違いなく利益率は高いと思う。少し数字を調べたがイオンは㈱イオンリテールの総利益率は発表していない。IYは2021年25.1%で、イオンリテールとして2018年は26.4%と公表はしている。ただしイオンはモール事業を㈱イオンモール以外でもやっており、SC名はイオンモールではあるが運営母体が㈱イオンリテールという物件も多い。越谷レイクタウンのmoriはイオンリテール物件だし、もともとイオン物件をモール化した物件はイオンリテール物件が多い。そういう意味でモールとしての賃借料収入で利益率は変化するので、IYとは比較できない。ただ間違いなく過去の経験上IYの利益率が高いと思う。食品の利益率は2%以上の差があるのではないかと思う。

IYは関東の企業で、小売業というより「企業」「組織」というイメージが強い。従業員も関西系GMSの社員とは違う「きちんとした」イメージがある。アリオのコンサルで四谷の本社を何度も訪れたが、スタッフの机は全員入口に向いており、企業体質も「ちゃんとした企業」というイメージを受けた。「やったらええがな!」的なマイカルにいたので余計に痛感した

ただ、きちんとした企業だから数字で理論づけされて思い切ったことができなかったのではないかと思う。陳台を決めて効率を追求するコンビニ「セブンイレブン」はIYの風土から育っていった。余談だがイオンの「ミニストップ」はもっと個性を出せばいいのにと思う。さらにIYの効率経営を考えれば、イオンのように「たぬきの出る」場所に出店はしない。エリアマーケティングを徹底し、数字上効率が合わない郊外の大きな面積でのSCは開発しない。郊外RSC事業では開発型の思い切った戦略のイオンに完敗だった。イズミとの紳士協定(商社がらみ)で西日本への出店ができず、関西系GMSのお膝元には出店ができなかったことでナショナルチェーンになれなかったことも大きい。

GMSの精度ははるかにイオンより上だと思う。ただRSC主流の現在、買い物以外のエニシングエルスがない。従来通り効率追求のGMSに見える。さらにそもそもGMS自体がもうオワコンのような気がする。イオンも当然わかっている。IYの売り上げ構成比で衣料雑貨、住関連の商材は20%程度まで落ち込んでいる。イオンも食品以外は完全に縮小傾向だ。

IYも「食品+テナント」の構造へ変化していくと発表しているが、テナントリーシングに苦しむと思う。どこまでテナントに賃料を譲歩できるかが課題にはなる。企業体質として赤字になる事は、許されないので固定賃料か「固定+歩合」でのリーシングになる。出店する人気大型カテゴリーの賃料にはなかなか譲歩できないのではないか。

SM事業も今後は利益を出しにくくなっていくのではないだろうか?「ロピア」や「OK」など価格戦略に対抗するのは、企業風土、戦略を大幅に変更するしかない。

大学時代、有名なマーケティングの先生が流通業ではIYを一押しだった。まさかこんな時代が来るとは思わなかった。理詰めでの経営だったはずだが世の中の流れに乗れなかった。IYの歴史が「セブンイレブン」を作り上げたことは事実だ。小売業の流れも大幅に変わった。百貨店もほぼなくなっていくだろうし、今後RSCも淘汰が始まる。客層の2極化が進んでいく中、中流のGMSはいらなくなった。

IYの解体でGMSの歴史は終わる。つくづく実感する。

■今日のBGM

流れが悪い上場小売業

日経新聞には信用残高が発表される銘柄の売残と買残が公表されている。株をやらないので詳細は説明できないが、株価の変動が激しくなりそうな、リスク管理が必要な銘柄のようだ。小売業では、パレモ、シーズメン、ジーフット、アナップ、ライトオン、タカキュー、マックハウス、バロックなどが記載されている。株価が大幅にダウンしたワークマンも公表されている。タカキューとともにイオン系で債務超過のジーフットや厳しい決算が続くマックハウス、ライトオンなどが含まれており、厳しそうな会社が多い。

前回年末年始の数字を記したが、厳しそうな小売業の売上状況を見てみたい。

1月の数字はライトオン前年比97.6%、パレモ93,8%、タカキュー93.6%、マックハウス92.3%、シーズメン89.8%と前年割れの流れが続いている。全体的には好調な流れに見えた中で12月同様の前年割れの流れは続いている。

これをコロナ前2019年実績と比較する。(例によって既存前年比を毎年掛け合わせてみる。)数字をまとめた小売業で1月2019年比80%以下の会社は4社。ライトオン69.0%、シーズメン69.5%、タカキュー73.2%、パレモ78.3%。ライトオンの悪い流れは止められてない。ジーンズカジュアル系の悪化についてはよく書いているが、シーズメンも今はブランドが増えているが、もともとは店名「メソッド」でジーンズカジュアル系のショップだった。

ビレッジバンガードの流れも回復してこない。2019年比で12月は77.6%、1月が81.0%と一番ターゲット客層が動きそうな時期に上がってきていない。

数字の流れはなかなか止められない。企業のビジネスモデルを再度検証する必要がある。検証を重ねてビジネスモデルが間違ってないなら、現状の在庫を整理して、一度思い切った損失を計上し、再出発する決意が必要だと思う。

■今日のBGM

上場小売業の年末年始の数字

12月の数字については先月書いたので、1月の数字とあわせて最大量販期である年末年始の数字を見てみる。

1月の売上状況は、アダストリアが前年比114.7%、ABCマートが110.3%、ニトリ110%と2桁伸長しており、さらに主だった企業はほぼ前年はクリアしており堅調な流れだったようだ。12月84.6%と落としたユニクロも100.4%まで戻してきた。少し気になるのは12月91.0%、1月92.7%と2カ月大きく落とした無印良品。要因は冬物在庫の在庫不足とのコメントだった。

1月もコロナ前の数字と比較するために、2019年1月から既存店前年比を毎年掛け合わせてみた。(これが正しい数字ではないが、流れはつかめる。)その数字(コロナ前比)での伸長はABCマート113.7%、西松屋112.2%、ハニーズ111.2%が2桁増。しまむら109.6%、ニトリ108.2%アダストリア101.3%と続く。他はおおよそ90%台。まだまだコロナ前までの数字に戻っていない。ユニクロで97.2%。12月の動向とほぼ変わらないラインナップとなっている。

ABCマート、西松屋、ハニーズ、しまむら、ニトリと価格志向の強い会社が好調に推移しており、2極化を物語っているように感じる。まだまだ物価の上昇に所得が追い付いていないように感じる。

ちなみに価格志向と対極にいるだろうユナイテッドアローズは既存前年比が12月97.8%、1月102.8%と変化なく、コロナ前2019年比はそれぞれ86.9%、85.1%と全くコロナ前に追い付いていない。余談だがユナイテッドアローズのコメントに「マザーニーズが活性化した」というコメントがあり、時代の流れを感じた。

また別途取り上げたいが、厳しい企業の数字は改善していない。ライトオンはコロナ前比では69.0%、イオングループでなくなったタカキューは73.2%と大きく落ち込んでいる。

最後に出退店情報を見ていて、季節的に入れ替わりの時期ではあるが、退店の多さに驚いた。退店数はアダストリア14店、ユニクロ8店、ライトオン、チヨダ9店など。その分2.3月の出店は多いのだろうが少し気になった。

■今日のBGM

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