ヴィレッジヴァンガードの退店ラッシュと、セールのことがネットの声に出ている。捨て値で売っているらしい。評価損商品の売り方はわからないが、前期末に評価損2472(百万)を計上しているので捨て値にして販売していることは想像できる。これだけの金額の評価損があると誰がジャッジしたのだろう。そして毎年どういう棚卸をしていたのだろう。毎年の不稼働商品が積もり積もっての結果だと思う。さらに2013年にも4692(百万)の評価損を計上している。そして他の小売業ではライトオンが2023年に1564(百万)の評価損を計上している。
つまり、利益は「簡単に上げられるし簡単に落とせる」ということになる。売れていない商品をなくすには取引先に返品するか、値段を下げて売ってしまうしかない。取引条件はわからないが、取引先からの依頼で「売れるだけ売って返してくれればいい」という所謂委託条件でなければ、ほぼ買い取り条件になる。値段を下げるときに、原価を下げる値引を取引先が負担することもあるが、多くは小売り側のリスクで値段を下げてなくしていく。値段を下げれば当然利益は落ちる。このヴィレヴァンの評価損の大きさから、毎年の利益率の低下を避けるため、例年適正な在庫評価をしていなかった結果と言わざるを得ない。
このブログでは何度か書いているが、商品代金の支払いは、一般的には仕入れてから2か月~3か月後の支払いになる。3か月間で売れれば商品代金も払えるし、利益も確保できる。3か月で売れない商品が多くなれば、資金はショートしていくし、キャッシュが少なければ次の仕入れもできない。ヴィレヴァンの決算数字を見ると商品回転率は年1回転前後なので、単純に商品は1年後に金に代わることになる。商品代金は支払い済みなので当然キャシュは減っていく。それを防ぐために、値段を下げて売ればキャシュは入ってくるが、利益率は落ちる。利益率が落ちれば利益額も減るので営業数字は悪化する。過去10年値段を下げずに何とか決算数字は取り繕ってきたが、いよいよキャッシュも減ってきた。在庫も多くて身動きが取れない。そこで、やっと多額の商品の評価損で再整理をしたということになる。これでもまだまだ不十分に見えるが・・・
当然、上場企業でもあるし商品のPOS管理はしていると思う。そのPOSデータをどう活用していくかが今後の大きな課題になる。ヴィレヴァンについて書いている専門家?の中にも「POSがヴィレヴァンをダメにした」という記事もあった。POSがあるから個性ある商品がなくなったとの意見だ。ただ、それは違う。POSを使いこなせなかったということが正しい。販売期間が長くなった商品はまず売れない商品であり、その商品をなくして新しい商品を入れるために指示が出せなかったということだ。
昔、イトーヨーカドーはディストリビューター(DB)の力が強いと言われていた。バイヤーより権限があったと聞いていた。商品の動きを単純に数字で把握して、ジャッジをするスタッフだ。DBが商品の売り上げ動向や消化率、単品の在庫日数(何日在庫が寝ているか)を確認し、その商品の対策を指示する。当然在庫金額の把握もしていて、商品回転率や、予算との乖離も指摘する。その分析結果で在庫予算がオーバーする場合、仕入れは当然ストップの指示が出る。そして、値引きをもらって値段を下げるか、単純に値下げするか、売れている店に集積させるか、もしくは返品するかなどの指示をする。
ヴィレッジヴァンガードは商品データでの決め事を作る必要がある。売上と在庫のバランスを設定し、売上、在庫を念頭に置いた数値計画を作成する必要がある。それを品種、品群ごとに作る。そしてその期間を超えたときはどうすべきかも明確にしなければならない。仕入れは楽しいものでなく、仕入れた責任が付いてくることを認識させる必要がある。
あれだけ嗜好品のイメージのある店で、年間在庫回転率1回転前後なら、絶対商品の山になるし、間違いなく利益は出せない。今期は前期の評価損商品の売上も見込めるので、若干の利益は回復するが、今後も商品回転率が改善しなければ、企業存続は間違いなく難しくなる。
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