ユナイテッドアローズ(UA)が子会社である㈱コーエンの全株式を、ジーイエット(旧マックハウス)に売却すると発表した。
ジーイエットの「基本合意締結のお知らせ」に㈱コーエンの財務状況が簡単に掲載されているが、前期は純資産-3810(百万)総資産2834(百万)となっており、前年から債務超過が続いている。UAの決算説明会資料を見ると、コーエンの前期は売上昨対109.0と発表しているが、在庫評価損を計上しており、今期は売上総利益率+4.0%の計画となっている。つまり前期まで在庫過多状況であり、前期中に在庫評価を大きく落として利益を落としたことがうかがえる。
UAが始めた、手ごろな価格のカジュアルショップという印象で、乱れた売場でなくこぎれいに運営していた感がある。昔やっていたショップと同じSCにありよく見ていた。きれいにカジュアルを見せようとしていた印象が強く、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)を柱にしていた時期もあったように思う。成功しているようには見えなかったので、あくまでもVP(ビジュアルプレゼンテーション)にしかならなかったようだ。値段を切り口にはしているが、UAが運営しているらしくあくまでも商品にこだわっている感が強かった。主な店舗は郊外モールが多いが、駅ビルやファッションビルのほうがマッチしていると思っていた。
カジュアルと言っても幅は広いが、価格面でもボリューム感も中途半端でメインターゲットがぼやけているように感じた。ターゲット年齢は少し高く感じたが、そこの客層にもインパクトはない。決算説明会資料にあるように、「売上低下→在庫過多→利益低下」とここ数年のカジュアル系の会社の売却パターンと同じ傾向だったようだ。最終的な売却理由は、UAとは完全に「商売の土俵」が違ったということになる。
UAの中間決算の概況を見ると、販管費の前年比が売上総利益の前年比を上回っている。給与アップによる人件費増とあるが、人件費率は前年を下回っている。販促費の増でもここまで狂わない。さらに今期決算に向け「今春夏商品の一部を秋冬在庫に振り替えて消化を進め売上総利益率のマイナスを抑制」とあるが、そこまでお客様は甘くないとも思う。今期中間決算の在庫は前年の中間決算比で113.9%まで増加している。今期の決算次第だが、UA自体の状況もあまり良くないように感じる。
ところで、売却先がジーイエットでコーエンは再生できるのだろうか?ジーイエットの直近の決算数値は最終損益が5.9億円の赤字になっている。前年同期から拡大し、売上高も減少している。ファンドからの増資で資本金、準備金が増加し自己資本比率は上がっているというだけで、リスクを持った赤字企業を受け入れて、改善は可能なのだろうか?さらに小売事業以外に金融投資事業を開始しており、現時点でビットコイン投資額は21億規模になっている。
ファッション事業の上場企業が、ファッション事業の子会社を改善できなかったのはなぜだろうか?「セレクト」と「ボリュームSPA」は相容れなかったのだろうか?失礼ながら、なぜマックハウス(ジーイエット)に譲渡なのだろうか?
いろいろ疑問は残る。
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