前回、ユニクロのMDについて書いていて、いつも気になっていたことを思い出した。毎年の決算数字で、ユニクロの売上総利益率は適正なのだろうかということだ。

商売をやっていて、売上総利益率は非常に気になる数字ではある。過去の経験では量販店時代やビブレ時代も、記憶ではアンダーウェアが40%に近く、衣料品、服飾品では40%を超えることはなかった。売上効率が高かった売場で35%を超えていた印象しかない。その後自分で会社をやってみて、在庫を第一チェックポイントとして運営し40%は超えていった。店舗数が増えていき、取引先との別注商品をスタートし45%以上には上げていけた。それ以上上げていくには、商品ロットの問題があり、店舗数を増やすことと、当然のことだが、全店で高く消化できる商品を作ることが必要になってくる。

小売業の総利益率の原価は商品原価と考えていい。ただそこから商品の評価損が加えられる。つまり割引をしての評価が加えられる。商品原価(期間仕入れ分)÷(商品売価―値下額)が原価率となる。大きな数字ではないがそこに商品のロス分(万引き、不良品)が加味される。製造原価は商品にもよるが30%前後と言われている。

ユニクロの調達原価は35%前後と言われており、商社等の手数料を加えると38~40%が商品原価として計上されているようだ。ちなみに、前期決算での売上総利益率は53.9%となっている。この利益率をどう見るか?売上は3.1兆円の規模になる。ものすごい金額の商品を仕入していることになる。決算書を見ると前年より25206(百万)商品在庫(原価)が増えていて、売上が3.1兆なので3.8兆円以上(売価)の商品(売価)を仕入れていることになる。それでも原価は40%前後というのなら、相当まともな商売をしているように思える。

始めて取引する際に、最初の原価は、取引形態にもよるが55%~60%くらいだろうと思う。10年も商売を続ければ50%くらいにはなる。発注量にもよるが一部の商品を別注して40~45%の原価にはなる。これは20店舗強まとめた過去の経験上の数字で、ユニクロくらいの天文学数字でも40%くらいの仕入原価であれば、おそらく相当売価を抑えてきていると思う。さらに原価率から逆算すると、利益率は6%くらい下がってはいるので、期中でのプライスダウンも相当な額になっていそうな気がする。決算書を見て計算してみたが金額が大きすぎて、わからなくなってきた。(算出したが、あっているかどうか想像もつかない…)

何が言いたかったかというと、ユニクロは、売れる値段を考えた仕入れをし、売れなかったらその商品を迅速になくしていっているということだ。つまり利益率を考えた商売をせずに、売れる値段設定をして、売れなければ迅速になくしていっているということになる。当然最低の利益率は念頭にはおいているが、売れることを最優先にしている。商品特性は違うが、アダストリアの売上総利益率は54.7%、パルGが55.9%であり、ユニクロの規模を考えると適正な値段と商品処理を優先的に行っていることがよくわかる。

厳しい会社は、商品価値を市場価値で見てないことがある。ライトオンはワールド傘下後の決算で売上総利益率は39.9%まで下がっている。3期前は50.7%の実績だった。その時の在庫は2.5倍位あった。店舗数が減ったこともあるが、利益率のマイナスも考えると、商品評価を大きく下げており、企業での商品価値と市場価値の差が大きかったことは間違いない。適正な数字かもしれないが、上場小売業梨で売上総利益率が60%を超える会社もある。

ただ、価値観はそれぞれなので商品価値は判断しづらい。ユニクロの利益率を商品展開と決算数字で確認して納得できたように、決算数字を見ていると色々見えてくるものもある。それぞれの会社の戦略や取り組み姿勢がよくわかってくる。

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