サントリーの新浪社長の言葉が、ずっとひっかかっている。10月18日経済同友会の記者発表で話した言葉だ。もう会社を経営していないので、全く関係ない立場だが、乱暴な発言だと思う。どういう意図があったのだろうか。奮起を促したのだろうか?中小企業は不要なのだろうか?このブログでも、この時給政策については書いてきた。
2020年代の時給1500円は理論的にも無理だと経済評論家も言っているし、単純に今後の毎年の必要賃上げ率を考えても難しい。さらに会社数の99%を占め、労働者数70%を占める中小企業の約半数が下請企業の現状を考えれば、この発言の突き放し方は厳しい。当然、仕組みをお互いに考え、それが可能な社会にしようという気持ちだろうが、きつい言葉に聞こえる。さらに、時給1500円払えない会社の従業員は、時給1500円以上の企業に移ればいいと言っているが、そのハードルは高くないだろうか。努力して勉強し、語学も堪能な新浪氏のような人間ばかりではない。
先日、ワイドショーでどうやったら時給が上げられるかという質問があった。経済評論家はシステム投資をして省力化を図るべきだというようなことを言っていた。国が投資を手伝ってくれるのか?省力化で削減されたスタッフは他の企業に移れるのか?ただその評論家も2020年代時給1500円は不可能との見解を持っていた。
優秀な新浪氏はサントリーに移る前は、ローソンの社長だった。少しコンビニについて調べてみた。コンビニは周知のとおり、直営店は少なく、FCのオーナーが運営している。所謂中小企業の運営となっている。
ローソンのFCにはいくつかのパターンがあるが一般的な条件で計算してみた。年間フランチャイジー収入は最低1860万(月度155万)となっている。本部にチャージする金額が荒利300万以下は45%、300~450万は70%、450万超は60%となっている。具体的な数字にすると、ローソンの一般的売上日販は55万(ずいぶん上がった・・)で、月度は1650万となる。2023年売上総利益率は31.5%と決算で発表しているので、平均的な店の総利益額は約520万になる。上記の本部にチャージする額を計算すると282万になる。つまり粗利益520万―チャージ料282万=238万が収入と考えられる。経費は電気代のみ折半で他の事務経費はFC負担となっている。大きな経費の人件費だがまずコンビニの従業員数は平均で15名くらいのようだ。令和元年の経産省のコンビニアンケ―ト調査のデータを見て、簡単に分析すると平均で1人当たり勤務は週3.5日、1日5時間くらいとなる。そうすると月間約70時間の労働となる。時給1000円で13人が70時間働くと91万円となり、残り2人をオーナー夫妻と想定すれば147万のオーナー収入となる。ただし電気代の折半分やその他の経費を考えると夫婦で120万くらいの収入が見えてくる。(いろんな雑用などを考えてそれが納得できる金額かどうかはわからない。)あくまでも私自身の想定であって、現実はもっと高収入なのかもしれない。
さて、最低賃金が時給1500円になったとして、売上や利益が変わらなければ、スタッフの人件費は137万になり、オーナー夫婦の収入は80万前後になってくる。当然時給が上がれば、社保加入者も増えてくるし、ベテラン従業員は当然1500円以上の時給になるので、それ以上の人件費は必要になり、オーナーの収入はさらに減っていく。
インフレで商環境は当然変化するだろうが、苦しくなるのは間違いない。新浪氏の発言内容では、コンビニのFCの企業は退出することになる。ローソンは、天下の三菱商事の子会社なので、存続に問題はないのだろうか?
中小企業には、数字や、仕組み、システムだけではなかなかクリアできない問題が多い。一度、新浪氏もどこかのローソンのFCのオーナーをやってみてほしい。
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