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マックハウスもTOB

先日、ライトオンに続きマックハウスもTOBが発表された。TOBの価格は1株当たり32円で、チヨダが全株売却する。ジーエフホールディングスが投資会社を通じてその株を取得する。10月11日時点の終値は334円なので90%安の価格になる。

ジーンズ業界は厳しいと書いてきたが、ライトオンに続いてマックハウスも売却される。マックハウスに関しては親会社が靴業界の大手チヨダだったので、まだ猶予はあると思っていたが、ライトオンとほぼ同時期に発表された。

チヨダも靴業界ではABCマートに大きく水をあけられ、本業重視する方向かもしれない。赤字の子会社には構っていられないということだろうか?チヨダはもともとテナントとしてはダイエー寄りであり、イオン系には出店が少なかった。その流れで郊外モール(RSC)の流れに乗れず伸び悩んでいるように感じる。マックハウスも同様の戦略もあり270店舗の規模の割には、売上面ではライトオンと大きな差がある。店舗の大きさにも差があるが、1店舗当たりの売上がライトオンの半分ぐらいの数字になっている。

これでジーンズ業界は大きく変わる。マックハウスはワールドの「ハッシュアッシュ」との取り組みで少し上向きかなと感じていたが、このTOBでワールドとの取り組みはほぼ終わるだろう。今後株を取得するジーエフホールディングスは、ファッション系では、ジャバグループやテットオムをグループ会社にしているが、現状のMDとの相乗効果は弱い。ただ、今後の方向性は、ライトオンと同様に、ターゲットをファミリー層に変更し、ジーンズのイメージを弱め、オリジナル比率を上げていくことは間違いない。

ジーンズ業界については、ジーンズの原点と言われるリーバイス501が2万近くするようになり、完全に客層は変わっている。値段や履きやすさを求めれば当然ユニクロやGUに流れていく。昔からのコアな客層はジーンズテイストを持ったセレクトショップに流れていっている。そしてその客層は大きく減っている。わずかにBshop系ブランドとセレクトされている地方専門店は新鮮なにおいもあり、客数を伸ばしているように見える。ただ客層を選ぶのと、商品のバッティング問題が大きく、店舗数は広げにくい。

一昔前のNBジーンズ全盛時代は完全に終わっている。ビジネスモデルも市場に合わない。サイズが細かく、そのため在庫回転率は悪く、キャッシュが回らない。ライトオンもマックハウスも年間2回転前後の回転率になっている。売上が落ちてくると当然仕入れられないし、品揃えもできなくなる。さらに、売上の補完として、回転率が高い商品を仕入れることで、店のイメージが変わり、従来の客層は逃げる。そうはいっても、ジーンズカジュアルは見せていかねばならない。その繰り返しで品揃えが崩れていく。ジーンズ専門店からスタートした、アダストリアやパルグループはさすがに先が読めていたのかもしれない。

チェーン展開するジーンズ専門店、ジーンズカジュアル専門店の時代は完全に終わった。

■今日のBGM

ワールド傘下になったライトオンの今後

9月にこのブログで、「ライトオンは自力以外での再生を模索しているのではないか」と書いたが、やはりワールド傘下での再生を、決算と同時に発表した。ここ数カ月、売場を見ていて、「数字が厳しくて何とかしなければいけない」ムードはなく、委託っぽいセール商品と秋色の商品を打ち出していた。全く商売に前向きさがなく、どこかがデューデリをしている雰囲気があった。

格安でもワールド傘下にならざるを得ないのは、数字上しょうがない状況にあったと思う。私は、常々「商売は在庫」と言っていて、いくらジーンズ中心でも回転率が悪すぎ、商品価値を高く計上しすぎだと感じていた。このブログの6月に書いたが、ライトオンも価格を見直し、上期決算で概算34億分の値段を下げて利益を大きく落としていた。当然ワールドもそこを指摘していて、今決算で店舗閉鎖の在庫分と併せてさらに大きく在庫評価を落としている。

簡単に計算してみる。決算短信によると、期末原価在庫が5111(百万)で決算売上総利益が39.9%なら、単純計算で期末売価在庫は8504(百万)になる。期首原価在庫+仕入原価―売上原価=期末原価在庫で計算すると10479+(x)+23343=5111となり仕入原価は17975となる。同様に売価も期首売価在庫+仕入売価―売価売上=期末売価在庫で計算する。(原価率から逆算する。)20190+(x)―30808=8504となり仕入売価は27122となる。仕入売価27122で仕入原価17975では商品値入率は33.7しかない。商品値入率を仮に50%で計算すると商品仕入売価は35950となる。つまり原価50%ですべて仕入れたとすると35950―27122=8828(百万)の値段を下げた計算になる。計算上は期首の売価在庫の40%強の評価を落としたことになる。(今後のことを考えて大きく評価を落としたかもしれない。)在庫評価をこれだけ落とせば今後の運営はずいぶん楽になる。

ワールドと組むことに関してはどうなのだろうか?ワールドしかなかったということだったと思う。ワールドとも私自身は長い付き合いだが、オンワードやイトキンと同様のサラリーマンの会社というイメージが強い。他のアパレルとは違い「会社」らしい雰囲気がある。もともとは専門店商売が中心で「コルディア」「ルイシャンタン」などを取り扱っていたが、DCブームから「タケオキクチ」「オゾック」「アクアガール」「アンタイトル」でヤング層を拡大し、SCが広がっていくと「TK」「ハッシュアッシュ」「シューラルー」でファミリー層への販路が広がっていった。当然百貨店ミセスゾーンは得意ゾーンだ。DCブームもファミリー層へのマーケットの取り組みも、現状を考えればうまくいったというイメージはない。

さて、どう取り組んでいくのだろうか?単純に考えるとマックハウスと取り組んでいる「ハッシュアッシュ」を投入しジーンズテイストを弱めていくのだろうと思う。ここ数カ月のマックハウスの数字も改善してきており、一番手堅いコラボになるのではないだろうか。ジーンズテイストを弱めてファミリー層ターゲットを打ち出していく方向だろうと思う。ただこれだけでは、ライトオンのいいロケーションの売場を手に入れるだけの事業構築になる。長く培ってきたライトンのジーンズカジュアルを、伊藤忠との関係でワールドがつながりのあるエドウィンとのコラボなどで、再構築を図ることも考えられる。ただジーンズカジュアルは完全にアゲインストの流れで、これはあくまでも可能性に過ぎないかもしれない。

ワールドとしては、格安で、340店舗という多くの売場を手に入れたので、現状ではあまり大きなことをせず、ファミリーターゲットに変更と事業の棚卸をして、売場と在庫の整理を急ぐと思う。ただ、ライトオンの源流であるジーンズカジュアルを見つめなおし、小さくてもいいので本質がわかる少しこだわった店も是非見せてもらいたい。

■今日のBGM

時給1500円

石破首相は2020年代に全国平均の時給を1500円に引き上げる目標を掲げた。達成するには、あと5年間で年平均89円の引き上げが必要になってくる。24年は過去最高の51円引き上げを実施したが、これを大きく上回る引上げを継続していかねばならない。果たしてどうやっていくのだろうか。ちなみに2024年度は、過去最高の1055円に引き上げることとなっている。過去最高の引き上げで27県が目安を上回っている。

この政策通り進めるには小売業界は何が必要だろうか?そもそも可能なのだろうか?

大手小売業はどうしていくか?当然のように省人化とシステムの変更をしていくだろう。コンビニ、SMなどでは当たり前になってきた無人レジ、商品の配送システムの整理、複合化している業務を専門化して簡素化していく。現場では、売場の画一化を進め、大きさ、レイアウトも共通化させていく。本部機能もデータ決済を優先させ、商品政策も自社MDを強化し、当然セントラルバイイング中心で商品作りこみが増えてくる。

これが中小小売業になると、そこに耐えうる体力があるかどうか。先日新しく着任した政調会長が「最低賃料を1500円にするだけだ。」と言っていたが、最低賃料を1500円にすることだけではなく、全体の給与を同じくらい上げていかねばならないことを理解していないような口ぶりだった。最低賃料1500円ということは月間160時間勤務で24万の給与になる。当然、それを最低給にして給与形態を見直さざるを得ない。そうしなければ全社員のモチベーションも上がらないし組織が成り立たない。ということは人件費が大きく上がるということだ。人件費だけでなく、他のコストカットするためにシステム導入も援助なくしては厳しいし、商品原価も中小企業ではロットが小さいのでなかなか下げられない。それどころか、取引先も同じ経費増の流れになりなかなか商品原価は下げられる環境にない。

中小小売店のメリットであるべき、接客強化は人件費高騰で利益を圧迫する。差別化すべき個性ある商品を品揃えすることも、ロットが小さくては商品原価も下げられない。当然デベロッパーも賃料アップはあるだろうし、ますます大企業とは戦えなくなっていく。個性ある面白い店が少なくなっていき、標準化された大型店だけが残っていく。

こういう流れだと、ますますインフレ傾向は強まり、その流れについて行けない中小企業は淘汰されていく。

2020年代に最低賃金を時給1500円に引き上げることは、おそらく不可能だとは思う。ただそれを公約にするには、そのために国が何をしてくれるかが問題になる。大企業は掛け声だけで対応できるかもしれないが、ベンダー企業の要請は聞いてくれるのか。さらに間違いなく、中小企業には国からの大きな援助が必要になってくる。企業は国営ではない。中小企業の労働人口は多い。具体的な政策を是非聞いてみたい。

■今日のBGM

どんどん2極化と寡占化は進んでいる

先月末にチェーンストアの売上分析をして、現状の流れは単純に値上げ分の売上増で買上点数は減っていると書いた。その他の小売業も中間決算や四半期決算を発表していて、売上は増加しているが、為替の影響や、人件費高騰、物流経費の増加などの要因で利益を圧迫してきている。

順調な売上を続ける企業の中間決算の発表がいくつかあった。西松屋の上期決算は売上高については過去最高を更新したが、税引き利益は前年同期を割っている。為替差損が原因のようだ。仕入れコストの上昇もあり総利益率も前年差-0.2%となっている。ニトリの第一四半期決算も純利益は前年6.3%増だったが、賃金改定など販管費増加で通期予測は据え置かれている。アダストリアの上期決算も売上は9%増も人件費中心に経費増で純利益は2%減と発表されている。

9月の売上も発表されているが、8月に続いて曜日廻りが良く、全体的に売上数字は好調に推移している。既存昨対でユニクロが8月125.3、9月122.1と大きく伸長している。ハニーズも117、118.3と好調。この2社の好調な流れが目立つ。客層が変わるがユナイテッドアローズも107.8、115.0と好調を維持している。他の主要企業も売上の流れは悪くない。流れが悪い企業はライトオン(8月89.0、9月87.0)シーズメン(8月90.1、9月88.0)Tベース(8月94.8、9月96.1)。数字が戻ってこないジーンズカジュアルはマックハウス(8月106.3、9月115.5)の回復に比べて、ライトオンは回復基調にない。

全体的な流れを見ると、ボリューム(値頃)路線の企業は安定しており、特に短サイクルで商品を提案するユニクロやハニーズの流れが特にいい。逆に中間層で戦ってきた会社(アダストリアなど)の伸びが弱い。さらに、ある程度個性を持ったブランドが多いTSIやバロックなども少しアゲインストのような気がする。

都市部に集中してはいるが、百貨店の状況は、プレステージの高いブランドが高所得者やインバウンド需要などで好調のようだ。上場企業の中ではアッパーゾーンのユナイテッドアローズも好調な数字が続いている。ユナイテッドアローズはある程度の所得のノンポリ層が買っているのではないかと思っていて、その層が旧セレクト系の売上を作っていると思っている。そうやって数字を見るとやはり中間層が減少し、さらに2極化は進んでいると感じる。

さらに、企業力の差が今後大きくなることは想定される。このブログでずっと書いてきたが、新規企業が出てくる環境ではなくなっており、寡占化が進んでいきそうな気がする。売上規模は小さくはなったがワールドやサンヨーも好調と記事にある。ウィゴーをオンワードが傘下に入れたし、旧大手アパレルも新しいゾーンに取り組みつつある。寡占化の中でも、会社の方向性を考えるとアダストリアやパルグループなどが中心になってどんどん何か新しい風を入れないと、小売業の硬直化が進んでいきそうな気がする。それがなければ多彩なショップ揃えはできず、商業施設も硬直化する。

■今日のBGM

ちょっと記憶に残る売り場

先月営業終了した、福岡のマリノアシティで撤去作業中の写真が送付された。懐かしい写真が多かったが、その写真の中にレジバックにディスプレイした、簡単に作ったアルバムジャケットを集めたものがあった。

店の内装を考える時、少しでもインパクトが必要だと思っている。やっていた店はどちらかというとボリュームプライス志向の店で、プレステージの高い店のように内装コストもかけられない状況でもあった。床はフローリングもできないし、照明も埋め込めない。比較的固定什器を多くしたが、基本稼働什器(すぐ動かせる)中心での内装になってしまう。でも売場をチープに見せたくないのでイメージを作ろうと思っていた。1号店からそう考えていて、店のイメージを音楽で表現していった。在任中はすべての店で音楽のテーマを見せていた。レジバックにはテーマに沿ったアルバムジャケットを集め、流せる余裕のある店はモニターでDVDを流していた。(当然JASRACに使用料は支払っていた。)

商品のインパクトが強い店は、そのインパクトを店づくりでも表現する。それがグレード感だったり、商品のテーマだったりして、商品に合わせて店もデザインする。当然そういう居心地のいい空間にはコストもかかる。逆に商品もボリュームゾーンでいろんなターゲット、客層の店は、画一的なイメージで売場を変えやすくするために可動式の什器が多くなる。当然コストも抑えなければならない。さらにチェーン店にしないと商品原価も抑えられないので、当然多店舗化を目指す。そうなると同一内装でイメージも同一化させる。内装を同一化させることで什器も統一でき、什器も作りこみすることで内装コストも下げていける。内装コストは出店経費で一番大きい。

立ち上げた会社のビジネスモデルを考えた時、まずは軌道に乗せること、その後は60店舗くらいまで広げることを念頭に置いた。そこまでの規模なら、エリアに多店舗出ることはないので、内装はローコストで少しインパクトあるものにしたいと思っていた。結果的にそれが正しかったのかどうかはわからないが、各エリアで面白い内装で店舗イメージが作れたとは思っている。ただ店舗数が増えるにしたがって、その意図が店長レベルまで伝わっていかなったことは反省材料ではあった。

各店でアルバムのジャケットを見てくれたり、DVDやBGMを聞いて、感想を言ったり質問を投げかけられたりすることが多かったようだ。スタッフも好きなジャンルの音楽でなければ当然興味はない。ただ、お客様には少なからずインパクトは与えられたように思う。

面白いエピソードがある。岐阜県の店でDVDやアルバムジャケットを見ていたお客様が、店のスタッフに例によって質問した後、「名古屋の店はシカゴ(アメリカのロックバンド)だったね。」と言って帰っていったらしい。

ちょっと記憶に残る売場ではあったようだ。

■今日のBGM

数字を読む

実家に用事があり、また例によって大阪、福岡で飲んできた。新幹線は報道にある通り、外国人観光客が7割くらいで、日本の観光立国政策は順調に進んでいる。

8月の百貨店売上が4034億で、既存前年比103.9%と発表されている。インバウンド(免税売上)は463億で前年比145.7%とのことである。逆算すると前年の百貨店売上は3883億でインバウンド売上は317億となる。インバウンドを除く売上で計算すると前年比100.2%になる。これをどう読むか?インバウンドは新宿伊勢丹、日本橋、銀座三越、梅田阪急、高島屋大阪店などの人気の百貨店に集中している。逆に数字を読めばインバウンド抜きでは、楽観できる内容ではないようにも見える。さらにインバウンド売上前年比の推移を見ると今年度は5月が前年比331.2%でピークとなっており、今年8月の前年比145.7%は過去2年で最低の数字になる。さらに過去2年で200%を割ったのも初めてのことだ。インバウンドの流れも落ち着いてきたと読める。これで百貨店は順調と言っていいのか?さらに地方百貨店はおそらく今後も厳しい流れが続いていく。

続いてチェーンストアの売上も確認してみる。8月の売上は10869億、前年比103.8%、客数100.4%、客単価103.0%で、点数は前年割れとなっている。併せて物価上昇率も発表されており、総合では前年比103.0%と客単価と同じ数字になっている。ちなみに食品の物価上昇率は前年比103.6%、そのうち生鮮食品が107.8%と報告がある。総務省の発行した数字なので少し実感からは離れている。単純に数字を見ると値上げ分の売上増とみることができる。点数が前年割れしているところに節約志向が見える。まだ給料アップのプラス要素は見いだせない。

百貨店もチェーンストアも同じくらいの伸長であるが、数字に隠れた厳しい要素が山積している。

インバウンドの数字とは離れるが、イオンモールの数字について触れる。イオンモール(国内)はおそらく今後厳しくなると、このブログで書いている。先日イオンモールが好調という記事を見て、想定と違うのでイオンモールが発表した第一四半期決算を確認した。営業収益1094億(前年比111.4%) 営業利益155億(前年比107.8)と伸びている。内容を見ると、国内収益847億(100.7%) 営業利益118億(114.2%)、海外収益248億(116.0%)営業利益38億(103.5%)となっていた。国内好調要因はレイクタウンとイオンモール太田の増床効果とある。イオンモールの営業収益の大部分はテナント賃料であり、テナント売上ではない。国内専門店の売上前年比は103.1%と発表している。(賃料収入が100.7%ということになる。)増床効果で何とか賃料は前年確保という数字になっている。必ずしも営業収益に関しては、国内事業は好調とは言えない数字だと思う。

当然、団体発表やIRはマイナス志向のことは多くは発表しない。数字をさかのぼって分析したり、見えない要素を探してみたりすると、浮かび上がってくるものもある。

■今日のBGM

小売目線と政治

自民党総裁選とやらで、報道は大谷選手の話題以外は、ほぼそれ一色になっている。いろいろ見るけどどうもぴんと来ない。結果的には国のトップになる人間を選ぶのに、それでいいのかどうか。自民党の党首を選ぶ選挙に一般国民は口をはさむ余地はない。でもあまりにも国民の生活レベルの話とはかけ離れている。国益を守る事、外交政策など大きな視点は大事なことだとは思う。

人気の小泉ジュニアが「解雇規制緩和」の話題が出した。もともとは非正規雇用者を解雇する事に対する考え方で、非正規雇用者を解雇するときは正規雇用者も解雇が必要などの法整備の問題だった。それが正規雇用者の解雇要件を緩和するという方向に流れていて、おかしくなっているが、もともとそれが労働の活性化につながるのだろうかとも思う。おそらく大企業を想定しての発言のようだが、大企業を解雇された雇用者が果たして中小企業に流れるのだろうか?さらに流通業、小売業に流れてくるのだろうか?今、人的課題が大きいのは、建設業、運送業、飲食、小売業などと言われているがうまく循環できるのだろうか?結果は明白だと思う。比較的世間に近い話題だったからこそ盛り上がったのかもしれない。でもそんな話題のほうが考えやすい。

今、買い物に行くとほとんどの食品が値上げしている。そんな状況への経済政策の話もほとんど聞こえてこない。実質賃金をどう上げていくかも聞こえてこない。麻生副総裁がカップラーメンは400円くらいと答えて笑えなかったが、今はもうその値段に近づいてきている。現実として小売業界でも数多くの課題が出てきている。前述した賃上げの問題で、優位性の低い小売業には人が集まらなくなっているし、賃上げによって生じる利益圧迫がある。最低賃金を上げるだけでは賃上げは解決しない。当然既存スタッフの賃上げも必要になる。利益を上げるためにロットを増やして原価を下げたいが、それをするにはある程度の規模(資金力)が必要になる。中小企業は対抗できない。コストも資材高騰や人手不足や人件費高騰でどんどん上がっていく。さらに大手企業の寡占化が進み、新規参入へのハードルも上がっている。新しい風が吹かなければ、業界は硬直化する。

経済の最前線が小売流通業で、その流れで世の中の景気がわかると言われているが、経済政策は見えない。身近な政策が出てこない。今後も海外頼りは続き、現場を知らない役人や大会社の経営者で経済政策は決まっていくのだろう。何も変わらないのではないかと思う。

「木を見て森を見ず」かもしれないが、「森を見て木を見ず」も政治の本道なのだろうか?

■今日のBGM

ジーンズカジュアル業界

小売業の数字を毎月見ていて、気になるのは「ライトオン」や「マックハウス」というようなジーンズを核としたカジュアルショップの数字の低迷だ。もともとはジーンズカジュアルを中心に販売してきたが、近年はレディスやキッズに幅を広げており、呼称としてジーンズカジュアル業界が正しいのかどうかわからない。

上記上場2社の数字だが、ライトオンは8月決算期で売上は389億前後、前年比82.8%、既存前年比87.0%、マックハウスは8月上期で売上前年比80.6%、既存前年比91.8%、第一四半期の予測では通期売上135億、前年比は87.6%と発表している。ちなみに公表売上のピークがライトオンは2007年度1067億、マックハウス2009年567億となっている。ともにピーク期の40%に届いていない。当期の営業利益予測もライトオン-24億(第3四半期時点の会社予測)、マックハウス-8.9億(第一四半期での会社予測)となっており、現状の数字状況から見ると、さらに赤字幅は広がっていくと思われる。ライトオンは2019年から、マックハウスは2018年から、コロナの影響もあり営業赤字は続いている。

数字を見て気になっているので、SCに行くときは必ず売場は見ている。ライトオンはあまり動きがなく、積極的な商売をしてないような気がする。先週見た時も、売場は、ほぼ秋の体制になっていて、残暑厳しい中、なかなかお客様を呼び込めないような状況だった。前回ライトオンについてのブログコメントで、利益のダウンが大きかったので、大幅な在庫処理をしたと書いたのだが、その商品はどこで売っているのだろうか?8月、9月と完全に「売り」の体制は見えない。会社として何かあるのかもしれない。マックハウスはしばらく見てないが以前見た時は、メンズ、ジーンズの見え方を弱めて、提携したワールドのハッシュアッシュの打ち出しを強めていた。カジュアルショップへの移行を早めたいように感じた。

もうジーンズカジュアルは1つのカテゴリーではなく、カジュアルウェアに飲み込まれている。ユニクロやGUで、機能的で買いやすい値段のジーンズが、カジュアルアイテムの1つとして完全に浸透している。アメカジブームやインポートデニムブームなどを経て従来のコア客層は、よりマスから離れていっている。少しこだわりを持つ客層が「Bshop」系のセレクト店に流れているような状況だと思う。

ライトオンやマックハウスの失敗は何か?同一業態を拡大し続けたことにあるかもしれない。パルもアダストリアも、もとはジーンズカジュアルの店でスタートしている。その将来性をどう読むかだが、スタート段階で客層の幅を広げていくべきだった。客層の幅に応じてジーンズ以外の提案もすべきだった。さらにライトオンはイオンモールとともに拡大し、売場も大きくなり、売場の焦点がぼやけてきた。ジーンズの特性だけでは競争が激しいカジュアル路線では戦えなかった。今はその売り場の大きさが一番のネックになっている。マックハウスは、逆にイオンモールに乗らなかったことが拡大できなかった大きな要因だと思う。

今の流れを引き戻すのは非常に厳しい。マックハウスは親会社がチヨダであり、まだ延命方法は十分考えられる。(チヨダもイオンモールに乗らなかったのでABCマートと大きく差がついたが・・・)ライトオンの今期の10月の決算発表には注目したいが、自力以外での再生する方法も模索する必要がありそうな気がする。もうしているか・・・

■今日のBGM

セルフレジの功罪

近隣のSMはどんどんセルフレジに変わっている。よく使っているヤオコーとイオンに限定して推測でのレジ台数だが、曜日によって変化はあるが、平日だとヤオコーは有人レジ5台前後、セルフレジ20台前後の体制、イオンモール内のイオンは有人レジが10台前後、セルフレジ、レジゴー各20台前後の体制のようだ。近隣その他のSMもセルフレジへの移行を進めている。SMはレジ対応にかかる人件費は非常に大きく、セルフレジへの移行は急ピッチになっている。個人的にはイオンではレジゴーで対応しており、スムーズにレジ対応が終わるのと、買い物金額がわかるので便利に使っている。ネットでレジゴーの記事を読んだが、ある程度万引き防止のシステムはあり、さらに子供たちが楽しんでやっているらしく客単価も下がっていないらしい。ちなみにその他の業種でもユニクロ、GU、ダイソーなどがセルフレジをスタートさせている。

ここからはあくまでも私感で書く。SMでは短時間労働者への待遇改善(時給、社保など)による負担が大きくなり、人件費問題は非常に大きいと思う。気になるのは、セルフレジ化により人員を削減しただけでなく、その人員分をどう売場に反映させているのかということだ。SMへの買い物は午前中行くことが多いが、店によって品揃えの充実度が全く違う。特に生鮮品やデイリー食品などの必要な商品の品揃えに差が大きい。つまり、人を減らして経費調整がわかる店と、レジ要員を減らして売場対応を強化している店の差が非常に大きいように感じられる。当然後者のほうが好感度は高いが・・・

結局、経費削減だけでは、効果は短期間になってしまい、逆に従来の営業面にはあまり効果がでてこない。結果として、次年度はさらに何だかの経費削減していかねばならない状況が続く。その経費削減効果を次のステップのプラスに持っていけるかどうかが課題になるのではないかと思う。上記した午前中の品揃えができていないSMが、そのプラス要因で、生鮮売場やデイリー食品が充実したらお客様の信頼感は増す。次につながる。個店でいうと、厳しい店が賃料を下げてもらっても、その削減分は改善するが、削減分をプラスに転じさせなければ、結局は続かないのと同様のことになる。そのプラス要因で他のマイナスポイントを改善していくこと、さらにプラスになる何かを見つけることが大事だと思う。

本当によく言われることだけど、経費を削減して利益が出るのは一過性のことで、そのメリットを生かしながら、営業面でプラスになる戦略を考えていくことが重要なことだ。経費はマイナスすれば0以下にはならない。営業のプラスはずっと青天井かもしれない。

余談だが、先日食品を買いに行く途中にホームセンターに立ち寄った。欲しい商品の形状がわからず困っていて、担当の従業員を呼んでもらった。サイズが明確でなかったので買えなかったが、その女性従業員の素晴らしい笑顔と対応で、あまり利用していないホームセンターだったが「また行こう。」という気になった。

無人化もいいけど「人の力」もまだまだ大きい。

■今日のBGM

店長は、まず売上予算を達成させる

巷で話題の兵庫県知事のニュースを見るたびに、公務員の仕事は結果が見えにくいのだなと感じる。小売業に限らず、民間の企業は「数字」が結果になる。公務員の仕事はなかなか数字化できない。やはり、「えらそう」「贈賄強要」「各種叱責」にはわかりやすい数字評価ではなく、ほとんどが「気持ち」でのやり取りになっている。

ここで「パワハラ」論争をするつもりではないが、小売業を考えると会社が求める「数値」への取り組み次第で上下関係の軋轢は変化するのではないかと思う。

小売業で店長に求められる数値責任は、まず「売上」。仕入れ権限があれば、次に「在庫」。あとは「売上」と「在庫」に関係するが、「利益」。それぞれ与えられた予算に対しての「予算比」、前年数字に対しての「前年比」。つまりすべて相関関係にはある「売上」「在庫」「利益」が数値責任になる。この与えられた予算数値と実績で評価は決まる。ただすべて数値は「売上」が起因となる。利益率は高くても売上総利益高は「売上×利益率」だ。「売上」が伸びれば、必然的に「在庫」は減る。つまり「売上」「在庫」「利益」は相関関係にある。それを考えれば、間違いなく店長の一番の職務は「売上」予算を達成させることだ。

「いい売場」とはどんな売場なのだろうか?答えはたくさんありそうだが、やはり「売れている売場」だと思う。お客様が買ってくれる売場だから、売れている。数ある店で立ち寄って買い物するということは引き付ける「何か」がなくてはならない。

売れていない店をどう立て直すか?私自身は常に値段に訴えた。売れない商品は値段を下げてなくす。いろんな見方はあるが、不稼働商品のセール(値段を下げる)をやることで、お客様の目は売場に向けられる。興味を持たれると、次のステップにつながる事が多い。再来店があったり、他の商品も手に取ってもらえるようになる。ただその時必要なことは、必ず内容を吟味して数値計画を立案し、売上予算は絶対クリアさせることだ。同時に気にすることは、セールで売上を取りながら、在庫はできるだけ減らしていく。さらにセール以外の売場を徹底的に整理する。売れてくるとスタッフも動きが軽くなる。セール以外でも売れ筋が見えてくる。

数値計画で利益率を考えてみる。平月売上3000千、利益率45%、在庫10000千の店で、不稼働商品1000千を半額で販売したとする。完売して売上は3500千と想定する。その月度末在庫を10000千で設定すれば、仕入れ額は4000千、原価50%で仕入すれば利益率は44.4%と-0.6%しかダウンしない。つまり、内容を吟味して数値計画を整合できれば大きな傷は負わない。

在庫を減らしてさえいれば、売上数値が安定してくれば仕入れが活性化するので利益は戻ってくる。売上が改善してくれば、売場スタッフとの交流も円滑になる。売場に笑顔が出てくる。実際、売り上げが好調な店は、売場の雰囲気は明るい。さらに上司からも、性格的に合わなくても、強く言われなくなる。

小売業では、売上数値さえ安定させれば、パワハラも軽減される。

・・・何度も経験してきた。

■今日のBGM

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